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錫杖
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しゃくじょう
ふりがな文庫
“
錫杖
(
しゃくじょう
)” の例文
見ると、むっくり起き上がった酒臭い大坊主が、いま楊志の足が、ふと
躓
(
つまず
)
いたらしい
錫杖
(
しゃくじょう
)
を拾い上げて大地にそれを突っ立てていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この両側左右の背後に、
浄名居士
(
じょうみょうこじ
)
と、
仏陀波利
(
ぶっだはり
)
が
一
(
ひとつ
)
は
払子
(
ほっす
)
を振り、
一
(
ひとつ
)
は
錫杖
(
しゃくじょう
)
に
一軸
(
いちじく
)
を結んだのを肩にかつぐように
杖
(
つ
)
いて立つ。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
盥
(
たらい
)
ほどある鉄の受糧器を持って、腕の太さの
錫杖
(
しゃくじょう
)
を衝いている。あとからは頭を剃りこくって三
衣
(
え
)
を着た
厨子王
(
ずしおう
)
がついて行く。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
七十の声を聞いたならばその時こそは全国
行脚
(
あんぎゃ
)
をこころざし、一本の
錫杖
(
しゃくじょう
)
を力に、風雲に身を任せ、古聖も
何人
(
なんぴと
)
ぞと発憤して
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
勝軍地蔵は日本製の地蔵で、身に甲冑を着け、軍馬に
跨
(
またが
)
って、そして
錫杖
(
しゃくじょう
)
と
宝珠
(
ほうじゅ
)
とを持ち、
後光輪
(
ごこうりん
)
を戴いているものである。
魔法修行者
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
平賀坊の平賀三郎は、宮家の
御笈
(
おんおい
)
を兵衛の枕もとへ立て、
独鈷
(
どっこ
)
、三
鈷鈴
(
これい
)
、
錫杖
(
しゃくじょう
)
、
五十串
(
いそくし
)
、備うべき仏具を取り出して、笈の上へ置きならべた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
測量部員が真に人跡未到と思われる深山を歩いていたらさび朽ちた一本の
錫杖
(
しゃくじょう
)
を見つけたという話もあるそうである。
地図をながめて
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
目を転じて室の西南隅に向かうと、そこには大安寺の、
錫杖
(
しゃくじょう
)
を持った女らしい観音や一輪の蓮花を
携
(
たずさ
)
えた男らしい観音などが、ズラリと並んでいる。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
従って槍、
鑓
(
やり
)
、劒、赤鬼、餓鬼、
錫杖
(
しゃくじょう
)
等は、北アルプスの山名には似合わしい文字であるが、南アルプスには例外として唯一の鋸岳があるのみである。
南北アルプス通説
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
仏名の僧を迎える行事も今年きりのことであるとお思いになると、僧の
錫杖
(
しゃくじょう
)
の音も身に
沁
(
し
)
んでお聞かれになった。
源氏物語:42 まぼろし
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
鉄の
錫杖
(
しゃくじょう
)
をふりまわす
花和尚
(
かおしょう
)
魯智深
(
ろちしん
)
、馬上に長刀を
操
(
あやつ
)
る九紋竜史進。二丁の
斧
(
おの
)
をかるがると
揮
(
ふる
)
う
黒旋風
(
こくせんぷう
)
李逵
(
りき
)
。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
この
錫杖
(
しゃくじょう
)
と鈴でございますか——これは、その時の伊太夫殿から
餞別
(
せんべつ
)
にいただきました。そうしてこれからわたくしはどこへ行く? とおたずねになりますか。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その仏様は
胡坐
(
あぐら
)
をかいて
