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蛭
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ひる
ふりがな文庫
“
蛭
(
ひる
)” の例文
以前の馬つなぎから龍胆を解くと、盛綱はとび乗って、あれよと人々の騒ぐ間に、
蛭
(
ひる
)
ヶ小島の配所へ矢のように駈け去ってしまった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ここには明細にかきかねるが、とにかくヒルミ夫人は万吉郎の身体に
蛭
(
ひる
)
のように吸いついて、容易に離れようともしなかったのである。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
すると河の泥に隠れてゐた、
途方
(
とはう
)
もなく大きな
蛭
(
ひる
)
が、その頃はまだ短かつた、お前の先祖の鼻の先へ、吸ひついてしまつたのに違ひない。
動物園
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これで
蛭
(
ひる
)
に
悩
(
なや
)
まされて
痛
(
いた
)
いのか、
痒
(
かゆ
)
いのか、それとも
擽
(
くすぐ
)
つたいのか
得
(
え
)
もいはれぬ
苦
(
くる
)
しみさへなかつたら、
嬉
(
うれ
)
しさに
独
(
ひと
)
り
飛騨山越
(
ひだやまごえ
)
の
間道
(
かんだう
)
で
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
だが職業といふやつは一度それでめしを喰つたが最後、吸ひついた
蛭
(
ひる
)
のやうになか/\おいそれともぎはなせるものではない。
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
▼ もっと見る
ハッハッと云う犬の様な呼吸、一種異様の体臭、そして、ヌメヌメと滑かな、熱い粘膜が、私の唇を探して、
蛭
(
ひる
)
の様に、顔中を這い廻った。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そうだ、君は可哀想な、
憐
(
あわ
)
れむべき人喰鬼だ、八千代さんの血を吸う
蛭
(
ひる
)
だ、君がいなければあの人は芸術を取戻せる、なぜ君は自分の首へ繩を
溜息の部屋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
で何うかして忘れて了はうとする、追ツ
拂
(
ぱら
)
はうとする。雖然駄目だ、幾ら踠いたからと謂つて、其の考は
蛭
(
ひる
)
のやうに頭の底に
粘付
(
すいつ
)
いて了つた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
蜈蚣
(
むかで
)
の、腕ほどもあるのがバサリと落ちて来たり、絶えず
傘
(
かさ
)
にあたる雨のような音をたてて山
蛭
(
ひる
)
が血を吸おうと襲ってくる。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
塩を喰わされた
蛭
(
ひる
)
のようだった。へと/\で、考えることも、観察することも、軍刀を握りしめる力もすっかり失って、たゞ惰性的に歩いている。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
由良はそれには何の返事も出来ずに湯まで来ると、月の光りの底から、水中の石の面へ、
蛭
(
ひる
)
のように黒くぴったりと喰っついている一人の男が見えた。
馬車
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
また
竈
(
かまど
)
に
蛭
(
ひる
)
這
(
は
)
い
蛇
(
へび
)
寝床
(
ねどこ
)
に
潜
(
もぐ
)
る
水国
(
すいごく
)
卑湿
(
ひしつ
)
の地に住まねばならぬとなったら如何であろう。中庸は平凡である。然し平凡には平凡の意味があり
強味
(
つよみ
)
がある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
お秀は身体中を大きな
蛭
(
ひる
)
に取巻かれたような薄気味の悪いらしい顔をしましたが、それを我慢していると、直ぐに何かこどもと一緒に融けてしまいたい
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
蜘蛛
(
くも
)
は明日の晴天を確信して風雨の中に網を張りまわし、
蛭
(
ひる
)
は水中に在りながら不断に天候の変化を予報する。
霊感!
