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旱魃
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かんばつ
ふりがな文庫
“
旱魃
(
かんばつ
)” の例文
ことに
去年
(
きょねん
)
からのここら
全体
(
ぜんたい
)
の
旱魃
(
かんばつ
)
でいま外へ
遊
(
あそ
)
んで歩くなんてことはとなりやみんなへ
悪
(
わる
)
くてどうもいけないということを云った。
或る農学生の日誌
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
それは寛正の頃、東国
大
(
おおい
)
に
旱魃
(
かんばつ
)
、
太田道灌
(
おおたどうかん
)
江戸城にあって憂い、この杉の森鎮座の神にお
祷
(
いの
)
りをした
験
(
しるし
)
があって雨降り、百穀大に
登
(
みの
)
る。
旧聞日本橋:24 鬼眼鏡と鉄屑ぶとり(続旧聞日本橋・その三)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
しかしこの井戸が最も深く、水もまた最も清冽で、どんな
旱魃
(
かんばつ
)
にもかつて
涸
(
か
)
れたことがないので、この屋敷では清水の井戸といっていた。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
春の頃からひどく
旱魃
(
かんばつ
)
の打ちつづいた承安四年の事、清涼殿で
雨乞
(
あまご
)
いが
執行
(
とりおこな
)
われたが、誰が
祈祷
(
きとう
)
にあたっても、一滴の雨も降らなかった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こんど、どこか
旱魃
(
かんばつ
)
の土地の
噂
(
うわさ
)
でも聞いた時には、私はこの着物を着てその土地に出掛け、ぶらぶら
矢鱈
(
やたら
)
に歩き廻って見ようと思っている。
服装に就いて
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
あの、雪を
束
(
つか
)
ねた白いものの、壇の上にひれ伏した、あわれな
状
(
さま
)
は、月を祭る供物に似て、非ず、
旱魃
(
かんばつ
)
の鬼一口の
犠牲
(
にえ
)
である。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ことに湖水の流れるところでありますから、
旱魃
(
かんばつ
)
ということを感じたことはございません。実にその兄弟はしあわせの人間であったと思います。
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
こういう大貯水湖は、洪水防禦に役立つばかりでなく、豊富な灌漑水を供給してくれるので、
旱魃
(
かんばつ
)
も防げる。
自由と進歩
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
そうだ、
用水池
(
ようすいいけ
)
を
造
(
つく
)
って、
村
(
むら
)
を
旱魃
(
かんばつ
)
から
救
(
すく
)
った、
日
(
ひ
)
ごろみんなの
尊敬
(
そんけい
)
している
人
(
ひと
)
でした。
老人
(
ろうじん
)
はいいました。
きつねをおがんだ人たち
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
彦太郎が舌打して、
旱魃
(
かんばつ
)
で水量の減った
唐人川
(
とうじんがわ
)
に沿うて下って行くと、背中に、掘立小屋の中で、妙な
節廻
(
ふしまわ
)
しで李聖学が朝鮮の歌を呶鳴っている声が聞えた。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
旱魃
(
かんばつ
)
があった。
雲霞
(
うんか
)
のような
蝗虫
(
いなご
)
の発生があった。収穫はすべて武器を持った者に取りあげられてしまった。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
だが、
辛
(
つら
)
いことには領内に水害があろうが
旱魃
(
かんばつ
)
があろうが、そんなことにはお構いなしに返済するとある。
増上寺物語
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
旱魃
(
かんばつ
)
洪水の神があるならその神様を怨んでやる——怨めしいのはご領主様じゃ! いかに去年の間中、旱魃と洪水にたたられて穀物の
収穫
(
とりいれ
)
がなかったにしても
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
夏時、晴天が続き
旱魃
(
かんばつ
)
が起こり、苗が枯死せんとする場合に、農村にては雨ごいをする。その雨ごいに村中多人数相伴い、高山に登り山霊に祈願することが多い。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
雨乞いもかつてはこれと近い悪霊のわざと考えていたようで、よく似た様式を以て
旱魃
(
かんばつ
)
の神を駆逐した。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
老人は、夏が
旱魃
(
かんばつ
)
