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擒
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とりこ
ふりがな文庫
“
擒
(
とりこ
)” の例文
而
(
しこう
)
して彼らを送りし船は、
已
(
すで
)
に去りて
浩蕩
(
こうとう
)
の濤に
擒
(
とりこ
)
にせられ水烟
渺漫
(
びょうまん
)
の
裡
(
うち
)
に在り、腰刀、
行李
(
こうり
)
またその中に在りて行く所を知らず。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
或る個人は歴史的(社会的)感覚を持つが故にこの虚偽形態を犯さず、他の個人は之を持たないが故にこの虚偽形態の
擒
(
とりこ
)
となる。
イデオロギーの論理学
(新字新仮名)
/
戸坂潤
(著)
するとその男は、『金さえ手に入れば貴様たちは帰してやるけれど、もし金が手に入らなければいつまでも
擒
(
とりこ
)
にしておくから、そう思え』
塵埃は語る
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
虫も殺さぬような
面
(
かお
)
をして、あれで駒井もなかなかの食わせ者だが、これを
擒
(
とりこ
)
にしたお角の腕も確かに
凄
(
すご
)
い。いやまた腕の話になって恐縮
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
『今昔物語』に蜂と
蜘蛛
(
くも
)
と戦う話があった。一たび蜘蛛の
擒
(
とりこ
)
になったのを人に助けられた蜂が、仲間を
催
(
もよお
)
して蜘蛛を
螫
(
さ
)
しに来る。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
▼ もっと見る
その文学士河野に
宛
(
あ
)
てたは。——英吉君……島山夫人が、才と色とをもって、君の為に早瀬を
擒
(
とりこ
)
にしようとしたのは事実である。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
嗚呼彼は遂に酒の
擒
(
とりこ
)
となれり。吾人は問
レ
吾底事恋
二
此間
一
、豊筑無
三
酒似
二
赤間
一
の詩を読む毎に未だ嘗て彼の為めに歎ぜずんばあらず。
頼襄を論ず
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
こともあろうに
擒
(
とりこ
)
になりおった、続く面々は総退却、右往左往、大将たおれて、代って勢をもり立てる勇も智も持ちあわせてはおらんのか
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
彼を綺羅な一室に
擒
(
とりこ
)
にしてから滅多に訪れて来ることもなく、また広い屋敷うちなので、
優婉
(
あでやか
)
な姿を庭先に見せることも極めて稀であった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この男はもと無頼漢であったが流れ流れて北京に来て居ったが、交友の中に嘗つて倭寇の為に
擒
(
とりこ
)
にされ、久しく日本に住んで居た者があった。
碧蹄館の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
紅い丹波
酸漿
(
ほおずき
)
を売る店の出る水天宮の縁日を想い出したり、
擒
(
とりこ
)
になった影画芝居の王子さまのことを考えたり、どうしても箸は遅くなります。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私の心は次第々々に其中に引き込まれて、遂に「
珊瑚樹
(
さんごじゅ
)
の
根付
(
ねつけ
)
」迄行って全くあなたの為に
擒
(
とりこ
)
にされて仕舞ったのです。
木下杢太郎『唐草表紙』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
他人を議する人は自己を神と同視するものにして傲慢ちょう
悪霊
(
あくれい
)
の
擒
(
とりこ
)
となりしものなり、己れ人に施されんとすることをまた人にもそのごとく
施
(
ほどこせ
)
よ
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
四年正月、燕の
先鋒
(
せんぽう
)
李遠、
徳州
(
とくしゅう
)
の
裨将
(
ひしょう
)
葛進
(
かっしん
)
を
滹沱河
(
こだか
)
に破り、
朱能
(
しゅのう
)
もまた平安の将
賈栄
(
かえい
)
等
(
ら
)
を
衡水
(
こうすい
)
に破りて
之
(
これ
)
を
擒
(
とりこ
)
にす。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
不世出の名人が一言一句に
擒
(
とりこ
)
となったお客たちは、なおもしばらくは立ちもやらずボーッと座ったままでいたが
円朝花火
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
換言すれば想世界より実世界の
擒
(
とりこ
)
となり、想世界の
不覊
(
ふき
)
を失ふて実世界の束縛となる、風流家の語を以て之を一言すれば婚姻は人を俗化し了する者なり。
厭世詩家と女性
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
翌年韓原の戦に負け掛かった時、去年馬を食い酒を
貰
(
もろ
)
うた者三百余人来援し大いに
克
(
か
)
ちて晋の恵公を
擒
(
とりこ
)
にした。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その、
何氣
(
なにげ
)
ない
無雜作
(
むざふさ
)
な點が、却つて人を
