その頃錢形平次は、兇賊木枯の傳次を追つて、東海道を駿府へ、名古屋へ、京へと、揉みに揉んで馳せ上つて一と月近くも留守。
銭形平次捕物控:188 お長屋碁会 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
I can speak (新字新仮名) / 太宰治(著)
老僧の孤影悄然木枯の荒野に落ちたやうに哀れであるが、このあつさりした転向ぶりはカトリックの執拗な信仰できたへたアルメーダには判らないから
イノチガケ:――ヨワン・シローテの殉教―― (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
時限爆弾奇譚:――金博士シリーズ・8―― (新字新仮名) / 海野十三(著)
木枯の吹く午後おそく、ひろ子は、前後左右ぎっしり職場の若い婦人たちで埋った講堂で、ニュース映画を観ていた。それは「君たちは話すことが出来る」と云う題であった。
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚 (新字新仮名) / 林不忘(著)
顎十郎捕物帳:02 稲荷の使 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
野邊山が原の中に在る松原湖といふ小さな湖の岸の宿に二日ほど休んだが、一日は物すごい木枯であつた。あゝした烈しい木枯は矢張りあゝした山の原でなくては見られぬと私は思つた。
樹木とその葉:02 草鞋の話旅の話 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア (旧字旧仮名) / シャーロット・ブロンテ(著)
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
吹き出せば止むことを知らぬ江戸名物冬の木枯なのです。
旗本退屈男:09 第九話 江戸に帰った退屈男 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
「木枯の傳次がこの路地の中に飛び込んだとすると、最初の晩は浪人の家、二度目と三度目は、お前の家へ飛び込むより外に逃げ路はないぜ」
銭形平次捕物控:188 お長屋碁会 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
建築は手間どって、春から始めた工事がすっかり出来上ったのは、夏も過ぎ、秋もたけ、木枯の吹きまくったあとに、白いものがちらちらと空から落ちて来る冬の十二月はじめだった。
息をするたびに、どこかがピイピイと木枯のようなさびしい音をたてる。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)