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下闇
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したやみ
ふりがな文庫
“
下闇
(
したやみ
)” の例文
杖を
径
(
こみち
)
に
突立
(
つきた
)
て/\、
辿々
(
たどたど
)
しく
下闇
(
したやみ
)
を
蠢
(
うごめ
)
いて
下
(
お
)
りて、城の
方
(
かた
)
へ去るかと思へば、のろく
後退
(
あとじさり
)
をしながら、
茶店
(
ちゃみせ
)
に向つて、
吻
(
ほっ
)
と、
立直
(
たちなお
)
つて
一息
(
ひといき
)
吐
(
つ
)
く。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
寒々
(
さむざむ
)
とした気持になって、夢中で部屋の中を探し廻る。ふと、壁ぎわの寝台の下を
覗
(
のぞ
)
くと、その
下闇
(
したやみ
)
の中に、燐のようなものが二つ蒼白い炎をあげている。
キャラコさん:06 ぬすびと
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
主人を乗せた二匹の驢馬は、落葉の深さに少しの跫音も立てないで、静かに
木
(
こ
)
の
下闇
(
したやみ
)
をたどります。獣も鳥も鳴かず、死の様な
幽寂
(
ゆうじゃく
)
が森全体を占めています。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼は、岩に立てかけた自分の背負いごから
頑固
(
がんこ
)
な
火繩銃
(
ひなわじゅう
)
を取りだした。そして、
木
(
こ
)
の
下闇
(
したやみ
)
に吸われて行った。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
老松
(
おいまつ
)
樹
(
た
)
ちこめて
神々
(
こうごう
)
しき
社
(
やしろ
)
なれば月影のもるるは拝殿
階段
(
きざはし
)
の
辺
(
あた
)
りのみ、物すごき
木
(
こ
)
の
下闇
(
したやみ
)
を
潜
(
くぐ
)
りて吉次は
階段
(
きざはし
)
の
下
(
もと
)
に進み、うやうやしく
額
(
ぬか
)
づきて祈る
意
(
こころ
)
に誠をこめ
置土産
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
▼ もっと見る
宵のうちにちょっと顔を見せた月は、間もなく霧に呑まれて、森の
木
(
こ
)
の
下闇
(
したやみ
)
は鼻をつままれてもわからない暗さだった。結城の藩と下妻との間に、横笛川という一筋の流れ。
平馬と鶯
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
久し振りの
水無月
(
みなづき
)
十三日の月輪を空に見たが、先頃から雨天がちに、
木
(
こ
)
の
下闇
(
したやみ
)
はじめじめ
泥濘
(
ぬかる
)
んでいるし、低い道には思わぬ流れが出来ていたりして、主従十三騎の落ちて行く道は
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
幅が狭いだけに
勾配
(
こうばい
)
が急に見える。別に女坂というのはないのですから、お豊はこの石段の上に立って見上げていると、十日ほどの月影が杉の木の間を洩れて、
木
(
こ
)
の
下闇
(
したやみ
)
では虫が鳴く。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
今まで五重塔の
九輪
(
くりん
)
に、最後の光を残していた夕陽が、いつの間にやら消え失せてしまうと、あれほど人の
行
(
ゆ
)
き
来
(
き
)
に
賑
(
にぎ
)
わってた浅草も、たちまち
木
(
こ
)
の
下闇
(
したやみ
)
の底気味悪いばかりに陰を
濃
(
こ
)
くして
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
それは重なり合った雑木の
下闇
(
したやみ
)
にさがっている
蜂
(
はち
)
の
巣
(
す
)
だった。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
売卜先生
木
(
こ
)
の
下闇
(
したやみ
)
の訪はれ顔
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
おのが名の
下闇
(
したやみ
)
にこそ。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
杖を
径
(
こみち
)
に突立て突立て、
辿々
(
たどたど
)
しく
下闇
(
したやみ
)
を
蠢
(
うごめ
)
いて下りて、城の
方
(
かた
)
へ去るかと思えば、のろく
後退
(
あとじさり
)
をしながら、茶店に向って、
吻
(
ほっ
)
と、立直って一息
吐
(
つ
)
く。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
時田は驚いて
木
(
こ
)
の
下闇
(
したやみ
)
を見ると、一人の男が立っていたが、ツイと長屋の裏の方へ消えてしまった。
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
その人にすがりつくように身をその
足許
(
あしもと
)
に投げたのを、白衣の人、すなわち机竜之助は、
徐
(
しず
)
かにその手で受けたが、二人が
面
(
かお
)
を見合すべく、
木
(
こ
)
の
下闇
(
したやみ
)
は暗いし、よし日と月がかがやき渡っても
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と
