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嵌
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はま
ふりがな文庫
“
嵌
(
はま
)” の例文
旗本の次男の道楽者という柄には
嵌
(
はま
)
らなかったが、同優はそのころ売り出し盛りであったので、さのみの不評をも蒙らずに終わった。
寄席と芝居と
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その
錯覚
(
さっかく
)
は、次の驚きで、瞬間にケシ飛ばされた。鉄棒の
嵌
(
はま
)
っている石倉の
採光窓
(
さいこうまど
)
の外へ、白い女の顔が、落ッこちたように隠れた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
このもっさりという言葉はあて
嵌
(
はま
)
らない、田舎で本当にさも田舎らしい女や男や料理に出会った時、それをもっさりとはいい得ない。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
神戸の
富豪
(
かねもち
)
もちやんとさういふ型に
嵌
(
はま
)
つてゐたから、宴会半ばになると、そろ/\
画絹
(
ゑきぬ
)
を引張り出して三人の
画家
(
ゑかき
)
の前に拡げ出した。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
陳は
小銭
(
こぜに
)
を探りながら、女の指へ
顋
(
あご
)
を向けた。そこにはすでに二年前から、延べの
金
(
きん
)
の
両端
(
りょうはし
)
を
抱
(
だ
)
かせた、約婚の指環が
嵌
(
はま
)
っている。
影
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
例えばチベットという国の名は Tibet でありますが、「ティ」(ti)という音は日本語にないので、どの音にも
旨
(
うま
)
く
嵌
(
はま
)
らない。
古代国語の音韻に就いて
(新字新仮名)
/
橋本進吉
(著)
鶯色
(
うぐいすいろ
)
のコートに、お定りの
狐
(
きつね
)
の
襟巻
(
えりまき
)
をして、
真赤
(
まっか
)
なハンドバッグをクリーム色の手袋の
嵌
(
はま
)
った優雅な両手でジッと押さえていた。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
『万葉集
古義
(
こぎ
)
』の「品物図」にある様にこれを麦門冬とするのは不都合千万である。またヤブランとするも決して当て
嵌
(
はま
)
らない。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
クレエルの耳輪は、自然に岩に
嵌
(
はま
)
つた金粒よりも余計に光りがあるのではない。それとは反対に鉄は最初実に
見窶
(
みすぼ
)
らしい様子をしてゐる。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
ガラス戸の
嵌
(
はま
)
った二階にも階下にも明りが
煌々
(
こうこう
)
と
燈
(
とも
)
っていた。其処の前まで来ると、探偵は「あはははは」と大声で笑い出した。
途上
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
浅田は暗室に這入ると、直ぐに現像を初めようとはせず、光線を導き入れる赤色硝子の
嵌
(
はま
)
った小窓から、そっと部屋の様子を覗っていた。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
銀の輪の
嵌
(
はま
)
つてゐる太いステツキを持つた会社の支配人らしい男、痩せて鶴のやうな顔をしてゐる中老の教師らしい紳士、さうかと思ふと
くづれた土手
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
それはモノトナスな、けれどもなつかしいリズムをもつた
畳句
(
でふく
)
のある童謡で、また
謡
(
うた
)
の心持にしつくりと
嵌
(
はま
)
つた遊戯であつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
慧鶴は折角、寝ても覚めても思索一途に
嵌
(
はま
)
り込めるようになった心境の鍛錬を俗人との
世間咄
(
せけんばな
)
しに乱されてしまうのは惜しくて堪らなかった。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
往来に面して鉄の
格子
(
こうし
)
の
嵌
(
はま
)
った窓がある。日の光は小障子を通して窓の下の机や本箱の置いてあるところへ射し入っている。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
檐
(
のき
)
に
風鐸
(
ふうたく
)
をつるし、
丹塗
(
にぬり
)
の唐格子の
嵌
(
はま
)
った丸窓があり、舗石の道が丸く
刳
(
く
)
ッた石門の中へずッと続いている。源内先生は
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
戸は非常な勢いで閉ざされて戸口の中に
嵌
(
はま
)
り込みながら、しがみついていた一兵士の五本の指を切り取り、そのままそれを戸の縁に
膠着
(
こうちゃく
)
さした。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
誰でも口にする「コン畜生」とか「この
