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焦立
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いらだ
ふりがな文庫
“
焦立
(
いらだ
)” の例文
子供はそんな言葉には頓着する様子もなく、人を
焦立
(
いらだ
)
たせるやうに出来た泣き声を張り上げて、夜着を踏みにじりながら泣き続けた。
An Incident
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
蜘蛛
(
くも
)
の巣のようなひびが八方にひろがり、その穴から冷たい海風がサッとガスを吹き込むと、危なげな蝋燭の火がジジッと
焦立
(
いらだ
)
つ。
灯台鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
近頃むづかしい事件と言ふと、八丁堀の旦那方が、直ぐ平次を差向け度がるのは相當岡つ引仲間の神經を
焦立
(
いらだ
)
たせて居たのです。
銭形平次捕物控:048 お藤は解く
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
蚊が二三羽耳の傍で
呻
(
うな
)
った。恭三は
焦立
(
いらだ
)
った気持になった。呼吸がせわしくなって胸がつかえる様であった。腋の下に汗が出た。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
冷笑癖のある友人と連れ立った情熱家。これがあの以後六時間の間のわたくしの恋ごころです。
焦立
(
いらだ
)
たされずには居られません。
ある日の蓮月尼
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
「さて、困ったものよと、お
喞
(
かこ
)
ちを洩らされ、ひとつ、
佐殿
(
すけどの
)
からでもいうてもらうしかあるまいかなどと、お
焦立
(
いらだ
)
ちのていにござりました」
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それ程の距離に旬日を費している彼らの労役の遅さに
焦立
(
いらだ
)
つのだ。焦立つと同時に、刻々に接近することにはきおい立つものもあったのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
けれども、さすがの私も、後にはとうとう隠忍しきれなくなって、
焦立
(
いらだ
)
つ心持をそのまま文字に書き
綴
(
つづ
)
ってやったのである。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
だが、彼女はソファに腰を下ろし、ネグリジェの脚を組んで、青年のその落着きのなさ、
焦立
(
いらだ
)
ちを完全に無視していた。彼女はしゃべりだした。
愛の終り
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
その夜は、浜田達にとって、一と晩じゅう、眠ることの出来ない、奇妙な、
焦立
(
いらだ
)
たしい、
滅入
(
めい
)
るような不思議な夜だった。
前哨
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
「おい、お侍、どうする気だよ。何とか早く形を付けてくれ。俺は本栖湖へ行かなけりゃならねえ」岩の上から甚太郎は
焦立
(
いらだ
)
たしそうに声を掛けた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「悪徒の友なる
懐
(
いと
)
しき
夜
(
よ
)
は狼の歩み
静
(
しづか
)
かに
共犯人
(
かたうど
)
の如く進み来りぬ。いと広き
寝屋
(
ねや
)
の如くに、空
徐
(
おもむろ
)
に
閉
(
とざ
)
さるれば心
焦立
(
いらだ
)
つ人は
忽
(
たちまち
)
野獣の如くにぞなる……」
夜あるき
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
彼は今靜かに坐つてゐるけれども、その
鼻孔
(
びこう
)
、その口、その額の邊りに、
焦立
(
いらだ
)
ちか頑固か熱情か、その何れかを表示するものが
仄見
(
ほのみ
)
えるやうな氣がした。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
その言葉の端が大西氏の
焦立
(
いらだ
)
つた神経に触つたものか、博士のお
喋舌
(
しやべり
)
が済むか済まないうちに、大西氏はいきなり
焼火箸
(
やけひばし
)
のやうな真赤な言葉を投げつけた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
一二冊は携えて来た本もあるが、さてそれに読み入るだけの余裕はなくて、落ち着いたようで居て、何か物に憧れるような
焦立
(
いらだ
)
たしさを覚えるのも
可笑
(
おか
)
しい。
雨の宿
(新字新仮名)
/
岩本素白
(著)
失望
落胆
(
らくたん
)
に沈んでいる時にも、もしこれがソクラテス
翁
(
じい
)
さんであったら、この
一刹那
(
いっせつな
)
を
如何
(
いか
)
に処するであろう、と振返って、
静
(
しずか
)
に
焦立
(
いらだ
)
つ精神を
鎮
(
しず
)
めてみると
ソクラテス
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
赤羽主任は、殆んど迷宮に
途惑
(
とまど
)
った人間のように、
甚
(
はなはだ
)
しく
焦立
(
いらだ
)
ちながらも、決して検証を
怠
(
おこた
)
らなかった。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
