詐欺さぎ)” の例文
窃盜せつたう姦淫かんいん詐欺さぎうへてられてゐるのだ。であるから、病院びやうゐん依然いぜんとして、まち住民ぢゆうみん健康けんかうには有害いうがいで、不徳義ふとくぎなものである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さうかと思ふと、平生は泥棒でも詐欺さぎでもしさうな奴が、碁将棋盤に向くとまるで人が変つてしまふて、君子かと思ふやうな事をやる。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかし、やがておくぬしかなしきかた見になつたその寫眞器しやしんきは、支那しなの旅からかへるともなく、或るぶん學青年の詐欺さぎにかゝつてうしなはれた。
「わがつま様は米穀何百俵を詐欺さぎ横領しましたという——」きまった始まりで、御詠歌のように云って歩く「バカ」のいたのを。
母たち (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
遂に空しい望みを抱いたまま、哀れな母は死んだ。「津」は正に詐欺さぎである。今は十時過ぎである、盆踊りの唄を歌って通る若者や娘達が絶えない。
いや、それがさ、徳川時代の文学の積りで註文したんだが、案外好くない本でね、まあ詐欺さぎかかったようなものさ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「両親不明、身分不詳で、数度の詐欺さぎその他の犯罪のために、ミュンヘンの警察から追跡されておって、今は多分デンマアクへ逃走の途中らしいのだが」
皆さん、どうぞよく御覧下さい。メリー嬢は詐欺さぎでもかたりでもありません。此の通り、此処ここに居る子供たちは、すっかり魔術にかゝって居ります。睾丸きんたま
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
たとえば文吉たちが詐欺さぎにあってひどい目を見せられたようなとき、彼らの友人のひとりは同情しながらも
雑居家族 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
その条件が実は手品または詐欺さぎの挿入し得る条件だったのであるが、それだといって実験を打ち切れば、結局水掛論みずかけろんに終り、火は益々燃え上るばかりである。
千里眼その他 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
それは見事な詐欺さぎなのであるが、友人たちは、私を訴えることを、ようせぬばかりか、路で逢っても、よう、からだは丈夫か、とかえって私をいたわるのである。
春の盗賊 (新字新仮名) / 太宰治(著)
元来国と国とは辞令はいくらやかましくっても、徳義心はそんなにありゃしません。詐欺さぎをやる、ごまかしをやる、ペテンにかける、めちゃくちゃなものであります。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何故世の中には情死しんぢう殺人ひとごろし強盗がうとう姦通かんつう自殺じさつ放火はうくわ詐欺さぎ喧嘩けんくわ脅迫けふはく謀殺ぼうさつの騒が斷えぬのであらうか、何故また狂人きちがひ行倒ゆきだふれ乞食こじき貧乏人びんぼうにんが出來るのであらうか。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そのあげく、こんどは、わしの名をかたり歩いて、大胆な詐欺さぎをして廻った。大隈の親戚、千坂の娘というので、慾につられた被害者が、ぞくぞくと、警察へ届けてくる。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後で銀子も知ったことだが、猪野は大きな詐欺さぎ事件で、長く未決へ投げ込まれていたが、このごろようやく保釈で解放され、係争中をしばらく家に謹慎しているのだった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
名誉毀損きそん、結婚詐欺さぎ、財産横領、器物破壊、家宅侵入、損害賠償、暴力行為、傷害、印鑑・私文書偽造、貞操蹂躙じゅうりん——あらゆる罪名が、にぎやかに、金五郎のうえにつけられた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
わたしたちは二人とも、なにを目標もくひょう雌牛めうしのよしあしを見分けるか知らなかったから、獣医じゅういの世話になることにした。わたしたちはよく牛を買うときに詐欺さぎに会う話を聞いていた。
この国では、盗みよりも詐欺さぎの方が悪いことになっています。詐欺をすれば死刑です。盗みは、こちらが馬鹿でなく用心さえしていれば、まず、物を盗まれるということはありません。
詐欺さぎ貯金で数百万円の金を細民から絞り取った上、その経営して居る会社が破綻はたんと見るや、幾十万人の怨みと嘆きを後に、回収の出来るだけの現金有価証券、あわせて百万円余を取りこんで
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
詐欺さぎ師だの、強盗だの、大山師だの、わたしは女性の犯罪としてこれらのことをすこしも考えることが出来ないのですけれども、ここでみせて貰った、現犯時の年齢と罪名ざいめいと云う統計書には
倉知夫人のことば如何いかにも正義が、奇術的な詐欺さぎをはたらいたと云わないばかりの詞であった。と、そこへ電報が来た。務は兄が泊った先から打ったものではないかと思って急いで開けてみた。
白っぽい洋服 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
国民の子弟を教育すべき教科書事件の騒動を考えてみ給え。いかに文章辞句が巧妙でも収賄しゅうわい詐欺さぎ不徳無道の人の手に成ったものや検定されたものがどうして健全なる国民を教育し得るだろう。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
貴様とつき合って行くためには、貴様に軽蔑されないためには己はその外に方法がなかったのだ。詐欺さぎで訴えられて、己は今ひかれて行くのだ。いつか貴様に金策を頼んだことを覚えているか。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