獣
(
けだもの
)
め」とかいう罵倒詞に当て
嵌
(
はま
)
る心理のあらわれは皆、これに他ならぬのである。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
頭上すれすれに、格子の
嵌
(
はま
)
った武者窓があり、その侍の刀は三尺ほどの間隔で、幹太郎の胸さきに突きつけられていた。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お庄は落ち着かないような心持で、勝手口の
側
(
わき
)
の鉄の棒の
嵌
(
はま
)
った出窓に
凭
(
もた
)
れて路次のうちを眺めていた。するうちに外はだんだん暗くなって来た。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そうして、彼女の右手の指に
嵌
(
はま
)
っている五つの
鐶
(
たまき
)
は、亡き母の片身として、彼女の
愛翫
(
あいがん
)
し続けて来た黄金の鐶であった。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
渡る場所はかねて聞いて居りましたから砂泥で非常に深く足が
嵌
(
はま
)
り込んで渡るに困難でありましたが、幸いに無事に向うに渡ることが出来ました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
雪はみるみるうちに深さを増して、ときどき股まですっぽり
嵌
(
はま
)
ってしまい、脱け出るのにひどく体力を消耗した。
春の遠山入り:(易老岳から悪沢岳への縦走)
(新字新仮名)
/
松濤明
(著)
格に
嵌
(
はま
)
った字を書き得るということは、筆者がなかなかに至った人であるということを物語るものであろう。
現代能書批評
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
悪魔の尿溜
(
ムラムブウェジ
)
がこの条件にぴったりと
嵌
(
はま
)
っているわけだが、これも作者の創作と思われては困るから、歴然としたパラッフィン・ヤング卿の赤道アフリカ紀行
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
しかしそれはやや型に
嵌
(
はま
)
った見解で、哀れを強いる
嫌
(
きらい
)
がある。この句の場合はそう立入った気持でない、ああまた迷子があるな、という非人情的態度である。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
此の塔が英国で時計台の元祖だと云う事で、塔の
半腹
(
なかほど
)
、地から八十尺も上の辺に奇妙な大時計が
嵌
(
はま
)
って居て、元は此の時計が村中の人へ時間を知らせたものだ。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
私の恋人は
破砕器
(
クラッシャー
)
へ石を入れることを仕事にしていました。そして十月の七日の朝、大きな石を入れる時に、その石と一緒に、クラッシャーの中へ
嵌
(
はま
)
りました。
セメント樽の中の手紙
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
権太の悪棍となりしは隠し女に
嵌
(
はま
)
り、親には勘当せられ、賭事に掛りしためなれば、この道行は
尤
(
もっとも
)
なれど、善心に復りしを
維盛
(
これもり
)
の大事を聞きたるためとしながら
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
「するのならあげよう」由子が平常にしめているうちに、真中に
嵌
(
はま
)
っていた練物の珠みたいなものが落っこちてしまった。珠みたいなものは薄紅色をしていた。……
毛の指環
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
以上の比較は無論ただ津田君の画のある小さい部分について
当
(
あ
)
て
嵌
(
はま
)
るものであって、全体について云えば津田君の画は
固
(
もと
)
より津田君の画である事は申すまでもない。
津田青楓君の画と南画の芸術的価値
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
鼻の
前
(
さき
)
を、その
燈
(
ひ
)
が、暗がりにスーッと
上
(
あが
)
ると、ハッ
嚔
(
くさめ
)
、
酔漢
(
よっぱらい
)
は、細い
箍
(
たが
)
の
嵌
(
はま
)
った、どんより黄色な魂を、口から抜出されたように、ぽかんと
仰向
(
あおむ
)
けに目を明けた。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ここに
又
(
また
)
一つの型に
嵌
(
はま
)
った古来の風景観なるものがあって、山と水とは其最大なる要素であり、山水の二字は風景の代名詞として用いられた程であったにも
拘
(
かか
)
わらず
山の今昔
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
出来ることなら、このまゝこゝの家のものにして戴いて、いつまでもおかみさんを頼りにして暮して行つたらと思つたりするけれど、自分には何とて
嵌
(
はま
)
つた用事もない。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
いずこの
花柳界
(
かりゅうかい
)
やカフェーにも
必
(
かならず
)
一人や二人女たちの
噂
(
うわさ
)
に上る
好色
(
こうしょく
)
の
老爺
(
ろうや
)