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
『
新著聞集
(
しんちょもんじゅう
)
』十四篇には、京の富人溝へ飯を捨つるまでも乞食に施さざりし者、死後蛇となって池に住み、
蓑
(
みの
)
着たように
蛭
(
ひる
)
に取り付かれ苦しみし話を載す。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「役に立つもの」をことごとく吸収せずんば
已
(
や
)
まざらんとする
蛭
(
ひる
)
のような
貪婪
(
どんらん
)
さがあることは事実であろう。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
蛭
(
ひる
)
ヶ
岳
(
たけ
)
があり、塔ヶ岳があって、それからまたいったん絶えたるが如くして、
大山阿夫利山
(
おおやまあふりさん
)
が
突兀
(
とっこつ
)
として、東海と平野の
前哨
(
ぜんしょう
)
の地位に、孤風をさらして立つ。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
頼朝が
蛭
(
ひる
)
ヶ小島に流されていたとき伊東
祐親
(
すけちか
)
の娘八重子と通じて千鶴丸をもうけたが、祐親は平氏に親しんでいたから、幼児を松川の淵へ棄てさせてしまった。
安吾巷談:05 湯の町エレジー
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
箱根の右にはずっと近く大山一名雨降山が、鈍い金字形に立ちはだかっている。其右に続く連嶺は丹沢山塊の主部で、最高点
蛭
(
ひる
)
ヶ岳は山塊の殆ど中央に聳えている。
望岳都東京
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
私達は十足と歩くと、もう
耐
(
たま
)
らなくなって、片頬を岩にくっつけて、
蛭
(
ひる
)
のように雪解け水に吸いついては、また思い出したように、ふらふらと二足三足下り初める。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
狹
(
せば
)
められて
蛭
(
ひる
)
ヶ小島へ
流罪
(
るざい
)
と成せられたれども終には石橋山に義兵を
揚
(
あげ
)
られし處其軍利なくして
伏木
(
ふしき
)
の穴に
匿
(
かく
)
れ給ひしを梶原が二心より危き御身を助り夫より御運を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
……わたしの中には、アレクサンドル大王の魂もある。シーザーのも、シェイクスピアのも、ナポレオンのも、最後に生き残った
蛭
(
ひる
)
のたましいも、のこらずあるのだ。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
これはあまり
明瞭
(
めいりょう
)
でないが「かますご食えば風かおる」の次に「
蛭
(
ひる
)
の
口処
(
くちど
)
をかきて気味よき」
連句雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
蛭
(
ひる
)
などは体の内部はほとんど私有財産の貯蔵のみに用いられるというべきほどで、一度充分に血を吸いためておけば、ゆうに一年間はこれによって生活していることができる。
動物の私有財産
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
線などは
蛭
(
ひる
)
や
蛞蝓
(
なめくじ
)
のやうに引いたつて、いつかうさしつかへなからうではないかと主張し
秋艸道人の書について
(新字旧仮名)
/
吉野秀雄
(著)
仁科と長崎屋が眼をそば立てて眺めていると、顎十郎の言う通り、水の中に入れた蕃拉布は
蛭
(
ひる
)
のようにクネクネと動きながら、見る見るうちに五分の一ほどに縮んでしまった。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ジヤジヤまたは
蚊
(
か
)
の
口焼
(
くちや
)
き、
蛭
(
ひる
)
や
蝮
(
まむし
)
の口焼きという式などは、まるでその虫のおらぬ節分の晩、もしくは小正月の宵に行うので、炉の火に
榧
(
かや
)
の葉などをくべて唱えごとをする。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
わたしは自分がたいがいの人におとらず社交を愛し、わたしと行きあうどんな血気さかんな人間を向うにまわしてもその場は
蛭
(
ひる
)
のようにねばることを辞しない者だと考えている。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
暑い陽ざかり、スコールのほか静けさを破る何ものもないジャングルに、うつくしい声の鳥が鳴き、水鳥に背中の
蛭
(
ひる
)
をとらしている鰐が、ものうそうに見送っていることもあった。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
僕の顔は、ただのっぺりと白くて、それに
頬
(
ほっ
)
ぺたが赤くて、少しも
沈鬱
(
ちんうつ
)
なところがない。頬ぺたを
蛭
(
ひる
)
に吸わせると、頬の赤みが取れるそうだが、気味が悪くて、決行する勇気は無い。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
久「えゝ…股へ
蛭
(
ひる
)
の吸付いたと同様お前の側を離れ申さず
候
(
そろ
)
、と
情合
(
じょうあい
)
だから書けよ」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
厭
(
いや
)
だよ
厭
(
いや
)
だよお放しよ、なんてきたないんだろう、お前の手は。あぶらだらけで、ネチネチして、
蛭
(
ひる
)
だわ、蛭だわ、まるで、蛭だわ!
