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盈
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み
ふりがな文庫
“
盈
(
み
)” の例文
と見て、妻が更に五六
粒
(
つぶ
)
拾った。「椎が
実
(
な
)
った! 椎が実った!」
驩喜
(
かんき
)
の声が家に
盈
(
み
)
ちた。田舎住居は斯様な事が
大
(
たい
)
した喜の原になる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
馬鹿になってしまったのではないかと疑われるくらい——正月でもあるせいもあろうが——
夜毎
(
よごと
)
に
賑
(
にぎや
)
かな笑い声に
盈
(
み
)
ちているのだった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼らの心は永遠なる理想や価値、真によき宗教や哲学や道徳や芸術や学問の憧がれとそれらに対する努力とにおいて喜びに
盈
(
み
)
ち溢れつつ悩んでいる。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
私がこれまで罵られ、はずかしめられてもいかなかったのは、五年の愛がまだ
盈
(
み
)
たなかったからですが、こうなってはもうすこしもいることはできません。
小翠
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
雪解け春
来
(
きた
)
り水
盈
(
み
)
ち稲茂り、やがて秋の風に黄金の穂が波うつ時が来ると、
僅
(
わず
)
かばかりの充足に心まで酔いうかれて、かえって村雀と共に踊り歌うのである。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
これ等の
少
(
すこし
)
く失へる者は喜び、彼等の多く失へる
輩
(
はい
)
は憂ひ、又
稀
(
まれ
)
には全く失はざりし人の楽めるも、皆内には
齷齪
(
あくそく
)
として、
盈
(
み
)
てるは
虧
(
か
)
けじ、虧けるは盈たんと
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
幼にして精敏、
双眸
(
そうぼう
)
烱々
(
けいけい
)
として、日に書を読むこと寸に
盈
(
み
)
ち、文を
為
(
な
)
すに
雄邁醇深
(
ゆうまいじゅんしん
)
なりしかば、郷人呼んで
小韓子
(
しょうかんし
)
となせりという。其の
聰慧
(
そうけい
)
なりしこと知る可し。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
同伴
(
つれ
)
はおもしろし、別して月も宵にはあるべし、この夜の清興を思へば、涼風
盈
(
み
)
ちて車上にあり。
三日幻境
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
お
家
(
いえ
)
もいよ/\
御繁昌
(
ごはんじょう
)
でございましたが、
盈
(
み
)
つれば
虧
(
か
)
くる世のならい、奥様には
不図
(
ふと
)
した事が元となり、
遂
(
つい
)
に帰らぬ旅路に
赴
(
おもむ
)
かれましたところ、此の奥様のお
附
(
つき
)
の人に
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
鹽
(
しほ
)
盈
(
み
)
つ
珠
(
たま
)
一八
を出して溺らし、もしそれ愁へまをさば、
鹽
(
しほ
)
乾
(
ふ
)
る
珠
(
たま
)
を出して
活
(
いか
)
し、かく
惚苦
(
たしな
)
めたまへ
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
月は
盈
(
み
)
つればかくる。いたずらに指を屈して白頭に
到
(
いた
)
るものは、いたずらに
茫々
(
ぼうぼう
)
たる時に身神を限らるるを
恨
(
うら
)
むに過ぎぬ。日月は
欺
(
あざむ
)
くとも己れを欺くは智者とは云われまい。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
盈
(
み
)
つれば欠くるという。なおも店の拡張を計って天の冥護に離れ、人の同情を失えばどうなるか。思いをここに致せばなかなか現状の不自由等をかこつべきではないのである。
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
況
(
いわ
)
んや金蓮の怪
誕
(
たん
)
なる、
明器
(
めいき
)
を仮りて以て
矯誣
(
きょうぶ
)
し、世を
惑
(
まど
)
わし
民
(
たみ
)
を
誣
(
し
)
い、条に
違
(
たが
)
い法を犯す。
狐
(
きつね
)
綏綏
(
すいすい
)
として
蕩
(
とう
)
たることあり。
鶉
(
うずら
)
奔奔
(
ほんぽん
)
として良なし、
悪貫
(
あくかん
)
已
(
すで
)
に
盈
(
み
)
つ。罪名
宥
(
ゆる
)
さず。
牡丹灯籠 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
水星が月と同じように
盈
(
み
)
ち
虧
(
か
)
けを示すこと、太陽に黒点のあることなどを見つけ出し、それらの事がらからコペルニクスの説の真であることをますます確信するようになりました。
ガリレオ・ガリレイ
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
「これを
文天祥
(
ぶんてんしょう
)
の
土窖
(
どこく
)
に比すればわが
舎
(
しゃ
)
はすなわち玉堂金屋なり、
塵垢
(
じんこう
)
の爪に
盈
(
み
)
つる
蟻虱
(
ぎしつ
)
の膚を侵すもいまだ我正気に敵するに足らず」と勇みつつ
幽廬
(
ゆうろ
)
の中に沈吟せし藤田東湖を思え
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
