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銚子
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ちょうし
ふりがな文庫
“
銚子
(
ちょうし
)” の例文
この時
小綺麗
(
こぎれい
)
な顔をした、田舎出らしい女中が、
燗
(
かん
)
を附けた
銚子
(
ちょうし
)
を持って来て、障子を開けて出すと主人が女房に
目食
(
めく
)
わせをした。
鼠坂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
省三は不思議に思って
婢
(
じょちゅう
)
の声のした方を見た。昨日の朝
銚子
(
ちょうし
)
で別れた女が婢の傍で笑って立っていた。女は
華美
(
はで
)
な
明石
(
あかし
)
を着ていた。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
芸者でお呼び遊ばした、と思いますと……お役に立たず、
極
(
きま
)
りが悪うございまして、お
銚子
(
ちょうし
)
を持ちますにも手が震えてなりません。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
おくみは焙り焼きにした山鳩の皿を、甲斐の膳の上に置き、
銚子
(
ちょうし
)
に触ってみて、まださめていないことを
慥
(
たし
)
かめてから、甲斐に酌をした。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
無闇
(
むやみ
)
に酒を強いられぬうち腹を
拵
(
こしら
)
えて置くに
如
(
し
)
かずと佐助は別室へ引き退って先に夕飯の
馳走
(
ちそう
)
を受けたが
御飯
(
ごはん
)
を
戴
(
いただ
)
きますというのを
銚子
(
ちょうし
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
磯五の酌はおせい様が引きうけて、器用に
銚子
(
ちょうし
)
を持っていた。料理は、
素人
(
しろうと
)
の家のものとは思えないほど、立派なものであった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
『なにを? ……』主の渡は、佐藤義清のまえにすわって、
銚子
(
ちょうし
)
をすすめながら、そら耳に答えたまま、なお義清とむつみつづけていた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と返辞して、そのキヌちゃんという三十歳前後の
粋
(
いき
)
な
縞
(
しま
)
の着物を着た女中さんが、お
銚子
(
ちょうし
)
をお盆に十本ばかり載せて、お勝手からあらわれる。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
江戸川を上る
行徳
(
ぎょうとく
)
の塩、大利根を上る
銚子
(
ちょうし
)
の魚類のごときも、皆
水海道
(
みつかいどう
)
を経て阿久津に送り、始めてこれを陸上に散布した。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
銚子
(
ちょうし
)
に残っていた酒を、湯呑みに注いで、
煽
(
あお
)
りつけて、ふうと、熱い息を吐いたお初は、やがて、これも茶屋を出て行った。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
そのまま床の前の
緞子
(
どんす
)
の座布団にドッカと腰を下して、腕を組んでいると今度は、美しく
身化粧
(
みじまい
)
した高島田の娘が、
銚子
(
ちょうし
)
を捧げて
這入
(
はい
)
って来た。
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「何をぼんやり考えているんです。」とお国は
銚子
(
ちょうし
)
を
銅壺
(
どうこ
)
から引き揚げて、きまり悪そうな
手容
(
てつき
)
で新吉の前に差し出した。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お楽はそう言って
銚子
(
ちょうし
)
を取上げました。お静が出かけた後、邪魔する者もない心持で、晩酌の相手までしていたのです。
銭形平次捕物控:024 平次女難
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
こんな言葉をかわした後、間もなくお民はしたくのできた
膳
(
ぜん
)
を台所から運んで来た。
憔悴
(
しょうすい
)
した夫のためにつけた一本の
銚子
(
ちょうし
)
をその膳の上に置いた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
手を叩いて女中を呼び、「おい
姐
(
ねえ
)
さん、
銚子
(
ちょうし
)
の代りを……熱く頼むよ。それから
間鴨
(
あい
)
をもう二人前、
雑物
(
ぞうもつ
)
を交ぜてね」
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
その銅針の下には、お
銚子
(
ちょうし
)
の袴のような銅製の円筒がついていて、これが杉の丸太の上に、帽子のように
嵌
(
はま
)
っていた。
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「お止しと言うのに」と、小万が
銚子
(
ちょうし
)
を
奪
(
と
)
ろうとすると、「酒でも飲まないじゃア……」と、吉里がまた注ぎにかかるのを、小万は無理に取り上げた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