走れない人のように気を
焦立
(
いらだ
)
つけれども、この場合、助けを呼ぶのが利益か不利益かはわかりません。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夕方になると、叔母はまた叔父の来ないのに、気を
焦立
(
いらだ
)
たせた。お庄は幾度となく家へ電話をかけた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
夜が明ければ
五月蠅
(
うるさ
)
いと
焦立
(
いらだ
)
っているところへ、騒ぎを聞いて駈けつけて来た御用提灯の灯が点々と——これは、それとなく喧嘩を割って、喬之助を救おうという
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
言われぬの掛合のうちに政岑は
焦立
(
いらだ
)
って来、
佩刀
(
はいとう
)
をひきつけて片膝を立て、いまにも斬りつけるかという切羽詰ったようすになったので、主水も覚悟をきめたらしく
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
今は何か
焦立
(
いらだ
)
たしい気持にされるばかりで、道端の商人から色のついた
飴
(
あめ
)
を買う女にも——水中に野菜の車を
曳
(
ひ
)
かせ行く農夫にも——銀の飾りの重そうな革帯をして
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
この人は口をハキ/\きかないのも嫌でたまらない私の神経を
焦立
(
いらだ
)
たせました。頑丈なやうなかぼそいやうなちつとも落ちついてゐない長い体がまた私の気になりました。
妾の会つた男の人々(野依秀一、中村弧月印象録)
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
いくら
愚図愚図
(
ぐずぐず
)
云ったところでどうにもならんと云ったらならんのだから、と
最後
(
しまい
)
には、
焦立
(
いらだ
)
たしそうに卓を叩いて、文句があるなら市長に云いたまえ、と云うのであった。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
南の夕陽は発狂的だ。風は死んで、爆破しそうな
焦立
(
いらだ
)
たしさが市街を固化する。人の血圧は高い。神経は刺戟を求めて、そしてどんな刺戟にでも耐えられそうに昂進している。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
一刻も早く乗込もうとする心が燃えて、
焦立
(
いらだ
)
って、その混雑は一通りでなかった。三人はその間を
辛
(
かろ
)
うじて抜けて、広いプラットホオムに出た。そして最も近い二等室に入った。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
丹治は我が可愛い忰を噛殺されましたから
焦立
(
いらだ
)
って庭へ飛び下り、馬の脇腹へ刀を突込んでこじりましたゆえ、
流石
(
さすが
)
に
猛
(
たけ
)
き
大馬
(
おおうま
)
も其の場へバッタリと
横仆
(
よこたお
)
しになる上へ
乗
(
の
)
し懸り
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
あゝ、
天
(
てん
)
は
飽迄
(
あくまで
)
我等
(
われら
)
に
祟
(
たゝ
)
るのかと、
心
(
こゝろ
)
を
焦立
(
いらだ
)
て、
身
(
み
)
を
藻掻
(
もが
)
いたが、
如何
(
いかん
)
とも
詮方
(
せんかた
)
が
無
(
な
)
い。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
避
(
よ
)
けて通らん
術
(
すべ
)
も無く、引返すべき次第にあらねば、
退
(
の
)
けよ、
退
(
すさ
)
れと声を懸くれど、聞着けざるか道を譲らず、
馬丁
(
べっとう
)
は
焦立
(
いらだ
)
ちてひらりと寄せ、屑屋の襟首むずと
攫
(
つか
)
めば、虫の
呼吸
(
いき
)
にて泣叫ぶを
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「おい、何の用だ?」光線の関係で内部がよくは見えなかったのであろう、コトコトとノックする音が聞えたが、やがて
焦立
(
いらだ
)
たしげにののしる声がきこえ、次に
鍵
(
かぎ
)
がガチャリと鳴り、戸が開いた。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
彼の頭腦を支配してゐる種々の形象と種々の色彩の
混雜
(
こんがらが
)
つた樣な、何がなしに氣を
焦立
(
いらだ
)
たせる重い壓迫も、彼の老ゆることなき空の色に吸ひ取られた樣で、彼は
宛然
(
さながら
)
、二十前後の青年の樣な足取で
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
大きな腹を畳へ着けたなり打つとも
蹴
(
け
)
るとも勝手にしろという態度をとった。
平生
(
へいぜい
)
からあまり口数を利かない彼女は
益
(
ますます
)
沈黙を守って、それが夫の気を
焦立
(
いらだ
)
たせるのを目の前に見ながら澄ましていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
目に見えぬうちに時間の
経
(
たっ
)
て行くのが何の訳なく気を
焦立
(
いらだ
)
たした。
不思議な鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
声を
焦立
(
いらだ
)
