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みひら
ふりがな文庫
“
睜
(
みひら
)” の例文
中毒と覚しい痕もなければ、皺の深みに隠れている、針先ほどの傷もなく、両眼も
睜
(
みひら
)
いてはいるが、活気なく
物懶
(
ものう
)
そうに濁っている。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そして、ぱっちりした、
霑
(
うるみ
)
のある、涼しい目を、心持
俯目
(
ふしめ
)
ながら、大きく
睜
(
みひら
)
いて、こっちに立った一帆の顔を、向うから
熟
(
じっ
)
と見た。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
病室に這入つて見ると、プラトンはぢつとして、両眼を大きく
睜
(
みひら
)
いて、意味もなく、しかも苦しげに、聖像の方を見詰めてゐた。
板ばさみ
(新字旧仮名)
/
オイゲン・チリコフ
(著)
闇の中にばかり
瞑
(
つぶ
)
って居たおれの目よ。も一度かっと
睜
(
みひら
)
いて、現し世のありのままをうつしてくれ、……
土竜
(
もぐら
)
の目なと、おれに貸しおれ。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
パシエンカは目を大きく
睜
(
みひら
)
いて、セルギウスの詞を聞いてゐる。セルギウスが真実の話をすると云ふ事が、婆あさんには分つてゐるのである。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
▼ もっと見る
かゝる時は昔の少女、その嬌眸を
睜
(
みひら
)
きて
水底
(
みなそこ
)
より覗き、或は
頷
(
うなづ
)
き或は招けり。とある朝漁村の男女あまた岸邊に集ひぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
箪笥の前に
凭
(
もた
)
れかかってじっとしていたが、ヒステリックに、黒い、大きな眼を白眼ばかりのようにかっと
睜
(
みひら
)
いて
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
娘は、何と見たであろう! 見る見る大きく
睜
(
みひら
)
いたが、二度目のおどろきに、又しても、気を失ってしまいそうだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
無残やな、振仰ぐ宮が
喉
(
のんど
)
は血に
塗
(
まみ
)
れて、
刃
(
やいば
)
の
半
(
なかば
)
を貫けるなり。彼はその手を放たで苦き
眼
(
まなこ
)
を
睜
(
みひら
)
きつつ、男の顔を
視
(
み
)
んと為るを、貫一は気も
漫
(
そぞろ
)
に
引抱
(
ひつかか
)
へて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
リボンはやはりクリイム色で容赦なく
睜
(
みひら
)
いた大きい目は、純一が宮島へ
詣
(
まい
)
ったとき見た鹿の目を思い出させた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「でもまさかキスをしはしなかつただらう。」かう云つた兄は目を大きく
睜
(
みひら
)
いて、額には汗を出してゐた。
尼
(新字旧仮名)
/
グスターフ・ウィード
(著)
こんなことではならぬならぬと思いながら、思えば思うほど腕が
萎
(
な
)
えるような気がして、どうにもならない。彼はただ暗がりの中にまじまじと眼を
睜
(
みひら
)
いていた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
この世への意志を
睜
(
みひら
)
きかけている、そして、眠る時は、ふかぶかと、濃い
睫毛
(
まつげ
)
をふせているのだった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうして何か物音がする度に頭を上げて、燐のように輝く眼を
睜
(
みひら
)
いた。種々な物音がする。しかしこの春の夜の物音は何れも心を押し鎮めるような好い物音であった。
犬
(新字新仮名)
/
レオニード・ニコラーエヴィチ・アンドレーエフ
(著)
「なに、十人と仰せられまするか。」正則は
吃驚
(
びつくり
)
したやうに獣のやうな眼を一杯に
睜
(
みひら
)
いた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ソロドフニコフは両方の目を大きく
睜
(
みひら
)
いて、唇を動かしながら、見習士官の顔を凝視した。見習士官は矢張前のやうにぢつとして据わつてゐて、匙で茶碗の中を掻き廻してゐる。
死
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
巡査は谷川の水を
掬
(
すく
)
って飲ませると、彼は
僅
(
わずか
)
に眼を
睜
(
みひら
)
いたが、警官の姿を
視
(
み
)
るや
俄
(
にわか
)
に恐怖と狼狽の色を現わして、
頻
(
しきり
)
に手足を
悶
(
もが
)
いていたが、何分身動きも自由ならぬ重傷である
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
こんな女は、今
若
(
も
)
し
喉
(
のど
)
もとへ剣を差しつけられても、それでも平気で眠つて居るだらうか。いや、そんな場合には、いかに無神経なこの女でも、さすがに人間の本能として当然目を
