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たいせき
ふりがな文庫
“
堆積
(
たいせき
)” の例文
月の光が瓦に射し、瓦の上に
堆積
(
たいせき
)
したほこりや木の葉やなわの切れはしを照らしていた。物干竿があって取り忘れた着物をほしてある。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
言葉どおりに水平に
吹雪
(
ふぶ
)
く雪の中を、後ろのほうから、見上げるような大きな水の
堆積
(
たいせき
)
が、想像も及ばない早さでひた押しに押して来る。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
竪穴は風雨の作用
塵埃
(
ぢんあい
)
の
堆積
(
たいせき
)
の爲、自然に埋まる事も有るべく、
開墾
(
かいこん
)
及び諸種の土木工事の爲、人爲を以て
埋
(
うづ
)
むる事も有るべきものなり。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
たくさんな
陰画
(
ネガチーヴ
)
の
堆積
(
たいせき
)
の中から有効なものを選び出してそれをいかにつなぎ合わせるかがいわゆるモンタージュの仕事である。
映画芸術
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そこで秀吉は家康の温和さを疑ることはなかったが、世評の高さのために彼の心中ひそかに圧迫せられるものを
堆積
(
たいせき
)
するようになっていた。
家康
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
死骸はその凹路を平地と水平にし、
枡
(
ます
)
にきれいにはかられた麦のようにその縁と平らになっていた。上部は
死骸
(
しがい
)
の
堆積
(
たいせき
)
、下の方は血潮の川。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
眩
(
まぶ
)
しい光輝に貫かれたる暗黒の集団を、父親が焦慮しながら迷い歩いた、知識と無識と害悪な真理と矛盾的な
誤謬
(
ごびゅう
)
との
堆積
(
たいせき
)
を。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
水草でいちめんなので誰も気づかないが、日吉が察した通り、底は何年となく、落葉や泥の
堆積
(
たいせき
)
に埋まって、何尺もなかった。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
間隙
(
かんげき
)
のない隆起と
堆積
(
たいせき
)
との肉感を
覗
(
のぞ
)
かせた姿は、全体としてつるつるあぶらを流したような滑らかさを持っていた。
ヒッポドロム
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
この大いなる悲しみが、何か私を
玲瓏
(
れいろう
)
たるものに浄化してくれ、心と体に
堆積
(
たいせき
)
していた不潔な分子を、洗い清めてくれたことは云うまでもありません。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
話の調子に乗って語っている間に、実際に父の記憶がそういう風になって来ていたのであろう。実際、歴史というものは、そういう
堆積
(
たいせき
)
なのかもしれない。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
けれども根は根である。その上は常識の厚い層の
堆積
(
たいせき
)
はこの
稀有
(
けう
)
の人間慧鶴の岩次郎でさえ、自分でこの根の真偽を疑って居る。私はそれを当然だと思う。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
初秋
(
しよしう
)
の
洪水
(
こうずゐ
)
以來
(
いらい
)
河
(
かは
)
の
中央
(
ちうあう
)
には
大
(
おほ
)
きな
洲
(
す
)
が
堆積
(
たいせき
)
されたので、
船
(
ふね
)
は
其
(
そ
)
の
周圍
(
しうゐ
)
を
偃
(
は
)
うて
遠
(
とほ
)
く
彎曲
(
わんきよく
)
を
描
(
ゑが
)
かねば
成
(
な
)
らぬ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
新聞とか雑誌とかネクタイとか
薔薇
(
ばら
)
とかパイプなどの
堆積
(
たいせき
)
の上に、丁度水たまりの上に浮んだ石油のように、虹色になって何かが浮んでいるのを彼は発見した。
聖家族
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
というのは、船橋などはもう既に完全に焼け尽し、真黒な灰の
堆積
(
たいせき
)
の
外
(
ほか
)
に何も残っていなかったのである。
地球発狂事件
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
それは長い間の代々の記憶の
堆積
(
たいせき
)
だともいえよう。
濫
(
みだ
)
りに図柄を工夫することは許されていない。否、その自由があったならむしろ筆は運ばなかったであろう。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
その今日まで、地方の書信の机上に
堆積
(
たいせき
)
せるもの幾百通なるを知らずといえども、そのうち昨今、
都鄙
(
とひ
)
の別なく、上下ともに
喋々
(
ちょうちょう
)
するものは
狐狗狸
(
こっくり
)
の一怪事なり。
妖怪玄談
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
だが、病妻の
側
(
そば
)
で読んだ書物からは知識の外形ばかりが
堆積
(
たいせき
)
されていたのだろう。それが今、音もなく崩れ墜ちてゆくようだった。彼はぼんやりと畳の上に
蹲
(
うずくま
)
っていた。
死のなかの風景
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
瀬戸内海の周辺をやや西へ行くと、グロという土地が多く、是も土篇に丸の字などを書いて、塚の意味に用いる地方があるから、グロは単なる
堆積
(
たいせき
)
のことであったろう。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
古
(
ふる
)
くは
貞觀年間
(
じようかんねんかん
)
、
近
(
ちか
)
くは
寶永四年
(
ほうえいよねん
)
にも
噴火
(
ふんか
)
して、
火口
(
かこう
)
の
下手
(
しもて
)
に
堆積
(
たいせき
)
した
噴出物
(
ふんしゆつぶつ
)
で
寶永山
(
ほうえいざん
)
を
形作
(
かたちづく
)
つた。
即
(
すなは
)
ち
成長期
(
せいちようき
)
にあつた
少女時代
(
しようじよじだい
)
の
富士
(
ふじ
)
も
一人
(
ひとり
)
の
子持
(
こも
)
ちになつたわけである。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
実験から得た知識の
堆積
(
たいせき
)
が、自ずと彼を昆虫学者にし、一家をなしていたと云われている。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「一つの継続した我とはなんだ? それは記憶の影の
堆積
(
たいせき
)
だよ」と。この男はまた悟浄にこう教えてくれた。「記憶の喪失ということが、
俺
(
おれ
)
たちの毎日していることの全部だ。 ...
