真赤まつか)” の例文
旧字:眞赤
あまりの労働はたらきはねあひだ垂々たら/\と、あせか、しぶきか、羽先はさきつたつて、みづへぽた/\とちるのが、ごといろづいて真赤まつかあふれる。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
山内は顔を真赤まつかにして会釈して、不即不離つかずはなれずの間隔をとつて、いかにも窮屈らしい足調あしどりで、十間許り前方まへをチヨコ/\と歩いた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ぬめを漉したやうな日光が、うらの藪から野菜畑、小庭の垣根などに、万遍なく差して、そこに枯れ/\に立つてゐる唐辛とうがらし真赤まつかいろづいてゐた。
(新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
落葉おちばし尽した木立こだちの間から石と泥とを混ぜた家家いへいへ白茶しらちやけた壁に真赤まつか蔦紅葉つたもみぢつて居るのはつゞれにしきとでも月並ながら云ひたい景色であつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ふとつた男は、真赤まつかになつて立上りました。そしてボーイをどなりつけました。ボーイはひらにあやまりました。が彼はなかなか許しませんでした。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
いまでも世界中せかいちうからすくちなかには、そのとき火傷やけどのあとが真赤まつかのこつてゐるといふ。ひときらはれながらも、あのあはれなペンペのためにいてゐるのだ。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
赤ペンキの看板がそれから、それへとつゞいた。仕舞には世の中が真赤まつかになつた。さうして、代助のあたまを中心としてくるり/\とほのほいきを吹いて回転した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
真赤まつかな顔をして泥だらけの手を出して、おごち走を頂きました、一人のこらずのお客様が見てゐるなかで。
お猫さん (新字旧仮名) / 村山籌子古川アヤ(著)
これは秋には真赤まつかに紅葉したのであつたが、今は小さい芽が枝の尖端せんたんのところから萌えいでてゐる。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
明り障子冬の西日をいつぱいにうけて真赤まつかになりたりあはれ
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ゆきずりに秘密をふきだすやはらかい肩は真赤まつかなばら
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
申上まうしあげると、国王こくわう真赤まつかになつていかり、王
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
こんなに真赤まつか臙脂べにれるのを。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ばちやんとねて、足袋たびはびつしより、わアと椅子いすかたむけて飛上とびあがると、真赤まつかになつて金魚きんぎよわらつた。あはは、あはは。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
友禅縮緬ちりめん真赤まつかな襦袢一枚にこてこてとした厚化粧と花簪はなかんざしに奇怪至極の装飾をこらし、洋人、馬来マレイ人、印度インド人に対して辣腕らつわんふるふものとは思はれなかつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
二匹の顔は真赤まつかになりました。が、幸なことに、顔中毛だらけでしたから、ひとには分りませんでした。
お猫さん (新字旧仮名) / 村山籌子古川アヤ(著)
三四郎は気がいて、今日迄美禰子の自分に対する態度や言語を一々繰り返して見ると、どれも是もみんなわるい意味が付けられる。三四郎は往来の真中まんなか真赤まつかになつて俯向うつむいた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
鍬下ろせばうしろ向かるる冬の畑そこに真赤まつかな閻魔の反射はんしや
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
七月の真赤まつかな吐息の火にげる。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
もういかんとあきらめるトタンにむねいたかつた、それから悠々いういうみづつた、するとうつとりしてなんだかわからなくなつたとおもふとぱついとのやうな真赤まつか光線くわうせんがさして
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
人通りの少ない小路こうぢを二三度折れたりまがつたりして行くうちに、突然辻占つぢうら屋に逢つた。大きな丸い提灯てふちんけて、腰からした真赤まつかにしてゐる。三四郎は辻占が買つて見たくなつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あひるさんのお母さんは、あひるさんを呼んで、どうして、こんなに沢山鶴さんへお母さんにはだまつて、ものを上げたのかと聞きましたが、あひるさんは顔を真赤まつかにしてどうしても言ひません。
あひるさん と つるさん (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
馬頭観世音の前を通れば甘薯畑いもばたけ盲人めくらこち向け日が真赤まつかぞよ
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
真赤まつかだ、黄金きんだ、雪白せつはくだ、猩々緋しやう/″\ひ
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
どこにゐるやら、真赤まつかな帆。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
不気味ぶきみ投出なげださうとするとずる/″\とすべつてゆびさきすひついてぶらりとさがつたはなれたゆびさきから真赤まつかうつくしい垂々たら/\たから、吃驚びツくりしてしたゆびをつけてじつとると
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
練兵場のよこを通るとき、おもくもが西で切れて、梅雨つゆにはめづらしいせき陽が、真赤まつかになつてひろはら一面いちめんらしてゐた。それがむかふくるまあたつて、まはたび鋼鉄はがねの如くひかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
日輪にちりんまはる、廻る、廻る、おつそろしいほど真赤まつかな太陽が
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
真赤まつかな土がほろほろと……
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
すぐにくちびるから口紅くちべにけたやうに、真赤まつかこぼれるんですものね。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それかあらぬか、わがこころまる真赤まつかな日がまはる。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あられ、霰、真赤まつかな霰
“MONICO” (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
粟穂あはぼ真赤まつかに。ふもとの女郎屋にやがついた。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おオこつたおこつた、真赤まつかになつておオこつた。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
真赤まつかだ、真赤まつかだ、夕焼小焼ゆふやけこやけだ。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まん円い真赤まつかな太陽が、今
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あれ、あの真赤まつか狐拳きつねけん
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そら真赤まつかくものいろ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
玻璃はり真赤まつかさけいろ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そら真赤まつかくものいろ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)