睜
(
みひら
)
くであらう。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
昏睡
(
こんすい
)
状態にあった患者が、朝注射で
蘇
(
よみがえ
)
ったように
睜
(
みひら
)
いた目に、取り
捲
(
ま
)
いている多勢の人の顔がふと映った。部屋にはしめやかな不安の空気が
漲
(
みなぎ
)
っていた。静かに段梯子を上り下りする
跫音
(
あしおと
)
も聞えた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
爛
(
ただ
)
れた眼を
睜
(
みひら
)
くようにして、梅三爺はもう一度彼の姿を見直した。
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
男(目を大きく
睜
(
みひら
)
く。)あのあなたがわたくしに。
辻馬車
(新字新仮名)
/
フェレンツ・モルナール
(著)
目は今までよりも広く
睜
(
みひら
)
かれて輝いている。
鴉
(新字新仮名)
/
ウィルヘルム・シュミットボン
(著)
睜
(
みひら
)
きて浮世を
目戍
(
みまも
)
る
貪婪
(
どんらん
)
の眼の「奢侈」。
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
かきはのまぶた
睜
(
みひら
)
き、かの自然の
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
それが、始め上体に衝動が起ったと見る間に、両眼を
睜
(
みひら
)
き口を
喇叭
(
ラッパ
)
形に開いて、ちょうどムンクの老婆に見るような無残な形となった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
谷へ出た松の枝に、まるで、一軒家の背戸のその二人を
睨
(
にら
)
むよう、
濶
(
かっ
)
と
眼
(
まなこ
)
を
睜
(
みひら
)
いて、紫の緒で、
真面
(
まむき
)
に
引掛
(
ひっかか
)
っていたのです。……
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
闇の中にばかり
瞑
(
つぶ
)
つて居たおれの目よ。も一度くわつと
睜
(
みひら
)
いて、現し世のありのまゝをうつしてくれ、……
土竜
(
もぐら
)
の目でも、おれに貸しをれ。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
浪路はパッチリと、目を
睜
(
みひら
)
いて、雪之丞の両手を取って、ぐっと顔をみつめるのだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
或る朝老僧の舍監を勤むるが、我
臥床
(
ふしど
)
の前に來しに、われ眠れるまゝに眼を
睜
(
みひら
)
き、おのれ魔王と叫びもあへず、半ば身を起してこれに抱きつき、暫し
角力
(
すま
)
ひて、又枕に就きしことあり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
梅三爺は、
睜
(
みひら
)
く眼と共に口まで開いて、
低声
(
こごえ
)
でこう
訊
(
き
)
いた。
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「何、お葉が居ない。」と、お杉も初めて眼を
睜
(
みひら
)
いた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
尼僧浄善の屍体は、両眼を
睜
(
みひら
)
き、階段の方を頭に足首を礼盤の上に載せて、四肢を稍はだけ気味に伸ばしたまま仰向けに横たわっていた。
夢殿殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
血気
(
けっき
)
に
逸
(
はや
)
る少年の、其の無邪気さを愛する如く、離れては居るが顔と顔、媼は
嘗
(
な
)
めるやうにして、しよぼ/\と目を
睜
(
みひら
)
き
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
晨朝
(
じんちょう
)
の勤めの間も、うとうとして居た僧たちは、
爽
(
さわ
)
やかな朝の眼を
睜
(
みひら
)
いて、
食堂
(
じきどう
)
へ降りて行った。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
爾時
(
そのとき
)
であつた。あの
四谷見附
(
よつやみつけ
)
の
火
(
ひ
)
の
見
(
み
)
櫓
(
やぐら
)
は、
窓
(
まど
)
に
血
(
ち
)
をはめたやうな
兩眼
(
りやうがん
)
を
睜
(
みひら
)
いて、
天
(
てん
)
に
冲
(
ちう
)
する、
素裸
(
すはだか
)
の
魔
(
ま
)
の
形
(
かたち
)
に
變
(
へん
)
じた。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
しかし、その光が、妖怪めいたはためきをしながら、しきりと床上を
摸索
(
まさぐ
)
っている間でも、法水の眼だけはその上方に
睜
(
みひら
)
かれていて、鋭く壇上の空間に注がれていた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
臘
(
