せい)” の例文
山門の衆徒と申せば、そのせい、三千という大人数でござります。彼らの意見が、全く同じとは考えられません。とにかく一度、牒状を
「何、北条殿の御意ぎょいで、これにせいを伏せておらるるとか。——さては、われわれのたくらみが、く先方に洩れているのではあるまいか」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
音沢から来た二人の若い人夫は、此処は深いだで泳げるとか、せいが強いで泳げないとかいう意味のことを大声で口早に話し合っていた。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
気のせいか彼女の腕には、思ひの他の力があつて、グツと引き寄せられると彼は案山子のやうに彼女の胸に倒れかゝりさうになつたりした。
小川の流れ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「銭形の親分さん、このかたきを討って下さい。私にはたった一人の娘、あれに死なれては、これから先一日も生きて行くせいもございません」
監物は眼のせいであったなと思った。朝になって皆が手水を使って朝飯の膳に向ったところで、臣の一人が隣にいた朋輩の一人に話しかけた。
不動像の行方 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そして、両足をせいいつぱいバタバタふつた。運わるくその片足の膝小僧が夏川の睾丸をしたゝか蹴りつけたから、たまらない。
母の上京 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
一、先日中三丈夫ママ関の方へ御帰りの時分なりと思ふが、内同薩の者より極竊ひそかニ承りたるにハ隊の者大夫の身上を大ニ論じせいだしておりたるよし。
せいぞろいをすることのじょうずな羊は、はなればなれになりません。みんないっしょにかたまって、トットと羊飼いのあとについて行きました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
けれど、その妹が、敵は幾万ありとても、すべて烏合うごうせいなるぞ——という軍歌が、おなじ人が、早く作ったものだということは知らないでいた。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
眼に付くものも眼に入らず、消え入るように、せいも力もなく電車に乗ったが、私は切符を買うのも気が進まなかった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
姉をおせいと言ッて、その頃はまだ十二のつぼみおとといさみと言ッて、これもまた袖で鼻汁はな湾泊盛わんぱくざかり(これは当今は某校に入舎していて宅には居らぬので)
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
いつどこへ集まる——ということまでちゃんと心得ておいでんさったのだから、将軍様も怖くなったのでごいしょう、こういう人物にもしせいがついて
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「わーっと旗をふっている大勢の何処におるやらどうでもわかりもせん癖に、あの中にうちからも来とると思うと、それだけでせいが大分ちがうそうじゃ」
その年 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「長いつて/\! もう満三年やが、ちつとでも宜い目が見えるのならせいもあれど。おれはもういやになつた!」
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
もう忘れたか、覚えがあろう、と顔を向ける、と黒目がちでもせいのない、塗ったような瞳を流して、じっと見たが
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
龍造寺、大友の末路を学ぶとも、天下のせいを引受けて一戦してみようと仰せられる事は必定じゃ。大体、主君とのの御不満の底にはソレがわだかまっておるでのう。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いかにもその子はせいも増し、たゞいたけなくよろこんでゐるごとくなれども、親はかの実も自らは口にせなんぢゃ、いよいよ餓ゑて倒れるやうす、疾翔大力これを見て
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
『こはうつゝとも覺え候はぬものかな。扨も屋島をば何としてのがれ出でさせ給ひけん。當今あめが下は源氏のせいちぬるに、そも何地いづちを指しての御旅路おんたびぢにて候やらん』
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
新院しんいん味方みかたせいすくないので心配しんぱいしておいでになるところでしたから、為朝ためともたとおきになりますと、たいそうおよろこびになって、さっそくおそばにんで
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「出がわるい。……せいのないしよんべんすない。」と、文きは乙まの腰付きを見やりつゝ言つた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
昔常盤御前が操を破りて清盛につかえ娘を設けたは三子の命乞い故是非なしとして、そのちょう衰えては出家して義朝の跡を弔いそうなところ、いわゆる三十後家は立たないせい
中に空洞さえなければ、申し分ありませんが、せいのいい木でしたから、案ずるほどのことはありますまい。切株を二三尺。なるほど、わたくしもそこまでは考えませんでした。
古木:――近代説話―― (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そしてそこには、三伝の妻おせいが住んでいて、秘かに営んでいる春婦宿になっていた。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
