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贋
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にせ
ふりがな文庫
“
贋
(
にせ
)” の例文
「大丈夫だ。女がかえったときには、また、
贋
(
にせ
)
の仕事をはじめている。はやかったかしら、と女がつぶやく。多少おどおどしている。」
雌に就いて
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私はこの
贋
(
にせ
)
のユアンに見送られて車に乗ったのであったが、似ているとか似ていないとか、そんなことは言うだけ愚かなことであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
もう一つは、おせい様のほうがこうなってしまえば、もう
贋
(
にせ
)
の妹などはいらないのだから、お駒ちゃんをお払い箱にしていいことであった。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
十年も経って、世間で忘れているから、極印ぐらいはなくとも、今なら少々は通用するかも知れないよ、もっとも極印の
贋
(
にせ
)
を
銭形平次捕物控:034 謎の鍵穴
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ここに
贋
(
にせ
)
の
唖
(
おし
)
が一人あるとします。何か不審の件があって警察へ
拘引
(
こういん
)
される。尋問に答えるのが不利益だと悟って、いよいよ唖の
真似
(
まね
)
をする。
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
恰好
(
かっこう
)
な奴を見つけて、その首を斬り、
贋
(
にせ
)
の證人を
拵
(
こしら
)
えるか、
雑兵
(
ぞうひょう
)
どもを買収すればよい訳だけれども、それは法師丸の武士の良心が許さなかった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
もしも主馬が身分を偽り、符札が
贋
(
にせ
)
であるとしたら、相手が柳沢侯の荷駄であるし、関守としては重大な責任問題となる。小橋甚兵衛は役人であった。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
夫
(
それ
)
羅山
(
らざん
)
の
口号
(
こうがう
)
に
曰
(
いはく
)
、
萬葉集
(
まんえふしふ
)
は
古詩
(
こし
)
に
似
(
に
)
たり、
古今集
(
こきんしふ
)
は
唐詩
(
たうし
)
に
似
(
に
)
たり、
伊勢物語
(
いせものがたり
)
は
変風
(
へんぷう
)
の
情
(
じやう
)
を
発
(
はつ
)
するに
贋
(
にせ
)
たり、
源氏物語
(
げんじものがたり
)
は
荘子
(
さうし
)
と
天台
(
てんだい
)
の
書
(
しよ
)
に
似
(
に
)
たりとあり。
落語の濫觴
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
贋
(
にせ
)
の『怪我人』は、赤沢脳病院から永久に姿を消す……それから、一方赤沢未亡人は、病院を整理して物件を金に代え……そうだ、きっとあの院長には
三狂人
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
贋
(
にせ
)
もの沢山になって、鑑定が大切だが、その鑑定を頼まれて確かなのが自分だって、按摩、(
掌
(
てのひら
)
に据えて、貫目を計って、釣合を取って、
撫
(
な
)
でてかぐ。)
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一方に西村の
贋
(
にせ
)
母親は、憤慨の余り
縊死
(
いし
)
していることが昨朝に至って発見されたので、早速係官が出張して
取調
(
とりしらべ
)
の結果、他殺の疑いは無いことになった。
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
もしも浜路が冷静に、前後の事情を考えたなら、
贋
(
にせ
)
手紙であることに思い及んだだろう。文字が宗三郎の文字でない。この一事だけでも感付くことが出来る。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「そや/\。確かさうやつたなあ。」と鉄斎翁は
惚々
(
ほれ/″\
)
と
贋
(
にせ
)
の
画
(
ゑ
)
に見とれてゐた。「
俺
(
わし
)
もあの頃は達者に
画
(
か
)
いたもんや、
迚
(
とて
)
も今はこんな真似は
出来上
(
でけあが
)
らんて。」
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私はこのムラサキ科の者を絶対にタビラコと認めぬゆえに、新にこれに
贋
(
にせ
)
タビラコの新称を与えて置いたが、その後それにキュウリグサの名がある事を知った。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
女は、その人形に、いまは
贋
(
にせ
)
ものの恋人というより、その恋人への自分の執念のうす汚なさ、不潔な汗と
垢
(
あか
)
にまみれた自分のその妄執のかなしさだけを見ていた。
菊
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
紙幣
(
さつ
)
は
贋
(
にせ
)
が中々出来ないように、紙から特別に拵えて、意匠やら模様やら色やら骨が折ってあるので、ちょっとした事では贋紙幣なんか出来るものではないそうだ。
贋紙幣事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
そこで僕は
