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殴
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なぐ
ふりがな文庫
“
殴
(
なぐ
)” の例文
旧字:
毆
数時間のあいだ、上からは
殴
(
なぐ
)
るように降りつけられ、下は湿地と
水溜
(
みずたま
)
りをこいで歩くのであった。全身あますところなく濡れていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
誰
(
だれ
)
だ
己
(
おれ
)
の
真似
(
まね
)
をするのは。と
云
(
い
)
つて腹を立て、
其男
(
そのをとこ
)
を
引摺
(
ひきず
)
り出して
打
(
ぶ
)
ん
殴
(
なぐ
)
つたところが、
昨日
(
きのふ
)
自分の
連
(
つ
)
れて歩いた
車夫
(
しやふ
)
でございました。
年始まはり
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
五郎太の眼は、怒りとも
憐
(
あわ
)
れみともとれる光りを帯び、袴の上の両手は固く
拳
(
こぶし
)
を握って、いまにも
殴
(
なぐ
)
りかかりそうにふるえていた。
古今集巻之五
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「きょうはじめてお嫁さんと逢うんだというのに、十一時頃まで
悠々
(
ゆうゆう
)
と朝寝坊しているんですからね。ぶん
殴
(
なぐ
)
ってやりたいくらいだ。」
佳日
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
隆吉からは同情的な
施
(
ほどこ
)
しを受けてはならないと思った。
殴
(
なぐ
)
るか、
蹴
(
け
)
るか、どんなにひどい仕打ちをされてもかまわないと思うのである。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
▼ もっと見る
「なんだって?」課長は頭をイキナリ
煉瓦
(
れんが
)
で
殴
(
なぐ
)
られたような気がした。一体青竜王はどこまで先まわりをして調べあげているのだろう。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
愚助は不思議に思ひながら、お父さまの
傍
(
そば
)
へ近よりますと、お父様は、いきなり愚助の
頬
(
ほほ
)
つぺたを、ぴしやりと
殴
(
なぐ
)
りつけました。
愚助大和尚
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
殴
(
なぐ
)
ったり
蹴
(
け
)
ったり、散々に責め
嘖
(
さいな
)
んだ挙句、あろうことかあるまいことか! しまいには、その坊さんにね、
此奴
(
こやつ
)
が腰元をそそのかして
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
或る近所の自警団では大杉を目茶苦茶に
殴
(
なぐ
)
ってやれという密々の相談があるとか、
嘘
(
うそ
)
か
実
(
まこと
)
か知らぬがそういう不穏の沙汰を度々耳にした。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そういった
罵
(
ののし
)
りを浴びせられつつ、俺は寄ってたかって
殴
(
なぐ
)
られ、蹴られ、踏んづけられて、半死半生の目に会わされたのである。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
その時、ある大名の行列が乱暴をしたから、その
先手
(
さきて
)
の
水瓜頭
(
すいかあたま
)
を十ばかり見つくろって
殴
(
なぐ
)
り、吉原の方へ逃げ込んだことがある。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
予報
(
テップ
)
売りの口上だ。私も買ってみたが、帳面のきれはしに馬の番号が
出鱈目
(
でたらめ
)
に——どうもそうとしか思われない——
殴
(
なぐ
)
り
書
(
がき
)
してあるだけだ。
踊る地平線:02 テムズに聴く
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
前線の兵は貧乏人の
伜
(
せがれ
)
ばかりだ。俺達は、ものこそ云えないが、命を賭けているんだ。孫伍長は、あの晩も、もう少しで
郭
(
かく
)
を
殴
(
なぐ
)
るところだった。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
しかも玉次郎を
殴
(
なぐ
)
った玉造もかつて師匠金四のために十郎兵衛の人形をもって頭を叩き割られ人形が血で
真赤
(
まっか
)
に
染
(
そ
)
まった。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は、しまひには、その男を
殴
(
なぐ
)
りつけるつもりであつた。彼等は五六間を
距
(
へだ
)
てて口争ひして居た。其処へ、見知らない男の後から一つの
提灯
(
ちやうちん
)
が来た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
そして、兵卒の方が将校を
殴
(
なぐ
)
りつけそうなけはいを示していた。そこには咳をして血を咯いている男も坐っていた。
