たたかい)” の例文
旧字:
その兵七百余騎志を合わせ、決死を以て当手とうてに向わば、当手の兵大半は討たれるであろう。関東討伐、朝権恢復、このたたかいを以て決しはせぬ。
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
知らず燕王のこれに対して如何いかんの感を為せるを。たゞ燕王既に兵を起したたかいを開く、巍のことばしと雖も、大河既に決す、一葦いちいの支え難きが如し。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
にわかにみんな口をつぐんだ、主家の運命を賭する一戦、いまこそ武士の死すべきときである、このたたかいにおくれたらもののふの名はすたるのだ。
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
伏見ふしみ鳥羽とばたたかいを以て始まり、東北地方に押し詰められた佐幕の余力よりょくが、春より秋に至る間にようやく衰滅に帰した年である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それもそのはず、いよいよ怪塔王軍に対して、いさましいたたかいをはじめるため、わが秘密艦隊が出動したのでありました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
●然るに今日我国民は果してたたかいを好まぬものゝ行動を為しつゝあるか。余は之を明治二十七八年の時代と比較して何の相違あるやを疑ふものである。
かくの如く着用するのかおを自らは其全体を見る事能わざるも、傍人の有様を見て、其昔宇治橋上に立ちてたたかいたる一來法師いちらいほうしもかくあらんかと思われたり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
行くみちやくすとは、そのかみ騎士の間に行われた習慣である。幅広からぬ往還に立ちて、通り掛りの武士にたたかいいどむ。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
のみならずその音は次第に高くざわめき立って、とうとうたたかいでも起ったかと思う、烈しい喊声かんせいさえ伝わり出した。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そうして、次第に彼らの叫喚が弱まると一緒に、その下の耶馬台の宮では、着々としてたたかいの準備がととのうていった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
たたかいちまたを幾度もくぐったらしい、日に焼けて男性的なオッタヴィアナの顔は、飽く事なき功名心と、強い意志と、生一本きいっぽんな気象とで、固い輪郭りんかくを描いていた。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
敵情を探るのは探偵のかかりで、たたかいにあたるものは戦闘員に限る、いうてみれば、敵愾心てきがいしんを起すのは常業のない閑人ひまじんで、すすんで国家に尽すのは好事家ものずきがすることだ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宮本武蔵は主家新免しんめん氏に従って、関ヶ原のたたかいに参加した。新免氏は浮田の家臣であるから石田方である。
巌流島 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
『そのかわりに、見ておれ、こんどの安中攻めの合戦では、熊楠が、いつものたたかい以上に強いから——』
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貧乏というものに対して許しおくべからざるたたかいを起こすに必要な資金を調達せんがための予算である。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
もし富岡先生にののしられたばかりなら彼は何とかして思切るほうにもがいたであろう、その煩悶はんもんも苦痛には相違ないが、これたたかいである、彼の意力はくこの悩にえたであろう。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「いや、兎に角時局一開展かいてんだよ。たたかいこれよりチョッカイから正々堂々の陣にるんだ。見給え。僕の勧めたことが着々と事実になって来るじゃないか? ガヷナーは矢っ張り話せるよ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
たたかいの神さまかもしれない。……しかし。なんだか日本人を憎みすぎている。そして白人をえらく考えすぎているのじゃないかしら? それは間違まちがいだ。東洋人だって偉いんだ。仏陀ぶっだも東洋人だ。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
ジオンのたたかいたけなわなるに我は用なきつわものなれば独り内に坐して汗馬かんばの東西に走るを見、矢叫やさけびの声、太鼓の音をただ遠方に聞くにすぎず、我は世に立つの望み絶えたり、また未来に持ち行くべき善行なし
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
さて読者諸君、私は斯様かようにして、無謀にも世に類なき殺人魔を向うに廻して、たたかいの第一歩を踏み出したのである。私の行手にどの様な生き地獄が存在したか。どの様な人外境が待ち構えていたか。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そのうつくしい七つのマジエルの星をあおぎながら、ああ、あしたのたたかいでわたくしが勝つことがいいのか、山烏がかつのがいいのか、それはわたくしにわかりません、ただあなたのおかんがえのとおりです
烏の北斗七星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
第十三条 天皇ハたたかいせんこうシ及諸般ノ条約ヲ締結ス
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
ゝゝゝたたかい二合のゝゝゝゝ 牧人
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
たたかいは勝てり!
