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却
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しりぞ
ふりがな文庫
“
却
(
しりぞ
)” の例文
ローマ法族の法神パピニアーヌスは
誣妄
(
ふぼう
)
の詔を草せずして節に死し、回々法族の法神ハネフィヤは栄職を
却
(
しりぞ
)
けて一死その志を貫いた。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
私
(
わたし
)
も私自身の
中
(
うち
)
に、冷酷な自己の住む事を感ずる。この
嘲魔
(
てうま
)
を
却
(
しりぞ
)
ける事は、私の顔が変へられないやうに、私自身には
如何
(
いかん
)
とも出来ぬ。
点心
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
此反対に、さうした詞の災ひを
却
(
しりぞ
)
けて、善い状態に戻す呪力や、我が方へ襲ひかゝつて来た呪咀を撥ね返す能力が考へられて来た。
国文学の発生(第四稿):唱導的方面を中心として
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
二人の恋の許可不許可も問題に上ったが、それは今研究すべき題目でないとして
却
(
しりぞ
)
けられ、当面の京都帰還問題が論ぜられた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「凡ての歴史は不確かで曖昧である。然し誰かがあなたに或ることが疑はしいと内々で知らせるなら、あなたはその人をすぐ
却
(
しりぞ
)
けてよろしい。」
ゲーテに於ける自然と歴史
(新字旧仮名)
/
三木清
(著)
▼ もっと見る
自分ではひどく不満足に思っているが、率直な、一切の修飾を
却
(
しりぞ
)
けた秀麿の記述は、これまでの卒業論文には余り類がないと云うことであった。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
故に共同の敵なる畠山持国を
却
(
しりぞ
)
けるや、
厭
(
あ
)
く迄現実的なる宗全は、昨日の味方であり掩護者であった勝元に敢然対立した。
応仁の乱
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
妻は娶りしより前七年間の近附にて、小生を愛し、小生の娶るを待つとて結婚を申込みし者を二人まで
却
(
しりぞ
)
けしこと有之候。
アンドレアス・タアマイエルが遺書
(新字旧仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
倘
(
も
)
し并せて返納せば、
益々
(
ますます
)
不恭に
渉
(
わた
)
らん。因って今、領受し、薄く
土宜
(
どぎ
)
数種を
晋
(
すす
)
め、以て報謝を表す。
具
(
つぶ
)
さに別幅に録す。
却
(
しりぞ
)
くるなくんば幸甚なり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
マルクスがいったように太平洋をはじめて世界市場に編入し大西洋を単なる「内海」の地位に
却
(
しりぞ
)
けてしまう最初の芸当を、美事にやってのけたからだ。
汽船が太平洋を横断するまで
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
されど
剛愎
(
ごうふく
)
我慢なるその
性
(
さが
)
として今かく
虜
(
とりこ
)
の
辱
(
はずかしめ
)
を受け、
賤婦
(
せんぷ
)
の虐迫に屈従して城下の
盟
(
ちか
)
いを潔しとせず、断然華族の位置を守りてお丹の要求を
却
(
しりぞ
)
けたるなり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それで私は、あらゆる世俗的栄華をふり捨て、安易と逸楽を
却
(
しりぞ
)
け、身を休める
暇
(
いとま
)
もないまで奔走しました。
自責
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
燕将
張武
(
ちょうぶ
)
悪戦して敵を
却
(
しりぞ
)
くと
雖
(
いえど
)
も、燕軍遂に
克
(
か
)
たず。
是
(
ここ
)
に於て南軍は
橋南
(
きょうなん
)
に
駐
(
とど
)
まり、北軍は橋北に駐まり、
相
(
あい
)
持
(
じ
)
するもの数日、南軍
糧
(
かて
)
尽きて、
蕪
(
ぶ
)
を採って食う。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
外国より蛇群来り攻むれど諸蛇脊にかの女王を負う間は敵常に負け
却
(
しりぞ
)
く、女王に
睨
(
にら
)
まるれば敵蛇皆力なし
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
多くの考えが彼のうちにわいてきたが、絶えず姿を現わして他の考えを追い
却
(
しりぞ
)
ける一つのものがあった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
だが、大人には大人の理由があって、子供のそうした感情なんかてんでわからないかのように母は冷酷に私の願いを
却
(
しりぞ
)
けた。それは私には運命のようなものであった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
ある日此男が
訪
(
たず
)
ねて来て、例の如く色々哲学者の名前を聞かされた
揚句
(
あげく
)
の
果
(
はて
)
に君は何になると尋ねるから、実はこうこうだと話すと、彼は一も二もなくそれを
却
(
しりぞ
)
けてしまった。
処女作追懐談
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それ故手紙が雨に濡れたと云ふ被告の弁解も一喝の下に之を
