さぶ)” の例文
身輕手輕とそればかりをせんにしたる旅出立たびでたちなれば二方荒神の中にすくまりてまだ雨を持つ雲の中にのぼる太華山人其のさぶさを察し袷羽織あはせばおり
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
茶山は襦袢が薄くてさぶさに耐へぬと云つて、益に繕ふことを頼んだ。又部屋の庖厨の不行届を話したので、蘭軒夫妻は下物げぶつ飯菜の幾種かをおくつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ころ享保きやうほ丙申ひのえさるしも月十六日の事なりし此日はよひより大雪おほゆきふりて殊の外にさぶき日なりし修驗者しゆげんじや感應院には或人よりさけ二升をもらひしに感應院はもとより酒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うそさぶしとひしも二日ふつか三日みつか朝來あさよりもよほす薄墨色うすずみいろ空模樣そらもやう頭痛づつうもちの天氣豫報てんきよはう相違さうゐなく西北にしきたかぜゆふぐれかけて鵞毛がもう柳絮りうじよかはやちら/\とでぬ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なにしろじゃね、本職の前で顔色が悪うて、震えておらるるのは事実じゃね、それはしかしさぶいでも構わんです。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つぶりて折節橋の上で聞くさわぎ唄も易水えきすいさぶしと通りぬけるに冬吉は口惜くやしがりしがかの歌沢に申さらくせみほたるはかりにかけて鳴いて別りょか焦れて退きょかああわれこれを
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
いずれも日暮方であるのと、夜になると風がさぶいのに怖れて、行先を急いでいる。その他、せわしそうに道を歩いている男や女の姿を見た。けれど自分の母の姿は見えなかった。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おゝ、ロミオ、足下おぬし戀人おてきが、な、それ、開放あけっぱなしのなにとやらで、そして足下おぬし彼女あれ細長林檎ほそながりんごであつたなら! ロミオ、さらば。野天のてんとこではさぶうてられぬ、下司床げすどこよう。さ、かうか?
さぶねぐら起臥おきふして
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
もよひてさぶ馬士まごの道々語りて云ふ此宿も今は旅人りよじんを當にもなさず先づ養蠶一方なり田を作るも割に合はぬゆゑ皆な斯樣かやうに潰して畑となし豆を作るか桑を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
それでもおまへさぶからうではないかかぜくといけないとければ、いてもいやね、かまはずにいておれとしたいてるに、おまへうかおしか
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さぶい! 化物に逢ったのが、性分になって、そして今は寒い。いろいろに変化しますな。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのなくやと試みたれど、さらに声の聞えねば、にはかに露の身にさぶく、鳴くべき勢ひのなくなりしかとあはれみ合ひし、そのとし暮れて兄はむなしき数にりつ。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
木曾のナア木曾の御嶽山おんたけさんは夏でもさぶあはせやりたや袷やりたや足袋たび添へて
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
隙間すきまもるかぜおともなくせまりくるさぶさもすさまじ、かたすゑおもひにわすれて夢路ゆめぢをたどるやうなりしが、なにものぞほとけにその空虚うつろなるむねにひゞきたるとおぼしく
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
みぎひだりひかけては大溝おほどぶなか蹴落けおとして一人ひとりから/\と高笑たかわらひ、ものなくて天上てんじやうのおつきさま皓々こう/\てらたまふをさぶいといふことらぬなればたゞこゝちよくさはやかにて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ころ/\と轉げると右に左に追ひかけては大溝おほどぶの中へ蹴落して一人から/\と高笑ひ、聞く者なくて天上のお月さまさも皓々かう/\と照し給ふをさぶいと言ふ事知らぬ身なれば只こゝちよくさわやかにて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
生憎あいにく夜風よかぜさぶく、ゆめのやうなるかんがまたもやふつと吹破ふきやぶられて、ええわたしそのやうな心弱こゝろよわことかれてならうか、最初さいしよあのうち嫁入よめいりするときから、東二郎とうじらうどのを良人をつとさだめてつたのではいものを
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
アヽと溜息ためいきかみしめるさぶさにふるひて打仰うちあふおもて
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
にしむさぶさはふりかゝりてののちならでれぬことなり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)