擒
(
とりこ
)
にし、誇らしい態度が却つて抵抗しがたく人を惹きつけるのだ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
武は
容赦
(
ようしや
)
なくグイと頭を
引
(
ひつ
)
こませる、鱒どのも飛んだ
粗相
(
そさう
)
をしたと気がついて、食ひついた
処
(
ところ
)
をはなす其途端にバシヤリと音して、鱒は舟の
中
(
なか
)
の
擒
(
とりこ
)
となり升た。
鼻で鱒を釣つた話(実事)
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
それともわざと
縦
(
はな
)
って置いて、
却
(
かえ
)
って確実に、
擒
(
とりこ
)
にしようとする手管かも知れない。若しそうなら、その手管がどうやら己の上に功を奏して来そうにも感ぜられる。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
末文には、例の
戲言
(
ざれごと
)
多く物して、まだミラノの少女に
擒
(
とりこ
)
にせられずや、
三鞭酒
(
シヤンパニエ
)
をな忘れそなど云へり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
すっかりアルコールの
擒
(
とりこ
)
となった彼の身体は、まだまだねむりをとらなければ足りないのであった。
○○獣
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼は、しばらくその黒ずんだ
膚
(
はだ
)
を見つめていたが、急に友人をふりかえって、この石の中に女神が
擒
(
とりこ
)
にされている、私はそれを救い出さなければならない、と言った。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
(窓に立ち寄る。)
何処
(
どこ
)
の
家
(
うち
)
でも今
燈火
(
あかり
)
を
点
(
つ
)
けている。そうすると狭い壁と壁との間に
迷
(
まよい
)
や涙で包まれた陰気な世界が出来て、人の心はこの
中
(
うち
)
に
擒
(
とりこ
)
にせられてしまうのだ。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
|事が多い、しかしそれ以上に事を決する力は時の情勢からくる感情であります。それゆえこれに対する外国は必ずしも賄賂をやってその大臣を
擒
(
とりこ
)
にしたからというて
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
それで、誤ってジャーナリストの
擒
(
とりこ
)
となった学者はそのつかまった日一日だけどうにかしてのがれさえすればそれでもう永久に逃げおおせることができるのは周知の事実である。
ジャーナリズム雑感
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
頡利
(
きつり
)
は盟に背いて
擒
(
とりこ
)
にせられ、
普賛
(
ふさん
)
は鵞を鑄って誓を入れ、
新羅
(
しらぎ
)
は繊錦の頌を奏し、
天竺
(
てんじく
)
は能言の鳥を致し、
沈斯
(
ちんし
)
は捕鼠の蛇を献じ、
払林
(
ふつりん
)
は曳馬の狗を進め、白鸚鵡は
訶陵
(
かりょう
)
より来り
岷山の隠士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
自己が外界の雄大なる事物に
擒
(
とりこ
)
にせられ、これに平服し没入するの状態である。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
この
大將
(
たいしやう
)
の
若樣
(
わかさま
)
難
(
なん
)
なく
敏
(
さとし
)
が
擒
(
とりこ
)
になりけり、
令孃
(
ひめ
)
との
中
(
なか
)
の
睦
(
むつ
)
ましきを
見
(
み
)
るより、
奇貨
(
きくわ
)
おくべしと
竹馬
(
たけうま
)
の
製造
(
せいざう
)
を
手
(
て
)
はじめに、
植木
(
うゑき
)
の
講譯
(
かうしやく
)
、いくさ
物語
(
ものがたり
)
、
田舍
(
ゐなか
)
の
爺
(
ぢい
)
婆
(
ばあ
)
は
如何
(
いか
)
にをかしき
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひて
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
夫婦して
莚
(
むしろ
)
を畑にひろげ、枝豆や
苺
(
いちご
)
や果樹に群がるカナブンを其上に
振
(
ふる
)
い落して、石油の
空鑵
(
あきかん
)
にぶちあけ、五時から八時過ぎまでかゝって、カナブンの約五升を
擒
(
とりこ
)
にし、熱湯を
浴
(
あび
)
せて殺した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
今日の敵は本能寺、園さへ
擒
(
とりこ
)
にしたならばと。良人の方には眼も掛けず、落ち着き煙草二三服、何をかきつと思案の末。
燈火
(
あかり
)
を点けてと、お園を立たせ。つと我が部屋へ駈入りて、取出したる懐刀。
したゆく水
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
多年剣を学んで霊場に在り 怪力真に成る鼎
扛
(
ひし
)
ぐべし
鳴鏑
(
めいてき
)
雲を穿つて咆虎
斃
(
たお
)
る 快刀浪を
截
(
き
)
つて毒竜降る
出山
(
しゆつざん
)
赤手強敵を
擒
(
とりこ
)
にし 擁節の青年大邦に使ひす
八顆
(
はちか
)
の明珠皆楚宝 就中
一顆
(
いつか
)
最も無双
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
