)” の例文
旧字:
村の人は塚穴の口で火をいて煙をその中へ入れた。野猪は苦しくなったのか外へ出てきた。待ち構えていた村の人はそれをたおした。
殺神記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
翁は今日も余等が寝て居る内に、山から引いた氷の様な水を浴び、香をいて神明に祈り、机の前に端座たんざして老子を読んだのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
花鬘けまんをそのくびにかけ、果を供え、樟脳しょうのうに点火してくゆらせ廻り、香をき飯餅を奉る、祠官神前に供えた椰子を砕き一、二片を信徒に与う。
平床ひらどこに据えた古薩摩こさつま香炉こうろに、いつき残したる煙のあとか、こぼれた灰の、灰のままにくずれもせず、藤尾の部屋は昨日きのうも今日も静かである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
母親は四時には遅くも起きてかまどの下をきつけた。清三は薬瓶と弁当とをかかえて、例の道をてくてくと歩いて通った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
今は割木がたこなつてるさかい、これで一束は買へまいけれど、まア一度分のきものは、ざつとここから出やうといふもんじや。何となア怖いもんなア。
心の鬼 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
囲炉裏ゐろりは五尺あまり、ふかさははひまで二尺もあるべし、たきゞおほき所にて大火おほびくゆゑ也。家にかちたるものは木鉢きばちの大なるが三ツ四ツあり、所にて作るゆゑ也。
一室を浄治し、あるいは空閑くうげん阿蘭若処あらんにゃしょにありて瞿摩ぐまを壇とし、栴檀香せんだんこうきて供養をなし、一勝座を置きて、旛蓋ばんがいもて荘厳しょうごんし、もろもろの名華を以て壇内に布列せよ。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
わが庵の竹の林にこぬか雨今朝も湿しめれり。春さきのこぬか雨なり。ふるとしも見えぬ雨なり。こぬか雨笹にこもりて、かうけばかうもしめりて、事もなし、ただ明るけし。
ふびんや少女おとめの、あばら屋といえば天井もかるべく、屋根裏はしばく煙りに塗られてあやしげに黒く光り、火口ほくちの如き煤は高山こうざんにかゝれる猿尾枷さるおがせのようにさがりたる下に
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
先程さきほどから萬屋よろづや主人あるじは、四でふかこひ這入はいり、伽羅きやらいてかうを聞いてりました。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
『誰がくだらないことをきつけたのだろうねえ、ほんとにしようがないねえ』
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
またある時は二つの船は互いに遠く乗り放し矢合わせをして戦った。闇の夜にはかがりき、星明りには呼子よびこを吹き、月の晩には白浪しらなみを揚げ、天竜の流れ遠州えんしゅうなだを血にまみれながらただよった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこ一面いちめんもやがかかって、その靄に、ぼうと遠方の火事のような色がうつっていて、かがりでもいているかと、そこんで赤く見える、そのあたりに、太鼓たいこが聞える、笛も吹く、ワアという人声がする。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いで行ってしまわれた夕暮、我れは悲しみにたえやらず、君の行方なつかしく、美しい茜色の西の大空を、野越え、山越え、森越えて眺めやり、松樹しょうじゅ影暗く繁る、瘤寺こぶでらの、湿しめれる墓畔ぼはんに香をいて
或は水汲み、或は火
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気が注くとともにかの女と天縁があるかないかを知りたいと思いだした。彼は廟の中へ入って往って、香をき、赤い蝋燭をあげて祷った。
断橋奇聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
巻絹はち縫うて衣裳にすれどもらず、衣服に充満みちけるが、後にその末を見ければ延びざりけり、鍋は兵糧をくに、少しの間に煮えしとなり。
一人の船頭は、マッチを闇につて、大きな煙管きせるに火をつけて、スパリスパリつて居た。時々とまの中の明るく見える船や、かがりのやうに火をいて居る船などがあつた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
寒いのは、この五月の空に、かんかん炭をいて獰猛共が囲炉裏いろりへあたってるんでも分る。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
く香の煙の煙立つ夕をとくも来れと待つ間、一字三礼妙典書写の功を積みしに、思ひ出づるも腹立たしや、たゞに朕が現世の事を破りしのみならず、また未来世の道をも妨ぐる人の振舞
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
今はただ蚊が名物で、湯の谷といえば、まちの者は蚊だと思う。木屑きくずなどをいた位で追着おッつかぬと、売物の蚊遣香は買わさないで、杉葉すぎッぱいてくれる深切さ。縁側に両人ふたり並んだのを見て嬉しそうに
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小三郎は養父の二七日ふたなぬかの日になって法事をしたところで、翌朝六つ時分になって庖厨かってに火をく者があった。それは五十ばかりの女であった。
四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
隠行の香薬とは、支那で線香をいて人事不省たらしめて盗みを行う者あるごとく、特異の香を放ち、守衛を不覚にして宮中に入ったのであろう。
うり浸して食いつゝ歯牙香しがこうと詩人の洒落しゃれる川原の夕涼み快きをも余所よそになし、いたずらにかきをからみし夕顔の暮れ残るを見ながら白檀びゃくだんの切りくず蚊遣かやりにきて是も余徳とありがたかるこそおかしけれ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「寒ければ、石炭をかせようか」と云った。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
河南の韓山童乱をし、弥勒仏の出世を名となし、無頼の悪少を誘集し、香をき、を結び、漸々滋蔓じまんして淮西の諸郡を陥れ、それより陳友諒・張士誠等の兵ついで起り
さくき、花をくうし香をくような事は僕婢ぼくひの為すがままに任せていたが、僧をひつぎおさめることは、其命を下さなかったから誰も手をつけるものは無かった。一日過ぎ、二日過ぎた。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
明りにといてある松の火がぼんやりと鼠色の法衣ころもを照らした。
鮭の祟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ただしいと古く香の知識の発達したはまずアジア大陸諸国で、支那の『神農本草』既に香剤を収めた事多く、『詩経』『離騒』に芳草しばしば見え、返魂はんごん招仙に名香をく記事を絶えず。
「どうだ、火をこうか」
火傷した神様 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
戦いの刻限を告げしっかり食事して働いてくれと頼んで去った、七人木で庵を造りやじりなどいで弓弦ゆづるくくって火いて夜を明かし、朝に物よく食べての時になりて敵来るべしといった方を見れば
その頃まで邦産なしと心得輸入品を用いおったが、ようやく右の地で捜し出たらしく、古人苦辛のほど察すべし。このへたばかりけばかざしきも、衆香にまじえて焼かば芳をし合香に必須だ。
その国のドルイド教の僧輩反抗もっとも烈しかったので尊者やむをえずその沃野よくやとこうてたちまち荒れた沼となし川を詛うて魚を生ぜざらしめ缶子を詛うていくら火を多くいても沸かざらしめ
街路をきよめ、はたを懸け、香をき、花を飾って歓迎する。