がほ)” の例文
旧字:
いと小さき花のれて咲くさま、花の数には入るべくもあらず見ゆるものながら、庭の四つ目籬の外などに、我はがほもせず打潜みたる
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
あきがほてのひらでべたりとでる。と此処こゝ一人ひとりつてるほど性根しやうねすはつたやつ突然いきなり早腰はやごしかさなんだが、おほふて、おもてそむけて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三四郎はじつと其横がほを眺めてゐたが、突然手杯こつぷにある葡萄酒を飲み干して、表へ飛び出した。さうして図書館に帰つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
丁度そこへ来て、座りもせず、御辞儀もせず、とぼがほに立つた小娘は、斯細君の二番目の児である。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
これと向ひあいに腰かけてゐるのが今大声をだしたので、年は四十位に見えるが、其あかがほは酒を呑むしるしなのであらう、見るからたくましそうな、そして其の袖口の赤ひのや
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
われは、教会の義財箱にちやら/\と響きさして、振り向きてほこがほある偽善家をにくむと共に、行為の抑制を重んじて心の広大なる世界を知らざるものをあはれむ事限りなし。
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
何物にか執着しふぢやくして、黒くげた柱、地にゆだねたかはらのかけらのそばを離れ兼ねてゐるやうな人、けものかばねくさる所に、からす野犬のいぬの寄るやうに、何物をかさががほにうろついてゐる人などが
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
彼は襖側ふすまぎはたたずんだまま、白い手術着を着た産婆が一人、赤児を洗ふのを見下してゐた。赤児は石鹸の目にしみる度にいぢらしいしかがほを繰り返した。のみならず高い声にきつづけた。
或阿呆の一生 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
勝手にやつて見ませうとわざとすねて、むつとがほをして見せるに、野沢さんは本当にどうかあそばしていらつしやる、何がお気に障りましたのとお縫はうつくしい眉にしわを寄せて心のしかねるてい
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
われがほおとがひ掻撫かいなづれば、例の金剛石ダイアモンド燦然きらりと光れり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と嘆息するやうにいへばまがほになつて
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
男は廊下から出入ではいりの出来る左側の席の戸口に半分身体からだした。男の横がほを見た時、三四郎はあとへ引き返した。席へかへらずに下足を取つて表へた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わらつた。が、ふと、あせばんだあかがほの、元気げんきらしい、わかいのが、くちびるをしめて……真顔まがほつて
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
丁度其中には、例の種牛もとぼがほに交つて居た。見れば角は紅く血に染つた。驚きもし、あきれもして、来合せた人々と一緒になつて取押へたが、其時はもう疲れて居たせゐか、別に抵抗てむかひも為なかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おもたまふぞとさしのぞかれ君様きみさまゆゑと口元くちもとまでうつゝをりこゝろならひにいひもでずしてうつむけばかくたまふはへだてがまし大方おほかたりぬれゆゑのこひぞうらやましとくやらずがほのかこちごとひとふるほどならばおもひにせもせじ御覧ごらんぜよやとさし
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御緩ごゆつくさまで、』と左側ひだりがはの、たゝみ五十畳ごじふでふばかりの、だゞつぴろ帳場ちやうば、……真中まんなかおほきつた、自在留じざいとめの、ト尾鰭をひれねたこひかげから、でつぷりふとつたあかがほして亭主ていしゆふ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
参観に来た師範校の生徒まであきがほに眺め佇立たゝずんで居たのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おもふまじ/\あだこゝろなく兄様あにさましたしまんによもにくみはしたまはじよそながらもやさしきおことばきくばかりがせめてもぞといさぎよく断念あきらめながらかずがほなみだほゝにつたひて思案しあんのよりいとあとにどりぬさりとてはのおやさしきがうらみぞかし一向ひたすらにつらからばさてもやまんを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
孫引まごひきのものがほ出来できなかつたのを遺憾ゐかんとする。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
銀杏返ゐてうがへしあかがほで、白粉おしろいくしてた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)