少年・春 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
丘福は謀画ぼうかくの才張玉に及ばずといえども、樸直ぼくちょく猛勇、深く敵陣に入りて敢戦死闘し、たたかい終って功を献ずるや必ず人におくる。いにしえ大樹たいじゅ将軍の風あり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
上家をはじめ他の人達がよく注意して居れば勿論こんな馬鹿馬鹿しい胡魔化ごまかしにはかからないが、すこしたたかいたけなわになって来ると、よくこれが行われる。
麻雀インチキ物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こまかい事実の相違を挙げていては、際限がない。だから一番大きな誤伝を話しましょう。それは西郷隆盛が、城山しろやまたたかいでは死ななかったと云う事です。」
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
敵情を探るのは探偵の係で、たたかいにあたるものは戦闘員に限る、いふて見れば、敵愾心てきがいしんを起すのは常業のない閑人ひまじんで、すすんで国家に尽すのは好事家ものずきがすることだ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
といった。かつ令の発せられる少し前の出来事で、成善が津軽承昭つぐてるに医として遇せられていた証拠がある。六月十三日に、藩知事承昭はたたかい大星場おおほしばに習わせた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
たたかいはみるみる苦戦におちいり、本多忠勝、酒井忠次、石川数正かずただらおおいに反撃したが、夕闇の頃にいたって全軍の敗勢おおうべくもなく、家康はついに退却の命を発した。
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
事は冬の下から春が頭をもたげる時分に始まって、散り尽した桜の花が若葉に色をえる頃に終った。すべてが生死しょうしたたかいであった。青竹をあぶって油をしぼるほどの苦しみであった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一旦陣は引いたが正成め、新手の大軍をり催し、押し寄せ来る手段と見える。まことたたかい一度もせず、残念に思っていたところ、押し寄せ来るこそ却って幸い、迎えって雌雄しゆうを決しようぞ。
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たたかいに負けて、狂人きちがいのようになったスミス中佐は、青白い顔をみなに向けて
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
そして、そこには見るも恐しい血みどろのたたかいが行われているのだ
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
たたかいイヨ/\正々堂々の陣に入ったね?」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
鎮江ちんこうたたかいに、とらえられてばくせらるゝや、勇躍して縛を断ち、とうを持てる者を殺して脱帰し、ただちに衆を導いて城をおとしゝことあり。勇力察すし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
声の怪塔王と顔の怪塔王とのたたかいは、まだつづいていたものと見えます。二人の怪塔王なんて、変なはなしです。一体どっちがほんとうの怪塔王でしょうか。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
僕はあの頃——とんたたかいで負傷した時に、その何小二と云うやつも、やはり我軍の野戦病院へ収容されていたので、支那語の稽古けいこかたがた二三度話しをした事があるのだ。
首が落ちた話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
黒雲一団うずまく中に、鷲は一双の金の瞳をいからしたが、ぱっと音を立てて三たび虚空こくうに退いた。二ツ三ツ四ツ五ツばかり羽は斑々として落ちて、たたかいの矢を白い花の上に残した。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すぐる永禄えいろく九年(一五六六)におみかた申してより、いつのたたかいにもご馬前のはたらきかなわず、家中の人びとからは絶えずに降参人こうさんにん、ごれんみんの者という眼で見られております
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
純一はそれを見て、何だか人にせまるような、たたかいを挑むような態度だと感じたのである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
四年前のたたかいに甲も棄て、鎧も脱いで丸裸になって城壁のうちに仕掛けたる、カタパルトをいた事がある。戦が済んでからその有様を見ていた者がウィリアムの腕には鉄のこぶが出るといった。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たたかいは、その後進まなかった。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
金色こんじきたたかい
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
翌日はたたかいだった。波〻伯部は戸倉を打って四十二歳で殺されたしゅの仇をふくしたが、管領の細川家はそれからは両派が打ちつ打たれつして、滅茶苦茶になった。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
小浜兵曹長は、大尉のかたわらにすりよってたたかいをはじめるのに都合のよいときをねらっています。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
またそれがためにいきおいを増し、力をることは、たたかい鯨波ときを挙げるにひとしい、曳々えいえい! と一斉に声を合わせるトタンに、故郷ふるさとも、妻子つまこも、死も、時間も、慾も、未練も忘れるのである。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たたかいに臨む事は大小六十余度、闘技の場に登って槍を交えたる事はその数を知らず。いまだ佳人の贈り物を、身に帯びたるためしなし。なさけあるあるじの子の、情深き賜物をいなむは礼なけれど……」
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
保吉はとうとう癇癪かんしゃくを起した。父さえ彼の癇癪には滅多めったたたかいいどんだことはない。それはずっとりをつづけたつうやもまた重々じゅうじゅう承知しているが、彼女はやっとおごそかに道の上の秘密を説明した。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ドンをくらい、鳩玉はとまめ引退ひきさがるに当ってや、客たるものは商となく、工となく、武となく、文となく、たたかいけたものとわなければならない、いわんや、さッさと貰われてのッけから
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)