トップ
>
界
>
さかい
ふりがな文庫
“
界
(
さかい
)” の例文
阮もみずからそれを誇って、この理をもって
推
(
お
)
すときは、世に幽と明と二つの
界
(
さかい
)
があるように伝えるのは誤りであると唱えていた。
中国怪奇小説集:03 捜神記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
千古の恨みを吐き出して其の声は人間の
界
(
さかい
)
を貫き深く深く冥界と相通ずるかと疑われる様な音である、余は感動せずに聞く事は出来ぬ
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
陸を行けば、じき隣の越中の国に入る
界
(
さかい
)
にさえ、
親不知子不知
(
おやしらずこしらず
)
の難所がある。削り立てたような巌石の
裾
(
すそ
)
には
荒浪
(
あらなみ
)
が打ち寄せる。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
だから作品のすぐれた
界
(
さかい
)
では図抜けてすぐれたものが生まれ、書きながした物はそのままに散文とかわりないものになっていた。
我が愛する詩人の伝記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
君らは水の色を一目見たばかりで、海中に突き入った陸地と海そのものの
界
(
さかい
)
とも言うべき瀬がどう走っているかをすぐ見て取る事ができる。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
▼ もっと見る
窓の鉄棒を袖口を添えて両手に握り、
夢現
(
ゆめうつつ
)
の
界
(
さかい
)
に汽車を見送ッていた吉里は、すでに煙が見えなくなッても、なお瞬きもせずに見送ッていた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
あるいは他より来りてその
界
(
さかい
)
を犯し、不平の一点において、かの守旧家と一時の抱合をなすのおそれなしというべからず。
学者安心論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
流を
挟
(
はさ
)
む左右の柳は、一本ごとに緑りをこめて
濛々
(
もうもう
)
と烟る。
娑婆
(
しゃば
)
と
冥府
(
めいふ
)
の
界
(
さかい
)
に立ちて迷える人のあらば、その人の霊を並べたるがこの
気色
(
けしき
)
である。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すなわちこの区切りを
界
(
さかい
)
としてその内部が真の果実であって、この果実部はあえてだれも食わなく捨てるところである。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
渤海
奇毒
(
きどく
)
の書、唐朝官家に達す。
爾
(
なんじ
)
、
高麗
(
こうらい
)
を占領せしより、吾国の近辺に迫り、兵
屡
(
しばしば
)
吾
界
(
さかい
)
を犯す。おもうに官家の意に出でむ。
俺
(
われ
)
如今
(
じょこん
)
耐
(
た
)
うべからず。
岷山の隠士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
徳川家康の
界
(
さかい
)
へも、ほとんど見さかいなき
相
(
すがた
)
で侵攻を開始し、まさに、天下再乱の
恐慌
(
きょうこう
)
を思う民衆の予想は
中
(
あた
)
っているかとも思われるばかりであった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
東方が竹町と七軒町の
界
(
さかい
)
でこの堀が下谷と浅草の界だと思います。七軒町の取っ附きまでが一丁半位、南北は二丁以上、随分佐竹屋敷は広かったものです。
幕末維新懐古談:62 佐竹の原繁昌のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
それによってみれば、壁はある大通りかもしくは樹の植わった裏通りと庭との
界
(
さかい
)
になってるらしかった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
三途河はにせものの十王経には
葬頭河
(
そうずか
)
とも書いてありますが、そんな地名が仏教の方に前からあったわけでなく、そうずかは日本語でただ
界
(
さかい
)
ということであったのを
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
牢屋
(
ろうや
)
を
界
(
さかい
)
にして、北は官宅街とし、南に庶民の町屋を営ませた。蝦夷地改め北海道の主都として、面目のために、当地に自費移住するものには家作料を百両貸しあたえた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
今の芝公園と
愛宕山
(
あたごやま
)
の
界
(
さかい
)
のところを「切通し」という、昼間から
宵
(
よい
)
の口までは相当賑であったが、夜が
更
(
ふ
)
けると寂しくなり、辻斬などもしばしば行われた、翁は子供心に
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
石垣
(
いしがき
)
一つ
界
(
さかい
)
にして隣家に留守居する人たちのことは絶えず伊之助の心にかかっていたからで。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その日の焼亡はまことに前代未聞の
沙汰
(
さた
)
で、
下
(
しも
)
は二条より
上
(
かみ
)
は
御霊
(
ごりょう
)
の
辻
(
つじ
)
まで、西は
大舎人
(
おおとねり
)
より東は室町小路を
界
(
さかい
)
におおよそ百町あまり、
公家
(
くげ
)
武家の
邸
(
やしき
)
をはじめ合せて三万余宇が