却
(
しりぞ
)
けてしまつて聞入れない。
公判
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
二三日經つて、級長の谷以下のクラスの代表者六人から申し出た猫又先生更任願は、教頭の劇しい叱責と共に
素氣
(
すげ
)
なく
却
(
しりぞ
)
けられた。教頭は冷かな眼でみんなを見下しながら云つた。
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
要
(
えう
)
は
兵
(
へい
)
を
彊
(
つよ
)
くし
(一〇六)
馳説
(
ちぜい
)
の
(一〇七)
從横
(
しようくわう
)
を
言
(
い
)
ふ
者
(
もの
)
を
破
(
やぶ
)
るに
在
(
あ
)
るなり。
是
(
ここ
)
に
於
(
おい
)
て
南
(
みなみ
)
は百
越
(
ゑつ
)
を
平
(
たひ
)
らげ、
北
(
きた
)
は
陳蔡
(
ちんさい
)
を
并
(
あは
)
せ
(一〇八)
三
晉
(
しん
)
を
却
(
しりぞ
)
け、
西
(
にし
)
は
秦
(
しん
)
を
伐
(
う
)
つ。
諸矦
(
しよこう
)
、
楚
(
そ
)
の
彊
(
つよ
)
きを
患
(
うれ
)
ふ。
国訳史記列伝:05 孫子呉起列伝第五
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
と奥田君が
却
(
しりぞ
)
けた。道子さんの側からは奥田君夫婦と両親が遙々上京していた。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
結局子孫の
艱難
(
かんなん
)
を長引かせたとも見られるが、さればとて遠い未来の全体の幸不幸を勘定して、この目前に甘く且つ柔かなる食物の誘惑を
却
(
しりぞ
)
けることは、人が神であってもできないことである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
表面の虚飾を
却
(
しりぞ
)
け、またこれを
掃
(
はら
)
い、これを却掃し尽くして、はじめて至親の存するものを見るべし。しからばすなわち交際の親睦は、真率のうちに存して、虚飾と並び立つべからざるものなり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それほど死ぬことを怖れながら、私は人の親切にすゝめてくれる疎開をすげなく
却
(
しりぞ
)
けて東京にとゞまつてゐたが、かういふ矛盾は私の一生の矛盾であり、その運命を私は常に甘受してきたのである。
魔の退屈
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
喬子はこの誘惑を
却
(
しりぞ
)
けるのに、血みどろで闘ったつもりです。
偽悪病患者
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
素戔嗚
(
すさのお
)
はそろそろ
焦
(
じ
)
れ出しながら、
突慳貪
(
つっけんどん
)
に若者の
請
(
こい
)
を
却
(
しりぞ
)
けた。すると相手は
狡猾
(
こうかつ
)
そうに、じろりと彼の顔へ眼をやって
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
逍遙子が其黨人と共に沒主觀の名を
却
(
しりぞ
)
けて我評を難ぜしはいと面白けれど、その面白き樣なるは抑何故ぞや。答へて云く。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
どうか
暫
(
しばら
)
くこのままにして東京に置いてくれとの頼み。時雄はこの余儀なき頼みをすげなく
却
(
しりぞ
)
けることは出来なかった。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
それ故に彼は時間の停止することなき「流れ」に対して現実的な感情を有しない。時間の流れから直接に生れ、我々が追憶と呼ぶところの感情をゲーテは
却
(
しりぞ
)
けた。
ゲーテに於ける自然と歴史
(新字旧仮名)
/
三木清
(著)
それから「神代巻」の弉尊が桃実を投げて醜女を
却
(
しりぞ
)
けた譚などに拠る由は古人も言い、また『民俗』一年一報、柴田常恵君の説に、田中善立氏は福建にあった内
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
何福等
此
(
これ
)
を見て安と合撃し、燕兵数千を殺して
之
(
これ
)
を
却
(
しりぞ
)
けしが、高煦は南軍の
罷
(
つか
)
れたるを見、林間より突出し、新鋭の勢をもて打撃を加え、王は兵を
還
(
かえ
)
して
掩
(
おお
)
い撃ちたり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
外人なお船を衝て
止
(
や
)
まず、金子もために
却
(
しりぞ
)
けられんことを恐れ、舟を捨て躍って梯に在り。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
私は、それから「
下
(
しも
)
の諏訪」へ下る
途
(
みち
)
すがら、ふさぎの虫のかかって来るのを、
却
(
しりぞ
)
けかねて居た。一段落だ。はなやかであった万葉復興の時勢が、ここに来て向きを換えるのではないか。
歌の円寂する時
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
それほど死ぬことを
怖
(
おそ
)
れながら、私は人の親切にすすめてくれる疎開をすげなく
却
(
しりぞ
)
けて東京にとどまっていたが、こういう矛盾は私の一生の矛盾であり、その運命を私は常に甘受してきたのである。
魔の退屈
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
己
(
おの
)
が身辺に