歯角脊足
宛然
(
さながら
)
皆具う、大なるは数十丈、あるいは十丈に
盈
(
み
)
つ、小さきはわずかに一、二尺、あるいは三、四寸、体皆具わる、かつて因って
采
(
と
)
り
取
(
あつ
)
めこれを見る、また曰く冀州
鵠山
(
こくさん
)
に伝う
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「モンセーニュール
曰
(
い
)
いけるは、地とこれに
盈
(
み
)
てる物はわがものなり。
★
」
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
肉の楽しみを
極
(
きわ
)
めることをもって唯一の生活信条としていたこの老女怪は、後庭に房を連ねること数十、容姿
端正
(
たんせい
)
な若者を集めて、この中に
盈
(
み
)
たし、その楽しみに
耽
(
ふ
)
けるにあたっては、
親昵
(
しんじつ
)
をも
屏
(
しりぞ
)
け
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
罪悪が
盈
(
み
)
ちて来ると、隣家の火災で10395
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
盈
(
み
)
つるにか、
虧
(
か
)
くるにか。
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
およそはこうと予期されていたことではあったが、決定と分ると、誰の眉にも、一層な明るさと、前途への意気が
盈
(
み
)
ちて見えた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
若々とした武蔵野に復活の生気が
盈
(
み
)
ち
溢
(
あふ
)
れる。色々の虫が生れる。
田圃
(
たんぼ
)
に蛙が
泥声
(
だみごえ
)
をあげる。水がぬるむ。そろ/\
種籾
(
たねもみ
)
も
浸
(
ひた
)
さねばならぬ。桑の
葉
(
は
)
がほぐれる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
狐
綏々
(
すいすい
)
として蕩たることあり、
鶉
(
うずら
)
奔々
(
ほんほん
)
として良なし、悪貫已に
盈
(
み
)
つ。罪名宥さず。陥人の坑、今より
填
(
み
)
ち満ち、迷魂の陣、此より打開す。双明の燈を
焼毀
(
しょうき
)
し、九幽の獄に
押赴
(
おうふ
)
す。
牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
日の出る方を
本
(
もと
)
つ国、清い霊魂の行き通う国、セヂの豊かに
盈
(
み
)
ち
溢
(
あふ
)
れて、惜みなくこれを人間に
頒
(
わか
)
とうとする国と信じていたとしたら、それこそは我々の先祖の大昔の海の旅を
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
詛言
(
のろいごと
)
を言つて、「この竹の葉の青いように、この竹の葉の
萎
(
しお
)
れるように、青くなつて萎れよ。またこの鹽の
盈
(
み
)
ちたり
乾
(
ひ
)
たりするように盈ち乾よ。またこの石の沈むように沈み伏せ」
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
階を登れば老侠客
莞爾
(
くわんじ
)
として我を迎へ、相見て未だ一語を
交
(
か
)
はさゞるに、満堂一種の清気
盈
(
み
)
てり。相見ざる事七年、相見る時に
驟
(
には
)
かに口を開き難し、
斯般
(
このはん
)
の趣味、人に語り易からず。
三日幻境
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
語られざる哲学が求める真理は全人格が肯定しまた全人格が喜ばしさに
盈
(
み
)
ち
溢
(
あふ
)
れつつ服従する生ける真理である。それは私たちにとって律法ではなくして愛の対象となるような真理である。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
蕭々
(
しょうしょう
)
たる白髪
已
(
すで
)
に
頭
(
こうべ
)
に
盈
(
み
)
つ。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
器
(
うつわ
)
は
盈
(
み
)
ちた。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
「ひんがしの、空の
曠野
(
ひろの
)
を、ながむれば——むらさきの、雲はたなびき——春野の駒か、霞むは旗か、つわものばらの、
盈
(
み
)
ち
満
(
み
)
つところ……」
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
最初は途切れ/\に、あとは次第に調子づいて、
盈
(
み
)
ちた心を傾くる様に彼は熱心に話した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
月の
盈
(
み
)
ち
欠
(
か
)
けを目標とした太陰暦の時代には、朔日くらい目に立たぬものはなかったろう。よほどそのつもりで気をつけておらぬと、今日から月がかわるということを知らずにいる。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「この
竹葉
(
たかば
)
の青むがごと、この竹葉の
萎
(
しな
)
ゆるがごと、青み萎えよ。またこの鹽の
盈
(
み
)
ち
乾
(
ふ
)
るがごと、盈ち
乾
(
ひ
)
よ。またこの石の沈むがごと、沈み臥せ」とかく
詛
(
とこ
)
ひて、
竈
(
へつひ
)
の上に置かしめき。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
直接に
痛痒
(
つうやう
)
を感ぜざればとて、遠大なる事業を