厭々
(
いやいや
)
! すいつこうッてのね。いよいよ蛭だわ。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「ああ、早くおしまいにならないのか。俺の肉体にくっついてる
蛭
(
ひる
)
ども、貴様らを取り
除
(
の
)
けることが俺にできないことがあるものか……。肉体よ、蛭といっしょに
剥
(
は
)
げ落ちてしまえ!」
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
蟄伏
(
ちっぷく
)
してる熊や血を吸いきった
蛭
(
ひる
)
のように、圧倒し来る睡魔に襲われていた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
下僕はへいへいと実に
蛭
(
ひる
)
に塩を掛けたように縮こまって
閉口
(
へいこう
)
してしまった。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
蛭
(
ひる
)
が出るの虫が出るのと騒いだ事があったけれども太い本管をドシドシ流れている中では蛭も虫も発生する事は出来ん。支線の溜り水へ来て発生するのだ。溜り水の中へは細菌も沢山発生する。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
猶
(
なほ
)
源頼朝の
蛭
(
ひる
)
が
島
(
しま
)
に在りしや、
僅
(
わづか
)
に伊豆一国の主たらんことを願ひしも、大江広元を得るに及びて始めて天下を
攘
(
ぬす
)
みしが如き也、正統記大鏡等、
蓋
(
けだ
)
し其跡に就いて而して之を拡張せる也、故に
採
(
と
)
らず
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「親分、肩の凝りなら、灸よりも
蛭
(
ひる
)
に血を吸わせた方が効きますぜ」
猿飛佐助
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
今にも
蛭
(
ひる
)
が
小島
(
こじま
)
の頼朝にても、
筑波
(
つくば
)
おろしに
旗揚
(
はたあ
)
げんには、源氏譜代の恩顧の士は言はずもあれ、
苟
(
いやしく
)
も志を當代に得ず、怨みを
平家
(
へいけ
)
に
銜
(
ふく
)
める者、響の如く應じて關八州は日ならず平家の
有
(
もの
)
に非ざらん。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
山かげを吾等
来
(
こ
)
しかば
浅水
(
あさみづ
)
に
蛭
(
ひる
)
のおよぐこそ
寂
(
さび
)
しかりけれ
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
併しそれは
蛭
(
ひる
)
が吸いついているのと知れて、安心した。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
星野少尉
蛭
(
ひる
)
川……。
迷子になつた上等兵(ラヂオドラマ)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
竹童
(
ちくどう
)
も、逃げに逃げた。
折角村
(
おりかどむら
)
から
蛭
(
ひる
)
ヶ
岳
(
たけ
)
の
裾
(
すそ
)
を
縫
(
ぬ
)
って街道にそって、足のかぎり、
根
(
こん
)
かぎり、ドンドンドンドンかけだして、さて
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さもなければお前の鼻が、これ程大きな
蛭
(
ひる
)
のやうに、伸びたり
縮
(
ちぢ
)
んだりはしないだらう。象よ。お前は
印度
(
インド
)
の名門の生れだ。
動物園
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
其
(
それ
)
と
同時
(
どうじ
)
に
此処
(
こゝ
)
に
日
(
ひ
)
の
光
(
ひかり
)
を
遮
(
さへぎ
)
つて
昼
(
ひる
)
もなほ
暗
(
くら
)
い
大木
(
たいぼく
)
が
切々
(
きれ/″\
)
に一ツ一ツ
蛭
(
ひる
)
になつて
了
(
しま
)
うのに
相違
(
さうゐ
)
ないと、いや、
全
(
まツた
)
くの
事
(
こと
)
で。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
動物犯人には、妖犬、馬、獅子の
顎
(
あご
)
、牛の角、一角獣、猫、毒グモ、蜂、
蛭
(
ひる
)
、オウムなど、あらゆる種類が使われたが、これらのうちでは、獅子の顎と、オウムが面白い。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
父
左馬頭
(
さまのかみ
)
義朝の謀叛によって殺される運命にあったが、池禅尼の必死の嘆願で死を免れ、十四歳のとき、
永暦
(
えいりゃく
)
元年三月二十日、伊豆国
北条
(
ほうじょう
)
蛭
(
ひる
)
が
小島
(
こじま
)
に流されたものである。
現代語訳 平家物語:05 第五巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
雖然駄目だ、幾ら踠いたからと謂つて、其の考は
蛭
(
ひる
)
のやうに頭の底に
粘付
(
すいつ
)
いて了つた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「あれ、富士山が——
大群山
(
おおむれやま
)
が、丹沢山が、
蛭
(
ひる
)
ヶ
峰
(
みね
)
が、塔ヶ岳が、相模の
大山
(
おおやま
)
——あれで山は無くなりますのに——まあ、イヤじゃありませんか、大菩薩峠までが出て来ましたよ」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
蛭
(
ひる
)
が数時間後の暴風を予知して水底に沈み、
蜘蛛
(
くも
)
が巣を張って
明日
(
あす
)
の好天気を知らせ、象が月の色を見て
狼群
(
ろうぐん
)
の大襲来を察し、星を仰いだ
獺
(
かわうそ
)
が上流から来る大洪水を恐れて丘に登る。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“蛭(ヒル(動物))”の解説
ヒル(蛭)は、環形動物門ヒル綱または環帯綱ヒル亜綱(学名: Hirudinea)に属する生物の総称。体の前後端に吸盤を持つのが特徴である。
(出典:Wikipedia)
蛭
漢検準1級
部首:⾍
12画
“蛭”を含む語句
水蛭
山蛭
蛭子
水蛭子
蛭巻
蛭石
蛭子祭
蛭間
蛭谷
蛭藻金
蛭田嶺蔵
蛭田博士
蛭田
蛭子顔
蛭子通
蛭子祠
蛭子神
蛭子座
蛭卷
蛭児尊
...