“銚子:ちょうし” の例文
“銚子:ちょうし”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花24
吉川英治21
太宰治12
徳田秋声8
田中貢太郎7
“銚子:ちょうし”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語3.7%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
我々はこの調子でとうとう銚子ちょうしまで行ったのですが、道中たった一つの例外があったのを今に忘れる事ができないのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「お光、お銚子ちょうしが出来たよ」と二階の上口あがりくちを向いて呼んだ。「ハイ」とお光はおりて来て自分を見て、
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「気晴しに、御酒を一つ。」と言って食物屋たべものやで飯を食うとき銚子ちょうしあつらえてお庄にも注いでくれた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その銅針の下には、お銚子ちょうしの袴のような銅製の円筒がついていて、これが杉の丸太の上に、帽子のようにはまっていた。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
二人を前に、銚子ちょうしを控えて、人交ぜもしなかった……その時お珊のよそおいは、また立勝たちまさって目覚しや。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
焼海苔に銚子ちょうしを運んだ後、おかみさんはお寒いじゃ御在ませんかと親し気な調子で、置火燵おきごたつを持出してくれた。
雪の日 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お楽はそう言って銚子ちょうしを取上げました。お静が出かけた後、邪魔する者もない心持で、晩酌の相手までしていたのです。
おくみは盃を額まであげ、唇をつけて、懐紙にくるんだ。それから、雅楽頭が次の盃を取ると、銚子ちょうしを持って給仕した。
昔し房州ぼうしゅう館山たてやまから向うへ突き抜けて、上総かずさから銚子ちょうしまで浜伝いに歩行あるいた事がある。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
慶四郎君の告白の終りかけた時、細君がお銚子ちょうしのおかわりを持って来て無言で私たちに一ぱいずつお酌をして静かに立ち去る。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
と白い手と一所に、銚子ちょうしがしなうように見えて、水色の手絡てがら円髷まるまげが重そうに俯向うつむいた。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
魚田ぎょでんに致させまして、吸物は湯山ゆさん初茸はつたけ、後は玉子焼か何かで、一銚子ちょうしつけさせまして
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
壺から、銚子ちょうしへ移して、炉の火にあたためながら、梅軒はもう自分の知識を傾けて、鎖鎌の戦に利のあることを力説していた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お身方もせわしかろう。独りのほうが勝手でござれば、銚子ちょうし飯櫃めしびつなども、ここへおいてお退さがりください」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんな話が始まっているところへ、お民は夫の友人をねぎらい顔に、一本銚子ちょうしなぞをつけてそこへ持ち運んで来た。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
着替えをしたお増は屠蘇とそ銚子ちょうしなどの飾られた下の座敷で、浅井と差し向いでいるとき、独りでそう思った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
茶が出る。見事な菓子が運ばれてくる。やがて、二の膳であった。また、美しい稚児ちご銚子ちょうしを持って来て、給仕についた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「飲みながらがい、召飯めしあがりながら聴聞ちょうもんをなさい。これえ、何を、お銚子ちょうしを早く。」
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
銚子ちょうしに残っていた酒を、湯呑みに注いで、あおりつけて、ふうと、熱い息を吐いたお初は、やがて、これも茶屋を出て行った。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「あら、姉さん、私は何にも。」とお千世は熱かった銚子ちょうしを持添えた、はっと薫る手巾ハンケチを、そのまま銚子を撫でて云う。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じゃ、どうしてやめたのか。聞こうとして、あんまり立ち入りすぎると思って、ひかえ、銚子ちょうしに手をやると、
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
じっと平次を見詰めた女の眼、——一と息に猪口ちょくをあけると、平次の手に持たせて銚子ちょうしを上げます。
甲斐は「もう少しだ」と云って書きつづけている。七十郎は自分の膳をひきよせ、銚子ちょうしを取って、手酌で飲んだ。
