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煽
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あお
ふりがな文庫
“
煽
(
あお
)” の例文
うしろから吹きつける風に
煽
(
あお
)
られて身体ぐるみ
宙
(
ちゅう
)
に浮いたまま、二三歩前へよろけてから、やっと
踏
(
ふ
)
みとどまる
癖
(
くせ
)
がついてしまった。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
……すると全く不意に、ガタンと激しい音がして、
歩廊
(
プラット・ホーム
)
へ出る
扉
(
ドア
)
が開き、どっと
吹込
(
ふきこ
)
んで来た風に
煽
(
あお
)
られて
卓子
(
テーブル
)
の上の
洋灯
(
ランプ
)
が消えた。
廃灯台の怪鳥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
深い雑木林が、絶えず
煽
(
あお
)
りを喰って、しなやかなその小枝を揺がし、
竹藪
(
たけやぶ
)
からすいすいした若竹が、雨にぬれた枝を差し交していた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それがまた、
若気
(
わかげ
)
の兄弟たちを、逆に
煽
(
あお
)
ったものとみえ、二男の祝虎が、こんどは
李応
(
りおう
)
の手紙を引き裂いて叩き返したものだという。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、
主従
(
しゅうじゅう
)
ともに
一驚
(
いっきょう
)
を
吃
(
きっ
)
したのは、其の首のない
胴躯
(
どうむくろ
)
が、
一煽
(
ひとあお
)
り鞍に
煽
(
あお
)
ると
斉
(
ひと
)
しく、
青牛
(
せいぎゅう
)
の
脚
(
あし
)
が
疾
(
はや
)
く成つて
颯
(
さっ
)
と
駈出
(
かけだ
)
した事である。
雨ばけ
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
扉が小さい室に風を
煽
(
あお
)
って閉まると、ガチャン/\と鋭い音を立てゝ錠が下り、——俺は生れて始めて、たった独りにされたのだ。
独房
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
そして今や、バルザックの寝巻姿をロダン第一の傑作とする批評の論が民衆を
煽
(
あお
)
って、オテル・ド・ヸロンに観覧者の列が続きました。
バルザックの寝巻姿
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
その淋しさを消すために、
冷酒
(
ひやざけ
)
を
煽
(
あお
)
るようなこともあり、ついには毎夜、冷酒を煽らなければ寝つかれないようになってしまいました。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
クリヴォフ夫人の赤毛が陽に
煽
(
あお
)
られて、それがクルクル廻転するところは、さながら
焔
(
ほのお
)
の
独楽
(
こま
)
のようにも思えたであろうし、また
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
いまの目印の動きは、魚の当たりか、風の
煽
(
あお
)
りか、その判断に
固唾
(
かたず
)
をのんでいる時に『帰ろう』と言う、父の言葉であったのだ。
楢の若葉
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
の腰巻が一つ、その
裾
(
すそ
)
が風に
煽
(
あお
)
られるのを
小股
(
こまた
)
に挟んで、両手で乳を隠すと、丈なす黒髪が、襟から肩へサッと
靡
(
なび
)
きます。
銭形平次捕物控:016 人魚の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
下塗を乾かすために
団扇
(
うちわ
)
で
煽
(
あお
)
いだりしたものですが、今はそんな
暢気
(
のんき
)
な事をやっていられないから、はじめから濃いやつを塗る。
久保田米斎君の思い出
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
庄吉は見出さるる度毎に
甚
(
ひど
)
く苛められ乍ら、それが却って彼の立聞きの好奇心を
煽
(
あお
)
った。彼の身体にはよく紫色に腫上った傷跡がついた。
少年の死
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
譚は僕の問を片づけると、老酒を一杯
煽
(
あお
)
ってから、急に
滔々
(
とうとう
)
と弁じ出した。それは僕には
這箇
(
チイコ
)
這箇
(
チイコ
)
の外には一こともわからない話だった。
湖南の扇
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
大空の熱度激変せし為なるべし太西洋の面より
捲
(
ま
)
き起こりたる疾風、
驀地
(
まっしぐら
)
に欧羅巴を襲い来たり、
凄
(
すさ
)
まじき勢いにて吹き
煽
(
あお
)
れり。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
信一郎は、女王の前に出た騎士のように
慇懃
(
いんぎん
)
だった。が、夫人は卓上に置いてあった
支那
(
しな
)
製の
団扇
(
うちわ
)
