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止
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とどま
ふりがな文庫
“
止
(
とどま
)” の例文
すでに、お館のなおこの辺に踏み
止
(
とどま
)
っておわすとは知らず、犀川を越えて、遠くうしろに退きとっている部隊もあるかと存ぜられます
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
儒教は政治と道徳とを説くに
止
(
とどま
)
って、人間死後のことには言及んでいない。儒教はそれ故宗教の域に到達していないものかも知れない。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
すなわち、「いき」の抽象的、形相的理解に
止
(
とどま
)
って、具体的、解釈的に「いき」の特異なる存在規定を把握するに至らないことである。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
夜陰に
轟
(
とどろ
)
く車ありて、一散に
飛
(
とば
)
し
来
(
きた
)
りけるが、
焼場
(
やけば
)
の
際
(
きは
)
に
止
(
とどま
)
りて、
翩
(
ひらり
)
と
下立
(
おりた
)
ちし人は、
直
(
ただ
)
ちに鰐淵が跡の前に尋ね行きて
歩
(
あゆみ
)
を
住
(
とど
)
めたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
つまり夢殿は太子の
瞑想
(
めいそう
)
と内観の道場であった。ひとたびは灰燼に帰したとはいえ、太子の御思いの永久に
止
(
とどま
)
るところであろう。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
▼ もっと見る
僕は何故か階段に踏み
止
(
とどま
)
った婦人の心を読むために、はじめて眼をあげて彼女の顔をみあげた。おお、これは又、なんという
麗人
(
あでびと
)
であろう。
階段
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
セエラは紳士の家に
止
(
とどま
)
らなければならぬ、ミンチン先生のところへは、カアマイクル氏が行って、話して来るというのでした。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
それが万葉を離れるともはやその力量と熱意が無くなってしまって、弱々しい歌のみを
辛
(
かろ
)
うじて作るに
止
(
とどま
)
る状態となった。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
そはこの話に
止
(
とどま
)
らず、
安珍
(
あんちん
)
清姫
(
きよひめ
)
の話を翻訳したる「
紀州
(
きしう
)
日高
(
ひだか
)
の女
山伏
(
やまぶし
)
を殺す事」も然り、
葛
(
くず
)
の
葉
(
は
)
の話を翻訳したる、「畜類人と
契
(
ちぎ
)
り
男子
(
をのこ
)
を生む事」
案頭の書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼らにして他の家を継がずんば、終身部屋
住
(
ずみ
)
に
止
(
とどま
)
り、碌々として世の
下草
(
したくさ
)
となり、その姓名を歴史に留むべくもあらず。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
しかし混入した空気の量が少いうちは、その燃焼は点火した場所の附近だけに
止
(
とどま
)
って、すぐ火が自分で消えてしまう。
寺田先生の追憶:――大学卒業前後の思い出――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「東京に踏み
止
(
とどま
)
って仕事をさがしますが、丁度Hさんが御自分のアパートに
空間
(
あきま
)
があるからと教えてくれましたので」
奇談クラブ〔戦後版〕:03 鍵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
だが色鍋島そのものに対する不満を語らずとも、その仕事の
拭
(
ぬぐ
)
い難い欠点は、単なる繰返しに過ぎないということである。それも摸写というに
止
(
とどま
)
ろう。
北九州の窯
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
日本アルプスでは誤った設備の為に、例せば一の上河内を失うと、一つの損失に
止
(
とどま
)
らないで、
延
(
ひ
)
いて全体の損失となってしまうことを考えて頂きたい。
日本アルプスの五仙境
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
縁側
(
えんがわ
)
に小さき
泥
(
どろ
)
の
足跡
(
あしあと
)
あまたありて、だんだんに座敷に入り、オクナイサマの
神棚
(
かみだな
)
のところに
止
(
とどま
)
りてありしかば、さてはと思いてその
扉
(
とびら
)
を開き見れば
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「いやいやそんな事もござるまいが、もし帰えるのがお
厭
(
いや
)
なら此処へお
止
(
とどま
)
りなさるがよい。
恰度
(
ちょうど
)
教員が不足でしてな。代用教員の欲しいところでござるよ」
国事犯の行方:―破獄の志士赤井景韶―