夕化粧をして着物を着換えたお銀が、そこへ出て坐ると、おどおどしたような様子をして、銚子ちょうしを取りあげた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と、席のすそに、蒔絵まきえ銚子ちょうしを前において、白々と、灯にまたたかせている寧子ねねの顔を、穴のあくほど見入っていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう心付いて見れば一同の座敷も同じ事、先ほど誂えた初茸はつたけの吸物もまたは銚子ちょうしの代りさえ更に持って来ない始末である。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
盆には一本の銚子ちょうし猪口ちょこを添え、それに鮞脯からすみのようなものを小皿に入れてつけてあった。
馬の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
なるべく、此家ここで時をつぶしていようと、清吉は銚子ちょうしを代えたが、手酌となるとすぐ酔ってしまった。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二本目のお銚子ちょうしにとりかかった時、どういう風の吹き廻しか、ふいと坂田藤十郎の事が思い浮んだのです。
風の便り (新字新仮名) / 太宰治(著)
「ええ、できるわ、きっと、あなたの事だから。ホホホホホ、お銚子ちょうしは?」と立ちながら、彼女は聞いた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
お庄は銚子ちょうしを持って母屋もやの方へ来たきり、しばらく顔出しをしずにいると、また呼び立てられて、離房はなれの方へ出て行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そして、彼が腰を立てるのと、良正が、そこらの高坏たかつき銚子ちょうしを踏んづけて、仰向けに、ひっくり返ったのと、一しょであった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女中が欠伸あくびをそっとみしめながら銚子ちょうしを取替えにと座を立った時ヨウさんは何か仔細しさいらしくわたしの名を呼んだ。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
海は、——銚子ちょうしの半島も、むらさき色にかすかに見えて、水平線は鏡のふちのように、ほのかな緑。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「何をぼんやり考えているんです。」とお国は銚子ちょうし銅壺どうこから引き揚げて、きまり悪そうな手容てつきで新吉の前に差し出した。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
門弟が運んで来た、酒肴しゅこう——といっても、どんぶりに、つくだ煮をほうり込んだのに銚子ちょうし——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
そら、そういった工合で、東京中は喰い詰める——し、勿論何でさ、この近在、大宮、宇都宮、栃木、埼玉、草加から熊ヶ谷、成田、銚子ちょうし
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
廊下へ、しとしとと人の音がする。ハッと息を引いて立つと、料理番がぜん銚子ちょうしを添えて来た。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と唇を横舐よこなめずって、熊沢がぬっと突出した猪口に、酌をしようとして、銅壺どうこから抜きかけた銚子ちょうしの手を留め、お千さんが、
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一本つけてくれた銚子ちょうし串差くしざしにしてさらの上に盛られたつぐみ、すべては客を扱い慣れた家の主人の心づかいからであった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こっくりした色に配してさえ、寒さのせいか、屈託でもあるか、顔の色がくないのである。銚子ちょうしは二本ばかり、早くから並んでいるのに。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おくみは焙り焼きにした山鳩の皿を、甲斐の膳の上に置き、銚子ちょうしに触ってみて、まださめていないことをたしかめてから、甲斐に酌をした。
もう一切いっさいの物を二階のあがり口へ持って来てあると見えて、こんろのあとから広蓋ひろぶたに入れた肉や銚子ちょうしなどを持って来た。
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
通いが遠い。ここでかんをするつもりで、お米がさきへ銚子ちょうしだけ持って来ていたのである。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やがてはしご段をあがって、廊下に違った足音がすると思うと、吉弥が銚子ちょうしを持って来たのだ。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
またそのお誓はお誓で、まず、ほかほかへ皿小鉢、銚子ちょうしを運ぶと、おかどが違いましょう。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とそこにある銚子ちょうしを持ち添えて勧めた。百姓の一人ひとりひざをかき合わせながら、
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それでも彼は、自分で自分を忘れようとでもしているように、後から後からと銚子ちょうしを重ねた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
