影法師かげぼふし)” の例文
うかとおもふと、ひざのあたりを、のそ/\と山猫やまねこつてとほる。階子はしごしたからあがつてるらしく、海豚いるかをどるやうな影法師かげぼふしきつねで。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
月のくまの中から、長い/\影法師かげぼふしいて現れたのは、錢形平次の子分、ガラツ八の八五郎の忠實な姿でした。
影法師かげぼふし
偏奇館吟草 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
すると……婦人をんな主人あるじふのは……二階座敷にかいざしきのないなかを、なまめかしいひと周圍まはりを、ふら/\とまはりめぐつた影法師かげぼふしとはちがふらしい。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
眼を擧げると、おぼろの中に、必死と揉み合ふのは、内と外から合圖をして逢つた二つの影法師かげぼふしではありませんか。
うへへ五ほんめの、ひとのこつた瓦斯燈がすとうところに、あやしいものの姿すがたえる……それは、すべ人間にんげんかげる、かげつかむ、影法師かげぼふしくらものぢや。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『は、は、は、』とかたちさだめず、むや/\の海鼠なまこのやうな影法師かげぼふしが、案山子かゝしあしもとをいつツむら/\とまとふてすゝむ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
およそ、つきとともに、影法師かげぼふしのあるところくだんもの附絡つきまとはずとことなうて、ひ、め、蹂躙ふみにじる。が、いづれひと生命いのちおよぶにはがあらう。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ちやう小脇こわきひきそばめてげつゝ、高々たか/″\仰向あふむいた、さみしいおほきあたまばかり、屋根やねのぞ來日くるひヶ峰みね一處ひとところくろいて、影法師かげぼふしまへおとして、たからかにふえらした。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
影法師かげぼふしが、鐵燈籠かなどうろうかすかあかりで、別嬪べつぴんさんの、しどけない姿すがたうへへ、眞黒まつくろつて、おしかぶさつてえました。そんなところだれ他人たにんせるものでございます。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まくらいたのは黄昏たそがれころこれ逢魔あふまとき雀色時すゞめいろどきなどといふ一日いちにちうち人間にんげん影法師かげぼふし一番いちばんぼんやりとするときで、五時ごじから六時ろくじあひだおこつたこと、わたしが十七のあきのはじめ。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はなして退すさると、べつ塀際へいぎはに、犇々ひし/\材木ざいもくすぢつてならなかに、朧々おぼろ/\とものこそあれ、學士がくし自分じぶんかげだらうとおもつたが、つきし、あしつちくぎづけになつてるのにもかゝはらず、影法師かげぼふし
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
て、て、死骸しがいたではい。ぢやが、しやうのものでもなかつた……はゞかげぢやな。こゑいろ影法師かげぼふしぢや……のものから、御身おみふてはなしてくれい、とわし托言ことづけをされたよ。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
影法師かげぼふしつゆれて——とき夏帽子なつばうし單衣ひとへそでも、うつとりとした姿なりで、俯向うつむいて、土手どてくさのすら/\と、おとゆられるやうな風情ふぜいながめながら、片側かたかはやま沿空屋あきやまへさみしく歩行あるいた。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)