らふ
)
に
白粉
(
おしろい
)
した、
殆
(
ほとん
)
ど
血
(
ち
)
の
色
(
いろ
)
のない
顔
(
かほ
)
を
真向
(
まむき
)
に、ぱつちりとした
二重瞼
(
ふたへまぶた
)
の
黒目勝
(
くろめがち
)
なのを
一杯
(
いつぱい
)
に
睜
(
みひら
)
いて、
瞬
(
またゝき
)
もしないまで。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
お勢が、恨み深げな眼を、くわっと宙に
睜
(
みひら
)
いて、床のうえで冷たく
縡切
(
ことき
)
れていたのである。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
床柱と思う正面には、広い額の
真中
(
まんなか
)
へ、五寸釘が突刺さって、手足も顔も
真蒼
(
まっさお
)
に黄色い
眼
(
まなこ
)
を
赫
(
かっ
)
と
睜
(
みひら
)
く、この
俤
(
おもかげ
)
は、話にある
幽霊船
(
ゆうれいぶね
)
の
船長
(
ふなおさ
)
にそっくり。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かくてもなお、我等がこの宇宙の間に
罷在
(
まかりあ
)
るを
怪
(
あやし
)
まるるか。うむ、疑いに
睜
(
みは
)
られたな。
睜
(
みひら
)
いたその瞳も、直ちに瞬く。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
けれども、礼之進が今、外へ出たと見ると同時に、明かにその両眼を
睜
(
みひら
)
いた瞳には、一点も
睡
(
ねむ
)
そうな
曇
(
くもり
)
が無い。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
目は、ぱつちりと
睜
(
みひら
)
いて居ながら、
敢
(
あえ
)
て見るともなく針箱の中に
可愛
(
かわい
)
らしい
悪戯
(
いたずら
)
な手を入れたが、何を捜すでもなく、指に当つたのは、ふつくりした
糸巻
(
いとまき
)
であつた。
蠅を憎む記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
梟眼
(
きょうがん
)
赫
(
かっ
)
と
睜
(
みひら
)
けば、お丹も顔色
蒼
(
あお
)
ずみて真白き
面
(
おもて
)
に
凄味
(
すごみ
)
を帯び、
眉間
(
みけん
)
に
透
(
とお
)
る
癇癪筋
(
かんしゃくすじ
)
、星眼鋭く
屹
(
きっ
)
と
睨
(
にら
)
み
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一しきり、また
凩
(
こがらし
)
の戸にさわりて、ミリヤアドの顔
蒼
(
あお
)
ざめぬ。その眉
顰
(
ひそ
)
み、唇ふるいて、苦痛を忍び
瞼
(
まぶた
)
を閉じしが、
十分
(
じっぷん
)
時
(
じ
)
過ぎつと思うに、ふとまた明らかに
睜
(
みひら
)
けり。
誓之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
年久しく十四五年を経た
牝
(
めす
)
が、
置炬燵
(
おきごたつ
)
の上で長々と寝て、
密
(
そっ
)
と薄目を
睜
(
みひら
)
くと、そこにうとうとしていた
老人
(
としより
)
の顔を伺った、と思えば、張裂けるような
大欠伸
(
おおあくび
)
を一つして
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(柿があるか、
剥
(
む
)
けやい、)と
涎
(
よだれ
)
で
滑々
(
ぬらぬら
)
した口を切って、絹も
膚
(
はだ
)
にくい込もう、長い間枕した、妾の膝で、
真赤
(
まっか
)
な目を
睜
(
みひら
)
くと、手代をじろり、さも軽蔑したように見て
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
五十ばかりの女は
寝衣姿
(
ねまきすがた
)
のしどけなく、
真鍮
(
しんちゅう
)
の
手燭
(
てしょく
)
を
翳
(
かざ
)
して、覚めやらぬ眼を
睜
(
みひら
)
かんと
面
(
おもて
)
を
顰
(
ひそ
)
めつつ、よたよたと縁を伝いて来たりぬ。
死骸
(
しがい
)
に近づきて、それとも知らず
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この物音に、お蔦はまたぱっちりと目を
睜
(
みひら
)
いて、心細く、寂しげに、枕を酒井に擦寄せると……
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
このとき夫人の
眉
(
まゆ
)
は動き、口は
曲
(
ゆが
)
みて、瞬間苦痛に堪えざるごとくなりし。半ば目を
睜
(
みひら
)
きて
外科室
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
美女 (夢見るようにその瞳を
睜
(
みひら
)
く)ああ、(歎息す)もし、
誰方
(
どなた
)
ですか。……私の
身体
(
からだ
)
は足を空に、(馬の背に
裳
(
もすそ
)
を
掻緊
(
かいし
)
む)
倒
(
さかさま
)
に落ちて落ちて、波に沈んでいるのでしょうか。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
睜
部首:⽬
13画