橇
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
喧嘩
(
けんか
)
をしては
殴
(
なぐ
)
り倒され、しかも翌日になると、いつもの調子になって陽気に騒ぎたて、周囲の者も皆自分と同じように快活になることを求めていた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「いえ、伍長殿。ほんとに迷ったのであります」それから声が低くなり何かくどくど言う声音であったが、声が
途断
(
とぎ
)
れると又急に
殴
(
なぐ
)
るらしい気配がした。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
ヤンがマヌエラ共有を主張してカークに
殴
(
なぐ
)
られた。しかしカークでさえ、妙にせまった
呼吸
(
いき
)
をし、血ばしった眼でマヌエラをみる、顔は醜い限りだった。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そう思い返しながら、われとわが
拳固
(
こぶし
)
をもって自分の頭を
殴
(
なぐ
)
って、
逸
(
はや
)
り狂う心の
駒
(
こま
)
を
繋
(
つな
)
ぎ止めたのであった。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
真向から平手でピシヤツと、
殴
(
なぐ
)
るやうな父の返事に、相手は暫らくは、二の句が、
次
(
つ
)
げないらしかつた。が、暫らくすると、太い渋い不快な声が聞え始めた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
しかも年中酔っ払っているおやじはこの喧嘩を聞きつけると、たれかれの差別なしに
殴
(
なぐ
)
り出したのです。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ルピック夫人は手の
平
(
ひら
)
でぶつ。ルピック氏は新聞で
擲
(
なぐ
)
る。それから、足で
蹴
(
け
)
る。ピラムは、
殴
(
なぐ
)
られるのが
怖
(
こわ
)
さに、腹を床にすりつけ、鼻を下に向け、やたらに吠える。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
私の心臓は私よりも
慌
(
あわ
)
てていた。ひどく
殴
(
なぐ
)
りつけられた後のように、頭や、手足の関節が痛かった。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
掏摸
(
すり
)
だ! 掏摸だアッ! と
罵
(
ののし
)
りさわいで、背後の人々が一団となって揺れあっている。腕が飛ぶ拳が振りあがる、
殴
(
なぐ
)
る蹴る。道ぜんたいが
野分
(
のわき
)
のすすきのよう……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
民さんは植木屋の夏がれどきに
八百屋
(
やおや
)
をやり、貸シが多くなりもだもだのあげく、長屋のお
内儀
(
かみ
)
さんの顔をぶん
殴
(
なぐ
)
り、その場で
巡査
(
じゅんさ
)
につかまって留置場にほうり込まれた。
生涯の垣根
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
てんびん
棒
(
ぼう
)
かなんかで、
殴
(
なぐ
)
り
殺
(
ころ
)
しにでもしなきや、
腹
(
はら
)
の
虫
(
むし
)
がいえねえんですからね——。が、まア、
殺
(
ころ
)
されやがつて、
天罰
(
てんばつ
)
というところでしよう。ありがてえと
思
(
おも
)
います。
金魚は死んでいた
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
殴
(
なぐ
)
り合う…… se donner du tabac(煙草をかぎ合う——十七世紀)—→ se chiquer la gueule(
頤
(
あご
)
を
咬
(
か
)
み合う——十九世紀)
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
三郎は、いつでもこの遠藤の顔を見さえすれば、何だかこう背中がムズムズして来て、彼ののっぺりした頬っぺたを、いきなり
殴
(
なぐ
)
りつけてやり
度
(
た
)
い様な気持になるのでした。
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
もっと悟空に近づき、いかに彼の荒さが神経にこたえようとも、どんどん
叱
(
しか
)
られ
殴
(
なぐ
)
られ
罵
(
ののし
)
られ、こちらからも罵り返して、身をもってあの
猿
(
さる
)
からすべてを学び取らねばならぬ。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「——横着顔して、すッとぼけるな。はやく香具師へ銭を投げてやらんと、ぶん
殴
(
なぐ
)
るぞ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼はその時一男をひきずり倒して
殴
(
なぐ
)
りつけたい程じりじりすると同時に、また一方では、その
面憎
(
つらにく
)
いまで落ちつきはらった
胆
(
きも
)
っ
玉
(
たま
)
