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緒
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いとぐち
ふりがな文庫
“
緒
(
いとぐち
)” の例文
狂犬! 私はそのとき狂犬の毒の恐ろしさよりも、「犬の
祟
(
たたり
)
」即ち、これぞ身の破滅の
緒
(
いとぐち
)
だ! という観念の恐ろしさに全身を
慄
(
ふる
)
わせた。
犬神
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
先日
(
こなひだ
)
米国のある地方で政治的の集まりがあつた。その席上で
談話
(
はなし
)
の
緒
(
いとぐち
)
が、今の名高い政治家の宗教的所属といふ事に落ちて来た。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
もしや、
心安立
(
こころやすだ
)
てに
面
(
かお
)
を合わせることが
緒
(
いとぐち
)
となって、
退引
(
のっぴき
)
ならぬこんがらかりに導いた日には、取っても返らないではないか。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
我に心を動かしていると思ッたがあれが
抑
(
そもそ
)
も誤まりの
緒
(
いとぐち
)
。
苟
(
かりそ
)
めにも人を愛するというからには、必ず
先
(
ま
)
ず互いに天性気質を知りあわねばならぬ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
何をか
緒
(
いとぐち
)
として順序よく申上げ候べき。全市街はその日朝まだきより、七色を以て彩られ候と申すより他はこれなく候。
凱旋祭
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
平田氏が一寸口をすべらしたのが
緒
(
いとぐち
)
だった。若し相手が普通の人間だったら、なんなく
取繕
(
とりつくろ
)
うことが出来たであろうけれど、青年には駄目だった。
幽霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
また
濕
(
しめ
)
つた
粘土
(
ねんど
)
が
火
(
ひ
)
の
傍
(
そば
)
に
置
(
お
)
かれると、
固
(
かた
)
くなることを
知
(
し
)
つたといふことなどが
發見
(
はつけん
)
の
緒
(
いとぐち
)
となつたかと
想像
(
そう/″\
)
せられます。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
こはこれ、彼の
識
(
し
)
れると
謂
(
い
)
ひし医師の奥二階にて、畳敷にしたる西洋造の十畳間なり。物語ははや
緒
(
いとぐち
)
を解きしなるべし。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
義貞はふと、こんな
緒
(
いとぐち
)
をみつけて言った。ひとつの話がとぎれると、あとの話題も彼がもちだすほかないのであった。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
東京でなければいけませんの? と云う風な質問が
緒
(
いとぐち
)
になって、御牧は自分の身の上のことや将来の計画などについて、いろいろな事実を
洩
(
も
)
らした。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
味噌漉下げてお使ひ歩行の途中とは、それは人の悪口なるべけれど、どこやらにて、当時幅利きの旦那様に見初められたまひしが、釣合はぬ御縁の
緒
(
いとぐち
)
。
今様夫婦気質
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
科学者は、
正
(
まさ
)
しく素晴らしい研究問題にぶつかったのを感じた。更に更に偉大なる研究のフィールドがこれを
緒
(
いとぐち
)
としてひらけて来るであろうと思った。
科学者と夜店商人
(新字新仮名)
/
海野十三
、
佐野昌一
(著)
其の男は少し口を
尖
(
とが
)
らしながら、しかし、その話の中味の事よりは、話の
緒
(
いとぐち
)
が出来たのを喜ぶやうな調子で云つた。
監獄挿話 面会人控所
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
丁度、自動車が松坂屋の前にさしかゝつた時、信一郎は、やつと——と言つても、たゞ一分間ばかり黙つてゐたのに過ぎないが——会話の
緒
(
いとぐち
)
を見付けた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
純八は老僕に手伝わせ、急いで褥を設けると、老僧を中へ舁き入れたが、是ぞ本条純八をして、数奇の運命へ陥らしむる、最初の恐ろしい
緒
(
いとぐち
)
なのであった。
高島異誌
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
論理は
痙攣
(
けいれん
)
と相交わり、論法の
緒
(
いとぐち
)
は思想の痛ましい動乱のうちにも切れることなく浮かんでくる。マリユスの精神状態はちょうどそういうところにあった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
しかしいったん
緒
(
いとぐち
)
を見出した時、自分はできるだけ根掘り葉掘り聞こうとした。けれども言葉の浪費を
