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僅
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わず
ふりがな文庫
“
僅
(
わず
)” の例文
「
余
(
あんま
)
り
酷
(
ひど
)
すぎる」と
一語
(
ひとこと
)
僅
(
わず
)
かに
洩
(
もら
)
し得たばかり。妻は涙の泉も
涸
(
かれ
)
たか
唯
(
た
)
だ自分の顔を見て血の気のない
唇
(
くちびる
)
をわなわなと
戦
(
ふる
)
わしている。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
『鶯邨画譜』の方に
枝垂
(
しだ
)
れ
桜
(
ざくら
)
の画があつてその木の枝を
僅
(
わず
)
かに二、三本画いたばかりで枝全体には
悉
(
ことごと
)
く小さな薄赤い
蕾
(
つぼみ
)
が附いて居る。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
嵐
(
あらし
)
を免れて港に入りし船のごとく、
激
(
たぎ
)
つ早瀬の水が、
僅
(
わず
)
かなる岩間の
淀
(
よど
)
みに、余裕を示すがごとく、二人はここに一夕の余裕を得た。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
喘ぎながら多可子は、
僅
(
わず
)
か十四の政枝が思いつめた死の決意を考えてみ、それを
飜
(
ひるが
)
えさせるだけの立派な理由を見出そうと努めた。
勝ずば
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
基督
(
キリスト
)
現れて
僅
(
わず
)
かに二千年、人類は少なくも有史以来六、七千年の歳月を
閲
(
けみ
)
しているのであるから、その前四、五千年間は禽獣と等しき
婦人問題解決の急務
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
▼ もっと見る
外の人が一尺で
継
(
つ
)
ぎ
易
(
か
)
える所を、あなたは
僅
(
わず
)
か一寸か二寸の長さで細かに調子よく継ぎ足しては前へ進んで行くとしか形容出来ません。
木下杢太郎『唐草表紙』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
僅
(
わず
)
かな言葉の響きや方式の新らしさに
絆
(
ほだ
)
されて、今頃ふたたび以前と同様な拘束の世界に戻って行こうとする者はよもやもう有るまい。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
自ら不良少女と
名乘
(
なの
)
ることによつて
僅
(
わず
)
かに
慰
(
なぐさ
)
んでゐる心の
底
(
そこ
)
に、
良心
(
りやうしん
)
と
貞操
(
ていさう
)
とを大切にいたわつているのを、人々は(
殊
(
こと
)
に
男子
(
だんし
)
に
於
(
おい
)
て)
冬を迎へようとして
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
僅
(
わず
)
かな原因ですぐ陥った一つの小さな虚偽の
為
(
た
)
めに、二つ三つ四つ五つと虚偽を重ねて行かねばならぬ、その苦痛をも知っている。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
僅
(
わず
)
かばかりの
痩
(
や
)
せた畑もこの
老爺
(
ろうや
)
が作るらしかった。破れた屋根の下で、牧夫は私達の為に湯を沸かしたり、茶を入れたりしてくれた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
僅
(
わず
)
かにあげた顔には、娘らしい純情が輝きます。こんなのが、思い詰めたら、心中もするだろうし、人を殺す気になるかも知れません。
銭形平次捕物控:070 二本の脇差
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
スパイダーの頭は錯乱して、
僅
(
わず
)
か数時間内に起った出来事を回想することすら出来なかった。彼はぼんやりと探偵の傍に腰掛けていた。
赤い手
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
みんなが想像した
程
(
ほど
)
水は来ず、別荘のある近所は、
僅
(
わず
)
かに浪頭がかぶった位と見えて、砂地が汚ならしく濡れているばかりだった。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
少くとも彼の鼻の頭には、線香花火でやけどした程の火ぶくれが出来て、
甘皮
(
あまかわ
)
の破れた皮膚の下からほんの
僅
(
わず
)
かばかり血が
滲
(
にじ
)
んだ。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
表口までまわる
僅
(
わず
)
かの間に、彼は玉目三郎を
憶
(
おも
)
いだした。今朝がた狂乱の姿を見せたその若い妻が、暗い負担となって感じられて来る。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
迦陵嚬伽
(
かりょうびんが
)
の
馴
(
な
)
れ馴れし、声今更に
僅
(
わず
)
かなる、
雁
(
かりがね
)
の帰り行く。
天路
(
あまじ
)
を聞けばなつかしや、千鳥