を取って、
煽
(
あお
)
ぐともなく動かしながら
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
自分は夫に貞節を尽さんがために、心ならずも彼の嫉妬を
煽
(
あお
)
るような言葉を、恐る恐る、それも大変遠廻しに洩らしていただけであった。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
今、加柴君の言った矢萩大蔵などがそれだ。ああいう支那浪人がいるために、排日抗日をどのくらい
煽
(
あお
)
り立てることになったか分らない。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
とうとう自分の魂が赤い炭の中へ抜出して、
火気
(
かっき
)
に
煽
(
あお
)
られながら、むやみに踊をおどってるような変な心持になった時に、突然
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうだ、こんど広島へ行ったら、あの写真を借りてもどろう——そういう突飛なおもいつきが、更に彼の郷愁を
煽
(
あお
)
るのだった。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
菊代の兄、奥田義雄は、六畳間の縁側にしゃがんで
七輪
(
しちりん
)
をばたばた
煽
(
あお
)
ぎ煮物をしながら、傍に何やら書籍を置いて読んでいる。
春の枯葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
野心家はますますそれを
煽
(
あお
)
り立てて行く。その結果、大将は、智謀を軽んじ、武勇の士をことごとく失ってしまうことになる。
埋もれた日本:――キリシタン渡来文化前後における日本の思想的情況――
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
「今日は、桃の節句。……花世の白酒を飲みがてら、ひとつ、叔父貴を
煽
(
あお
)
りに行こう。……馬の尻尾で、
白馬
(
しろうま
)
にありつくか」
顎十郎捕物帳:03 都鳥
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その不可解な絵が妙に未知の不思議の世界に対する知識欲を刺戟しそれがいつとなく植物学全体への興味を
煽
(
あお
)
るのであった。
マーカス・ショーとレビュー式教育
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
こやつが担がれて惨憺たる悲鳴をあげる態を想像すると、そこに居並ぶ誰を空想した時よりも好い気味な、腹の底からの
爽々
(
すがすが
)
しさに
煽
(
あお
)
られた。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
涸
(
か
)
れ乾いた木の葉に火が
点
(
つ
)
いたのである。
濛々
(
もうもう
)
たる黒煙のその中から
焔
(
ほのお
)
の舌が
閃
(
ひらめ
)
いて見え嵐に
煽
(
あお
)
られて次第次第に火勢は
麓
(
ふもと
)
の方へ流れて来る。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そういう魔性の
妖
(
あや
)
しさは、同性の敵意を
煽
(
あお
)
り易いのか、何といっても男という男がみんな特別惹きつけられるのだから、嫉妬されるのだろう。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
折角、人が心で何か純真に求めかけると、俗物共は寄って
蝟
(
たか
)
って祭の踊子のように、
傍
(
はた
)
から
鉦
(
かね
)
や太鼓で
囃
(
はや
)
し立てる、
団扇
(
うちわ
)
で
煽
(
あお
)
いで褒めそやす。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「おまえは自分でこの修道院の会合をもくろんで、自分で
煽
(
あお
)
り立てて賛成しておきながら、いまさら何をそんなにぷりぷりしているんだい?」
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
銚子
(
ちょうし
)
に残っていた酒を、湯呑みに注いで、
煽
(
あお
)
りつけて、ふうと、熱い息を吐いたお初は、やがて、これも茶屋を出て行った。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
しかし自分も貧乏が
大好
(
だいすき
)
だとも
云兼
(
いいかね
)
る。貧乏神の渋団扇で
煽
(
あお
)
がれて
戦
(
ふる
)
えながら、ああ涼しいと顎を撫でるほど納まりかえっている訳にも行かぬ。
貧富幸不幸
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
するとこんどはそのシャボン玉が、風に
煽
(
あお
)
られるように、少しずつ
騒
(
ざわ
)
めき立つと見る間に、やがてクルクルと廻りだした。
火葬国風景
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
大山颪
(
おおやまおろし
)
。木の葉も、枝も、顔に吹きつけられる程の物は、皆
活
(
い
)
きて青かった。板屋は吹きあげられそうに、
煽
(
あお
)
りきしんだ。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
三十尺の支柱に
支
(
ささ
)