忌
(
い
)
む彼女は、そうこちらの思い通りにはさせなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
松三は、どうかしてこの不快な沈黙を破りたいと、しきりにその
緒
(
いとぐち
)
を考えたり
四辺
(
あたり
)
を見廻したりしていた。
緑の芽
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
今日は、全く、あなたから、分別の
緒
(
いとぐち
)
を見つけ出して貰つたやうなものです。お礼を云はなくつちや……。
ママ先生とその夫
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
現に今度の事でも、森君が優しくびっこの犬を介抱してやったればこそ、
緒
(
いとぐち
)
が見つかったんだから。
贋紙幣事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
この
清々
(
すがすが
)
しい初夏の夕ぐれこそは、じつに古今の犯罪史に比類を見ない、一つの小説的悲劇が、これから高速度に進展しようとする、そのほんの
緒
(
いとぐち
)
にすぎなかったとは
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
自分はまたかかる山家へ娘と二人で来て、世話になるというのは、よほど不思議なこと、何かの縁であろうと思ッた,それが考えの
緒
(
いとぐち
)
で、いろいろのことを思い出した。
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
……だがいま常子には、鶴子のために非常にいゝ縁談のあてがほんの
緒
(
いとぐち
)
ほど出来かゝつてゐた。そのために彼女は、鶴子の事にかけては家中で一番神経質になつてゐた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
小身者の仙波として、七瀬が首尾よく勤めたなら、出世の
緒
(
いとぐち
)
をつかんだことになるし、他人に代った
験
(
しるし
)
が無かったなら、面目として、女房を、そのままには捨て置けなかった。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
……大工上りの
袁許坊主
(
おげぼうず
)
……
井遷寺
(
せいせんじ
)
のカラクリ本堂……思いもかけぬ大金儲けの
緒
(
いとぐち
)
……
生命
(
いのち
)
がけの大冒険……といったような問題を、心の中でくり返しくり返し考えながら……。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
中米南米には非凡の大建築残りて、誰がこれを作りしか、探索の
緒
(
いとぐち
)
すらなきもの多し。
神社合祀に関する意見
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
真綿は
繭
(
まゆ
)
を
曹達
(
ソーダ
)
でくたくた煮て
緒
(
いとぐち
)
を
撈
(
さぐ
)
り、水に
晒
(
さら
)
して
蛹
(
さなぎ
)
を取り
棄
(
す
)
てたものを、板に
熨
(
の
)
して
拡
(
ひろ
)
げるのだったが、彼女は
唄
(
うた
)
一つ歌わず青春の甘い夢もなく、
脇目
(
わきめ
)
もふらず働いているうちに
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そのままコペイキン大尉の噂は、詩人たちがレタ河と名づけている、あの忘却の河の底深く消え去ってしまったのです。ところが諸君、そもそも物語の
緒
(
いとぐち
)
はここからはじまる訳なんですよ。
死せる魂:02 または チチコフの遍歴 第一部 第二分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
岩壁の白い
薙
(
なぎ
)
を指しながら、話の
緒
(
いとぐち
)
を引き出したところが、あすこは嘉門次が、つい去年、
山葵
(
わさび
)
取りに入りこんで、始めて登ったところで、未だ誰もその外に、入ったものはないと言うので
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
多年の
夙志
(
しゅくし
)
が男爵の後援で遂げられそうな
緒
(
いとぐち
)
を得たのは明らかであった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
平七は飽くまでも、自分の引き出した話の
緒
(
いとぐち
)
を
捉
(
つか
)
まへて放さなかつた。
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
唯
(
ただ
)
その英文の
語音
(
ごいん
)
を正しくするのに
苦
(
くるし
)
んだが、
是
(
こ
)
れも次第に
緒
(
いとぐち
)
が
開
(
ひら
)
けて来れば
夫
(
そ
)
れはどの難渋でもなし、
詰
(
つま
)
る処は最初私共が蘭学を
棄
(
す
)
てゝ英学に移ろうとするときに、真実に蘭学を棄てゝ
仕舞
(
しま
)
い
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
栄二 それっきり家は
潰
(
つぶ
)
れてしまったのさ。それから清国へ渡って塩田で働いたり綿畑で働いたりしたらしいんだがね。日清戦争が始まって通訳にやとわれたのが世の中へ出て来る
緒
(
いとぐち
)
になったのさ。
女の一生