絡纏
(
まつわ
)
りつつある
淫魔
(
いんま
)
を
却
(
しりぞ
)
けられむことを哀願しき。
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
某村の
戸長
(
こちょう
)
は野菜
一車
(
ひとくるま
)
を優善に献じたいといって持って来た。優善は「
己
(
おれ
)
は
賄賂
(
わいろ
)
は取らぬぞ」といって
却
(
しりぞ
)
けた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
津崎左近
(
つざきさこん
)
は助太刀の
請
(
こい
)
を
却
(
しりぞ
)
けられると、二三日家に閉じこもっていた。兼ねて
求馬
(
もとめ
)
と取換した
起請文
(
きしょうもん
)
の
面
(
おもて
)
を
反故
(
ほご
)
にするのが、いかにも彼にはつらく思われた。
或敵打の話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
『政事要略』七〇に、裸鬼が槌を以て病人に向うを氏神が追い
却
(
しりぞ
)
けた事あり。『今昔物語』二十の七に、
染殿
(
そめどの
)
后を犯した婬鬼赤褌を著けて腰に槌を差したと記す。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
不自然なものを含むとしてそれを
却
(
しりぞ
)
け、また彼はかやうな飛躍的な発展が可能であるとは信じない。
ゲーテに於ける自然と歴史
(新字旧仮名)
/
三木清
(著)
小舟
船梯
(
せんてい
)
の底に入り、浪と共に上下し、激して声を成す、船員驚き怒り、棍を携え、梯子に立ち、二人の船を衝き
却
(
しりぞ
)
けんとす。松陰
梯
(
はしご
)
に
躍
(
おど
)
ってその梯に在り、金子を顧みて
纜
(
ともづな
)
を
攬
(
と
)
らしむ。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
鄙
(
ひな
)
びては居るが、信頼の出来る、古めかしい味ひを持つてゐた。此二派のけぢめの
朧
(
おぼ
)
ろになつたのは、平安中期の末頃と見てよかろう。其頃出た恵心僧都は、これを狂言綺語として
却
(
しりぞ
)
けた。
女房文学から隠者文学へ:後期王朝文学史
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
その肥後の聘を
却
(
しりぞ
)
けて骸骨を乞うた時、「吾帰于此十年、所天三喪、不可以移矣」と云つてゐる。享和二年より十年とすると、文化八年で、慊堂は四十一歳である。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
何でも天地
開闢
(
かいびゃく
)
の
頃
(
ころ
)
おい、
伊弉諾
(
いざなぎ
)
の
尊
(
みこと
)
は
黄最津平阪
(
よもつひらさか
)
に
八
(
やっ
)
つの
雷
(
いかずち
)
を
却
(
しりぞ
)
けるため、桃の
実
(
み
)
を
礫
(
つぶて
)
に打ったという、——その
神代
(
かみよ
)
の桃の実はこの木の枝になっていたのである。
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
象出で来るに及びかの小男槍か弓矢を帯びよと人々の勧めを
却
(
しりぞ
)
け、年来
試
(
ため
)
し置いた杼の腕前を静かに見よと広言吐いて立ち向う、都下の人民皆城壁に登りてこれを見る
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
逍遙子は別に論を立てゝ主觀といふ語を
却
(
しりぞ
)
けつ。その
亞米利加
(
アメリカ
)
の人エワレツトが言を引きての辨にいへらく。吾黨とエワレツトとの所謂主觀は私情なり。直現情感なり。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
ベーカーの『ゼ・ナイル・トリビュタリース・オヴ・アビシニア』に、氏が獅子を銃する時落ち着いて六ヤードの近きに進み、獅子と睨み合いて
却
(
しりぞ
)
かなんだ勇馬を記す。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
かう言ふ羽目に陥るのは必しも彼女の我我を
却
(
しりぞ
)
けた場合に限る訳ではない。我我は時には
怯懦
(
けふだ
)
の為に、時には又美的要求の為にこの残酷な慰安の相手に一人の女人を使ひ兼ねぬのである。
侏儒の言葉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そのコンスタンチン大帝の
厚聘
(
こうへい
)
を
却
(
しりぞ
)
けてローマに
拝趨
(
はいすう
)
せなんだり、
素食
(
そしょく
)
手工で修業して百五歳まで長生したり、臨終に遺言してその屍の埋地を秘して参詣の由なからしめ
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「さればとて先生に向つて、あからさまに泉州の威権を説き、蘭方医の信用を説くことは出来ない。若し此の如き言説を弄したら、先生は直にわたくしを叱して
却
(
しりぞ
)
けたであらう。」
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
こう言う羽目に陥るのは
必
(
かならず
)
しも彼女の我我を
却
(
しりぞ
)
けた場合に限る
訣
(
わけ
)
ではない。我我は時には
怯懦
(
きょうだ
)
の為に、時には又美的要求の為にこの残酷な慰安の相手に一人の女人を使い兼ねぬのである。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
却
常用漢字
中学
部首:⼙
7画
“却”を含む語句
却説
退却
忘却
冷却
返却
困却
滅却
売却
却々
閑却
脱却
破却
却而
却歩
却下
沒却
没却
擲却
砍却
却〻
...