彼の出来ることというのは、精々、酒を銚子ちょうしへ移して、膳へのせることぐらいなものだった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お君の方は今、その花やかな打掛の姿で、片手には銚子ちょうしを持って廊下を渡って行きました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
窓下の襖際ふすまぎわぜんの上の銚子ちょうしもなしに——もう時節で、塩のふいたさけの切身を、はもの肌の白さにはかなみつつ、辻三が……
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
綱宗は夫人に眼くばせをした。夫人は立って、銚子ちょうしを取り、甲斐に酌をした。甲斐はべつにおどろいたようすもなく、静かに礼をして、その酒を飲んだ。
ちょいちょい立ってはお島をのぞきに来た人達も、やっと席に落着いて、銚子ちょうしを運ぶ女の姿が、一時ひとしきりせわしく往来ゆききしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と返辞して、そのキヌちゃんという三十歳前後のいきしまの着物を着た女中さんが、お銚子ちょうしをお盆に十本ばかり載せて、お勝手からあらわれる。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
アノ銚子ちょうしを出せ、なんだ貴様はちょうの折りようを知らぬかと甥子おいごまでしかとばして騒ぐは田舎気質かたぎの義に進む所なり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
(いままだ、銀座裏で飲んでいよう、すました顔して、すくすくと銚子ちょうしの数を並べて。)
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お止しと言うのに」と、小万が銚子ちょうしろうとすると、「酒でも飲まないじゃア……」と、吉里がまた注ぎにかかるのを、小万は無理に取り上げた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
この時小綺麗こぎれいな顔をした、田舎出らしい女中が、かんを附けた銚子ちょうしを持って来て、障子を開けて出すと主人が女房に目食めくわせをした。
鼠坂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そして、黙ったまま、幾つとなく並んでいる酒樽の中の一番上等なのを指さして、手にした、神前へ供えるような土焼きの銚子ちょうしをうやうやしく差し出した。
寺僧は、そっと、銚子ちょうしや膳を下げてゆく。従者は、壁際に坐って明りのまたたきに、手枕の主人が、風邪をひきはすまいかと、案じ顔にながめていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わかきれいじょちゅうの一人がこちらのほうへ横顔を見せて銚子ちょうしを持っていたが、客はこっちを背にして障子のかげに体を置いているので
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と立った侍女たちは、素焼の盃と銚子ちょうしとを取り揃えて来て、勝頼父子のまえにおいた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、二人をねぎらい、秀吉は、隣を振り向いて、銚子ちょうしを持つ女童めわらべを招いた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
七十郎は飲もうとして、銚子ちょうしに酒がないのを知り、大きな声で辻村と呼んだ。又之助、酒がないぞとどなり、それからぐらっと頭をゆすって甲斐を見た。
「お酒でもうんと飲んで騒ぎましょうか。」と万事を察してお銚子ちょうしを取りに立った。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「ほんとにお待ちになっていらしったんですよ。お銚子ちょうしをおつけ致しましょうか。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
で、ほどなく舞いが終りますと腰元どもがお銚子ちょうしを持って廻ったりしておりましたが
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
気爽きさくで酒のお酌などの巧いおとらは、夫の留守などに訪ねてくる青柳を、よく奥へ通して銚子ちょうしのおかんをしたりしているのを、お島は時々見かけた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
小さい島台や、銚子ちょうしさかずきなども、いつの間にか、浅い床に据えられた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
海上暴風雨しけのためにいつもは房州へはいるはずの、仙台米の積船ふねが、いわしのとれるので名高い九十九里くじゅうくり銚子ちょうしの浜へはいった。
膳部ぜんぶや、銚子ちょうしを持って、幾たびとなく、帳場の前を往来する女中たちが、
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銚子ちょうしを換えに来ていた女中が、「おや、今晩のは本当のでございます」と云った。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
と、秀吉は、わざとのように、眼をまろくして、いきなり前の銚子ちょうしった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼のほうでも、来ないほうがいいと思ったが、ふじこは銚子ちょうしを持って戻って来た。
御存じの融通ゆずうが利かないんだから、よし、ついでにお銚子ちょうしのおかわりが、と知らない女を呼ぶわけにゃ行かずさ、瀬ぶみをするつもりで、行ったんだ。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
待遇もてなすやうなものではない、銚子ちょうしさかずきが出る始末、わかい女中が二人まで給仕について、寝るにも紅裏べにうら絹布けんぷ夜具やぐ