鴎
(
かもめ
)
の沖つ波、行くか帰るか、春風の——
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
よんどころなしの仕事——長崎屋さんに、今度のことで、ほんの
僅
(
わず
)
か損をかけようとも、又の日で、何かでうめ合せもいたしましょう。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
で、出来るだけ
僅
(
わず
)
かの宅の中に子供等を詰め込む事が必要だつた。が、子供達は綺麗に、よく世話されて、気楽さうにしてゐた。
子供の保護
(新字旧仮名)
/
エマ・ゴールドマン
(著)
そのかわりに
壮
(
わか
)
い
和尚
(
おしょう
)
に頼んで手紙を夫人の
許
(
もと
)
へ送り、その返書を得て朝晩にそれを読みながら、
僅
(
わず
)
かに
恋恋
(
れんれん
)
の
情
(
じょう
)
を慰めていた。
悪僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その歩兵も
僅
(
わず
)
か五千、絶えて後援はなく、しかもこの
浚稽山
(
しゅんけいざん
)
は、最も近い
漢塞
(
かんさい
)
の
居延
(
きょえん
)
からでも優に一千五百里(支那里程)は離れている。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
ほんの
僅
(
わず
)
かしかなかったにゅうに、これもよく見入るとあたらしくにゅうが五分ばかりふえ、それの走りのするどさに
搏
(
う
)
たれた。
陶古の女人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
円周のごく一部を測って、その円の半径を出すのだから、ごく
僅
(
わず
)
かな測定の誤差があっても、半径従って彎曲率は、ひどくちがって来る。
茶碗の曲線:――茶道精進の或る友人に――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
よろしいと言う代りに、隊長は彼の方を見ないまま
右掌
(
みぎて
)
をあげて
僅
(
わず
)
か振った。敬礼をし、扉を押し、彼は一歩一歩階段を降りた。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
例せば甲武信岳の如きは、これまで古生層の山として記載された
申訳
(
もうしわけ
)
に、頂上附近に
僅
(
わず
)
か
許
(
ばか
)
りの古生層の岩片を戴いた花崗岩の山である。
秩父の奥山
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
僅
(
わず
)
か七円何十銭のおあしが、そうかと云って、彼にもままにならぬことを思うと、一層むしゃくしゃしないではいられなかった。
木馬は廻る
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
私は、年中人に誤解され通していますが、今の私は、こうして、
僅
(
わず
)
かに、本能の処理から来る悪戯感を享楽しているだけのことなのです。
踊る地平線:10 長靴の春
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
いかほど機会を待っても
昼中
(
ひるなか
)
はどうしても不便である事を
僅
(
わず
)
かに悟り得たのであるが、すると、今度はもう学校へは遅くなった。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
古人またかくの如く思いあきらめしかばその大望は後世終にこれを知るなきに至りしのみという瞬間の考のみ
僅
(
わず
)
かに今記憶せり。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
馬の
策
(
むち
)
をふるって続け打ちに打ち据えたので、さすがの乱暴者も頭を抱えて逃げ廻って、
僅
(
わず
)
かに自分の家へ帰ることが出来た。
中国怪奇小説集:12 続夷堅志・其他(金・元)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そんなことも云ったりしたこともあったが、それから
僅
(
わず
)
か半年の今ではもう詩集どころでなくなっている。日々の新聞さえ手にしないのだ。
日めくり
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
夜間の
僅
(
わず
)
かな時間を
偸
(
ぬす
)
んで父母の目を避けながら私の読んだ書物は、いろんな空想の世界のあることを教えて私を慰めかつ励ましてくれた。
鏡心灯語 抄
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
七十六 この室に蝟集している人々が
即
(
すなわ
)
ち全人類の
僅
(
わず
)
かなる遺族なんだ、この人々の
外
(
ほか
)
に人は無い、けれど彼等は死んだ人の幸福を
羨
(
うらや
)
んだ
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
そして鬼才詩人ランボーは、
僅
(
わず
)
かに三年間ほど文壇に居り、少数の立派な詩を書いた後で、直に
彗星
(
すいせい
)
のように消えてしまった。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
が、それと同時に、
韮
(
にら
)
を
噛
(
か
)
むような
嫉妬
(
しっと
)
