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ふりがな文庫
“
夜更
(
よふ
)” の例文
夜更
(
よふ
)
けに歌をうたって歩く人たちの声は、たとえ上手ではないとしても、冬の真夜中に湧きおこって、無上の調和をかもしだすのだ。
クリスマス
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
それから三十分後だ、樫田刑事が、警官隊をつれて、
夜更
(
よふ
)
けの銀座の、泰昌軒へ駈けつけた時、中ではすばらしい大格闘最中だった。
謎の頸飾事件
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
夜更
(
よふ
)
け過ぎの飮食に胃の不健全が手傳つて、何か知ら覺めた
後
(
のち
)
には思ひ出せない夢を、戀人の
手枕
(
たまくら
)
に見て驚くのもこんな場合が多い。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
そこで
夜更
(
よふ
)
けにはかまわず、またさっきのしおり
道
(
みち
)
をたどって、あえぎあえぎ、おかあさんを
捨
(
す
)
てて
来
(
き
)
た
山奥
(
やまおく
)
まで
上
(
あ
)
がって行きました。
姨捨山
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
お
定
(
さだま
)
りの
女買
(
おんながい
)
に
費込
(
つかいこ
)
んだ
揚句
(
あげく
)
の
果
(
はて
)
に、ここに進退きわまって
夜更
(
よふ
)
けて劇薬自殺を
遂
(
と
)
げた……と
薄気味悪
(
わ
)
るく
血嘔
(
ちへど
)
を吐く手真似で話した。
菜の花物語
(新字新仮名)
/
児玉花外
(著)
▼ もっと見る
その
夜更
(
よふ
)
け。ここは東京の月島という埋立地の海岸に、太った男が、水のボトボト
滴
(
た
)
れる大きな潜水服を両手に抱えて立っていた。
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その
夜更
(
よふ
)
け、先に述べた地底の地獄巡りの穴の中で、湯本譲次とその恋人の原田麗子とが、彼等の日課である奇妙な遊戯を始めていた。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
猟はこういう時だと、
夜更
(
よふ
)
けに、のそのそと起きて、鉄砲しらべをして、
炉端
(
ろばた
)
で
茶漬
(
ちゃづけ
)
を
掻
(
か
)
っ食らって、
手製
(
てづくり
)
の
猿
(
さる
)
の皮の
毛頭巾
(
けずきん
)
を
被
(
かぶ
)
った。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それを聞いて、一匹の犬が馳出して行った。他の犬も後を追って、復た一緒に馳出して行った。互に鳴き合う声が
夜更
(
よふ
)
けた空に聞えた。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
磧
(
かわら
)
へ立つと、寒さに、骨が鳴った。石ころだの、水溜りだの、
凍
(
こお
)
っている
足袋
(
たび
)
の先が痛い。
夜更
(
よふ
)
けまで彼は
荻江節
(
おぎえぶし
)
を流して歩いた。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
焚火
(
たきび
)
がたかれていた。そうして
夜更
(
よふ
)
けから、
炊
(
た
)
き出しがはじまった。その時分になっても、私の両親はそこへ姿を見せなかった。
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
顳顬
(
こめかみ
)
に
即効紙
(
そっこうし
)
をはって、
夜更
(
よふ
)
けまで賃仕事にいそしむ母親の
繰
(
く
)
り
言
(
ごと
)
を聞くと、いかなる犠牲も
堪
(
た
)
えなければならぬといつも思う。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
夜更
(
よふ
)
けの往来は
靄
(
もや
)
と云うよりも
瘴気
(
しょうき
)
に近いものにこもっていた。それは街燈の光のせいか、妙にまた
黄色
(
きいろ
)
に見えるものだった。
彼 第二
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
翌承久元年正月二十七日、前夜から雪であったが、
鶴ヶ岡八幡宮
(
つるがおかはちまんぐう
)
に右大臣の拝賀の式を行う
夜更
(
よふ
)
け、帰るさを別当
公暁
(
くぎょう
)
のために
弑
(
しい
)
せられた。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
「しかし
貴女
(
あんた
)
も、この商売はいい加減に足を洗ったらどうです。商売している間は、
夜更
(
よふ
)
かしはする、酒は呑む、体を壊す一方だからね。」
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
引けあとの電話は、大抵、
明日
(
あす
)
の朝きいても間に合う事ばかりだからナ……しかし、あんまり
夜更
(
よふ
)
かしをすると
身体
(
からだ
)
に
触
(
さわ
)
るぞ