蓮台
(
れんだい
)
の上に
坐
(
すわ
)
っていた。太い
錫杖
(
しゃくじょう
)
を担いでいた、それから頭に
笠
(
かさ
)
を
被
(
かぶ
)
っていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
弘法大師が
錫杖
(
しゃくじょう
)
でもって岩を突いて、水よ
湧
(
わ
)
けといったそうだ、三度も錫杖を突いていったそうだが、水は一滴も湧き出なかった、——そのころこの村は水不足で
おごそかな渇き
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お祈りも様々にさせてみたが、いつでも、皇子の枕元に白髪の老人が
錫杖
(
しゃくじょう
)
を持ってたたずんでいて、決して退散しない。そのうちに、とうとう亡くなってしまった。
現代語訳 平家物語:03 第三巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
手にした
錫杖
(
しゃくじょう
)
をならされ、案内を乞うて、「諸国遍歴の僧でござるが、今夜一夜の宿をお貸し下され」
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
身をふるわせて珠数もみくだき、はては
錫杖
(
しゃくじょう
)
を突きたてて、悪魔すらもハッタと祈り伏せんばかり。
屋根裏の犯人:――『鼠の文づかい』より――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
アルプス仕立の羽の帽子を
冠
(
かぶ
)
ったり、ピッケルを
担
(
かつ
)
いだりしたのは少ないが、
錫杖
(
しゃくじょう
)
を打ち鳴らす修験者、
継
(
つ
)
ぎはぎをした白衣の背におひずるを
覆
(
かぶ
)
せ、御中道大行大願成就
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
彼は仏の像を入れた重い
笈
(
おい
)
を背負って、
錫杖
(
しゃくじょう
)
をついて、信州の雪を踏みわけて中仙道へ出た。
半七捕物帳:19 お照の父
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
前なるは手に
錫杖
(
しゃくじょう
)
をついた
一癖
(
ひとくせ
)
ありげな
偉丈夫
(
いじょうふ
)
。後ろなるは、頭に
宝珠瓔珞
(
ほうじゅようらく
)
を
纏
(
まと
)
い、頂に
肉髻
(
にくけい
)
あり、
妙相端厳
(
みょうそうたんげん
)
、
仄
(
ほの
)
かに
円光
(
えんこう
)
を負うておられるは、何さま
尋常人
(
ただびと
)
ならずと見えた。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
一行がこの絶頂に於て非常に驚いたのは古来いまだかつて人間の入りし事のないちょうこの山の
巓
(
いただ
)
きに多年風雨に
曝
(
さら
)
され何ともいえぬ古色を
帯
(
お
)
びた
錫杖
(
しゃくじょう
)
の頭と長さ八寸一分、幅六分
越中劍岳先登記
(新字新仮名)
/
柴崎芳太郎
(著)
故に土人闇夜外出するに必ず
錫杖
(
しゃくじょう
)
を突き蛇その音を聴いて逃げ去ると。しかるに蝮は逃ぐる事遅いから英国労働者などこれを聾と見、その脊の斑紋実は文字で歌を書いて居るという。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
橋手前の広場に
葭簀
(
よしず
)
張りの茶店や麦湯の行灯、橋向うは細い横町を抜けて突当りが
回向院
(
えこういん
)
の表門、橋詰の左の角にデロレン
祭文
(
ざいもん
)
の常小屋、正面の高座に法螺の貝と
錫杖
(
しゃくじょう
)
で二人の太夫
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
大師が
錫杖
(
しゃくじょう
)
のさきで、穿って下さった井戸だといっております。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
咲き乱れている山神の
錫杖
(
しゃくじょう
)
、身を隠すばかりな
茅萱
(
ちがや
)
などの間をザクザクとかき分けて、やがて小高い
瘤山
(
こぶやま
)
の洞窟へ這い寄った四人——。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
頭巾を冠り行衣を着、高足駄を穿き
錫杖
(
しゃくじょう
)
を突き、その足下に前鬼後鬼の二人の山神を