昨夜
(
ゆうべ
)
、叔父さんに手紙を書き、
今朝
(
けさ
)
投函しに出たついでに、銀座へ行って、
贋
(
にせ
)
のダイヤとサックを買い、兄さんをだまして、叔父さんと格闘してもらい
紅色ダイヤ
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
全く、十二世紀のスペインの合唱本がこのコペンハアゲンの裏まちに、しかも安く売りに出ているということはちょっと考えられない。が、私は
贋
(
にせ
)
でも構わないのだ。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
貧乏人にお金を貸して、高い高い利子を取ったり、百姓から重い年貢を取ったり、時々は
贋
(
にせ
)
の証文を書いて、他人の家や、田畑を
騙
(
だま
)
して取ったりしたこともあります。
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ヒステリィの医学
博士
(
はかせ
)
夫人が、夫を憎む余り、博士が彼女の筆蹟を
手習
(
てならい
)
して、
贋
(
にせ
)
の書置きを作った様な証拠を作り上げ、博士を殺人罪に陥れようと企らんだ話がある。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その翌日、わたくしは
贋
(
にせ
)
唖
(
おし
)
がばれてしまう懸念の方はとにかくとして、女乞食に腕立てしてしまったことがにちゃ/\心に粘って鬱陶しく、貰いに出る気にもなりません。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
五渡亭国貞は「歌川を疑はしくも名乗り得て二世の豊国
贋
(
にせ
)
の豊国」の
落首
(
らくしゅ
)
に
諷刺
(
ふうし
)
せられしといへどもとにかく歌川派の画系をつぎ
柳島
(
やなぎしま
)
と
亀井戸
(
かめいど
)
とに邸宅を有せしほどなれば
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
子供たちよ、よし
大人
(
おとな
)
たちにはそういう狂行が
贋
(
にせ
)
ものに見えようとも、お前たちは、そんな大人たちには
鎖
(
とざ
)
されている、お前たちだけのその領分の中で遊べるだけ遊んでいるがいい。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そのガラス玉は数珠にするのでいろいろの色合の数珠がラサ府の露店に
晒
(
さら
)
されてありますが、それらは田舎の人が出て来て沢山買って帰る。それから日本で拵えた
贋
(
にせ
)
珊瑚珠も沢山入る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
あれも
贋
(
にせ
)
ものの飛行機だったろうか——李鄭の後から僕は広間へついてあらわれると、僕は忽ち、無数の支那服の女に交ってチイク・ダンスを踊るタルタンの素足の踊姿を認めたんです。
飛行機から墜ちるまで
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
そんな夢をある時見たのか、あるいは何かのきっかけで生じた
贋
(
にせ
)
の記憶なのか。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
それから下ノ関の
渡場
(
わたしば
)
を渡て、
船場屋
(
せんばや
)
を
捜
(
さが
)
し出して、兼て用意の
贋
(
にせ
)
手紙を
持
(
もっ
)
て
行
(
いっ
)
た所が、
成程
(
なるほど
)
鉄屋
(
くろがねや
)
とは懇意な家と見える、手紙を一見して
早速
(
さっそく
)
泊めて
呉
(
く
)
れて、万事
能
(
よ
)
く世話をして呉れて
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
この生徒のこの答えは、ロシュフコー
(6)
や、ラ・ブリュイエール
(7)
や、マキアヴェリ
(8)
や、カンパネラ
(9)
のものとされている、あの、あらゆる
贋
(
にせ
)
の深遠さよりも深いものだよ
盗まれた手紙
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
床の間には
何
(
ど
)
んな
素人
(
しろうと
)
が見ても
贋
(
にせ
)
と解り切つた
文晁
(
ぶんてう
)
の
山水
(
さんすゐ
)
が
懸
(
かゝ
)
つて居て、
長押
(
なげし
)
には
孰
(
いづ
)
れ飯山あたりの
零落
(
おちぶれ
)
士族から買つたと思はれる槍が二本、さも不遇を嘆じたやうに黒く
燻
(
くすぶ
)
つて懸つて居る。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
罌粟色
(
けしいろ
)
の
薔薇
(
ばら
)
の花、
藥局
(
やくきよく
)
の花、あやしい
媚藥
(
びやく
)
を呑んだ時の夢心地、
贋
(
にせ
)
の
方士
(
はうし
)
が
被
(
かぶ
)
る
頭巾
(
づきん
)
のやうな
薄紅
(
うすあか
)
い花、
罌粟色
(
けしいろ
)
の
薔薇
(
ばら
)
の花、馬鹿者どもの手がおまへの
下衣
(
したぎ
)
の
襞
(
ひだ
)
に
觸
(
さは
)
つて
顫
(
ふる
)
へることもある
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
贋
(
にせ
)
の
神託
(
しんたく
)
を下す
心算
(
つもり
)
でいました。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
贋
(
にせ
)
じゃあるまいね」
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「
正
(
しょう
)
か?