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そうして、幾臼かの餅を搗いて、祝儀を貰って、それからそれへと移ってゆくので、遅いところへ来るのは
夜更
(
よふ
)
けにもなる。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
夜更
(
よふ
)
けて
四辺
(
あたり
)
静
(
しずか
)
なれば大原家にて人のゴタゴタ語り合う声
幽
(
かすか
)
に
聞
(
きこ
)
ゆ。お登和嬢その声に引かされて思わず門の外へ
出
(
い
)
でたり。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
早「欠伸い止せよ……これは少しだがの、
汝
(
われ
)
え何ぞ買って来るだが、
夜更
(
よふ
)
けで何にもねえから、
此銭
(
これ
)
で
一盃
(
いっぺい
)
飲んでくんろ」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
九時——九時といえば農場では
夜更
(
よふ
)
けだ——を過ぎてから仁右衛門はいい酒機嫌で突然佐藤の戸口に現われた。佐藤の妻も晩酌に酔いしれていた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
まして
夜更
(
よふ
)
けの静かな時は
尚更
(
なおさら
)
であるから、余程小声で話さなければいけなかったのに、誰もその辺にあまり注意を払わなかったのは事実である。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「フランツとダニヱルお爺さんとが
夜更
(
よふ
)
けて一緒にゐたのよ、そしてフランツが、
怖
(
こは
)
くて眼を覺まして了つた夢の話をしてゐるのよ、いゝこと!」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
なるべく、
夜更
(
よふ
)
けに着く汽車を選びたいと、三日間の収容所を出ると、わざと、
敦賀
(
つるが
)
の町で、一日ぶらぶらしてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
妙信 (
戦慄
(
せんりつ
)
)よさぬかというに、さもないでさえ恐ろしいこの
夜更
(
よふ
)
けに、そんな話をしなくとものことじゃないか。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
気持が幾分か落着いて来ると、私は毎晩毎晩、
夜更
(
よふ
)
けになってから
他人目
(
ひとめ
)
を
偸
(
ぬす
)
んで、生前の娘にそっくり似ている等身大の人形をつくりにかかった。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
その頃私は毎晩
夜更
(
よふ
)
かしをして二時三時まで仕事をするので十二時近くなると
釜揚饂飩
(
かまあげうどん
)
を取るのが例となっていた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
夏の
夜更
(
よふ
)
けの、外は露気を含んで冷や冷やと好い
肌触
(
はだざわ
)
りだけれど部屋の中は締め込んでいるのでむうっと寝臭い
蚊帳
(
かや
)
の臭いに混ってお前臭いにおいが
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「まあ、そんなことをおっしゃらないで、こんな
夜更
(
よふ
)
けに何の御用がおありになりますの、たまには遅く往って、じらしてやるがよろしゅうございますよ」
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
木枯しがつよく吹いている
夜更
(
よふ
)
けであった。私は、枕元のだるまに尋ねた。「だるま、寒くないか。」だるまは答えた。「寒くない。」私はかさねて尋ねた。
玩具
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
式を
行
(
おこな
)
った翌日から、夫婦は終日渋江の家にいて、
夜更
(
よふ
)
けて矢川の家へ寝に帰った。この時文一郎は
新
(
あらた
)
に
馬廻
(
うままわり
)
になった年で二十九歳、陸は二十三歳であった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
運転手に
虐待
(
ぎゃくたい
)
されても相変らず働いていたのは品子をものにしたという勝利感からであったが、ある
夜更
(
よふ
)
け客を送って飛田遊廓の××楼まで行くと、運転手は
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
ある
夜更
(
よふ
)
けに冷たい線路に
佇
(
たた
)
ずみ、物思いに沈む抱月氏を見かけたというのもそのころの事であったろう。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
日の
晩
(
く
)
れから鳴き出して
夜更
(
よふ
)
けにも鳴くことがあるが時としては二羽のつれ鳴に鳴く声が聞える事がある。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
その晩も
漸
(
やうや
)
く新太郎を寢かし付けて、さて雨戸を
締
(
し
)
めようとすると
夜更
(
よふ
)
けまで開けて置いた窓の障子へ、
遲
(
おそ
)
い月に照らされて、ハツキリ映つてゐるものがあります。