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
前人の詩、多くは一時の感慨を
洩
(
もら
)
し、単純なる悲哀の想を鼓吹するに
止
(
とどま
)
りしかど、この詩人に至り、始めて、悲哀は一種の系統を
樹
(
た
)
て、芸術の荘厳を帯ぶ。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
自己の感想に
止
(
とどま
)
つてゐるものがある。更に甚しいのは、それこそ却つて本当の批評だといふものすらある。
墓の上に墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
フォルテブラッチョ家との婚約を父が承諾した時でも、クララは一応辞退しただけで、跡は成行きにまかせていた。彼女の心はそんな事には
止
(
とどま
)
ってはいなかった。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
神様も恋しらずならあり難くなしと愚痴と
一所
(
いっしょ
)
にこぼるゝ涙流れて
止
(
とどま
)
らぬ月日をいつも/\憂いに
明
(
あか
)
し
恨
(
うらみ
)
に暮らして
我
(
わが
)
齢
(
とし
)
の寄るは知ねども、早い者お辰はちょろ/\
歩行
(
あるき
)
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
名誉と安全を侵害するものとに対する保障ならびに生活必需品の給与をうけるに
止
(
とどま
)
るが、夫はこれに反し、妻がその主な義務を果たすとき、彼の現在の幸福の総和を受け取る。
雨の玉川心中:01 太宰治との愛と死のノート
(新字新仮名)
/
山崎富栄
(著)
「いつまで中津先生、逃げ出さずに
止
(
とどま
)
っているんだい。捕虜ンなっちまうぞ。」と云った。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
魚容が「大学の道は至善に
止
(
とどま
)
るに
在
(
あ
)
り」などと口ずさむのを聞いて、ふんと鼻で笑い
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その彼等の死因についても、色々の噂がないではありませんでしたが、単に噂に
止
(
とどま
)
って、いずれも
掴
(
つか
)
み所のない、
随
(
したが
)
ってそれが
其筋
(
そのすじ
)
の注意を
惹
(
ひ
)
くという程のものではなかったのです。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかもこの他の世界への理解の努力は、常に、悟性的な概念的な学問的な範囲にのみ
止
(
とどま
)
っていて、決して、感情的に異った世界、性格的に違った人間の世界にまでは及ばないのである。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
単に人をして水を汲ましむるに
止
(
とどま
)
らず、汲ませた水をそこへ運んで来るという動作を含むとすれば、その点は多少違って来るが、そこまで連想を働かすのが果して正解であるかどうか
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
新八は踏み
止
(
とどま
)
り、向き直って、絶叫しながら面へ胴へと、打ちこんだ。六郎兵衛は軽く
躱
(
かわ
)
すだけであった。新八の木剣は、どう打ちこんでも、六郎兵衛の躯へ一尺以上近くはとどかなかった。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
この証明書と許可を得るのが困難であり、また時には費用がかかるので、非常に境遇のよいわけはないものは、十年という服務期が切れるまで、一般に結婚のことを考えるのを思い
止
(
とどま
)
ったのである。
人口論:02 第二篇 近代ヨオロッパ諸国における人口に対する妨げについて
(新字新仮名)
/
トマス・ロバート・マルサス
(著)
それはただ検事が真犯人也と確信したという事を表わすに
止
(
とどま
)
っているので、勿論検事が真犯人也と断ずる以上、相当の
根拠
(
こんきょ
)
はありましょうけれども、然し、公判の確定するまでは決してわれわれは
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
時正に秋も
半
(
なかば
)
、軍旅の好期である。飯山に出でた謙信は、善光寺にも
止
(
とどま
)
らず、大胆不敵にも敵の堅城たる海津城の後方をグルリと廻り、海津城の西方十八町にある妻女山(西条山ともかく)に向った。
川中島合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
此
(
この
)
苦痛の
叫
(
さけび
)
を聞いて
何人
(
なんびと
)
か心を動かさざらん。自分は
其
(
その
)
儘
(
まま
)
止
(
とどま
)
って
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ベルリンに
止
(
とどま
)
って勉強を続けると申します。
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
散り行く花も
止
(
とどま
)
りて
若菜集
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
けれどもじや、それが誨へて上げられんのは、僕が貴方であつたらかう為ると云ふ
考量
(
かんがへ
)
に
止
(
とどま
)
るので……いや、いや、そりや