跪
(
ひざまず
)
かせている。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
手先の一人は、倉松の持っていた
錫杖
(
しゃくじょう
)
が、真刀を仕込んだ物騒なものだったことを発見しました。
銭形平次捕物控:063 花見の仇討
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
祭文語りは
惣髪
(
そうはつ
)
を肩にかけ、
下頤
(
したあご
)
に
髯
(
ひげ
)
を生やし、黒木綿を着て、小脇差を一本さし、首に
輪宝
(
りんぽう
)
の
輪袈裟
(
わげさ
)
をかけ、右の手に小さな
錫杖
(
しゃくじょう
)
、左には
法螺
(
ほら
)
の貝、善光寺縁起から
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
鼠色の行衣に
籠手
(
こて
)
臑当
(
すねあて
)
と見まごう
手甲
(
てっこう
)
に脚袢、胡桃の実程もある大粒の水晶の珠数を
襷
(
たすき
)
のようにかけ、手に
握太
(
にぎりぶと
)
の柄をすげた
錫杖
(
しゃくじょう
)
を突き、背には重そうな
笈
(
おい
)
を負うていた。
木曽駒と甲斐駒
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
磧
(
かわら
)
に
錫杖
(
しゃくじょう
)
立てて歌よむ
行脚
(
あんぎゃ
)
など廻り燈籠のように眼前に浮ぶ心地せらる。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
明
(
あきらか
)
なる時、花の
朧
(
おぼろ
)
なる
夕
(
ゆうべ
)
、天女が、この
縁側
(
えんがわ
)
に、ちょっと
端居
(
はしい
)
の腰を掛けていたまうと、経蔵から、
侍士
(
じし
)
、
童子
(
どうじ
)
、
払子
(
ほっす
)
、
錫杖
(
しゃくじょう
)
を左右に、赤い獅子に
騎
(
き
)
して、
文珠師利
(
もんじゅしり
)
が、悠然と、草をのりながら
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ひと頃、山牢の近くに春を染めていた
岐良牟草
(
ぎらんそう
)
のむらさき花も散りつくして、真ッ赤な山神の
錫杖
(
しゃくじょう
)
や
白龍胆
(
しろりんどう
)
や
桔梗
(
ききょう
)
の花がそれに代っていた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
頭巾を冠り行衣を着、一本歯の鉄下駄を穿き、片手に
錫杖
(
しゃくじょう
)
を握ったところの、それは気高い老人であったが、しかし活きてはいなかった。他ならぬ人間の
木乃伊
(
ミイラ
)
であった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
和尚は
錫杖
(
しゃくじょう
)
をついて、笠をかぶり、
袈裟衣
(
けさごろも
)
に
草鞋
(
わらじ
)
を
穿
(
は
)
こうとして式台に腰をかけているところを、郁太郎を背負っている与八が、
跪
(
ひざまず
)
いて
恭
(
うやうや
)
しくその草鞋の紐を結んでやりますと
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
然
(
しか
)
るに測量部員が頂上に達した時、
其処
(
そこ
)
に
錆
(
さび
)
た槍の穂と
錫杖
(
しゃくじょう
)
の頭とを発見した。のみならず頂の直下でやや北に寄った所に在る岩窟の中に、焚火でもしたものか炭の破片が残っていた。
越中劒岳
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「ばかにするな。坊主とはがねと、無縁という法もあるまい。
錫杖
(
しゃくじょう
)
を一本
鍛
(
きた
)
えてもらいたいんだ。ちょっと、手ごろのな」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ガラガラという
錫杖
(
しゃくじょう
)
の音! 月光に閃めく匕首の光! ムラムラと寄せ、ガッと引っ組み、バタバタと仆される捕り方の姿! 枕橋の方へ一散に走る、夜叉丸と女勘助との姿が見えた。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
網代笠
(
あじろがさ
)
を深く
被
(
かぶ
)
って
袈裟文庫
(
けさぶんこ
)
をかけて、
草鞋穿
(
わらじばき
