或人あるひと)” の例文
或人あるひとは今の別府は南の方に僻在へきざいしている、亀川の東にある実相寺山を中心として、大きな泉都せんとを建設せなければならぬといっている。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
或人あるひとは、大女のくつを女中がみがいてゐるのを見たと言ひます。その靴は、ちやうど乾草ほしくさをつんだ大きな荷車ほどあつたといふ話です。
虹猫の大女退治 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
或人あるひととふていはく、雪のかたち六出むつかどなるはまえべんありてつまびらか也。雪頽なだれは雪のかたまりならん、くだけたるかたち雪の六出むつかどなる本形ほんけいをうしなひて方形かどだつはいかん。
みちにて弟子たちに問ひて言ひたまふ「人々はわれを誰と言ふか」答へて言ふ「バプテスマのヨハネ、或人あるひとはエリヤ、或人は預言者の一人」また問ひたま
(新字新仮名) / 太宰治(著)
さうしてほどなく或人あるひと世話せわ郡立學校ぐんりつがくかう教師けうしとなつたが、れも暫時ざんじ同僚どうれうとは折合をりあはず、生徒せいととは親眤なじまず、こゝをもまたしてしまふ。其中そのうち母親はゝおやぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わがはいのこの所見しよけんたいして、或人あるひとはこれを學究がくきう過敏くわびんなる迂論うろんであるとへうし、齒牙しがにかくるにらぬ些細ささい問題もんだいだといつたが、自分じぶんにはさうかんがへられぬ。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
扇子から懐剣が出るれも大抵たいてい同時代と思う。幕府の飜訳局ほんやくきょくに雇れて其処そこに出て居た時、或人あるひとが私に話すに
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかしわたくしはこの語によってたまたま枕山は背のすらりとした人で、顔は長く額の高く出ばっているのが目に立つほどであったという或人あるひとの談話を想い起した。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これより三十銭の安西洋料理食う時もケークだけはポッケットに入れて土産みやげとなす様になる者ぞ、ゆめ/\美妙なる天の配剤に不足うべからずと或人あるひと仰せられしはもっともなりけり。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
或人あるひと義母おつかさん脊後うしろからその脊中せなかをトンとたゝいて『義母おつかさん!』とさけんだら『オヽ』とおどろいて四邊あたりをきよろ/\見廻みまはしてはじめて自分じぶん汽車きしやなかること、旅行りよかうしつゝあることにくだらう。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
今度の欧洲おうしう戦争が爆発した当時、自分は或人あるひとから突然質問を掛けられた。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
継て跡よりおい出るもの片葉の蘆多し故に水辺ならざる所にもあり難波なにはかぎら八幡淀伏見宇治やはたよどふしみうぢ等にも片葉蘆多し或人あるひといはく難波は常に西風烈しきにより蘆の葉東へ吹靡きて片葉なる物多しといふは辟案なり
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
或人あるひと申しけるは、容顔ようがん美麗びれいなる白拍子しらびょうしを、百人めして、——
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
他国にてもする事なり。或人あるひとはなしに、此事百余年前までは江戸にもありしが、火災くわさいをはゞかるためにきんくだりてやみたりとぞ。
そうしてほどなく或人あるひと世話せわ郡立学校ぐんりつがっこう教師きょうしとなったが、それも暫時ざんじ同僚どうりょうとは折合おりあわず、生徒せいととは親眤なじまず、ここをもまたしてしまう。そのうち母親ははおやぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
或人あるひとまたいつた、なんぢ所論しよろんは一理窟りくつあるが實際的じつさいてきでない。なんぢ歐文おうぶん年紀ねんきしるすとき西暦せいれきもちゐて神武紀元しんむきげんもちゐないのは何故なにゆえか、いはゆる自家撞着じかどうちやくではないかと。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
わたしもあんまりだと思って、持っているものは洗いざらい、お金も百円都合して或人あるひとを仲に入れてきっぱり話をつけてもらったのよ。だからこれからは一人でかせぐわ。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ワシントンの子孫如何と問う所で私が不図ふと胸に浮かんで或人あるひときいて見たのはほかでない、今華盛頓ワシントンの子孫は如何どうなって居るかと尋ねた所が、その人のうに、華盛頓の子孫には女があるはず
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
他国にてもする事なり。或人あるひとはなしに、此事百余年前までは江戸にもありしが、火災くわさいをはゞかるためにきんくだりてやみたりとぞ。
或人あるひとは、日本人にほんじんみづか姓名せいめい轉倒てんたふしてこと國際的こくさいてき有意義ゆういぎであり、歐米人おうべいじんのために便宜べんぎおほきのみならず、吾人ごじん日本人にほんじんつても都合つがふがよいといふが、自分じぶんはさうおもはぬ。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
私の父は或人あるひとは知つて居ませう、今では休職して了ひましたが、元は大審院の判事でした。維新以前の教育を受けた漢学者、漢詩人、其れに京都風の風流を学んだ茶人です。
一月一日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
わたくし時折ときをり種々いろ/\こと妄想まうざうしますが、往々わう/\幻想まぼろしるのです、或人あるひとたり、またひとこゑいたり、音樂おんがくきこえたり、またはやしや、海岸かいがん散歩さんぽしてゐるやうにおもはれるときります。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わたくし時折ときおり種々いろいろなことを妄想もうぞうしますが、往々おうおう幻想まぼろしるのです、或人あるひとたり、またひとこえいたり、音楽おんがくきこえたり、またはやしや、海岸かいがん散歩さんぽしているようにおもわれるときもあります。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一年ひとゝせ江戸に旅宿りよしゆくせしころ或人あるひといふやう、ちゞみに用ふるうむにはその処の婦人ふじんさそひあはせて一家にあつまり、その家にて用ふるうみたて此人々たがひにその家をめぐりてうむきゝしがいかにといひき。
或人あるひとに答ふるぶん
矢立のちび筆 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)