があるが、しかしこの羅紗屋の主人ほど一見して
能
(
よ
)
くその典型に
嵌
(
はま
)
ったお客も少ないであろう。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
必ず甲か乙かのどっちかでなくては承知できないのです。しかもその甲なら甲の形なり程度なり
色合
(
いろあい
)
なりが、ぴたりと兄さんの思う坪に
嵌
(
はま
)
らなければ
肯
(
うけ
)
がわないのです。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
其の惑亂した心が繪に映るから何うしたツて思ふ
壺
(
つぼ
)
に
嵌
(
はま
)
ツて來ない。加之單に此の藝術上の煩悶ばかりではない。周三には、
他
(
た
)
にも
種々
(
いろ/\
)
の煩悶があつて、彼を惱ましている。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
スッポリと
洋杯
(
コップ
)
全体が
嵌
(
はま
)
るような
把手
(
とって
)
のついた、彫りのある銀金具の台がついているのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
判で押したような型に
嵌
(
はま
)
った綺麗な文字で、いろんな掲示が事務室の壁に張りつけてある。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
彼が小走りにその曲り角へ来た時、彼女は
恰度
(
ちやうど
)
三四間向うの左手の格子戸の
嵌
(
はま
)
つた家へ
這入
(
はい
)
るところだつた、這入りながら彼女はふいと背後を振り返つた。道助は少し
狼狽
(
うろた
)
へた。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
右手寄りに
母屋
(
おもや
)
(土間への入口と障子の
嵌
(
はま
)
った縁側付きの座敷)。草葺のがッしりとした建築、中央から左手へかけ瓦焼場、
竈
(
かまど
)
が幾つかある。その奥は低き垣、外は
立木
(
たちき
)
のある往来。
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
ト、
漸
(
ようや
)
くに雪のしっかり
嵌
(
はま
)
り込んだのが脱けた途端に、音も無く門は片開きに開いた。開くにつれて中の雪がほの白く眼に映った。男はさすがにギョッとしない訳にはゆかなかった。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
箱から出せばもぐりますが、
容器
(
いれもの
)
の千兩箱二つ——金具の
嵌
(
はま
)
つた恐ろしく頑丈なのを
銭形平次捕物控:162 娘と二千両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
その豆腐屋の一軒置いて隣が仙太郎の宅で、
好
(
よ
)
い
家
(
うち
)
ではございませんが、表には荒い格子が
嵌
(
はま
)
って、台所には腰障子が嵌めてありまして、丸に仙太というのが
角字
(
かくじ
)
でついて居ります。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ソッと障子の
嵌
(
はま
)
っている廊下の陰へしゃがんで、うつむいて、息を殺していた。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
ルパンは再び客間に帰って
扉口
(
とぐち
)
を調べにかかったが一目見て愕然として戦慄した。一目瞭然、
扉
(
ドア
)
の羽目板は六枚の小板を合せたものであるが、その
一番左手
(
ゆんで
)
の板が変な具合に
嵌
(
はま
)
っておる。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
その他 Quei と発音する
文字
(
もんじ
)
は皆
変槓
(
へんてこ
)
な意味が含まれいっそう
嵌
(
はま
)
りが悪い。以前わたしは趙太爺の
倅
(
せがれ
)
の
茂才
(
もさい
)
先生に訊いてみたが、あれほど物に詳しい人でも遂に返答が出来なかった。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
表の方の窓は取りつけの格子が
嵌
(
はま
)
っていて少しも動かした様子はないのだし、裏の方の窓だって、この暑さでは、どこの家も二階は明けっぱなしで、中には物干で涼んでいる人もある位だから
D坂の殺人事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それから十二時打つてしばらく
経
(
た
)
つてから裏口の戸が静かに開いた。それが客と彼女だつた。二人は二階へ上つて行つた。
益々
(
ます/\
)
何もかもが丸田の最初の邪想に当て
嵌
(
はま
)
つてしまふやうな気がした。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
ビルマは有名な仏教国で仏像が至る所にあるのだが、その至る所にある仏像のひどさ、——児戯に類するという言葉があるがその形容が如何にもぴったりと当て
嵌
(
はま
)
ると思われるその彫刻のひどさ。
仏像とパゴダ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
嵌
漢検1級
部首:⼭
12画
“嵌”を含む語句
当嵌
嵌込
象嵌
宛嵌
切嵌
金象嵌
嵌木
嵌石
銀象嵌
嵌入
嵌硝子
嵌役
嵌木細工
嵌入法
三島象嵌
金象嵌角鍔
剪嵌細工
金嵌
赤嵌樓
赤嵌楼
...