)
で、
錫杖
(
しゃくじょう
)
という
打扮
(
いでたち
)
です。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「ま、どうかお気楽にお一人で。——それよりはお坊ンさん。
錫杖
(
しゃくじょう
)
は五両かかります。どうかお手付の銀でも、ひとつ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
馬の背中には大きな
行李
(
こうり
)
が三つばかり
鞍
(
くら
)
に結びつけられて、その真中に
丈
(
たけ
)
三尺ばかりのお地蔵様の木像、どこから持って来たか、大分に
剥
(
は
)
げて、
錫杖
(
しゃくじょう
)
の先や
如意宝珠
(
にょいほうじゅ
)
なども少々欠けておりますが
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
加賀見忍剣
(
かがみにんけん
)
どのへ知らせん この
状
(
じょう
)
を手にされし日 ただちに
錫杖
(
しゃくじょう
)
を富士の
西裾野
(
にしすその
)
へむけよ たずねたもう
御方
(
おんかた
)
あらん
同志
(
どうし
)
の人々にも会い
給
(
たま
)
わん
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
伊勢の国
鈴鹿峠
(
すずかとうげ
)
の坂の下からこっちへ二里半、有名な関の地蔵が
六大無碍
(
ろくだいむげ
)
の
錫杖
(
しゃくじょう
)
を
振翳
(
ふりかざ
)
し給うところを西へ五町ほど、東海道の
往還
(
おうかん
)
よりは少し引込んだところの、参宮の抜け道へは近い粗末な茶店に
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
みやま
菫
(
すみれ
)
の
濃
(
こ
)
いむらさき色、白りんどうの
気高
(
けだか
)
い花、
天狗
(
てんぐ
)
の
錫杖
(
しゃくじょう
)
の
松明
(
たいまつ
)
をならべたような
群生
(
ぐんせい
)
、そうかと思うと、
弟切草
(
おとぎりそう
)
や
茅
(
ち
)
がやの
穂
(
ほ
)
や、
蘭科植物
(
らんかしょくぶつ
)
のくさぐさなどが
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「これから
錫杖
(
しゃくじょう
)
の頭と、
六大
(
ろくだい
)
の
環
(
かん
)
を刻めば、あとは
開眼
(
かいげん
)
じゃ」
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
間
(
ま
)
もなく、高尾の
奥院
(
おくのいん
)
からくだってきた
加賀見忍剣
(
かがみにんけん
)
は、
神馬小舎
(
しんめごや
)
から一頭の馬をひきだし、鉄の
錫杖
(
しゃくじょう
)
をななめに
背
(
せ
)
にむすびつけて、
法衣
(
ころも
)
の
袖
(
そで
)
も高からげに
手綱
(
たづな
)
をとり、
夜路
(
よみち
)
山路
(
やまみち
)
のきらいなく
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「おかしいな、よく見てごらん、頂上に
錫杖
(
しゃくじょう
)
が立っている」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「もし、ちょっとお訊ね申すが……」と、その
人群
(
ひとむれ
)
へ、
錫杖
(
しゃくじょう
)
を止めた山伏がある。久しぶりに、峰入りから都へもどってきたものとみえ、山伏は、
髯
(
ひげ
)
をのばし、皮膚は、松の皮みたいに
赭黒
(
あかぐろ
)
かった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
笠ヶ岳も
錫杖
(
しゃくじょう
)
も
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
“錫杖”の意味
《名詞》
僧侶や修験者が持つ杖。頭部を錫製でつくり複数の環をかける。
錫杖をたたえる声明。
(出典:Wiktionary)
“錫杖”の解説
錫杖(しゃくじょう)は、遊行僧が携帯する道具(比丘十八物)の一つである杖。梵語ではカッカラ()といい、有声杖、鳴杖、智杖、徳杖、金錫ともいう。
(出典:Wikipedia)
錫
漢検準1級
部首:⾦
16画
杖
漢検準1級
部首:⽊
7画
“錫”で始まる語句
錫
錫蘭
錫箔
錫崙
錫張
錫紙
錫蘭博物志
錫鍍
錫懸
錫秋