であればその秋の紅葉は出来がよい、と言ったが、それは必ずしも当たらなかった。
京の四季
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
どんな
旱魃
(
かんばつ
)
が續いた時にも、水量の減じたことのないと云はれてゐた山ノ手の大井戸でさへ、一月十五日の二度目の大地震のためにすつかり調子を狂はせて、
稍々
(
やや
)
もすると
水不足
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
旱魃
(
かんばつ
)
に苦しむ際、雨乞いのために、この向うの農ガ池へ、野宿を重ねてお詣りに来る、これはよほど昔からのしきたりらしいが、こうした人々の心がけは申すまでもないとして
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
旱魃
(
かんばつ
)
に
饑饉
(
ききん
)
なしといい慣わしたのは水田の多い内地の事で、畑ばかりのK村なぞは雨の多い方はまだ仕やすいとしたものだが、その年の長雨には溜息を
漏
(
もら
)
さない農民はなかった。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
旱魃
(
かんばつ
)
がひどく利く。太鼓を叩いて雨乞いをしろというのはそこだ。引佐川は村の裾を流れているけれど、村の方が高いから、何の足しにもならない。低い西引佐丈けが恩恵を蒙る。
ある温泉の由来
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
この頃の
旱魃
(
かんばつ
)
と虫害で、米価があがり、隣境から
糴
(
いりよね
)
がこなくなって、餓死人が出来たので、倉を開いて賑わしたが、元価を取りて利益を取らず、また粥を焚いて貧民を
済
(
すく
)
ったので
富貴発跡司志
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
まア/\これでお米を買うが
宜
(
よろ
)
しいとか、
店賃
(
たなちん
)
を納めたが
宜
(
よ
)
かろうとか、寒いから質に入れてある
布子
(
ぬのこ
)
を出して来たら宜かろうと、
母子
(
おやこ
)
三人が
旱魃
(
かんばつ
)
に雨を得たような、
心持
(
こゝろもち
)
になり
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
いちど台風や豪雨や
旱魃
(
かんばつ
)
がくれば、人間の造りあげたものなどはけしとんでしまう。
おごそかな渇き
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
池がこの
旱魃
(
かんばつ
)
で
乾上
(
ひあが
)
って沼みたいになりかかっているところがあるんです。その沼へ踏みこもうという土の
柔
(
やわらか
)
いところに、
格闘
(
かくとう
)
の
痕
(
あと
)
らしいものがあるんです。靴跡が
入
(
い
)
り
乱
(
みだ
)
れています。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
たとえばマッキンレーが始めて大統領に選ばれたときに
馬鈴薯
(
ばれいしょ
)
の値段が暴騰したので、ウィスコンシンの農夫らはそれをこの選挙の結果に帰した。しかし実は産地の
旱魃
(
かんばつ
)
のためであった。
科学と文学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
自分の眼が、ひとたびその邪念の
萌
(
きざ
)
さないぽかんとした顔に
注
(
そそ
)
ぐ瞬間に、僕はしみじみ嬉しいという
刺戟
(
しげき
)
を
総身
(
そうしん
)
に受ける。僕の心は
旱魃
(
かんばつ
)
に枯れかかった稲の穂が
膏雨
(
こうう
)
を得たように
蘇
(
よみが
)
える。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は恋ひこがれ、背後にヒビがわれ、骨の中が
旱魃
(
かんばつ
)
の畑のやうに乾からびてゐるやうだつた。私はラヂオの警報がB29の大編隊三百機だの五百機だのと言ふたびに、なによ、五百機ぽつち。
続戦争と一人の女
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
多摩川遠い此村里では、水害の
患
(
うれい
)
は無いかわり、
旱魃
(
かんばつ
)
の恐れがある。大抵は都合よく
夕立
(
ゆうだち
)
が来てくれる。
雨乞
(
あまごい
)
は六年間に唯一度あった。降って欲しい時に降れば、直ぐ「おしめり正月」である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そこに虫の害があるではないか、
旱魃
(
かんばつ
)
があるではないか、
洪水
(
おおみず
)
があるではないか、大風があるではないかとある人はいうだろう。自然を相手の仕事は、一面じつに正直であり、一面じつに冒険である。
最も楽しい事業
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
どこにも
旱魃
(
かんばつ
)
で悩まされた地方というのはなかった。
ズラかった信吉
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
自らまた力尽きて
斃
(
たふ
)
れる
旱魃
(
かんばつ
)
の河!