冬籠の中でこしらへる草鞋細工の材料の藁さへ乏しい寒さは、どうして凌いだものか。居残つた者はそのあてさへなしに、少しばかりの畑を耕して、せいのない鋤鍬を動して居るのである。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
臓物ぞうもつの割りにゃあ血が飛んでいねえ。いや、飛んじゃあいるがせいがねえ。」
行くときは壁や障子を伝つて危気あぶなげに下駄を穿つつかけたが、帰つて来てそれを脱ぐと、モウ立つてるせいがなかつた。で、台所の板敷をやつと這つて来たが、室に入ると、布団の裾に倒れて了つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
将門背走相防ぐあたはざるの間、良兼の為に人物を殺損奪掠さつそんだつりやくせらるゝのよしは、つぶさに下総国の解文げもんに注し、官に言上ごんじやうしぬ、こゝに朝家諸国にせいを合して良兼等を追捕す可きの官符を下されをはんぬ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ところが、そのなかの若い将校の一にんは急にせいのない顔をして立ち停つた。
家康が武田の旧臣を身方に招き寄せている最中に、小田原おだわら北条新九郎氏直ほうじょうしんうろううじなお甲斐かい一揆いっきをかたらって攻めて来た。家康は古府こふまで出張って、八千足らずのせいをもって北条ほうじょうの五万の兵と対陣たいじんした。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
握り拳がぬっと真直に畳の上をこすって、腕のありたけ出たところで、せいがゆるんで、ぐにゃりとした。また寝るかと思ったら、今度は右の手を下へさげて、くぼんだ頬っぺたをぼりぼりき出した。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
周三はせいのないやうな薄笑うすわらひをして、右の肩をむツくらそびやかし
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「錢形の親分さん、この敵を討つて下さい。私にはたつた一人の娘、あれに死なれては、これから先一日も生きて行くせいもございません」
東の空がしらみだしたら一番がいせいぞろいの用意とおもえ。富士川が見えだしたら、二番貝で部署ぶしょにつき、三番貝はおれがふく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紅葉もみじするのは、して、何時か末枯すがれて了っている中に、ひょろ/\ッと、身長せいばかり伸びて、せいの無いコスモスが三四本わびしそうに咲き遅れている。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
いかにもその子はせいも増し、ただいたけなくよろこんでいるごとくなれども、親はかの実も自らは口にせなんじゃ、いよいよえて倒れるようす、疾翔大力これを見て
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
およそ四海に事を為す能わざる時に、この山国に立籠たてこもって天下のせいを引受けてみるも一興ではないか
「小笠原島でかめの子の卵をあんまりたべたので、せいがついてデコボコになってしまった。」
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
この頃じゃ落胆がっかりして、せいも張合も無いんですけれども、もしやにひかされては見ています。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鈍刀どすだ、腕もねえ——さ、口中だ。歯並び、舌の引釣り、せいがあるぞ。」
と腹のなかで思ひながら、せいのない顔をして玄関まで見送りに往つた。沓脱くつぬぎに立つた爺さんは一寸おとがひに手をやつたと思ふと、その儘髯を外して片手に持つた。そして素知らぬ顔をして帰つて往つた。
するといつどこから出てたか、おおきなひげのえたおとこと、かわいらしい小さなぼうさんが出てて、どんどんあめのように射出いだてきの中をくぐりくぐり、平気へいきかおをしててきせいの中へあるいて行って
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「どんな……」と聞き返した時は何となくせいがなかった。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「兄さんが行ってから、おっ母さんの心もいろいろになったが、きょう日ではたった一つにきわまった。どうでも、結局はお前らのせいのいいように暮して行かにゃならんと思う。このおっ母さんがひっそり一人でくすぶっとると思えば、お前らの勢もわるかろ」
その年 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「よく判っております。が、お金はなるべく急いで御下げ渡し下さいまし、私の所は、石原の孫右衛門店まごえもんだなせいと申して、後家でございます」
兵馬にはここ幾日かを休養させ、ふたたびの御指揮あらば、義貞のせいをけちらして、洛中をとりかえすことも、なんの造作ぞうさではございません
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お嬢さん、その貴嬢あなた、面白いことが無いんですもの、」とせいのない呼吸いきをする。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「歌舞伎座にもつれて行ったのか!」と、曖昧あいまいせいのない声を出した。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「あの、力持のおせいさんが、少しお腹が悪いと言って寝ていました」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
赤松円心父子おやこ四人が、せい五百騎で、奉迎のお供にと、福厳寺へ参向さんこうしてきた。折しものことである。龍顔わけてうるわしく