の太さに、思うさま拍手を送りたくなったのだった。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
その喧嘩を舞台へ持ち出して、滅茶苦茶の
掴
(
つか
)
み合いや
殴
(
なぐ
)
り合いをやる。それがいかにも真に迫っているというので、一部の観客に喜ばれた。立廻りは確かに壮士芝居の売物になった。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
看護婦が薬を間違えたために患者が死んだのだという
嫌疑
(
けんぎ
)
をかけて、是非その看護婦を
殴
(
なぐ
)
らせろと、医局へ
逼
(
せま
)
った人があったというその話は、津田から見るといかにも
滑稽
(
こっけい
)
であった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし史朗はその時、清川に
頭臚
(
あたま
)
を
殴
(
なぐ
)
られ、泣き
面
(
つら
)
かきながら
逐
(
お
)
い
攘
(
はら
)
われて来た。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
追従
(
ついしょう
)
、暗闘、——それから事務員某の醜悪見るに堪えないかっぽれ踊り、それから、そうだ、間もなく誰かと何かしきりに
罵
(
ののし
)
り合ってあげくの果てが
殴
(
なぐ
)
り合いとなり、
皿
(
さら
)
類のこわれる音
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
たとえば演説会で、ヒヤヒヤの連呼や拍手喝采のしつづけは喜んで聞いているが、少しでもノオノオとか簡単とかいえば、すぐ警察官と一緒になって、つまみ出せとか
殴
(
なぐ
)
れとかほざき出す。
新秩序の創造:評論の評論
(新字新仮名)
/
大杉栄
(著)
「ただいまで申す、
殴
(
なぐ
)
りこみのようなことを、
彼女
(
あれ
)
がいたしましたので——」
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「馬鹿野郎ッ!」吃りがいきなり監督の鼻ッ面を
殴
(
なぐ
)
りつけるように怒鳴った。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
ある時、高等小学の修身科で彼は熱心に忍耐を説いて居たら、生徒の一人がつか/\立って来て、教師用の
指杖
(
さしづえ
)
を取ると、
突然
(
いきなり
)
劇
(
はげ
)
しく先生たる彼の
背
(
せなか
)
を
殴
(
なぐ
)
った。彼は
徐
(
しずか
)
に顧みて何を
為
(
す
)
ると問うた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
腹が立つたら、出かけて行つて、
殴
(
なぐ
)
り合ふ方が本当だ。罵られて黙つて引込んでゐるのは文士位のものだ。しかし、これも
損得
(
そんとく
)
を考へてゐるのだと思へば、別に問題にするにも当らないけれど……。
批評
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
私はあるとき親爺の頬っぺたを
殴
(
なぐ
)
りつけたのである。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
「えい!
緊
(
しつか
)
りせんかい、
撲
(
ぶ
)
ん
殴
(
なぐ
)
るぞ!」
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
「よし、
殴
(
なぐ
)
って来てやろ」
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
殴
(
なぐ
)
ったといった方がよい。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
殴
(
なぐ
)
らむといふに
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
どろぼう! という太いわめき声を
背後
(
うしろ
)
に聞いて、がんと肩を打たれてよろめいて、ふっと振りむいたら、ぴしゃんと
頬
(
ほお
)
を
殴
(
なぐ
)
られました。
灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
まるでうしろから
槌
(
つち
)
で
殴
(
なぐ
)
りつけたように、階段の上で、ごとごとばたんばたんと、しきりに前に倒れ、そして転がるのであった。
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
仙「己は通りがゝりのものだが、弱い町人を
掴
(
つか
)
めえて嚇しやアがッて、
長
(
なげ
)
えのを振り廻わし、斬るの
殴
(
は
)
るのッて、ヤイ此の
侍
(
さむれえ
)
、
殴
(
なぐ
)
り付けるぞ」
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
犬は毛の長い、真白な犬で、赤い舌を出して、富岡に、神経質に吠えたててゐる。ゆき子は犬の頭をきびしく
殴
(
なぐ
)
り
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
殴
常用漢字
中学
部首:⽎
8画
“殴”を含む語句
殴打
打殴
殴倒
殴殺
引殴
横殴
横面殴
殴付
殴合
殴打擲
殴曲
殴返
殴飛