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軒燈
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けんとう
ふりがな文庫
“
軒燈
(
けんとう
)” の例文
新字:
軒灯
私恐いものだから、それに暗いので、よく見なかったけれど、でも、私の家の
軒燈
(
けんとう
)
の光で、チラッと口の所だけ見てしまったのよ。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
何か知ら惡事でも働いてゐるやうな氣がして、小池は赤い
軒燈
(
けんとう
)
の
硝子
(
がらす
)
の西日に
眩
(
まぶ
)
しく輝いてゐる巡査駐在所の前を通るのに氣が
咎
(
とが
)
めた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
それでもまだ金の
足
(
た
)
りない時には赤い
色硝子
(
いろガラス
)
の
軒燈
(
けんとう
)
を出した、人出入の少い
土蔵造
(
どぞうづく
)
りの
家
(
うち
)
へ大きい画集などを預けることにした。
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
こころみに下宿の
門口
(
かどぐち
)
に立ち止まって、
軒燈
(
けんとう
)
の光りで腕時計を照してみると、いつも帰って来る時間と一分も違っていなかった。
冗談に殺す
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と
母娘
(
おやこ
)
して笑った。おしょさんの
家
(
うち
)
の
軒燈
(
けんとう
)
には
山崎
(
やまざき
)
としてあるが、両国の並び茶屋の名も「山崎」だったと坊さんのおばあさんがいった。
旧聞日本橋:18 神田附木店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
船板塀
(
ふないたべい
)
をした二階家があって、
耳門
(
くぐり
)
にした
本門
(
ほんもん
)
の
簷口
(
のきぐち
)
に小さな
軒燈
(
けんとう
)
が
点
(
とも
)
り、その脇の方に「山口はな」と云う女名前の表札がかかっていた。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
代助が
軒燈
(
けんとう
)
の
下
(
した
)
へ
来
(
き
)
て立ち
留
(
と
)
まるたびに、
守宮
(
やもり
)
が軒燈の
硝子
(
がらす
)
にぴたりと
身体
(
からだ
)
を
貼
(
は
)
り付けてゐた。黒い影は
斜
(
はす
)
に
映
(
うつ
)
つた儘
何時
(
いつ
)
でも
動
(
うご
)
かなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
天
(
あま
)
の
川
(
がは
)
の
澄渡
(
すみわた
)
つた空に繁つた
木立
(
こだち
)
を
聳
(
そびや
)
かしてゐる
今戸八幡
(
いまどはちまん
)
の前まで来ると、
蘿月
(
らげつ
)
は
間
(
ま
)
もなく並んだ
軒燈
(
けんとう
)
の間に
常磐津
(
ときはづ
)
文字豊
(
もじとよ
)
と
勘亭流
(
かんていりう
)
で書いた妹の家の
灯
(
ひ
)
を認めた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
戸外では、いつか雨が降り出していて、湿った
軒燈
(
けんとう
)
に霧のような水しぶきがしていました。兄さんは土間へ降りて硝子戸を
閉
(
し
)
め、カナキンのカアテンを引きました。
蛙
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
辰つアんは、その中を右へ折れ、左へ曲つて、後の二人を案内してゐたが、とある角の青い
軒燈
(
けんとう
)
のついた家の前へ來ると、その呼び込み口へ、モヂリの片袖を掛けて
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
狹い柳町の通は、
造兵歸
(
ざうへいがへり
)
の職工で、
煑
(
にえ
)
くり返るやうである。
軒燈
(
けんとう
)
が
徐々
(
そろ/\
)
雨の中から光出して、暖かい煙の
這出
(
はひだ
)
して來る
飯屋
(
めしや
)
の
繩暖簾
(
なはのれん
)
の前には、
腕車
(
くるま
)
が幾臺となく置いてある。
絶望
(旧字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
そんで
教
(
お
)
せられたろうじの入り口い行てみますと、「御旅館井筒」と
小
(
ちい
)
そうに書いた
軒燈
(
けんとう
)
が出てますのんで、「お梅どん、あんた
此処
(
ここ
)
で待ってでわ」いうて私だけ
這入
(
はい