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
青い海と青い空との
界
(
さかい
)
に、同じような青の上に、白い薄いヴェールを
被
(
かぶ
)
ったような、おぼろげな
霞
(
かす
)
んだ色に、大きな島のように浮んでいました。白い雲が
頂
(
いただき
)
の方を包んでいました。
少年と海
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
かかる病なん、
終
(
つい
)
にその痛むところ、
蓮
(
はちす
)
の花の開くがごとく
壊
(
え
)
み崩れて腐り行けば、命幾日もあらずというを聞くにも、今は
幾許
(
いくばく
)
ならずその
界
(
さかい
)
に至らんと思えば、いとど安き心なし。
玉取物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
こんな幻像を夢うつつの
界
(
さかい
)
に繰り返しながらいつのまにかウトウト眠ってしまう。
病院の夜明けの物音
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
彼女は原っぱの
界
(
さかい
)
の木戸を押し
開
(
あ
)
ける。そして、
告
(
つ
)
げ
口
(
ぐち
)
をしたエルネスチイヌを従えて、はいって来た。
生籬
(
いけがき
)
のそばを通る時、彼女は
茨
(
いばら
)
の枝をへし折り、
棘
(
とげ
)
だけ残して葉をもぎ取った。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
それで澤山な報酬が得られる仕事とでも云ふのなら
宜
(
い
)
いけれ共、海とも山とも付かない不安な
界
(
さかい
)
へ又踏み込んで行つて、結局は
何方
(
どつち
)
へ
何
(
ど
)
う向き變つて行くか分らないと云ふ始末を思ふと
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
その頃は、今の芝の公園と愛宕の山との
界
(
さかい
)
の所を『切通し』といった。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
声々に、
可哀
(
あわれ
)
に、寂しく、
遠方
(
おちかた
)
を
幽
(
かすか
)
に、——そして
幽冥
(
ゆうめい
)
の
界
(
さかい
)
を
暗
(
やみ
)
から闇へ
捜廻
(
さがしまわ
)
ると言った、厄年十九の娘の名は、お稲と云ったのを鋭く聞いた——
仔細
(
しさい
)
あって忘れられぬ人の名なのであるから。——
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は初めて見るその物すさまじい天候に
呆気
(
あっけ
)
に取られて、運動場の
界
(
さかい
)
の、
丈
(
たけ
)
の高いポプラの
梢
(
こずえ
)
が、その白い埃の霧の中に消えているあたりを眺めながら、直ぐにじゃりじゃりと砂の溜ってくる口から
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「そんな
界
(
さかい
)
なんぞがあるものですか。」
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
暇があるからだと云って、長次郎が松葉を敷いてくれた
蹲
(
つくば
)
いのあたりを見れば、敷松葉の
界
(
さかい
)
にしてある、太い縄の上に霜がまだらに降っている。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
この山とあの山との
距
(
へだた
)
りの感じは、
界
(
さかい
)
の線をこういう曲線で力強くかきさえすれば、きっといいに違いない、そんな事を一心に思い込んでしまう。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
水と空の
界
(
さかい
)
だけが、ぼっと夜明けのように明るいだけだった。夜の海は、真っ暗に
吠
(
ほ
)
えすさんでいる。常でも浪の激しい
由比
(
ゆい
)
ヶ浜に、こよいは風がある。
日本名婦伝:静御前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
顔に袖を当てて泣く吉里を見ている善吉は
夢現
(
ゆめうつつ
)
の
界
(
さかい
)
もわからなくなり、茫然として涙はかえッて出なくなッた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
廊下を
界
(
さかい
)
として一つ屋根の下が二階と三階とに建て分けて有るのだ、廊下を奥へ突き当たって左へ曲った所に余り高くない
階
(
はしご
)
が有って三階へ登る様に成って居る。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
その時両軍の兵士は、この暗い中で、わずかの仕切りを
界
(
さかい
)
に、ただ一尺ほどの距離を取って
戦
(
いくさ
)
をした。仕切は
土嚢
(
どのう
)
を積んで作ったとかA君から聞いたように覚えている。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その日の焼亡はまことに前代未聞の
沙汰
(
さた
)
で、
下
(
しも
)
は二条より
上
(
かみ
)
は
御霊
(
ごりょう
)
の
辻
(
つじ
)
まで、西は
大舎人
(
おおとねり
)
より東は室町小路を
界
(
さかい
)
におほよそ百町あまり、
公家
(
くげ
)
武家の
邸
(
やしき
)
をはじめ合せて三万余宇が
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
たとえば情欲には限りなきものにて、美服美食もいずれにて十分と
界
(
さかい
)
を定め難し。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