四谷街道に接しているせいか、馬力ばりきの車が絶間たえまなく通って、さなきだに霜融しもどけみちをいよいよこわして行くのも此頃このごろです。子供が竹馬に乗って歩くのも此頃です。火の番銭の詐欺さぎ流行はやるのも此頃です。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「こいつは詐欺さぎ賭博とばくで食って居たんだ」
誰が何故彼を殺したか (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
いずれもまぎれのない詐欺さぎである。
自然界の虚偽 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
詐欺さぎせしといふ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
窃盗せっとう姦淫かんいん詐欺さぎうえてられているのだ。であるから、病院びょういん依然いぜんとして、まち住民じゅうみん健康けんこうには有害ゆうがいで、かつ不徳義ふとくぎなものである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
日本人にほんじんのあの花合はなあはせにさへじつ多岐多樣たきたやう詐欺さぎ、いんちきの仕方しかたがあるといふのだから、勝負事しようぶごとといふものが存在そんざいするかぎむをないことかもれない。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
おまけに大阪の富商の手代が蓑賀参蔵を詐欺さぎ犯人であると証言するや、ごうごうがくがくと蓑賀殿の悪事醜行が並べられ、ついにこの筆頭与力殿も縛られなされた。
手品か詐欺さぎのような要素が巧妙にはいっている場合には、なかなかそれを見破ることは出来ない。
千里眼その他 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「これは一寸ちょっと詐欺さぎにかゝったような気持がするね。これぐらいの岩なら大抵の海岸にある」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
出世のつるとはゆかないまでも、体の売れ口はないものかと僥倖ぎょうこうをたのむ気持が、そのために、赤壁八十馬やそまにうまうまと詐欺さぎにかかった後までも、いまだに量見からなくなっていない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの人たちのする事は、一から十まで心理の駈引かけひき、巧妙卑劣の詐欺さぎなのだから、いやになる。僕は、ゆうべ、やっとわかって、判ったら、ぎょっとした。あの人たちは、おそろしい。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
控訴院から大審院まで持って行った猪野の詐欺さぎ、横領に関する事件がいよいよ第二審通り決定した旨の電報が入り、渡弁護士の斡旋あっせんによって、弁護士の権威五人もの弁論を煩わしたこの係争も
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「ならいいよ。そいつは詐欺さぎなんだからね。気をつけろよ。」
雑居家族 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「そんな事なんか誰にでも出来らい! 詐欺さぎ! 大騙おおかたり!」
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
痴漢、詐欺さぎ漢、非人道のボス、玉井金五郎を葬れ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
こうなるとまるで詐欺さぎですね。
盗難 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あるひ公書こうしよごときものに詐欺さぎ同樣どうやう間違まちがひでもはせぬか、他人たにんぜにでもくしたりはせぬか。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
とはむかうの消息通せうそくつうぼくかせたことばだが、ばくちきで、またばくちの天才てんさい支那人しなじんだけに麻雀道マアジヤンだうおいてもなかにはおそろしい詐欺さぎ、いんちきをくはだてるものが可成かなりあるらしい。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
柴さんの主張は要するに教育全体が政府の詐欺さぎにかゝっているということだった。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
悪辣あくらつなる詐欺さぎと言ってよかろう。また、瀕死の病人の魂を大声で呼びとめるというのも、恥かしいみじめな思想だ。さらにまた、医は能く病いを癒すも、命を癒す能わず、とは何という暴論だ。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
かれは、掏摸すり窃盗せっとう詐欺さぎなどの小さい吟味や、民事の訴訟事などは、いくら数があっても、余り多忙顔はしなかった。白洲にのぞむ時間は、水のながるるような快断をもって、処理して行った。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるい公書こうしょごときものに詐欺さぎ同様どうよう間違まちがいでもしはせぬか、他人たにんぜにでもくしたりしはせぬか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たゞ醫者いしやとして、邊鄙へんぴなる、蒙昧もうまいなる片田舍かたゐなかに一しやうびんや、ひるや、芥子粉からしこだのをいぢつてゐるよりほかに、なんこといのでせうか、詐欺さぎ愚鈍ぐどん卑劣漢ひれつかん、と一しよになつて、いやもう!
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ただに医者いしゃとして、辺鄙へんぴなる、蒙昧もうまいなる片田舎かたいなかに一しょうびんや、ひるや、芥子粉からしこだのをいじっているよりほかに、なんすこともいのでしょうか、詐欺さぎ愚鈍ぐどん卑劣漢ひれつかん、と一しょになって、いやもう!
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)