たせようとすると、
吾
(
われ
)
ながらそれが感傷的に震へるのだ。
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
雪之丞は、相変らず、
焦立
(
いらだ
)
ちも見せず、
含笑
(
わら
)
って
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
時には
焦立
(
いらだ
)
たしいような気持にさえなる。
競馬の一日に就いて
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
近頃むずかしい事件というと、八丁堀の旦那方が、すぐ平次を差向けたがるのは相当岡っ引仲間の神経を
焦立
(
いらだ
)
たせていたのです。
銭形平次捕物控:048 お藤は解く
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
武蔵はもう約束の場所へ、先に来ているかも知れないが、敵を
焦立
(
いらだ
)
たせようという清十郎先生のお考えで、わざと、遅刻しているのかも知れない。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そんなことで、次の年々からは秋になると、復一は神経を
焦立
(
いらだ
)
てていた。ちょっとした低気圧にも
疳
(
かん
)
を
昂
(
たか
)
ぶらせて、夜もおろおろ寝られなかった。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
面白くない勝負をして
焦立
(
いらだ
)
った仁右衛門の腹の中とは全く裏合せな
煮
(
に
)
え
切
(
き
)
らない景色だった。彼れは何か思い切った事をしてでも胸をすかせたく思った。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
こんな言葉には
焦立
(
いらだ
)
たなかつた。實際、背後の岩に
倚
(
よ
)
りかゝつて、兩腕を胸に組み、少しも動じないその顏色を見ると、彼は長い
手強
(
てごは
)
い反對も覺悟してゐるのであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
はたしてその人影が彼をこんなにむかむかさせたのか——それは彼自身にも
判
(
わか
)
らなかったが、多くの仕事に取り囲まれた人間には、どうにも抑えることの出来ぬ
焦立
(
いらだ
)
たしさが
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
お島はそこにも
暫
(
しばら
)
く立とうとしたが、
焦立
(
いらだ
)
つような気分が、長く足を
止
(
とど
)
めさせなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
焦立
(
いらだ
)
った鏡丹波が、無形一刀の
秘精
(
ひせい
)
、
釘打
(
くぎう
)
ちの突き、六尺離れたところから刀を突き出して、斬ッ尖で釘を打ち込むという、これが源助町道場の大変な
味噌
(
みそ
)
だったもので、また
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
焦立
(
いらだ
)
ちながら、その幸福な彼に気を呑まれて茫然としていた自分を思い出した。
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
しだいに左内が
焦立
(
いらだ
)
って来て、今にも鋭い声をあげるか、ないしはひざまずいて嘆願をするか、または怒って立ち去るか、ともかくも悲しい出来事が、すぐにも起こって来るであろうと
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
WHY! ああ・いえす、しつこい歯痛とともに鬱々として
焦立
(
いらだ
)
たしいものの代表に使われるほど、世界的に有名な London weather ——それが私に作用しつつあるのだ。
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
黄昏時
(
たそがれどき
)
に行けば間違いはない——とこう思案して、お松は
焦立
(
いらだ
)
つ心をおさえながら、田山白雲のためにも、何かと
夕餉
(
ゆうげ
)
の仕度をととのえたり、部屋のうちを片づけたりして待っておりました。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
難有
(
ありがた
)
く、せめて
報恩
(
ほうおん
)
の
萬分
(
まんぶん
)
の
一
(
いち
)
には、
此
(
この
)
軍艦
(
ぐんかん
)
の
水兵等
(
すいへいら
)
と
同
(
おな
)
じ
樣
(
やう
)
に
働
(
はたら
)
きたいと、
頻
(
しき
)
りに
心
(
こゝろ
)
を
焦立
(
いらだ
)
てたが、
海軍
(
かいぐん
)
の
軍律
(
ぐんりつ
)
は
嚴
(
げん
)
として
動
(
うご
)
かす
可
(
べ
)
からず、
本艦
(
ほんかん
)
在役
(
ざいえき
)
の
軍人
(
ぐんじん
)
ならねば
檣樓
(
しやうらう
)
に
昇
(
のぼ
)
る
事
(
こと
)
も
叶
(
かな
)
はず
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
焦立
(
いらだ
)
たしげに舌打ちしながら、やがて大月へ云った。
闖入者
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
焦
常用漢字
中学
部首:⽕
12画
立
常用漢字
小1
部首:⽴
5画
“焦”で始まる語句
焦
焦躁
焦燥
焦心
焦々
焦慮
焦点
焦茶
焦眉
焦土