が、ホンの
僅
(
わず
)
かではあるが、心の裡に
萌
(
きざ
)
して来るのを、
何
(
ど
)
うすることも出来なかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
昼は残忍なる
攻苦
(
せめく
)
に
遇
(
あ
)
い、夜は殊に寒いチベットの
獄屋
(
ひとや
)
、日当りのない
石牢
(
いしろう
)
の中に入れられて食物は
僅
(
わず
)
かに日に一度の
麦焦
(
むぎこが
)
し
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
私も体を調べてみると、極く
僅
(
わず
)
かだが、斑点があった。念のため、とにかく一度
診
(
み
)
て貰うため病院を訪れると、庭さきまで患者が
溢
(
あふ
)
れていた。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
僕の左に坐ったのは僕のおととい
沅江丸
(
げんこうまる
)
の上から
僅
(
わず
)
かに
一瞥
(
いちべつ
)
した支那美人だった。彼女は水色の夏衣裳の胸に
不相変
(
あいかわらず
)
メダルをぶら下げていた。
湖南の扇
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
郷里を立つとき祖母は私に
僅
(
わず
)
かばかりの
小遣銭
(
こづかいせん
)
をくれていうに、東京には
焼芋
(
やきいも
)
というものがある、腹が減ったらそれを食え。
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
して梅五郎の
許
(
もと
)
へは
沢山
(
たくさん
)
尋ねて来る人が有たのか女「はい有ッても
極極
(
ごく/\
)
僅
(
わず
)
かです其うちで
屡々
(
しば/\
)
来るのが甥の藻西太郎さんで、 ...
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
豊田の良持様の大きな御遺産を、あんぐり、呑んでおしまいになって、ほんの
僅
(
わず
)
かを、良兼、良正様へ、くれておやりになっているに過ぎぬ。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私の家と、お繁さんの家とは
僅
(
わず
)
かに
圃
(
はたけ
)
を一つ
距
(
へだ
)
てているばかりで、その家の屋根が見える。窓に
点
(
とも
)
っている
燈火
(
ともしび
)
が見える。
夜の喜び
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
偉力
(
いりょく
)
はジーイー研究所の最大なるものに比し、更に七十パーセント方強力である。
僅
(
わず
)
かこればかりのテイクロトロンが……
諜報中継局
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「オイ! 此女は
全裸
(
まっぱだか
)
だぜ。え、オイ、そして肺病がもう
迚
(
とて
)
も悪いんだぜ。
僅
(
わず
)
か二
分
(
ぶ
)
やそこらの金でそういつまで楽しむって訳にゃ行かねえぜ」
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
僅
(
わず
)
か
半歳
(
はんとし
)
あまりにこのように人家の密集する都市の
膨脹力
(
ぼうちょうりょく
)
を思うと、半歳の間の日本の変化も実はこれと同じにちがいないと梶は思って驚いた。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
僅
(
わず
)
か二十分ほど話して美術学校の一年生ぐらいが作ったらしい
木雕
(
もくちょう
)
の牛を見せられたが、それぎり美妙とは会わなかった。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
それで
僅
(
わず
)
か五両ばかりの小遣を貰って私が暮されると思いますかえ、お前さんは柳橋の相場を御存じがありませんからサ
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
僅
(
わず
)
かに残されているものは今日大いに珍重され、千金万金と評価されて誇りがましき料理の着物として存在しています。
近作鉢の会に一言
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
当時は花火の種類も
僅
(
わず
)
かで、大山桜とか鼠というような、ほんのシューシューと音をたてて、地上にただ落ちるだけ位のつまらない程度のもので
亡び行く江戸趣味
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
ところが
僅
(
わず
)
か二里ばかりの堤を溯った頃になると、ゼーロンの跛は次第に露骨の度を増して
稍々
(
やや
)
ともすると危く私に私の舌を噛ませようとしたり
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
特に微笑している唇のあたりが、……こう思っていると、それはほんの
僅
(
わず
)
かな時間であったが、相手は侮辱されでもしたように、顔を
歪
(
ゆが
)
めながら
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
僅
常用漢字
中学
部首:⼈
13画
“僅”を含む語句
僅少
僅々
僅有
僅三時
僅僅
僅有絶無
僅計