父は出入りの
下役
(
したやく
)
、
淀井
(
よどい
)
の老人を相手に奥の広間、
引廻
(
ひきまわ
)
す
六枚屏風
(
ろくまいびょうぶ
)
の陰でパチリパチリ碁を打つ。折々は手を叩いて、
銚子
(
ちょうし
)
のつけようが悪いと怒鳴る。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
おお、お豊か。待っていた。ここへ来な来な。さ
母
(
おっか
)
さんに代わって酌でもしなさい。おっと乱暴な
銚子
(
ちょうし
)
の置き方を
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
昔し
房州
(
ぼうしゅう
)
を
館山
(
たてやま
)
から向うへ突き抜けて、
上総
(
かずさ
)
から
銚子
(
ちょうし
)
まで浜伝いに
歩行
(
あるい
)
た事がある。その時ある晩、ある所へ
宿
(
とまっ
)
た。ある所と云うよりほかに言いようがない。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
不思議の因縁でおれの養女分にして嫁
入
(
いら
)
すればおれも一トつの
善
(
よ
)
い功徳をする事ぞとホク/\喜び、
忽
(
たちま
)
ち下女下男に、ソレ
膳
(
ぜん
)
を出せ
椀
(
わん
)
を出せ、アノ
銚子
(
ちょうし
)
を出せ
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「ええ、できるわ、きっと、あなたの事だから。ホホホホホ、お
銚子
(
ちょうし
)
は?」と立ちながら、彼女は聞いた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
しかし平七は、それすらもまるでよその国の出来ごとのように、ふわりとした顔をして、
頬杖
(
ほおづえ
)
をついたまま、あいた片手で
銚子
(
ちょうし
)
を引寄せると、
物憂
(
ものう
)
げに盃を運んだ。
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
やがてはしご段をあがって、廊下に違った足音がすると思うと、吉弥が
銚子
(
ちょうし
)
を持って来たのだ。けさ見た素顔やなりふりとは違って、尋常な芸者に出来あがっている。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
口の欠けた
銚子
(
ちょうし
)
が二本と
章魚
(
たこ
)
の
酢
(
す
)
ものと魚の煮たものだった。すぐあとから別な背の低い
唇
(
くちびる
)
の厚い女が火を持ってきた。が、火鉢に移すと、何も言わずに出ていった。
雪の夜
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
「お光、お
銚子
(
ちょうし
)
が出来たよ」と二階の
上口
(
あがりくち
)
を向いて呼んだ。「ハイ」とお光は
下
(
おり
)
て来て自分を見て
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
それは、お
銚子
(
ちょうし
)
を下から運んできた中年の女中が、顔かたちだけでなく、おどおどしたような
挙措振舞
(
きょそふるまい
)
も、俺の死んだおふくろをまざまざと思い出させたせいもあろうか。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
色こそあおざめているけれど、さすが
縹緻
(
きりょう
)
を自慢するだけあって、眼に立つほどに美しい。トンと腰かけにひじを突いた。「これ女中、お
銚子
(
ちょうし
)
」気取ることだけは忘れない。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それでも彼は、自分で自分を忘れようとでもしているように、後から後からと
銚子
(
ちょうし
)
を重ねた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
束
(
つか
)
ねて降る
驟雨
(
しゅうう
)
酌
(
しゃく
)
する女がオヤ失礼と軽く出るに俊雄はただもじもじと
箸
(
はし
)
も取らずお
銚子
(
ちょうし
)
の代り目と出て行く後影を見澄まし洗濯はこの間と怪しげなる
薄鼠色
(
うすねずみいろ
)
の
栗
(
くり
)
のきんとんを
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
お君の方は今、その花やかな打掛の姿で、片手には
銚子
(
ちょうし
)
を持って廊下を渡って行きました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
新規開店に先立ち、法善寺境内の正弁丹吾亭や道頓堀のたこ梅をはじめ、行き当りばったりに関東煮屋の
暖簾
(
のれん
)
をくぐって、味加減や
銚子
(
ちょうし
)
の中身の工合、商売のやり口などを調べた。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
といいながら、
銚子
(
ちょうし
)
の裾の方を器用に支えて、渡瀬の方にさし延べた。渡瀬もそれを受けに手を延ばした。親指の股に仕事
疣
(
いぼ
)
のはいった巌丈な手が、不覚にも心持ち
戦
(
ふる
)
えるのを感じた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
海上暴風雨
(
しけ
)
のためにいつもは房州へはいるはずの、仙台米の
積船
(
ふね
)
が、
鰯
(
いわし
)
のとれるので名高い
九十九里
(
くじゅうくり
