)” の例文
春蚕はるごの済んだ後で、刈取られた桑畠くわばたけに新芽の出たさま、林檎りんごの影が庭にあるさまなど、玻璃ガラスしに光った。お雪は階下したから上って来た。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
築地外科病院の鉄扉てっぴは勿論しまって居た。父のと思わるゝ二階の一室に、ひいた窓帷まどかけしに樺色かばいろの光がさして居る。余は耳を澄ました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しなおもて大戸おほどけさせたときがきら/\と東隣ひがしどなりもりしににはけてきつかりと日蔭ひかげかぎつてのこつたしもしろえてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一度は村の見知みししの若者の横顔を見世みせの前でちらと見た。一度は大高島の渡船とせんの中で村の学務委員といっしょになった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
と大きい声で云つて居るのが塀しにきこえた。同じ節で同じ事を云ふ低い声もきこえる。大きいのが女の子の声で低いのが男の子の声である。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
足を爪立つまだてるようにして中二階の前の生垣いけがきのそばまで来て、垣根しに上を見あげた。二階はしんとしている。この時母屋おもやでドッと笑い声がした。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
人気ひとけないのを見すまして、だんだんと事務室の方へ……。やがて硝子戸ガラスどしに、三吉少年が後向うしろむきになって、地図を案じているのが、ハッキリ解った。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
北條某ほうじょうなにがしとやらもう老獪ずる成上なりあがものから戦闘たたかいいどまれ、幾度いくたびかのはげしい合戦かっせん挙句あげくはてが、あの三ねんしのなが籠城ろうじょう、とうとう武運ぶうんつたな三浦みうらの一ぞく
すると突然とつぜん、控え室のあけっぱなしのドアしに、うちの下男のフョードルの姿が眼に映った。わたしに何かを合図している。わたしは何気なにげなく出て行った。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
丁度その頃留学生仲間が一人窒扶斯チフスになつて入院して死んだ。講義のない時間に、Charitéシヤリテエ へ見舞に行くと、伝染病室の硝子ガラスしに、寐てゐるところを見せて貰ふのであつた。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
本所相生町あいおいちょう裏店うらだなに住む平吉は、物に追われるように息を切って駈けて来た。かれは両国の橋番の小屋へ駈け込んで、かねて見識りしの橋番のおやじを呼んで、水を一杯くれと言った。
放し鰻 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「一目見し人に恋ふらく天霧あまぎらしり来る雪のぬべく念ほゆ」(巻十・二三四〇)、「花ぐはし葦垣あしがきしにただ一目相見し児ゆゑ千たび歎きつ」(巻十一・二五六五)等の例が若干ある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
結び慣れてゐた洋髪から島田まげに結ひ直すために、かの女はしばらく髪癖を直す手当てをしなければならなかつた。かの女は部屋にこもつて川にも人にもへなかつた。直助には障子しょうじしに一度声をかけた。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
眼鏡めがねしにじっと見ていてから、はじめてわかったのである。
おじいさんのランプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
見知みししの人なので、ミハイロが丁寧に辞儀じぎをすると
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
それもあるならひなりしてやかはりたるゆきすみおろかなことくもつちほど懸隔けんかくのおびたゞしさ如何いか有爲轉變うゐてんぺんとはいへれほどの相違さうゐれがなんとしてのつくべきこゝろおに見知みししの人目ひとめいとはしくわざ横町よこちやうみち
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
帷幕とばりさへなきガラスし、ランプのつぼ
うぐいす硝子ガラスしにもうしました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
大日だいにち
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右手よりに、タンポポの樹海のこずえしに巨大なラッパの頭のようなものが大小十何個、ぬっと出ている。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
其日は始終しじゅういてあるき、翌朝山の上の小舎こやにまだ寝て居ると、白は戸のくや否飛び込んで来て、蚊帳かやしにずうと頭をさし寄せた。かえりには、予め白をつないであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ほおのあたりがえて、眼にはやさしい表情があった。けれど清三の心はもうそれがために動かされるほどその影がこくうつっておらなかった。ただ、見知みししの女のように挨拶あいさつして通った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
すだれしに川風が吹き込んで、人の込み合っている割に暑くはなかった。
百物語 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
廊下しの部屋から椅子いす直しのマギイばあさんがやって来た。
売春婦リゼット (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「でも開けられないのですよ」帆村の見識みししの警官が云った。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ヒマラヤ
氷河期の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)