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
今では
縺
(
もつれ
)
を解かうにも
緒
(
いとぐち
)
さへ見つからない始末ぢやありませんか。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
見屆ける迄は奉公人
同樣
(
どうやう
)
召使
(
めしつか
)
ひ置しに非ずやとの仰せに五兵衞はハツとばかりに
平伏
(
へいふく
)
なし如何にも仰せの通りに御座候と答へ申けるに依て久八が
主殺
(
しゆごろ
)
しの
廉
(
かど
)
は越前守殿の
明斷
(
めいだん
)
に依て
遁
(
のが
)
れる
緒
(
いとぐち
)
にこそ成にける
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
これに
緒
(
いとぐち
)
を発したあのお手入れ……御用騒ぎがあったが!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
話の
緒
(
いとぐち
)
が分らなくなった。それを強いて云い進んだ。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
後閑
(
こが
)
武兵衞は老巧な調子で話の
緒
(
いとぐち
)
を開きました。
銭形平次捕物控:051 迷子札
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そこから
繰
(
たぐ
)
れる一つの
緒
(
いとぐち
)
もないもののやうに
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
次第に復興の
緒
(
いとぐち
)
につくことができました。
融和促進
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
之を
抽
(
ひ
)
いて
已
(
すで
)
に
緒
(
いとぐち
)
を見る
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
まあまあ、
緒
(
いとぐち
)
から引き出して話をする。そもそも兄貴とおれとが、甲府のお城のお天守の
天辺
(
てっぺん
)
でしたあのいたずらから事の筋が引いてるんだ。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
丁度、自動車が松坂屋の前にさしかゝった時、信一郎は、やっと——と言っても、たゞ一分間ばかり黙っていたのに過ぎないが——会話の
緒
(
いとぐち
)
を見付けた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
実に俊夫君は、この三ヶ寺の類似の点に眼をつけて、この事件の解決の
緒
(
いとぐち
)
を得たと言ってもよいのであります。
墓地の殺人
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
和議の内交渉について、その日の昼、何度目かの会見を試みたが、やはり何の
緒
(
いとぐち
)
も見られずに、
空
(
むな
)
しく別れたばかりの
蜂須賀
(
はちすか
)
彦右衛門から、急にかさねて
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ではどうしたらいゝのだらう? 彼女は自然に自分の大事な考への
緒
(
いとぐち
)
を、見失つて仕舞ひさうなのに気付くと直ぐ、其処に踏み止まつて、もう一度考へ直して見る。
惑ひ
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
見物人
(
けんぶつにん
)
が
容易
(
たやす
)
くこれを
買
(
か
)
ひ
受
(
う
)
けて
記念
(
きねん
)
にもし、また
後日
(
こうじつ
)
の
想
(
おも
)
ひ
出
(
で
)
の
緒
(
いとぐち
)
にもなるようになつてゐます。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
その頃までは日本人しか使わない麦味噌の
臭気
(
におい
)
がするとは……ハテ……面妖な……と思ったのが
大金儲
(
おおがねもうけ
)
の
緒
(
いとぐち
)
であったとは
流石
(
さすが
)
にカンのいい千六も、この時まだ気付かなかったであろう。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
恐らく誰かの悪戯に、手紙を出した事かは知らぬが。隠すより顕はるる、お前様の住所を人に知られたは、一つの災難、もうこれで、
緒
(
いとぐち
)
は出来たにせよ、好んで秘密を破るでもなからう。
移民学園
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
ほとほと自らその
緒
(
いとぐち
)
を
索
(
もと
)
むる
能
(
あた
)
はざるまでに宮は心を乱しぬ。彼は別れし後の貫一をばさばかり慕ひて止まざりしかど、
過
(
あやまち
)
を改め、
操
(
みさを
)
を守り、覚悟してその恋を全うせんとは計らざりけるよ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
“緒”の意味
《名詞》
いとぐちのこと。
(出典:Wiktionary)
緒
常用漢字
中学
部首:⽷
14画
“緒”を含む語句
情緒
由緒
端緒
一緒
緒口
下緒
内緒
紅緒
緒方
緒言
前鼻緒
心緒
鼻緒
革緒
御一緒
鼻緒屋
情緒纏綿
楠緒
由緒書
由緒付
...