斥
(
しりぞ
)
くべきにあらず、況んや欧洲のみに戦争の毒気
盈
(
み
)
つるにあらずして、東洋も亦た早晩、
修羅
(
しゆら
)
の
巷
(
ちまた
)
と化して塵滅するの時なきにしもあらず
一種の攘夷思想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
母なる人が、
青梅
(
あおうめ
)
の
実
(
み
)
にあたって、月
盈
(
み
)
たぬうちに早産したせいだとか。——いわゆる月足らずの子であったとみえる。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ウィリヤム・テルの如き代表者の上に不朽なる
気禀
(
きひん
)
をあらはし、忠節に
凝
(
こ
)
れる時代には
楠公
(
なんこう
)
の如き、はた岳飛、張巡の徒の如き、忠義の精気に
盈
(
み
)
ちたる歴史的の人物を生ずるに至るなり。
徳川氏時代の平民的理想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
ここに大后は、御綱栢を御船に積み
盈
(
み
)
てて還りいでます時に、
水取
(
もひとり
)
の司に使はゆる、吉備の國の兒島の郡の
仕丁
(
よぼろ
)
三
、これおのが國に
退
(
まか
)
るに、難波の大渡に、後れたる
倉人女
(
くらびとめ
)
四
の船に遇ひき。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
社会は不幸悲惨をもって
盈
(
み
)
ちているかのごとく印象せられるが、百分率からいうと九十八九の家庭では、女は平穏無事に小さな世事に
屈托
(
くったく
)
し、そうしてただ少しずつ学校で教えられたことを忘れて
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
いかに和議は成っても、
盈
(
み
)
ち
溢
(
あふ
)
るる春光と、平和は
謳
(
うた
)
われても、ここの地上は、四十年以来、互いに父祖の代から
鎬
(
しのぎ
)
を
削
(
けず
)
り合って来た敵地である。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は「時」に
欺
(
あざむ
)
かれ尽くして
古時
(
いにしへ
)
を思ひ、これは「時」に弄せらるゝを知らずして空望を懸く。気
盈
(
み
)
ち骨
剛
(
かた
)
きものすら多くは「時」の潮流に巻かれて、五十年の星霜
急箭
(
きふせん
)
の飛ぶが如くに過ぐ。
徳川氏時代の平民的理想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
事実、今ほど幸福に
盈
(
み
)
たされている時はない。訴訟に勝って、彼が、郷土に帰って以来、彼の人望は、郷党たちから、いやが上にも高められている。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
天地
(
あめつち
)
に
盈
(
み
)
つてふ精も近よれよ
北村透谷詩集
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
このたのしい平和に
盈
(
み
)
ちた地上のどこにそんなあぶないことが起っているのかと、むしろ不審にたえぬらしい、おん目をしばだたかせているのだった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
董卓が殺されてからは、天の
奇瑞
(
きずい
)
か、自然の暗合か、数日の黒霧も明らかに
霽
(
は
)
れ、風は
熄
(
や
)
んで地は
和
(
なご
)
やかな光に
盈
(
み
)
ち、久しぶりに昭々たる太陽を仰いだ。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜来
(
やらい
)
の雨に、
陽
(
ひ
)
は、加茂の小石小石の
水陰
(
みずかげ
)
から、東山のいただきまで、いちどに春を
盈
(
み
)
ちみなぎらした。いま。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
殺気満ち
盈
(
み
)
つ中を、歩々、水の如くすすんで、
周瑜
(
しゅうゆ
)
の祭壇に到るや、その前にぬかずいて、やや久しく黙拝していたが、やがて携えてきた酒、その他の
種々
(
くさぐさ
)
を供え
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
工匠
(
たくみ
)
らは工匠たちと、
商人
(
あきゅうど
)
は商人たちと——またその家族たちと——人々はこぞって親鸞の徳を
称
(
たた
)
え、国主の善政に感謝し、法悦の
諸声
(
もろごえ
)
は、
天地
(
あめつち
)
に
盈
(
み
)
ちあふれていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
本懐
(
ほんかい
)
のほどを洩らし、同時に側臣たちへも精勤をうながしたとのことであるが、春潮
盈
(
み
)
ちて船出を想うような彼の心事は、まさに、成るも成らぬも、われ世に会せりとして
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
御城下の田や山で、この頃よくきく歌は、光秀様の善政を
謳歌
(
おうか
)
し、明智家の開運を
祝
(
ことほ
)
ぐ声だった。実際、領内の御政治は、非難のしようもないほど、行届いて、平和に
盈
(
み
)
ちていた。
茶漬三略
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしてむろん、神学生の今村に対して、ふたりの眼は、感謝に
盈
(
み
)
ちあふれていた。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
盈
漢検準1級
部首:⽫
9画
“盈”を含む語句
盈々
盈虧
盈虚
盈進
充盈
盈満
伯盈
塩盈珠塩乾珠
昌盈
満盈
盈光
盈欠
盈溢
盈科齋
築山捧盈