贋
(
にせ
)
か?」
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
袴
(
はかま
)
に編みあげの靴をはいている男の老教師を、まんまとだました。自分の席についてからも、少年はごほごほと
贋
(
にせ
)
の
咳
(
せき
)
ばらいにむせかえった。
逆行
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「あの日本一太郎を
真物
(
ほんもの
)
の相良寛十郎とは知らずに、すっかり
贋
(
にせ
)
ものを仕立てた気で出してよこしたのだから、笑わせるじゃあございませんか」
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
贋
(
にせ
)
のユアンから元の青年へと戻ったのであろう、私のノックに答えて中から扉を開いたのは、今の今私の間違えたばかりのロザリオ青年であった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
台なしにしてしまいましたねえ、なに
罪人
(
ざいにん
)
の落書だなんて
当
(
あて
)
になったもんじゃありません、
贋
(
にせ
)
もだいぶありまさあね
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「少しもわからねえのさ、お前の言ひ草ぢやねえが、
贋
(
にせ
)
でも小判となると、滅多にこちとらの手には入らない」
銭形平次捕物控:274 贋金
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と三津太郎は憎さげに、「お前が西丸で盗んだというその在原業平の軸、もしや
贋
(
にせ
)
じゃあるめえかな」
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あまつさえ写生の道具などをも運んで
贋
(
にせ
)
の現場を作り上げるなどと云う余裕は持てないことになる。
闖入者
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
贋紙幣を
拵
(
こしら
)
えたのではなくて、使おうとしただけで、しかもそれは
贋
(
にせ
)
だとは知らなかったのです。
贋紙幣事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
そして、今頃は影武者とも知らず、
贋
(
にせ
)
川手氏の身辺に悪魔の触手を伸ばしているに違いない。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「ハハ。
贋
(
にせ
)
手形で関所は抜けられるかも知れんが吾々の眼の下は潜れんば……のう……」
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
女は、髪ピン十二本、靴下、絹二足、木綿三足、飲料に適せざる香水一本、着更え二つ、宝石——
贋
(
にせ
)
とほんものとを問わず——三個。但し結婚指輪は唯一つを既婚婦人にのみ許す。
踊る地平線:01 踊る地平線
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
茶も
何
(
なに
)
もやつた事のねえ
奴
(
やつ
)
が、
変
(
へん
)
に
捻
(
ひね
)
つたことを
云
(
い
)
つたり、
不茶人
(
ふちやじん
)
が
偽物
(
にせもの
)
を
飾
(
かざ
)
つて置くのを見て、これは
贋
(
にせ
)
でございますとも
謂
(
い
)
へんから、あゝ
結構
(
けつこう
)
なお
道具
(
だうぐ
)
だと
誉
(
ほ
)
めなければならん
にゆう
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
彼はその部屋の中に彼が用いつけの
天蓋附
(
てんがいつき
)
のベッドを据えた。もちろん
贋
(
にせ
)
ものであろうが、彼はこれを南北戦争時分にアメリカへ流浪した
西班牙
(
スペイン
)
王属出の吟遊詩人が用いたものだといっていた。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
何でも噂によると、高田は一つ一万円もする
贋
(
にせ
)
の
急須
(
きふす
)
を大事に
蔵
(
しま
)
ひ込むでゐたさうだ。——贋の急須が買ひ度さに、贋の女の気に入りたさに、男といふものは、せつせと飛んだり跳ねたりする。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私のそういう
性急
(
せっかち
)
な印象が必ずしも
贋
(
にせ
)
ではなかったことを、まるでそれ自身裏書きでもするかのように、私のまわりには、この庭を一面に
掩
(
おお
)
うて草木が生い茂るがままに生い茂っているのであった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
その道中で私は手紙を書いて
即
(
すなわ
)
ち
鉄屋
(
くろがねや
)
惣兵衛の
贋
(
にせ
)
手紙を
拵
(
こしら
)
えて
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
〈この男は
贋
(
にせ
)
医者じゃないのか〉
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
贋
漢検準1級
部首:⾙
19画
“贋”を含む語句
贋物
贋造
贋金
贋紙幣
贋病
大贋物
真贋
贋者
贋首
贋造紙幣
贋鼎
贋阿弥
贋造者
贋造団
贋造品
贋物堂
贋作
贋札
贋造貨幣
偽物贋物
...