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
何千回、何万回という経験が、この老人に鏡なしで手さぐりで顔の鬚をらくらくと剃ることを教えたのだ。こういう具合の経験の
堆積
(
たいせき
)
には、私たち、逆立ちしたって負けである。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
この界隈の連合委員会の事業振興の決議案にもかかわらず、閑散とした取引市場をとりまいて、日一日と失業者と、彼らの飢えが生産余剰と反比例して街の広場に
堆積
(
たいせき
)
して行った。
大阪万華鏡
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
名声の空虚なこと、忘却の確実なことについて、くりかえし説かれた訓戒のうずたかい
堆積
(
たいせき
)
でなくてなんだろうか。じっさい、これは死の帝国である。死神の暗黒の大宮殿である。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
ある一方より見れば、新詩形を有する発句は和歌の冗漫なるに比してやや新なる者を生じたる事なきにあらねど、そは極めて少数にして、大体は陳腐と平凡との
堆積
(
たいせき
)
せる言葉の
塊
(
かたまり
)
のみ。
古池の句の弁
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
小説を作るということは結局第二の自然という可能の世界を作ることであり、人間はここでは経験の
堆積
(
たいせき
)
としては描かれず、経験から飛躍して行く可能性として追究されなければならぬ。
可能性の文学
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
ですからもしこの海底を
浚渫
(
しゅんせつ
)
することができましたならば、古来からの金銀財宝や船の破片、白骨なぞがどのくらい
堆積
(
たいせき
)
しているか、量り知れないものがあろうと思われるのであります。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
長い年月に
堆積
(
たいせき
)
した苦悩と、今夜の酒の酔いで私はもう何もわからなくなった
源氏物語:33 藤のうら葉
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
脂肪の極大
堆積
(
たいせき
)
に依って全皮膚の表面張力が限度に達しているため、全身的にも部分的にも心理の反映たる表情能力を欠除していたからで、その巨大な肉塊を
掻分
(
かきわ
)
けて現われた実際の子之八は
評釈勘忍記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで、
昼
(
ひる
)
から
夜
(
よる
)
まで——いや、そういう
区別
(
くべつ
)
もなく、
永久
(
えいきゅう
)
に、
暗
(
くら
)
く、ただ、
見得
(
みう
)
るかぎりの
世界
(
せかい
)
というものは、
切
(
き
)
り
削
(
けず
)
られた
赤土
(
あかつち
)
の
断層
(
だんそう
)
の一
部分
(
ぶぶん
)
と
煉瓦
(
れんが
)
の
堆積
(
たいせき
)
と、その
割
(
わ
)
れめからわき
出
(
だ
)
して
老工夫と電灯:――大人の童話――
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
これからは怠り勝になって、少々は糞尿の
堆積
(
たいせき
)
する箇所が出来るかも知れないけれども、
容赦
(
ようしゃ
)
していただくつもりである。以上の実情を調査下され、善処ありたい。——という意味の歎願書であった。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
古呆けて妖怪じみた長火鉢の中には、突きさした煙草の吸殻が
葱
(
ねぎ
)
のように見えた。壁に積んである沢山の本を見ていると、なぜだか、舌に唾が湧いて来て、この書籍の
堆積
(
たいせき
)
が妙に私を誘惑してしまう。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
涯しない
瓦礫
(
がれき
)
と燃えさしの
堆積
(
たいせき
)
であった広島
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
しかしいかに建築材料だけが立派に
堆積
(
たいせき
)
されてあってもそれだけでは殿堂はできない。殿堂の建設には設計者のファンタジーが必要である。
ルクレチウスと科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
葉子は散歩客には構わずに甲板を横ぎって船べりの
手欄
(
てすり
)
によりかかりながら、波また波と果てしもなく連なる水の
堆積
(
たいせき
)
をはるばるとながめやった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
黄河
(
こうが
)
という河はふだんは水がないが、大雨がくると黄土の
泥流
(
でいりゅう
)
