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川長のお米にそれほど思われているとは、夢にも知らなければ、またぶりにも気づかない弦之丞は、心もち天蓋てんがいを下げて慇懃いんぎん
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おらあ仲間うちからが高えと云われたもんだが、このごろは悠坊のおかげですっかり腰の低いにんげんになっちゃったぜ」
桑の木物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その新子に、夫人はほほえみもせず、の高い挨拶をして、良人おっとと並んだ椅子にだまったままで腰をおろした。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
翁は、なりに黄帽子を仰向あおむけ、ひげのない円顔の、鼻のしわ深く、すぐにむぐむぐと、日向ひなたに白い唇を動かして
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が高いッ、控えいッ、陪臣共またものどもが馴れがましゅう致して無礼であろうぞッ。当家御門前を何と心得ておる。
こちらから辞をひくうして挨拶あいさつをしてもそれに応答しようともせず、変に、自分ほど偉い者はないといった、の高い調子で、いつまでも、ちびりちびり飲んでいる。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
半襟位をあんな大きな奉書へ包んでなしの水引や熨斗のしをつけたのは茶番めいています。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
田舎の懐を都に開かせ、都のを自然に下げさせる——震災の働きの一つはこれでした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
故に他の一方について高きものを低くせんとするの工風くふうは随分かたき事なれども、これをおこのうて失策なかるべきが故に、この一編の文においては、かの男子の高きを取って押さえて低くし
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「そうよ。民さんなんざあ腰が低いんじゃねえ、けえんだ。それだからどうも信用されねえんだね」「本当によ。あれでっぱし腕があるつもりだから、——つまり自分の損だあな」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「銅兵衛!」と呼んでをかかえた。「気を確かに! 頼宣であるぞ!」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私はまったくこの時ばかりは名伏しあたわぬの下るのを覚えた。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「権四郎、が高い。と来らあ」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「佐久間氏、——が高いッ」
春水に歩みよりをおさへたる
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「あたし、それからここでいろんな日本の人に逢ったわ。だけど、参木みたいな人は一人もみないわ。あんなの高い人なんて、ロシア人にだってなかったし、支那人にだってひとりも逢わなかったわ。あの人、でも、殺されたのかしら。」
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
燕作は、野武士のぶしの仲間から、韋駄天いだてんといわれているほど足早あしばやな男。をさげて、昌仙からうけた密書をふところへ深くねじおさめ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みじか暖簾のれんにて分け、口おおきく、しわ深く、眉迫り、ごま塩髯しおひげ硬く、真赤まっかいしれたるつらを出し、夫人のその姿をじろりとる。はじめ投頭巾なげずきんかぶりたる間、おもて柔和なり。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
万三郎はひょいと腰をおとし、を相手の胸へ付けた。反射的な動作であった、なにもわかっていたのではないが、じつはそのときうしろから禿が丸太で殴りかかったのであった。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
端役人共ッ、が高かろうぞ。もそッと神妙に出迎えせいッ
大名たちにも構えの高い癖がついているので、稀〻たまたま、宿下がりかお使いで城外へ出ると、やたらに人間どもがいやしく見えてならなかった。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
透かさぬ早業はやわざさかさに、地には着かぬ、が、無慚むざんな老体、蹌踉よろよろとなって倒れる背を、側の向うの電信柱にはたとつける、と摺抜すりぬけに支えもあえず、ぼったら焼のなべを敷いた
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が高い! 控えろッ」
常に群臣を下に睥睨へいげいして、皇居へ伺候するとき以外は、を下げることを知らない信長にとっては、ここはよい修行室になるともいえよう。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ヒイッと悲鳴で仰向あおむけに土間に転がり落ちると、その下になって、ぐしゃりと圧拉ひしゃげたように、膝をの上へ立てて、うごめいた頤髯あごひげのある立派な紳士は、附元つけもとから引断ひききれて片足ない
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「はっ」と一角の側へ、を下げたのは森啓之助。「明日の御用意のため駈け廻っておりましたゆえ、ツイお召しも知らず遅うなりまして」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なかほどともなく、上面うわつらともなく、一条ひとすじ、流れの薄衣うすぎぬかついで、ふらふら、ふらふら、……はすに伸びて流るるかと思えば、むっくり真直にを立てる、と見ると横になって、すいと通る。