唐の
寧王
(
ねいおう
)
が
※
(
ちょ
)
県の
界
(
さかい
)
へ
猟
(
かり
)
に出て、林のなかで
獲物
(
えもの
)
をさがしていると、草の奥に一つの
櫃
(
ひつ
)
を発見した。
蓋
(
ふた
)
の錠が厳重に
卸
(
おろ
)
してあるのを、家来に命じてこじ明けさせると、櫃の内から一人の少女が出た。
中国怪奇小説集:05 酉陽雑爼(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
仔細
(
しさい
)
に見れば、町というには名ばかりであるが、家々が、木目の白さを競っていた。しかし、官宅の堂々さに比して、東西に
画
(
くぎ
)
る火防線を
界
(
さかい
)
にした南の町地には、昔のままの
草葺
(
くさぶき
)
小屋も雑居していた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
また
田立村
(
ただちむら
)
を過ぎて
界
(
さかい
)
の川で美濃の国の方にはいる方針である。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
下野
安蘇
(
あそ
)
郡
界
(
さかい
)
村大字馬門
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
いわば
悠々
(
ゆうゆう
)
閑々と澄み渡った水の隣に、薄紙
一重
(
ひとえ
)
の
界
(
さかい
)
も置かず、たぎり返って
渦
(
うず
)
巻き流れる水がある。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「絹買えば白き絹、糸買えば銀の糸、金の糸、消えなんとする
虹
(
にじ
)
の糸、夜と昼との
界
(
さかい
)
なる夕暮の糸、恋の色、
恨
(
うら
)
みの色は無論ありましょ」と女は眼をあげて
床柱
(
とこばしら
)
の方を見る。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
驚いて振り向くと何時からか知らぬが、秀子が次の室と此の室との
界
(
さかい
)
に立って、余と権田との争いの様を眺めて居る、余は今まで自分の熱心に心が暗み、少しも気が附かなんだけれど
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
すなわち飢寒と教育と
相対
(
あいたい
)
して、この
界
(
さかい
)
をば決して
踰
(
こ
)
ゆべからざるものなり。
小学教育の事
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
嬉しい中に危ぶまれるような気がして、
虚情
(
うそ
)
か
実情
(
まこと
)
か虚実の
界
(
さかい
)
に迷いながら吉里の顔を見ると、どう見ても以前の吉里に見えぬ。眼の中に
実情
(
まごころ
)
が見えるようで、どうしても
虚情
(
うそ
)
とは思われぬ。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
当時県吏の権勢は
盛
(
さかん
)
なものであった。成善が東京に
入
(
い
)
った直後に、まだ浦和県出仕の典獄であった優善を訪うと、優善は等外一等出仕宮本半蔵に
駕籠
(
かご
)
一挺を宰領させて成善を県の
界
(
さかい
)
に迎えた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
これは修羅の世を抜けいでて寂光の土にいたるという何ものかの
秘
(
ひそ
)
やかな
啓
(
あか
)
しなのでもあろうか。それでは自分も一応は浄火の
界
(
さかい
)
を過ぎて、いま凉道蓮台の
門
(
かど
)
さきまで
辿
(
たど
)
りついたとでも云うのか。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
これまではただ無知で済んでいたのである。それが急に不徳義に転換するのである。問題は
単
(
ひとえ
)
に智愚を
界
(
さかい
)
する理性一遍の
墻
(
かき
)
を乗り超えて、道義の
圏内
(
けんない
)
に落ち込んで来るのである。
学者と名誉
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
葉子は
一刹那
(
いっせつな
)
の違いで死の
界
(
さかい
)
から救い出された人のように、驚喜に近い表情を顔いちめんにみなぎらして裂けるほど目を見張って、写真を持ったまま飛び上がらんばかりに突っ立ったが
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
すなわちその分限とは、天の道理に基づき人の情に従い、他人の妨げをなさずしてわが一身の自由を達することなり。自由とわがままとの
界
(
さかい
)
は、他人の妨げをなすとなさざるとの間にあり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
これは修羅の世を抜けいでて寂光の土にいたるといふ何ものかの
秘
(
ひそ
)
やかな
啓
(
あか
)
しなのでもあらうか。それでは自分も一応は浄火の
界
(
さかい
)
を過ぎて、いま凉道蓮台の
門
(
かど
)
さきまで
辿
(
たど
)
りついたとでも云ふのか。
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
“界”の意味
《名詞・suffix》
(さかい)空間を分ける線。
(カイ)種類を同じくする空間。
(カイ)生物分類の基本階級の一つで、一般的にはその最上単位。但し、近年ではさらにその上位に「ドメイン」のをおくこともある。界-門-綱-目-科-(族)-属-(節)-種
(出典:Wiktionary)
界
常用漢字
小3
部首:⽥
9画
“界”を含む語句
境界
世界中
滅法界
外界
幽界
人界
限界
他界
界隈
世界
冥界
見界
結界
眼界
花柳界
社界
下界
三界
人間界
世界的
...