あふれたって一年に何メートルも河底に泥が
堆積
(
たいせき
)
する。
武者ぶるい論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
その藻の
堆積
(
たいせき
)
は
腐敗
(
ふはい
)
し、絶望的なにおいを放っていた。まことにそれは
眩暈
(
めまい
)
のするようないやな臭気であった。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
その輪郭は眼界を逸し恐ろしいほど重畳して、互いにつみ重なり
堆積
(
たいせき
)
し、
慄然
(
りつぜん
)
たらしむる
断崖
(
だんがい
)
をなしながら、上方眼の届かない所まで高くそびえているのを
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
宇宙をとんでいる隕石などが、地球と月との引力の平衡点に吸込まれて、あのように
堆積
(
たいせき
)
するのだ。
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
性慾の敏感さ——
凡
(
すべ
)
て、
執拗
(
しつよう
)
なもの、陰影を持つもの、
堆積
(
たいせき
)
したもの、
揺蕩
(
ようとう
)
するもの等がなつかしく、同時にそれ
等
(
ら
)
はまたかの女に限りなく
悩
(
な
)
やましく、わづらはしかつた。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
巨
(
おお
)
きな虚無の
痙攣
(
けいれん
)
は停止したまま空間に残っていた。崩壊した物質の
堆積
(
たいせき
)
の下や、割れたコンクリートの
窪
(
くぼ
)
みには死の異臭が
罩
(
こも
)
っていた。真昼は底ぬけに明るくて悲しかった。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
それでまた、いいのだとも思う。(藤村については、項をあらためて書くつもり。)ヨーロッパの大作家は、五十すぎても六十すぎても、ただ量で行く。マンネリズムの
堆積
(
たいせき
)
である。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
退いたとは云っても、跡には土砂がそっくり残ってい、その
堆積
(
たいせき
)
が所に
依
(
よ
)
っては軒を埋める程の深さに達していて、何のことはない、雪にとざされた北国の町景色そのままであった。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
今の仕事ぶりを見ていると、実に長い歳月の経験や知識が
堆積
(
たいせき
)
して、ここまで来ているのだという事がよく分る。一朝一夕の技ではない。ここにも伝統が如何に濃く働いているかが分る。
樺細工の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
この
時
(
とき
)
中央
(
ちゆうおう
)
山脈
(
さんみやく
)
の
斜面
(
しやめん
)
に
沿
(
そ
)
うて
堆積
(
たいせき
)
してゐた
土砂
(
どさ
)
が
全體
(
ぜんたい
)
として
山骨
(
さんこつ
)
を
離
(
はな
)
れ、それが
斜面
(
しやめん
)
を
流
(
なが
)
れ
下
(
くだ
)
る
際
(
さい
)
曲
(
まが
)
り
目
(
め
)
の
所
(
ところ
)
に
於
(
おい
)
て、
雪崩
(
なだ
)
れの
表面
(
ひようめん
)
が
或
(
あるひ
)
は
開
(
ひら
)
いたり、
或
(
あるひ
)
は
閉
(
と
)
ぢたりしたものゝようであるが
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
私は
堆積
(
たいせき
)
された旅愁をつかんで
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
産院の
堆積
(
たいせき
)
の底から
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
エイゼンシュテインはこれを二つのものの単なる組み合わせあるいは
堆積
(
たいせき
)
すなわち彼のいわゆる叙事的な原理と見る代わりに
映画芸術
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
周囲に重畳
堆積
(
たいせき
)
してる大なる暗雲におびやかされながら輝いてる理想こそ、見るも恐るべきものである。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
“堆積”の意味
《名詞》
堆 積(たいせき)
高く積み重なること。
風雨・氷河などにより運ばれた土砂が水底や地表にたまること。
(出典:Wiktionary)
“堆積”の解説
堆積(たいせき、en: sedimentation、deposition)とは、堆積物(地層)を形成するに至るまでの過程の総称をいう。
(出典:Wikipedia)
堆
常用漢字
中学
部首:⼟
11画
積
常用漢字
小4
部首:⽲
16画
“堆積”で始まる語句
堆積台
堆積物
堆積裏
堆積説