よこ)” の例文
文太郎は大概の出來事は時々よこした春三郎の手紙で知つて居たが、固より最近の出來事であるちびの病氣の事は知る筈がなかつた。
日蔭ひかげの茶屋の事件があった時、早速見舞の手紙を送ると直ぐ自筆の返事をよこしたが、事件が落着してもそれぎり会わなかった。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
しかし吉五郎は寺の納所なっしょにたのんで、あしたの朝は駕籠を迎いによこすから、今夜だけはここへ寝かして置いてくれと云った。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もしや来たらお浪をよこしてわしに知らせろ、そうしてわしの来る間手前てめえは路地口の処へ出て掛合っていろ、手前てまえは此の長屋の行事でございますが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
片道一里もあるところをたった二合ずつ買いによこされて、そして気むずかしい日にあ、こんなに量りが悪いはずはねえ、大方おおかた途中とちゅうで飲んだろう
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これは何時いつやら鏡子が子の上で見た凶夢を悲しがつて書いてよこしたのを、叔母から語られて子供達は知つたのである。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
たのんでよこしたるならん五年のあひだ千辛萬苦せんしんばんくしてためたる金子もよく/\我に授らぬ金なり斷念あきらめるより外無しと力を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼奴きゃつめ吾輩が昨夜から徹夜をして、何も喰っていない事を知っていやがるんだ。そこで吾輩の大好物の長崎のカステラをよこして上杉謙信を気取りやがったんだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その礼状かたがたの返事で、その返事に西洋の白砂糖とほかに二、三品珍しい物を添えてよこされました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
母は顏色かへて圖太い奴めが是れほどの淵に投げ込んで未だいぢめ方が足りぬと思ふか、現在の子を使ひに父さんの心を動かしによこし居る、何といふて遣したと言へば
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この方から私へ使いをよこして私にも相談相手になってもらいたいという申し込みがありました。
宝の山に入りながらではないが、我が荷物ながらオイよこせと持出す訳にも行かず、知らぬ顔に一、二町スタスタ行き過ぎると、たちま背後うしろからオーイオーイと呼ぶ者がある。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
僕はそんなに不信用なんですかと聞くと、えゝと云つて笑つてゐる。いやになつちまつた。ぢや小川をよこしますかなと又聞いたら、えゝ小川さんに御手渡し致しませうと云はれた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
兄弟分が御世話になりますからとの口上を述べに何某が鹿爪しかつめらしい顔で長屋を廻ったりした。すると長屋一同から返礼に、大皿に寿司をよこした。唐紙とうしを買って来て寄せ書きをやる。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「それからアノー例の事ネ、あの事をまた何とか言ッておよこしなすッたかい」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
今さらそんなことをいってよこすことが、月輪殿には、むしろ不満だった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしうたものよこしあんしたよ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
貴下が勝手に之をい落して会津を取られたことは、殿下に於て甚しく機嫌を損じていらるるところだ、と云ってよこした。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
入込みの湯へよこさなければいゝというようなものだから、まア/\そんな事を云わないで堪忍してやっておくんなさい
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
生憎あいにく留守で会わなかったので、手紙を送ると直ぐよこしたのが次の手紙で、それぎり往復は絶えてしまった。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
聞てお金の驚き息子が見染めて取ぬまでも二百兩といふ大金たいきん支度金したくきんにまでよこした小西屋今日に成り婚姻を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もっともツァ・ルンバは大抵私が大蔵大臣の宅に居るだろうとは察して居ったですけれども、自分の所からじきに使をよこすことをはばかってよう遣さなかったのだそうです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
うちの中で一番美人と云ふ評判をする人があるとか、自分も確かにさう思ふのと榮子の事をお照が巴里パリイへ書いてよこすのを、巴里パリイで夫婦はそんな事がと云つて苦笑したのであつたが
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
代りの御慰おなぐさみにと云ってよこしたもので、王のへやの真中の象牙張ぞうげばりの机の上にかごに入れて置いてあったが、奇妙な事にはその歌う声が昨夜ゆうべ夢のうちで聞いた美留女姫の声にそっくりで
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
市郎と冬子の結婚は、安行死去の為に来年まで延期されたので、忠一は一先ひとまず東京へ帰った。それから半月ほど経ってのち、彼は市郎のもとへ長い手紙をよこした。𤢖に対する調査の報告書である。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
