會釋ゑしやく)” の例文
新字:会釈
フェアファックス夫人は編物をたたみ私は紙挾かみはさみを取上げた。私たちは彼にお辭儀をすると、冷淡れいたん會釋ゑしやくを返され、そのまゝ引退ひきさがつた。
この天をしづむる愛は、常にかゝる會釋ゑしやくをもて己がもとよろこび迎ふ、これ蝋燭をその焔にふさはしからしめん爲なり。 五二—五四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
部屋の扉がすうつといた。花屋は欝金草の鉢をいくつもかかへて會釋ゑしやくしながら博學の君の讀書を妨げて眞に相濟まずといふ。
欝金草売 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
ばおすゝぎなさるがよいと言れてよろこ會釋ゑしやくしてやれし垣根の切戸きりどけ廣くも非ぬ庭へ進むに老人背後うしろ見返みかへりておみつ水を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
勝手口から上りながら、道臣は臺所の千代松をチラと見て、輕く會釋ゑしやくをすると、次のに入つて、柱の折れ釘に烏帽子えぼしを掛け、淨衣は衝立ついたての前に脱ぎ棄てた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
内藏允は役人の方に禮をした後、利章にも常のやうに會釋ゑしやくをして、さてかう云ふ陳述をした。右衞門佐には逆意は無い。なぜ此訴を利章が起したか不審である。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
うこそ」とつて、叮嚀ていねい會釋ゑしやくしたなり、さきつて宗助そうすけみちびいた。二人ふたり庫裡くり下駄げたいで、障子しやうじあけうち這入はいつた。其所そこにはおほきな圍爐裏ゐろりつてあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
(奧の襖をあけて、女中おきよ出で、すぐに庭に降りて枝折戸をあけ、醫者を見て會釋ゑしやくする。)
近松半二の死 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
とき斜違はすつかひにづかりととほつて、二人ふたりをんなまへ會釋ゑしやくもなくぬつくとつ。トむらさきが、ト外套ぐわいたうわきしたで、俯目ふしめつたはどくらしい。——くれなゐしぼむ、萌黄もえぎくち
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ライラックの枝花模樣の更紗さらさの服を着て、兩耳の上に几帳きちやう面な捲髮を垂れたフィービ孃は、『エイブラム師』に叮嚀に會釋ゑしやくをし、チエスタ孃に向つて、儀式張つて捲髮を振つた。
水車のある教会 (旧字旧仮名) / オー・ヘンリー(著)
その系圖が出て來て、恐れ乍らと龍之口たつのくちへ持つて出ると、一萬石の大名に取立てられないものでもない。輕く扱はれても何千石のお旗本、將軍樣から格別の御會釋ゑしやくがあらうといふわけ。
遠慮えんりよ會釋ゑしやくのといふことはてんで御無用、途方もなく面白く喋つた。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
「さうでございますか」内儀かみさんは巡査じゆんさ會釋ゑしやくしてさうして
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
會釋ゑしやくしあうて行きまする。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
我等うるはしき會釋ゑしやくの數をつくせしとき、彼問ひていふ。汝はるかに水を渡りて山の麓に來れるよりこの方いくばくの時をか經たる。 五五—五七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
御覽ごらん其所そこおけばお光は會釋ゑしやく行燈あんどう引寄ひきよせしきりに見るそばで茶を菓子くわしすゝめながら其の横顏よこがほをつく/″\とながめてこゝろおもふやう自分じぶんの方からふくるを待ちおや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
セント・ジョン氏は私を見ると、ちよいと會釋ゑしやくしたばかりで行つて了つたが、二人の婦人は足を止めた。
……唯吉たゞきち見越みこしたはしに、心持こゝろもち會釋ゑしやくげたうなじいろが、びんかしてしろこと!……うつくしさはそれのみらず、片袖かたそでまさぐつた團扇うちはが、あたかつきまねいたごとく、よわひかつてうつすりと
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一拜いつぱいよろしい」と會釋ゑしやくがあつた。宗助そうすけはあとをりやくしてなかはひつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
我見るにかなたこなたの魂みないそぎ、たがひに接吻くちづけすれども短き會釋ゑしやくをもて足れりとして止まらず 三一—三三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
見て長兵衞會釋ゑしやくなし私しは江戸表馬喰町の新藤市之丞と申者に候が久々にて後藤先生の御機嫌伺ごきげんうかゞひに參上仕りたり此段このだんよろし御取次下おんとりつぎくださるべしと云に門弟の者右の由を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
よそ/\しい會釋ゑしやくか冷淡な一瞥をくれたきりで、傲然がうぜんとして冷やかに私の傍を行き過ぎてしまふこともあつたし、また紳士らしい愛想あいそのよさで、會釋ゑしやくしたり微笑したりすることもあつた。
旅客りよきやくまゆあつするやままたやままゆおほはれたさまに、俯目ふしめたなさぐつたが、ふえとき角形かくがた革鞄かばん洋傘かうもり持添もちそへると、決然けつぜんとした態度たいどで、つか/\とりた。しなに、かへりみてかれ會釋ゑしやくした。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふさはしきうれしき會釋ゑしやく三度みたび四度よたびに及べる後、ソルデルしざりて汝は誰なりやといふ 一—三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
一寸ちよいとまへとほときわたし會釋ゑしやくして床几しやうぎかへつた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)