言
(
いは
)
れん。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
と
間
(
ま
)
もなく
横山町辺
(
よこやまちょうへん
)
の提灯をつけた
辻駕籠
(
つじかご
)
一梃
(
いっちょう
)
、飛ぶがように
駈来
(
かけきた
)
って
門口
(
かどぐち
)
に
止
(
とどま
)
るや否や、中から
転出
(
まろびいづ
)
る
商人風
(
あきうどふう
)
の男
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
一八五八年には
聖
(
サン
)
クロティルド教会のオルガン奏者の地位を得、ほとんど終世この職に踏み
止
(
とどま
)
って、オルガニストとして
確固
(
かっこ
)
たる名声を保ち続けた。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
古い「
色鍋島
(
いろなべしま
)
」や柿右衛門風な品を上手に真似る人はありますが、単なる模写に
止
(
とどま
)
って、創作の強みを持ちません。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
そしてやっと踏み
止
(
とどま
)
ったかと思うと、これまた奇妙な声をたて、そしてその場にぱったりと倒れてしまった。
霊魂第十号の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「その方今回の働き振り前代未聞と覚ゆるぞ。この城中の勇士一同感心致さぬ者はない。ついてはこのまま城に
止
(
とどま
)
り浪人組の一人として末長く仕える気はないか?」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
然しこれは
只
(
ただ
)
奥秩父を旅行せんとする人に対しての希望であるに
止
(
とどま
)
っていることは言う迄もない。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
ひとり是のみに
止
(
とどま
)
らず、予は文人趣味を軽蔑するものなり。殊に
化政度
(
くわせいど
)
に
風行
(
ふうかう
)
せる文人趣味を軽蔑するものなり。文人趣味は道楽のみ。道楽に終始すと云はば則ち
已
(
や
)
まん。
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
将来もうすこし明らかに
判
(
わか
)
ってくるならば、歌と物語とが単なる初期の業体であったというに
止
(
とどま
)
らず、さらに遊女をしてかくのごとく、
弘
(
ひろ
)
く国内を漂泊せしむるに至った
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
金銅や木材に比べて一番弱そうな布地に、
却
(
かえ
)
って人間の執念は消え難く
止
(
とどま
)
るのであろうか。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
それは戦乱の世なら
萱
(
かや
)
や
薄
(
すすき
)
のように
芟
(
か
)
り倒されるばかり、平和の世なら自分から志願して
狂人
(
きちがい
)
になる位が
結局
(
おち
)
で、社会の難物たるに
止
(
とどま
)
るものだが、定基は
蓋
(
けだ
)
し丈の高い人だったろう。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私は最初、隅田川の流れというものに思い当った時から、死体が投込まれた現場に
止
(
とどま
)
っていたと考えるよりは、上流から漂って来たと解釈する方が、より自然だとは気づいていました。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「尾州様、しばらくお
止
(
とどま
)
りを」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「若君様には、とにもかくにも、裏門外の川岸にお
立退
(
たちの
)
きを願います。
此処
(
ここ
)
にはこの朝倉忠左衛門最後まで踏み
止
(
とどま
)
って、火の手と闘いますでございましょう」
奇談クラブ〔戦後版〕:12 乞食志願
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
わたくしが小学生のころには草花といえばまず
桜草
(
さくらそう
)
くらいに
止
(
とどま
)
って、殆どその他のものを知らなかった。
葛飾土産
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
模様というからには、写実の
生
(
なま
)
に
止
(
とどま
)
ってはいけない。模様はもっと煮つめたものでなければならない。模様は絵画と同一ではない。だから絵画を
真似
(
まね
)
てはいけない。
樺細工の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
若し前に掲げた高山に鎮座する式内の神社に祭の際に読まれた古い祝詞が存していたならば、一層判然たることが知られるであろうが、今は唯間接に推定し得るに
止
(
とどま
)
るのみである。
山の今昔
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
止
常用漢字
小2
部首:⽌
4画
“止”を含む語句
停止
笑止
中止
静止
小止
挙止
踏止
休止
取止
波止場
立止
行止
押止
廃止
制止
駒止
思止
默止
発止
底止
...