)
の
銚子
(
ちょうし
)
の浜へはいった。江戸仙台藩の蔵屋敷からは中沢
某
(
なにがし
)
という侍が銚子へ出張した。
旧聞日本橋:10 勝川花菊の一生
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
猿沢が飲んでいるのは、一級酒の
銚子
(
ちょうし
)
でした。しかも肴を三四品並べたりして、なかなか豪勢な恰好です。これに反して蟹江の方の肴はたった一皿で、それも一番安い
鰈
(
かれい
)
の煮付けなのでした。
Sの背中
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
暫くして子は戸袋の処からまた隣家の庭をソッと
覗
(
のぞ
)
いた。母が兼の横に坐って
銚子
(
ちょうし
)
を
捧
(
ささ
)
げるようにしているのが見えた。子はもう母が自分の方を向くだろうと思ってその方を長らく見ていた。
火
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
また、白皮まぐろ、これは
銚子
(
ちょうし
)
、三陸方面に漁獲のあるもの。また、おかじき、まかじき、大きさ三十貫止まりのもの、二十五、六貫止まりの夏きわだ。最下等品の
眼
(
め
)
の大きい
横太
(
よこぶと
)
なめばち。
鮪を食う話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
千葉県の
銚子
(
ちょうし
)
にちかいSという漁師町に、ふしぎなことがおこりました。
妖星人R
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ざるに生玉子、
銚子
(
ちょうし
)
を一本つけさせて、三人はさも楽しそうに飲食した。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
分家の長兄もいつか運転手の服装を改めて座につき、仕出し屋から運ばれた簡単な精進料理のお膳が二十人前ほど並んで、お
銚子
(
ちょうし
)
が出されたりして、ややいなかのお葬式めいた気持になってきた。
父の葬式
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
の句につきて「湯婆に燗せとは果して何のためにするにや」云々と
有之
(
これあり
)
候、その湯婆につき思ひ当れるは、当地方にて
銚子
(
ちょうし
)
の事をタンポと申候事にてお銚子持つて来いをタンポ持つて来いと申候
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
取るものも
不取敢
(
とりあえず
)
大急ぎで
両国
(
りょうごく
)
駅から
銚子
(
ちょうし
)
行の列車に乗り込んだ。
花束の虫
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
「そう改まれるとちと気がさすが、せっかくのことだから、遠慮なく申しますぜ。……酒のほうは、すこしねばるが、
花菱
(
はなびし
)
に願いましょう。
銚子
(
ちょうし
)
では酒の肌が荒れるから、錫のちろりで、ほんのり人肌ぐらいに願います」
顎十郎捕物帳:16 菊香水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
銚子
(
ちょうし
)
をとり、自分で杯をみたした。
お守り
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
撫子、
銚子
(
ちょうし
)
、
杯洗
(
はいせん
)
を盆にして出で、床なる白菊を
偶
(
ふ
)
と見て、
空瓶
(
あきびん
)
の常夏に、膝をつき、ときの間にしぼみしを
悲
(
かなし
)
む
状
(
さま
)
にて、ソと息を掛く。
錦染滝白糸:――其一幕――
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ばかにするものかね、親孝行のお嬢さんの、お詞どおりにすると、云ってるじゃないか」
銚子
(
ちょうし
)
を
執
(
と
)
って長吉の盃の近くへやり
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
七十郎は
銚子
(
ちょうし
)
を取ったが、酒がなくなっているので「おい」と高い声をあげた。すると返辞が聞えて、辻村又之助が出て来た。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして、彼が腰を立てるのと、良正が、そこらの
高坏
(
たかつき
)
や
銚子
(
ちょうし
)
を踏んづけて、仰向けに、ひっくり返ったのと、一しょであった。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お庄は
銚子
(
ちょうし
)
を持って
母屋
(
もや
)
の方へ来たきり、しばらく顔出しをしずにいると、また呼び立てられて、
離房
(
はなれ
)
の方へ出て行った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
菊屋にはその頃、他の店にくらべて酒が豊富にあったようである。しかし、一人にお
銚子
(
ちょうし
)
二本ずつと定められていた。
未帰還の友に
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
“銚子”の意味
《名詞》
銚子(ちょうし)
酒を注ぐための長柄のついた器。
徳利。
《固有名詞》
千葉県北東端に位置する市。
(出典:Wiktionary)
銚
漢検準1級
部首:⾦
14画
子
常用漢字
小1
部首:⼦
3画
“銚子”で始まる語句
銚子縮
銚子口
銚子在
銚子局
銚子袴