確乎しつかり)” の例文
健はいつもの樣に亭乎すらりとした體を少し反身そりみに、確乎しつかりした歩調で歩いて、行き合ふ兒女こども等の會釋に微笑みながらも、始終思慮深い目附をして
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「おとつゝあ、そんでもちつた確乎しつかりしてか」勘次かんじいていた。ほつといきをついたやうな容子ようす勘次かんじ衷心ちうしんからのよろこびであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それよりも君が專門に修めたものでも確乎しつかりとやつたがれ位國家を益するか知れやせぬ。二兎を追へば一兎をも得ずで兩方とも半噛りになつてしまふ。
お志保、確乎しつかりして居てお呉れよ、阿爺おとつさんだつても物の解らない人では無し、お前と私の心地こゝろもちが屈いたら
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
三次聞て大いに笑ひ何と云はるゝや長庵らう牢屋らうやくるしみにて眼もくらみしや確乎しつかりし給へ小手塚の三次なりと云ひければ何ぞ牢内らうないの苦しみがつよければとて知己ちきの人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……憂慮きづかひさに、——懷中ふところで、確乎しつかりけてただけに、御覽ごらんなさい。なにかにまぎれて、ふとこゝろをとられた一寸ちよいと一分いつぷんに、うつかり遺失おとしたぢやありませんか。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ツイ誘惑されぬとは限りませぬ、もつとも警察が少こし確乎しつかりして居りまするならば彼れ等程のものに別段心配も御座りませぬが、何分にも閣下が総理の御時代とは違ひまして
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「家でごすか、余程あれの為めに金のう打遣ぶつつかつたでがすが爺様とつさままだ確乎しつかりして御座らつしやるし、廿年前までは村一番の大尽だつたで、まだえらく落魄おちぶれねえで暮して御座るだ」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
三十にならぬ若い身空で、細君をもらつてすつかり家に収まつたり、巧みに創作の調節を取つて、確乎しつかりと文壇の地位を高めて行くと云つたやうな、さう云ふ甲斐性かひしやうのある人間ぢやないんだ。
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
落ちた耳を拾つて居る奴があるものか、白痴め、汲んで来たか、関ふことは無い、一時に手桶の水不残みんな面へ打付ぶつけろ、此様野郎は脆く生るものだ、それ占めた、清吉ッ、確乎しつかりしろ、意地の無へ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
確乎しつかりしなはらんかいな。……今夜のおたのしみで、心こゝにあらずや。」
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「これ、宮、確乎しつかりしろよ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
健は、いつもの様に亭乎すらりとした体を少し反身そりみに、確乎しつかりした歩調あしどりで歩いて、行き合ふ児女等こどもらの会釈に微笑みながらも、始終思慮かんがへ深い眼付をして
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「おしなさん、おとつゝあたよ、確乎しつかりしろよ」と近所きんじよ女房にようばうがいつた。それをいておしな暫時しばししづかにつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
叔父が聞いて駈付けた時は、まだ父は確乎しつかりして居た。最後に気息いきを引取つたのが昨夜の十時頃。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あゝ、へば前刻さつきからひとにばかりものをはせる。確乎しつかりしてくれ、おうらうしたんだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「松島、実に困らせをるぞ、権兵衛にこし確乎しつかりせいと言うて呉れ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
けれど都とは違つて、造作は確乎しつかりとして居るし、天井は高く造られてあるから風の流通もおのづから好く、たゞ、馬小屋の蝿さへ此処まで押寄せて来なければ、中々居心の好い静かなへやであるのだが……
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「來年からやなア。……十三ぱつちり、十四はちよこ/\、十五の春から、ていふことがおますやないか。……坊んち確乎しつかりしなはれ、お父つあんに負けなはるな。……お父つあんが嫁はん貰やはるんなら、わしにも貰ふとくれてなア。」
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
宿の内儀かみさんは既う四十位の、亡夫は道廳で可也かなりな役を勤めた人といふだけに、品のある、氣の確乎しつかりした、言葉に西國の訛りのある人であつた。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
確乎しつかりしろえ、えゝから」小柄こがらぢいさんはわかれるときまた呶鳴どなつた。卯平うへいあしもとはやゝちからづいてえてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
貴方あなた——うかしてますね。……確乎しつかりなさらなくつちやあ不可いけないぢやあゝりませんか。」
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ハヽヽヽ松島と篠田、こりや必竟ひつきやう帝国主義と、社会主義との衝突ぢや、松島、確乎しつかりせんとならんぞ」と侯爵は得意満面に松島を見やりつ「かし松島、才色兼備の花嫁を周旋する以上は、チト品行を ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
宿の内儀かみさんう四十位の、亡夫は道庁で可也かなりな役を勤めた人といふだけに、品のある、気の確乎しつかりした、言葉に西国の訛りのある人であつた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
仙人せんにんが、あのひろそでなかから、眞紅まつかな、粘々ねば/\した、つやのある、へびうろこのやうな編方あみかたした、一條ひとすぢひもしていとほどにも、うごきませんほど、手足てあし大木たいぼく確乎しつかりいはへて、綿わたまるけたたま
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『みたいなナンテ……確乎しつかり教へたつて好いぢやありませんか? 私は讀めるんぢやなし……。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
すかりとれるぞ。のこらずすべい。兵粮へうらうはこぶだでの! 宿やどへもほこらへもかへらねえで、此処こゝ確乎しつかり胡座あぐらけさ。下腹したはらへうむとちかられるだ。雨露あめつゆしのぐなら、私等わしら小屋こやがけをしてしんぜる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『みたいなナンテ……確乎しつかり教へたつて好いぢやありませんか? 私は読めるんぢやなし……。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
おそろしいよりも、ゆめれてうれしさがさきつた。暫時しばらく茫然ばうぜんとしてた。が、膚脱はだぬぎにつて冷汗ひやあせをしつとりいた。手拭てぬぐひむか顱卷はちまき、うんとめて確乎しつかり持直もちなほして、すた/\と歩行出あるきだした。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
確乎しつかりした女だとも思ふ。確固しつかりした、そして美しい女だけに、信吾は智惠子をして他の男——吉野を思はしめたくない。何といふ理由なしに。自分には智惠子に思はれる權利でもある樣に感じてゐる。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
確乎しつかりしろ。」
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)