えられる円形の塔にこもっていることなどをこと新らしく書きだして、大いに世人の好奇心を
煽
(
あお
)
った。
蜘蛛
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
さらさらといって粉雪の風に
煽
(
あお
)
られて、硝子窓に砕ける音がした。時計の刻む音は、冷かな空気に伝わって、死したる天地の胸に刻み込むようだ。
点
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
青白いスクリインは、バタバタと風に
煽
(
あお
)
られ、そのまえに乱雑に転がったデッキ・チェア、みんな、
虚
(
むな
)
しい風景でした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
それのみならず、今度は、その後退した火先は、西風に
煽
(
あお
)
られて
物凄
(
ものすご
)
い勢いをもって広小路へ押し出して来たのです。
幕末維新懐古談:13 浅草の大火のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「それでも洋服とは楽でがんしょうがの」と、初やが
焜炉
(
こんろ
)
を
煽
(
あお
)
ぎながらいう。羽織は黄八丈である。藤さんのだということは問わずとも別っている。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
そう言って、彼女は、持っていた団扇で二人を
煽
(
あお
)
いだ。次郎は、
臥
(
ね
)
ていては悪いような気がして、斜めに体を起した。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
砂埃
(
すなぼこり
)
が馬の
蹄
(
ひづめ
)
、車の
轍
(
わだち
)
に
煽
(
あお
)
られて
虚空
(
こくう
)
に舞い上がる。
蝿
(
はえ
)
の群が往来を横ぎって家から家、馬から馬へ飛んであるく。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
急の動作で、手近の
燭火
(
ともしび
)
が着衣の風に
煽
(
あお
)
られたのだ。その、白っぽい光線の沈む座敷……耳をすますと、
深沈
(
しんちん
)
たる夜の歩調のほか、何の物音もしない。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
貨物自動車が
停
(
と
)
まった。吾平爺はその
煽
(
あお
)
り風を浴びて、自分の重い荷車が押し倒されるような気がした。爺は事実、よろよろとふた足ばかりよろめいた。
或る嬰児殺しの動機
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
笑い声に
煽
(
あお
)
られるように廊下の端まで転がって来ると階段があった。しかし、彼にはもう油がのっていた。彼はまた
逆様
(
さかさま
)
になってその段々を降り出した。
赤い着物
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
降りてくる! それがひりひりするような息で私を
煽
(
あお
)
りつけるくらい身近に迫ってくるまでには、幾日か過ぎた、——幾日も幾日も過ぎたにちがいない。
落穴と振子
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
此の記事などは比較的おだやかな方なのですが、多くは煽情的な
書振
(
かきぶり
)
で当夜の模様や、道子と一郎の情事を記して、盛に読者の好奇心を
煽
(
あお
)
ったものでした。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
春廼舎からは盛んに文学を
煽
(
あお
)
り立てられ、
弟分
(
おととぶん
)
に等しい矢崎ですらが忽ち文名を
揚
(
あ
)
ぐるを見ては食指動くの感に堪えないで、周囲の仕官の希望を無視して
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
駕籠の
煽
(
あお
)
りをポカリと揚げて中から出た侍は、山岡頭巾を
真深
(
まぶか
)
に
冠
(
かぶ
)
り、どっしりした無紋の羽織を着、
仙台平
(
せんだいひら
)
の袴を
穿
(
は
)
き、四分一拵えの小長い大小を差し
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そして、スパセニアの姿が見えぬと思ったら、馬術の名手といわれる彼女は今馬を
煽
(
あお
)
って、動き出した
乗合
(
バス
)
の後からまっしぐらに、追って来るところです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
髪を洗ってから、ちりめん浴衣で、桟橋につけさせてある
屋根船
(
ふね
)
へ乗る。横になりながら髪を
煽
(
あお
)
がせるのだ。
旧聞日本橋:10 勝川花菊の一生
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
かやがばたばた七輪を
煽
(
あお
)
ぎながら、眠らすな、眠らすな、と叫ぶ。八重は
暗
(
やみ
)
の中を
跣足
(
はだし
)
で医者にかけだした。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
煽
漢検準1級
部首:⽕
14画
“煽”を含む語句
煽動
一煽
煽情的
煽立
煽飲
煽動家
煽情
吹煽
煽切
煽起
煽風器
煽動者
煽動的
煽風機
煽付
煽賞
大煽
皷煽
鼓舞煽動