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし、君側の人々のの高いのは、近習でも小姓でも、皆そうなので、光秀は、この美童ばかりが、高慢とは思わなかった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と一ツ叱って、客が這奴しゃ言おうでもたげたを、しゃくったあごで、無言だんまり圧着おしつけて
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
左右の足もとに、ずらりと並んだ近侍たちのが低いためもあるし、また、彼の一身にかがやいている勢威というものが、そう見せるのでもあろう。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
和尚が長い頭巾のを、木菟みみずくむくりともたげると、片足を膝頭ひざがしらへ巻いて上げ、一本のすねをつッかえ棒に、黒い尻をはっと振ると、組違えに、トンと廻って、両のこぶしを、はったりと杖にいて
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すでに、そこの式台には、左右に明るい燭台を備え、用人らしい者以下、安房守あわのかみの召使がずらりとを下げていた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
対手あいて手拭てぬぐいかぶらない職人体のが、ギックリ、髪の揺れるほど、を下げて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吉次は、思わず両手をついて、額をむしろへすりつけた。心からこんなのひくい辞儀をしたのは、今が初めてだった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で尺取って、じりじりと後退あとずさり、——どうやらちっと、めつけられた手足の筋のゆるんだ処で、馬場の外れへ俵転がし、むっくりこと天窓あたまへ星をせて、山端やまばな突立つったつ、と目がくらんだか
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彦兵衛は、いつもの低い構えと口癖くちぐせを今夜はわすれ果てていた。すこし反身そりみ気味になって、理屈をこねた。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
入口の片隅に、フトあかりの暗い影に、背屈せくぐまった和尚がござる! 鼠色の長頭巾もっそう、ト二尺ばかりを長う、肩にすんなりとたれさばいて、墨染の法衣ころもの袖を胸でいて、寂寞じゃくまくとしてうずくまった姿を見ました……
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見れば、友禅の炬燵蒲団こたつぶとんに胸をうずめて、ちょっと澄まし気味の丸髷まるまげ若御新造わかごしんぞが、こっちの入るときからの身ごなしをにやにやとの高い顔して眺めている。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その気おのずから、脳天を圧して、いよいよを下げ
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こう面とむかって、開き直ってみると、磊落らいらくには見えても、さすがに富田とだ三家、随一人の名剣客、素町人のを圧するような威風を備えているが、町人種の中でも
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、を下げて、じっと見ながら
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人いちばいの低い、足軽五十人がしらでしかない一個の平侍ひらざむらいが、ぺたと、平伏しているに過ぎなかった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と焦って突きに首を振る。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
兄との会話は、そこで、ぷつりと切って、不承不承に、連れの道誉の馬上へも、形式的にを下げた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人は、はっと、大きな衝撃をうけた面持で、を下げた。——お答えは後刻にと、すぐ退がった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正成は、それと大蔵のまなざしを見くらべては、また見ていたが、やがて心もちをさげて言った。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その信長の床几しょうぎめぐって、佐久間右衛門、武井夕菴せきあん、明智十兵衛などの驍将ぎょうしょうが、を垂れて居ならんでいた。——ちょうど、親たちが息子に意見されてでもいるように。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はや車寄くるまよせには、随身たちがを揃えていた。つねの参内ならずとして、これも殿でん法印ほういんの用心か。屈強くっきょうなのが、供人ともびとの装いで、こぞッて、ながえの両わきにひざまずいている。
お可久様も又、それを当然として、内輪うちわでこそ砕けているが、往来へ出るとが高かった。
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若党や小僧や、大勢の召使が式台に出迎えたが、の高い刑部友矩は、目もくれなかった。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)