象徴の烏賊
(新字旧仮名)
/
生田春月
(著)
ひどい
旱魃
(
かんばつ
)
がつづいて、諸国
窮民
(
きゅうみん
)
にみち、道にあわれな
屍臭
(
ししゅう
)
が漂い、都下の穀物は
暴騰
(
ぼうとう
)
し、
巷
(
ちまた
)
の顔は干からび、御所の穀倉すら
貢物
(
こうもつ
)
なく
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たびたびの寒さと
旱魃
(
かんばつ
)
のために、いまでは沼ばたけも昔の三分の一になってしまったし、来年はもう入れるこやしもないのだ。
グスコーブドリの伝記
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
あの、雪を
束
(
つか
)
ねた白いものの、壇の上にひれ伏した、あはれな
状
(
さま
)
は、月を祭る
供物
(
くもつ
)
に似て、
非
(
あら
)
ず、
旱魃
(
かんばつ
)
の
鬼一口
(
おにひとくち
)
の
犠牲
(
にえ
)
である。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
その以来、龍の再び抜け出さないように、鉄の
鎖
(
くさり
)
をもって繋いで置くことにした。
旱魃
(
かんばつ
)
のときに雨を祈れば、かならず
奇特
(
きどく
)
があると伝えられている。
中国怪奇小説集:06 宣室志(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
どうか
旱魃
(
かんばつ
)
の時にはこの村の田畑に水の枯れぬように、どうか小供の水難を救われるようにと
祈祷
(
きとう
)
をして、さてこの池をば
稚子
(
ちご
)
が
淵
(
ふち
)
の
明神
(
みょうじん
)
と名づけたのである。
稚子ヶ淵
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
十二節に「これその青くしていまだ
苅
(
か
)
らざる時にも他の
一切
(
すべて
)
の草よりは早く枯る」とあるは、
旱魃
(
かんばつ
)
来
(
きた
)
りて水退くやこの二つの草が
忽
(
たちま
)
ち枯るることをいうたのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
ただしこういうのは多くは
灌漑
(
かんがい
)
の設備がなく、したがって
旱
(
ひでり
)
の年にはかえってまず苦しまなければならぬので、むしろ低湿な沼地を選び、よそでは
旱魃
(
かんばつ
)
で困るような年を
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
事実この時代の天変地妖は、物恐ろしいほどであって、明和七年から八年にかけ、諸国は非常な
旱魃
(
かんばつ
)
に襲われ、小田原のごときは一日一人に、水一升とされたほどである。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ただしかし、天災に対する抵抗力の弱い当時の農耕は、民衆の生活にしばしば不時の変調を起こさせた。気候激変、長雨、洪水、暴風、
旱魃
(
かんばつ
)
、虫害、それらのあるたびごとに
饑饉
(
ききん
)
が起こる。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
これは
水溜
(
みずため
)
で、
旱魃
(
かんばつ
)
の時の用意でございます。
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
(二一)
旱魃
(
かんばつ
)
の際、雨を祈る法
妖怪学
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
というのは、その夏の
旱魃
(
かんばつ
)
やら秋ぐちの大洪水で、特に、
水滸
(
すいこ
)
の周辺は五、六百里にもわたってひどい
飢饉
(
ききん
)
を来したのである。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
きっと今年は
去年
(
きょねん
)
の
旱魃
(
かんばつ
)
の
埋
(
う
)
め合せと、それから僕の
授業料
(
じゅぎょうりょう
)
ぐらいを
穫
(
と
)
ってみせる。実習は今日も
苗代掘
(
なわしろほ
)
りだった。
或る農学生の日誌
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
この年は正月から照りつづいて江戸近国は
旱魃
(
かんばつ
)
に苦しんだと伝えられているが、白河から北にはその影響もなくて、五月の末には
梅雨
(
つゆ
)
らしいしめり勝ちの暗い天気が毎日つづいた。
半七捕物帳:33 旅絵師
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
御承知でもあるでしょう、また御承知がなければ、恐らく
白痴
(
ばか
)
と言わんけりゃならんですが、この
旱
(
ひでり
)
です、
旱魃
(
かんばつ
)
です。……一滴の雨といえども、千金、むしろ万金の場合にですな。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ただ河内地方は去年も今年もあいにくな
旱魃
(
かんばつ
)
で作物のみいりはよくなく、蓄備の郷倉も
水分
(
みくまり
)
の土倉もその底は浅かった。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
高橋君のところは
去年
(
きょねん
)
の
旱魃
(
かんばつ
)
がいちばんひどかったそうだから今年はずいぶん
難儀
(
なんぎ
)
するだろう。それへ
較
(
くら
)
べたらうちなんかは半分でもいくらでも
穫
(
と
)
れたのだからいい方だ。
或る農学生の日誌
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
尚
(
な
)
ほ
恁
(
か
)
くの通りの
旱魃
(
かんばつ
)
、市内は
素
(
もと
)
より
近郷
(
きんごう
)
隣国
(
りんごく
)
、
唯
(
ただ
)
炎の中に
悶
(
もだ
)
えまする時、
希有
(
けう
)
の
大魚
(
たいぎょ
)
の
躍
(
おど
)
りましたは、
甘露
(
かんろ
)
、
法雨
(
ほうう
)
やがて、
禽獣
(
きんじゅう
)
草木
(
そうもく
)
に到るまでも、雨に
蘇生
(
よみがえ
)
りまする
前表
(
ぜんぴょう
)
かとも存じまする。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
清涼殿や各寺院などで、よく
旱魃
(
かんばつ
)
のために雨乞いをしたりするのを、彼は大いに笑っていた。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“旱魃”の解説
干ばつとは、雨が降らないなどの原因である地域に起こる長期間の水不足の状態である。旱魃・干魃とも書く。旱は「ひでり」、魃は「ひでりの神」の意味である。
(出典:Wikipedia)
旱
漢検1級
部首:⽇
7画
魃
漢検1級
部首:⿁
15画
“旱魃”で始まる語句
旱魃地