現在の子を使ひにととさんの心を動かしによこしおる、何といふて遣したと言へば、表通りの賑やかな処に遊んでゐたらば何処のか伯父さんと一処に来て、菓子を買つてやるから一処にお出といつて
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『江戸と上方、手紙ではらちがあかん。いちど誰ぞよこされればよいにな』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見継みついで上げますから、小兼に話して手紙の一本もよこしなさればすぐに出て来て話相手にも成りましょうから、お心置なく小兼にまで一寸ちょっと言伝ことづてをなさるよう
わずかに数回の面識しかない浅い交際の私のもとへまでよこしたのを見るとかなり多数の知人に配ったらしいが
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
べらぼうめえ、えものは無えやナ、おれの脱穀ぬけがらを持って行きゃ五六十銭はよこすだろう。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すると、いやもう今日はとても駄目だ明日でないと。その息子のいうにはそれでは此品これはパーサンと言う者が上げたいと言ってよこしたからどうかゲロン・リンボチェにお上げ下さい。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
もて此方へ斷りによこせしが子息長三郎は聞ていかり忠兵衞を説破せつぱして五日のあひだ癲癇てんかん有無うむ調しらべて來るやうにと云れて困り切たる景状ありさま見るに忍びず吾儕わたし負擔うけおひ爰迄聞に來りしと一什しじふのべ泪組なみだぐはなし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
現在げんざい使つかひにとゝさんのこゝろうごかしによこる、なんといふてよこしたとへば、表通おもてどほりのにぎやかなところあそんでたらば何處どこのか伯父おぢさんと一しよて、菓子くわしつてやるから一しよにおいでといつて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「はて、われらの約束にいつわりはござらぬ。あすでもあさってでも、かならず一緒に連れ立って参る。文のたよりさえよこされたら、なんどきでもすぐに誘いにまいる。叔父が頑固になんと言おうとも、われらがきっとその前に連れ出して引き合わしてみしょう」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
家主いえぬしさんが御親切に色々仰しゃって下さり、それにあのお内儀さんは綿を紡む内職が名人だそうで近所の娘達も稽古に来るからお前もよこしたら宜かろうと
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かれの傑作』を読んだ時はあたかも地方に暮していた私のもとへわざわざ手紙をよこして盛んにゾラの作意を激賞して来た。『むき玉子』はゾラのこの作から思付いたのである。
品質ものが好いからって二合ばかりずつのお酒をその度々たびたびに釜川から一里もあるこの釜和原まで買いによこすようなひど叔母様おばさんに使われて、そうして釣竿でたれるなんて目に逢うのだから
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼奴あいつには愛想が尽きたから何処までも離縁をする気だが、身請の金を取返さんければならんと云い、おたきの方では手切をよこせというので掛合が面倒に成り
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二タ月ほどして国元から手紙をよこしたが、紋切形の無沙汰見舞であった。半歳ほどして上京したが、その時もいずれ参上するという手紙を遣しただけでやはり顔を見せなかった。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
越後の上杉景勝からさえ使者をよこして特に慰問されたほど諸方に響き渡り、又反覆常無き大内定綱は一度政宗に降参した阿子島民部を誘って自分に就かせたほど、伊達の威を落したものだった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と口には云えど、是れは長助がお千代を口説いてもはじかれ、文を贈っても返事をよこさんではずかしめられたのが口惜しいから、自分が皿を毀したんであります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
俺の忠告に従つて文学三昧も好い加減に止めにして政治運動をやつて見い。奈何ぢや、牛飼君のとこから大に我々有為の青年の士を養うと云ふてよこしたが、汝、行つて見る気は無いか。
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
生嘘なまぞらつかって我をだましたな、内にうやって置く奴じゃアねえぞ、お父様とっさま御死去ごしきょに成った時、幾度いくたび手紙を出しても一通の返事もよこさぬくらいな人でなし
硯友社同人や門下の人々は私のもとには死亡の通知さえよこさなかったが、永眠する前三月みつきに紅葉と笑って最後の訣別を叙した私は、如何いかに疎隔していても紅葉を親友の一人と見ていた。
其のうえ斯んな身重に成って、今更何うする事も出来ない身の上に成った者を振棄ふりすてゝ、許嫁のお内儀かみはんを自分の傍へ呼んで置き、私の方へは文一本よこさずに
よこして下すったから取敢とりあえず来たがねえ、もう私が来たから案じずに、お前気丈夫にしなければならねえ、もう一遍丈夫に成ってお前に楽をさせなければ済まないよ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何んで丈助どんにお金を才覚しろという手紙を附けてよこしなました、実はわっしの身の上はこれ/\で、若旦那が東海道藤沢の莨屋たばこやから手紙を遣し、二百両のお金がなければ
そう事がきまればいが…なんだって女子おんなッこと色事をして子供を出かし、子を堕胎おろそうとして女が死んだって…人殺しをしながら惚気のろけを云うなえ、もうちっよこしてもいんだが
間男をた覚えはないから出る処へ出ると云うのだが、出る処へ出れば第一尊君のお名前に障り、当人の耻にも成る訳で悪い、女の方から先方むこうへついて三十円よこせと云う次第で
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
丈「それもいが、郵便をよこすにもわざと鍋焼饂飩屋又作と書かれては困るじゃねえか」