溜息
(
ためいき
)
をして云った。浮世を
鎖
(
とざ
)
したような黒門の
礎
(
いしずえ
)
を、
靄
(
もや
)
がさそうて、向うから押し拡がった、
下闇
(
したやみ
)
の草に踏みかかり、
茂
(
しげり
)
の中へ吸い込まれるや、否や、仁右衛門が
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
兵馬は松原の
木
(
こ
)
の
下闇
(
したやみ
)
を見込む。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
汽車
(
きしや
)
は
志
(
こゝろざ
)
す
人
(
ひと
)
をのせて、
陸奥
(
みちのく
)
をさして
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く——
早
(
は
)
や
暮
(
く
)
れかゝる
日暮里
(
につぽり
)
のあたり、
森
(
もり
)
の
下闇
(
したやみ
)
に、
遅桜
(
おそざくら
)
の
散
(
ち
)
るかと
見
(
み
)
たのは、
夕靄
(
ゆふもや
)
の
空
(
そら
)
が
葉
(
は
)
に
刻
(
きざ
)
まれてちら/\と
映
(
うつ
)
るのであつた。
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
足許だけぼんやり見える、
黄昏
(
たそがれ
)
の
木
(
こ
)
の
下闇
(
したやみ
)
を下り懸けた、暗さは暗いが、気は
晴々
(
せいせい
)
する。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
畑
(
はた
)
一つ
前途
(
ゆくて
)
を仕切って、縦に幅広く水気が立って、小高い
礎
(
いしずえ
)
を
朦朧
(
もうろう
)
と上に浮かしたのは、森の
下闇
(
したやみ
)
で、靄が
余所
(
よそ
)
よりも
判然
(
はっきり
)
と濃くかかったせいで、鶴谷が別宅のその黒門の
一構
(
ひとかまえ
)
。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
路はその雑木の中に出つ
入
(
い
)
りつ、糸を引いて
枝折
(
しおり
)
にした形に入る……赤土の
隙間
(
すきま
)
なく、
凹
(
くぼみ
)
に蔭ある、樹の
下闇
(
したやみ
)
の
鰭爪
(
ひづめ
)
の跡、馬は節々通うらしいが、処がら、
竜
(
たつ
)
の
鱗
(
うろこ
)
を踏むと思えば
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
下闇
(
したやみ
)
ながら——こっちももう、
僅
(
わず
)
かの処だけれど、赤い猿が
夥
(
おびただ
)
しいので、人恋しい。
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
黒雲
(
くろくも
)
を
被
(
かつ
)
いだ
如
(
ごと
)
く、
牛
(
うし
)
の
尾
(
を
)
が
上口
(
あがりくち
)
を
漏
(
も
)
れたのを
仰
(
あふ
)
いで、
上
(
うへ
)
の
段
(
だん
)
、
上
(
うへ
)
の
段
(
だん
)
と、
両手
(
りやうて
)
を
先
(
さき
)
へ
掛
(
か
)
けながら、
慌
(
あはたゞ
)
しく
駆上
(
かけあが
)
つた。……
月
(
つき
)
は
暗
(
くら
)
かつた、
矢間
(
やざま
)
の
外
(
そと
)
は
森
(
もり
)
の
下闇
(
したやみ
)
で
苔
(
こけ
)
の
香
(
か
)
が
満
(
み
)
ちて
居
(
ゐ
)
た。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
……梢の風は、雨の如く
下闇
(
したやみ
)
の草の
径
(
こみち
)
を、清水が音を立てて
蜘蛛手
(
くもで
)
に走る。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
烏瓜
(
からすうり
)
でございます。
下闇
(
したやみ
)
で暗がりでありますから、日中から、一杯咲きます。——あすこは、いくらでも、ごんごんごまがございますでな。
貴方
(
あなた
)
は何とかおっしゃいましたな、スズメの
蝋燭
(
ろうそく
)
。」
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
五月雨
(
さみだれ
)
の
茅屋
(
かやや
)
雫
(
しづく
)
して、じと/\と
沙汰
(
さた
)
するは、
山
(
やま
)
の
上
(
うへ
)
の
古社
(
ふるやしろ
)
、
杉
(
すぎ
)
の
森
(
もり
)
の
下闇
(
したやみ
)
に、
夜
(
よ
)
な/\
黒髮
(
くろかみ
)
の
影
(
かげ
)
あり。
呪詛
(
のろひ
)
の
女
(
をんな
)
と
言
(
い
)
ふ。かたの
如
(
ごと
)
き
惡少年
(
あくせうねん
)
、
化鳥
(
けてう
)
を
狙
(
ねら
)
ふ
犬
(
いぬ
)
となりて、
野茨
(
のばら
)
亂
(
みだ
)
れし
岨道
(
そばみち
)
を
要
(
えう
)
して
待
(
ま
)
つ。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
(今日は谷中の
下闇
(
したやみ
)
から、)
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
下
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
闇
常用漢字
中学
部首:⾨
17画
“下”で始まる語句
下
下手
下駄
下手人
下谷
下婢
下総
下司
下野
下僕