)
って行て
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
軒燈
(
けんとう
)
の
火
(
ひ
)
が、マントを
照
(
て
)
らして、
流
(
なが
)
れ
落
(
お
)
ちるしずくが
光
(
ひか
)
っています。
風雨の晩の小僧さん
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
お
向家
(
むかい
)
の御門の暗い
軒燈
(
けんとう
)
の陰から、真白な、怖い顔をさし出して、こちらを見ている母親の顔が見つかった。
人の顔
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
真直
(
まっすぐ
)
な
往来
(
おうらい
)
の両側には、意気な
格子戸
(
こうしど
)
、
板塀
(
いたべい
)
つづき、
磨
(
すり
)
がらすの
軒燈
(
けんとう
)
さてはまた霜よけした松の枝越し、二階の
欄干
(
てすり
)
に
黄八丈
(
きはちじょう
)
に
手拭地
(
てぬぐいじ
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
をかさねた
褞袍
(
どてら
)
を干した家もある。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
人
(
ひと
)
の通らない
軒燈
(
けんとう
)
ばかり
明
(
あき
)
らかな
露地
(
ろぢ
)
を抜けて表へ
出
(
で
)
ると、風が吹く。北へ向き直ると、まともに
顔
(
かほ
)
へ
当
(
あた
)
る。時を切つて、自分の下宿の方から
吹
(
ふ
)
いてくる。其時三四郎は考へた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
保吉は少し
体
(
からだ
)
を
扭
(
ね
)
じ
曲
(
ま
)
げ、向うの窓の下を
覗
(
のぞ
)
いて見た。まず彼の目にはいったのは何とか
正宗
(
まさむね
)
の広告を兼ねた、まだ火のともらない
軒燈
(
けんとう
)
だった。それから巻いてある
日除
(
ひよ
)
けだった。
保吉の手帳から
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
外
(
ほか
)
の商家ではすっかり戸を締切って、
軒燈
(
けんとう
)
の外には何の光も漏れていないのに、このみすぼらしいショーウインドウだけが、戸もないのか、路上に夢の様な光の縞を
投
(
なげ
)
ているのが
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
表は四枚の
硝子戸
(
ガラスど
)
にカーテンを引いてあるだけなので、
軒燈
(
けんとう
)
のあかりがぼんやり店の奥へ洩れて来て、もや/\と物が見える中で、庄造は掛け布団をすつかり
剥
(
は
)
いで仰向きに臥てゐたが
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
植源と出ている
軒燈
(
けんとう
)
の下に突立って、やがてお島は家の方の
気勢
(
けはい
)
に神経を澄したが、石を敷つめた門のうちの両側に、枝を差交した木陰から見える玄関には、
灯影
(
ほかげ
)
一つ洩れていなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
物蔭から竹林武丸が現れて、音絵の落した琴の爪を拾い、
軒燈
(
けんとう
)
の光りに照して「歌寿」という文字を見るとハッと驚いてあたりを見まわした。押し頂いて懐中して去った。
黒白ストーリー
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
人家の軒下や
路地口
(
ろじぐち
)
には話しながら涼んでいる人の
浴衣
(
ゆかた
)
が薄暗い
軒燈
(
けんとう
)
の光に
際立
(
きわだ
)
って白く見えながら、あたりは一体にひっそりして
何処
(
どこ
)
かで犬の
吠
(
ほ
)
える声と
赤児
(
あかご
)
のなく声が聞える。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
車が止って、ヘッドライトが消されると、それが合図であったのか、
軒燈
(
けんとう
)
もない真暗な、非常に古風な
棟門
(
むねもん
)
が、ギイと開いて、門にはそぐわぬ一人の洋服男が、影の様に姿を現わした。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
表は四枚の
硝子
(
ガラス
)
戸にカーテンを引いてあるだけなので、
軒燈
(
けんとう
)
のあかりがぼんやり店の奥へ
洩
(
も
)
れて来て、もやもやと物が見える中で、庄造は掛け布団をすっかり
剥
(
は
)
いで仰向きに
臥
(
ね
)
ていたが