銭形平次捕物控:006 復讐鬼の姿
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
源右衛門『
夜更
(
よふ
)
けといい
斯
(
か
)
かる荒家へ、お上人さま直々のお運び、源右衛門
冥加
(
みょうが
)
の至りに存じます』
取返し物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
叡山
(
えいざん
)
の
西塔
(
さいとう
)
に実因
僧都
(
そうず
)
という人がいたが、この人が無類の大力であった。ある日、宮中の
御加持
(
ごかじ
)
に行って、
夜更
(
よふ
)
けて退出すると、何かの手違いで、供の者が一人もいない。
大力物語
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
曠野
(
こうや
)
の
夜更
(
よふ
)
けは星ひとつ見えぬ暗さであった。在るものは自分らだけと思い、他を
憶
(
おも
)
い浮べる余裕もなかった。過ぎた戦乱の日は、忘れ去るほど遠ざかってはいなかった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
春の日の昼下りに、竿や竿竹、の呼び声を聞く時や、
夜更
(
よふ
)
けに耳に届いて来るチャルメラの響き、そんなのと趣きは違うけれど、何か郷愁を伴ったような、妙な哀感がある。
凡人凡語
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
そして、父が寝巻き姿のまま起き上って来て、母を
邪慳
(
じゃけん
)
に部屋の外へ突き出したことをも。でもたまには父は、
夜更
(
よふ
)
けた町を大きな声で歌をうたいながら帰って来ることもあった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
すると、彼が占めていた空き部屋の扉を、
夜更
(
よふ
)
けて、こっそりと叩く者があった。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
おかみさんは、こんな
夜更
(
よふ
)
けに何をするつもりか巳之助にきいたが、巳之助は自分がこれからしようとしていることをきかせれば、おかみさんが止めるにきまっているので、黙っていた。
おじいさんのランプ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
馬賊達は、
山塞
(
さんさい
)
でさつそく、お祝ひの酒盛りを
夜更
(
よふ
)
けまで賑やかにやりました。
小熊秀雄全集-14:童話集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
夜更
(
よふ
)
けまでじっと考えていて、修行者が来ても立合いということはほとんどせぬ、
強
(
し
)
いて立合いを望むと、こうして相手の
面
(
かお
)
を、しばらくじっと見ておるじゃ、そうしてニコリと笑って
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「もうそのような
夜更
(
よふ
)
けか。不思議な消え方を致しおった。よく調べてみい」
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
夫は母と共に外出して
夜更
(
よふ
)
けても帰って来ない、もう病人は昏睡状態に
陥
(
おちい
)
って
婢中
(
じょちゅう
)
の
腕
(
かいな
)
に
抱
(
だか
)
れていたが、しきりに枕の下を気にして口をきこうとして唇をかすかに動かせども、もう声が出ない
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
熱気に室内がむれて息もたえだえに思われる土用の
夜更
(
よふ
)
けなどに、けたたましく人を呼ぶ声がきこえ、その声に起き上って窓から見ると、白衣の人が長い廊下を急ぎ足に歩いて行くのが見える。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
表通りも
夜更
(
よふ
)
けになるとこの通りである。これは猫だ。私はなぜこの町では猫がこんなに我物顔に道を歩くのか考えて見たことがある。それによると第一この町には犬がほとんどいないのである。
交尾
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
永久に。——彼はこの頃
夜更
(
よふ
)
けて、物静かに鳴り渡る松風の音を聞きながら、あの下に、あゝあの下に、かう思ふのが何よりの楽しみであつた。冬になれば広い松林の上へ真白ろな雪が降るであらう。
夢
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
源十郎がお艶の駕籠をかつぎこませた
暴風雨
(
あらし
)
の晩、
夜更
(
よふ
)
けて、というよりも明け方近く、庭口にあたってただならぬ人声を耳にしたおさよが、そっと雨戸をたぐってのぞくと、濡れそぼれた丹下左膳
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
仕事の多い日には、しばしば
夜更
(
よふ
)
かしをして書きつづける。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
夜
常用漢字
小2
部首:⼣
8画
更
常用漢字
中学
部首:⽈
7画
“夜”で始まる語句
夜
夜半
夜中
夜叉
夜具
夜鷹
夜寒
夜明
夜業
夜着