この点がすっかり子供たちの心を
擒
(
とりこ
)
にし、征服したのであった。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
餌や
囮
(
おとり
)
やまやかしで人の霊を
擒
(
とりこ
)
にし
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
すぐに地方の県官などを
擒
(
とりこ
)
にする。
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
今まで、自由で、独自で自然であった自分が手もなく
擒
(
とりこ
)
にされるのだ。添えものにされ、食われ、没入されてしまうのだ。
娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
質ぐさを抱えて、何度か、
此処
(
ここ
)
へ通ううちに、
主
(
あるじ
)
の大蔵の眼は、いつのまにか、朱実を
擒
(
とりこ
)
にして、朱実の今の境遇や心もちまで、聞いてしまった。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ここにおいて兵を出して諸国を
併呑
(
へいどん
)
せんとし、欧羅巴洲大いに乱る。文化十二年諸国相
謀
(
はか
)
りてポナパルテを
擒
(
とりこ
)
にして
流竄
(
りゅうざん
)
し、連年の兵乱を治平せり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
身体
(
からだ
)
だけが睡魔の
擒
(
とりこ
)
となって、いくらもがいても、手足を動かす事ができなかったり、後で考えてさえ、夢だか正気だか訳の分らない場合が多かった。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いずれ一度は
擒
(
とりこ
)
となって、供養にとて放された、が狭い池で、昔
売買
(
うりかい
)
をされたという
黒奴
(
くろんぼ
)
の
男女
(
なんにょ
)
を思出させる。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
甲府の御城内でお歴々のお方を
擒
(
とりこ
)
にして、今は玉の
輿
(
こし
)
という身分でたいした出世なのに、わたしたちなんぞは、いつまでもこんな
稼業
(
かぎょう
)
をしていなけりゃならない
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
苔むした大理石の中に「
擒
(
とりこ
)
にされていた」女神の像を、
鑿
(
のみ
)
をふるって「救い出し」た芸術家の心は、清冽な水や白砂と共に彼の気持を次第に落ちつけて行くらしかった。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
英吉利
(
イギリス
)
の老婦人ありて、年若き男女と共に、
拿破里
(
ナポリ
)
へ往かんと、此山の麓を過ぎぬ。我等は此一群を馬車より
拉
(
ひ
)
き
卸
(
おろ
)
したり。我等は三人を
擒
(
とりこ
)
にして、財物を
掠
(
かす
)
め取りつ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
全く、その通りで、恐しい運命の手は、先ず、無垢な友江さんを
擒
(
とりこ
)
に致しました。即ち、友江さんは、私が信之に予言したごとく、彼の怖しい病気に感染したのであります。
暴風雨の夜
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
燕王謀って曰く、吾が兵は甚だ
寡
(
すくな
)
く、彼の軍は甚だ多し、
奈何
(
いかに
)
せんと。朱能進んで曰く、
先
(
ま
)
ず張昺謝貴を除かば、
余
(
よ
)
は
能
(
よ
)
く為す無き也と。王曰く、よし、
昺貴
(
へいき
)
を
擒
(
とりこ
)
にせんと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
道也は実に一妖物なり、奇物なり、露伴にあらずんば誰か
能
(
よ
)
く
斯般
(
しはん
)
の妖物奇物を
擒
(
とりこ
)
にせん。
「伽羅枕」及び「新葉末集」
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
「冗談じゃないですよ、春部さん。私はあなたの御依頼によって田川氏の行方を突き停めようとしてこそあれ、あの今様弁天さまの魅力に
擒
(
とりこ
)
になっているわけじゃありませんよ」
千早館の迷路
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
また山川の神をことごとく日本に送り倭賊を
擒
(
とりこ
)
にすべしなど宣言したので、愚民ども
城隍
(
じょうこう
)
祠廟
(
しびょう
)
の神を
撤
(
す
)
て去り、伊金を仏ごとく敬い福利を祈る、無頼の徒その弟子と称し
相
(
あい
)
誑
(
たぶら
)
かし
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
昨夏四十有余枚書きだした『圓朝』はあまりにも伝記の
擒
(
とりこ
)
となってしまっていたため、こころに満ち足らわず、ハタと挫折したまま八月九月十月十一月と
徒
(
いたず
)
らな月日が立っていってしまった。
小説 円朝 あとがき
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
世間を
擒
(
とりこ
)
にすることは出来ない。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
擒
漢検1級
部首:⼿
15画
“擒”を含む語句
生擒
一擒一縦
擒人
擒縦
手擒
一擒
七擒七縦
捕擒
擒狐山
擒致者
擒虜
軟擒