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
……
彼
(
か
)
の
幽暗
(
ほのくら
)
き
路次
(
ろじ
)
の
黄昏
(
たそがれ
)
の
色
(
いろ
)
は、
今
(
いま
)
も
其処
(
そこ
)
を
通
(
とほ
)
る
毎
(
ごと
)
に、
我等
(
われら
)
が
最初
(
さいしよ
)
の
握手
(
あくしゆ
)
の、
如何
(
いか
)
に
幸福
(
かうふく
)
なりしかを
語
(
かた
)
り
申候
(
まをしそろ
)
。
貴女
(
きぢよ
)
は
忘
(
わす
)
れ
給
(
たま
)
はざるべし、
其時
(
そのとき
)
の
我等
(
われら
)
の
秘密
(
ひみつ
)
を
照
(
てら
)
せる
唯
(
たゞ
)
一つの
軒燈
(
けんとう
)
の
光
(
ひかり
)
を……
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
現に古風な家の一部や荒れ果てた庭なども残つてゐる。けれども
磨
(
す
)
り
硝子
(
ガラス
)
へ緑いろに「食堂」と書いた
軒燈
(
けんとう
)
は少くとも僕にははかなかつた。僕は勿論「橋本」の料理を
云々
(
うんぬん
)
するほどの
通人
(
つうじん
)
ではない。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
人家
(
じんか
)
の
軒下
(
のきした
)
や
路地口
(
ろぢぐち
)
には話しながら
凉
(
すゞ
)
んでゐる人の
浴衣
(
ゆかた
)
が
薄暗
(
うすぐら
)
い
軒燈
(
けんとう
)
の光に
際立
(
きはだ
)
つて白く見えながら、あたりは一体にひつそりして
何処
(
どこ
)
かで犬の
吠
(
ほ
)
える声と
赤児
(
あかご
)
のなく声が
聞
(
きこ
)
える。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
性懲
(
しょうこり
)
もなく又跡を追おうとしたが、その横町は一度大通りからそれると、まるで迷路のように入組んだ細道になっていて、その上
軒燈
(
けんとう
)
もない
真暗闇
(
まっくらやみ
)
なので、出来るだけ歩き廻って見たけれど
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
一歩二歩
(
ひとあしふたあし
)
とだんだん路地の中へ進み入ると、
忽
(
たちま
)
ち雨だれか何かの
泥濘
(
ぬかるみ
)
へぐっすり片足を踏み込み、驚いて立戻り、魚屋の
軒燈
(
けんとう
)
をたよりに
半靴
(
はんぐつ
)
のどろを
砂利
(
じゃり
)
と
溝板
(
どぶいた
)
へなすりつけている。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
二人は夜ふけの風の涼しさと堀端のさびしさを好い事に戯れながら歩いて
新見附
(
しんみつけ
)
を曲り、
一口阪
(
ひとくちざか
)
の電車通から、
三番町
(
さんばんちょう
)
の
横町
(
よこちょう
)
に折れて、
軒燈
(
けんとう
)
に
桐花家
(
きりはなや
)
とかいた芸者家の
門口
(
かどぐち
)
に立寄った。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
表の
窓際
(
まどぎわ
)
まで立戻って雨戸の一枚を少しばかり引き開けて往来を眺めたけれど、
向側
(
むこうがわ
)
の
軒燈
(
けんとう
)
には酒屋らしい
記号
(
しるし
)
のものは一ツも見えず、場末の街は宵ながらにもう
大方
(
おおかた
)
は戸を閉めていて
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
表
(
おもて
)
の
窓際
(
まどぎは
)
まで
立戻
(
たちもど
)
つて
雨戸
(
あまど
)
の一枚を
少
(
すこ
)
しばかり引き
開
(
あ
)
けて
往来
(
わうらい
)
を
眺
(
なが
)
めたけれど、
向側
(
むかうがは
)
の
軒燈
(
けんとう
)
には酒屋らしい
記号
(
しるし
)
のものは一ツも見えず、
場末
(
ばすゑ
)
の
街
(
まち
)
は
宵
(
よひ
)
ながらにもう
大方
(
おほかた
)
は戸を
閉
(
し
)
めてゐて
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
その夜唖々子が
運出
(
はこびだ
)
した『通鑑綱目』五十幾巻は、わたしも共に手伝って、
富士見町
(
ふじみちょう
)
の大通から左へと一番町へ曲る角から二、三軒目に、篠田という
軒燈
(
けんとう
)
を出した質屋の店先へかつぎ込まれた。
梅雨晴
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
軒
常用漢字
中学
部首:⾞
10画
燈
部首:⽕
16画
“軒燈”で始まる語句
軒燈籠