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふたりが、話に熱しているまに、いつか、膳や銚子ちょうしなどが、運ばれて来ていた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、べつな三方には、用意して来た杯が乗せられ、側の盆には銚子ちょうしも供えて、
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あんな者でも、おってくれれば事がすんで行くけれど、おらなくなれば、またその代りを一苦労せにゃならん。——おい、お君、馬鹿どもにお銚子ちょうしをつけてやんな」
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
こんな言葉をかわした後、間もなくお民はしたくのできたぜんを台所から運んで来た。憔悴しょうすいした夫のためにつけた一本の銚子ちょうしをその膳の上に置いた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と客にたずねます。私には、その時、或る事が一つ、わかりました。やはりそうか、と自分でひとり首肯うなずき、うわべは何気なく、お客にお銚子ちょうしを運びました。
ヴィヨンの妻 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そして、長庵と顔が合って、あッ! と両方が驚いた拍子に、お六の手から銚子ちょうしすべり落ちて、……途端に、あわただしい跫音あしおとが廊下を飛んで来た。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おみやは燗鍋の酒を銚子ちょうしに移して、新八にさかずきを持たせようとした。
それは僕が始めて簡単な鉱石受信機を作って銚子ちょうしの無線電信を受けた其の夜から、不思議に心を躍らせるようになった言わば一種の「え出でた恋」だったのです。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
亭主と客とがこんな言葉をかわしているところへ、お隅も勝手の方からたすきをはずして来て、下女にぜんをはこばせ、半蔵が身祝いにと銚子ちょうしをつけて出した。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まあ、その銅壺どうこに、ちゃんとお銚子ちょうしがついているんじゃありませんか。踊のお師匠さんだったといいますから、お銚子をお持ちの御容子ごようすも嬉しい事。
するとおくみが成瀬久馬から銚子ちょうしを取って立ち、十左の前へいって坐った。
「すこし御酔いなさいよ。貴方」と中年増の妓が銚子ちょうしを持添えて勧めた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ざるに生玉子、銚子ちょうしを一本つけさせて、三人はさも楽しそうに飲食した。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
口の欠けた銚子ちょうしが二本と章魚たこものと魚の煮たものだった。
雪の夜 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
山田は伊沢に酒をぐつもりで銚子ちょうしを持ってみると冷たくなっていた。じょちゅうはもう傍にいなかった。山田は手を鳴らした。山田も伊沢もかなり酔うていた。
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と、陣場夫人は、男達へお酌をするついでにお銚子ちょうしを幸子の方へ向けた。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
が下女が三本目の銚子ちょうしを置いて行った時に、始めて用談に取り掛った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのうちに学士のあつらえた銚子ちょうしがついて来た。建増した奥の部屋に小さなチャブ台を控えて、高瀬は学士とさしむかいに坐って見た。一口やるだけの物がそこへ並んだ。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そうとは知らないお艶、ぬれ手拭をさげた栄三郎をこころ待ちに、貧しいなかにも黙って出して喜ばせようと、しきりに口のかけた銚子ちょうしかんぐあいを気にしていると——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
返事は下でおきまりの、それは小女か女中かで、銚子ちょうしさかずき、添えものは、襖が開いて、姪——間淵の娘の手で、もう卓子台ちゃぶだいに並んだのでありました。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いちど僕は、ピアニストの川上六郎氏を、若松屋のその二階に案内した事があった。僕が下の御不浄に降りて行ったら、トシちゃんが、お銚子ちょうしを持って階段の上り口に立っていて、
眉山 (新字新仮名) / 太宰治(著)
撫子、銚子ちょうし杯洗はいせんを盆にして出で、床なる白菊をと見て、空瓶あきびんの常夏に、膝をつき、ときの間にしぼみしをかなしさまにて、ソと息を掛く。
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
空襲して来た敵機隊との最初の空中戦は、銚子ちょうし海岸を東へ去ること五十キロの海原の上空で始まった。——志津飛行隊に属する戦闘機隊が、敵の第一編隊を強襲したのだった。……
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と言って銀子に差すのを、銀子は銚子ちょうしを取りあげて酌をした。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)