心付こゝろづ)” の例文
宗助そうすけはもうすこ一所いつしよあるいて、屏風びやうぶこときたかつたが、わざ/\まはみちをするのもへんだと心付こゝろづいて、それなりわかれた。わかれるとき
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ふくろはおしなをまだ子供こどものやうにおもつて迂濶うくわつにそれを心付こゝろづかなかつた。本當ほんたうにさうだとおもつたときはおしなもなくかたいきするやうにつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
こゝまでかんがえを押し詰めて来た時、己は始めて、世の中に「藝術家」———しくは詩人と云う職業(?)のある事に心付こゝろづいた。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
首をかしげて考へたが、おとよはう着々ちやく/\はなしを進めて染井そめゐの墓地の地代ぢだいが一つぼいくら、寺への心付こゝろづけがうのかうのと
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
集めて相談さうだんしける中長兵衞心付こゝろづき彼のくすりを猫にくはせてためしけるに何の事もなければ是には何か樣子やうすあるべし我又致方いたしかたあれ隨分ずゐぶん油斷ゆだんあるべからずとて又七を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『えい、ふざけたり/\、海賊かいぞくどもものせてれんづ。』と矢庭やには左舷さげんインチ速射砲そくしやほうほうせたが、たちま心付こゝろづいた、海軍々律かいぐんぐんりつげんとして泰山たいざんごと
あしのとまるところにて不図ふと心付こゝろづけば其処そこ依田学海先生よだがくかいせんせい別荘べつさうなり、こゝにてまたべつ妄想まうさうきおこりぬ。
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
赤い裏の紙入れを取り出して、お光は、女とうちとへそれ/″\心付こゝろづけをやりなぞした。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
思はず寒さに胴顫どうぶるひすると同時に長吉ちやうきち咽喉のどの奥から、今までは記憶きおくしてゐるとも心付こゝろづかずにゐた浄瑠璃じやうるり一節いつせつがわれ知らずに流れ出るのにおどろいた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
いつまでもしづんでたいやうな心持こゝろもちがした。與吉よきちきはせぬかと心付こゝろづいたときろくあらひもしないでしまつた。それでもかほがつや/\としてかみ生際はえぎはぬぐつても/\あせばんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かゝとき——かゝる間際まぎは兎角とかく大厄難だいやくなん誘起ひきおこすものであるなどゝ心付こゝろづものがあらう。
けれども一應いちおう宗助そうすけはなしてからでなくつては、あま專斷せんだんぎると心付こゝろづいたうへ品物しなもの歴史れきし歴史れきしだけに、猶更なほさら遠慮ゑんりよして、いづかへつたら相談さうだんしてうへでとこたへたまゝ道具屋だうぐやかへさうとした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
身體からだ容子ようすへんつたことを心付こゝろづいたからである。十ねんあまりたなかつたはら與吉よきちとまつてからくせいたものとえてまた姙娠にんしんしたのである。おしな勘次かんじもそれには當惑たうわくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
夫人ふじん!』とわたくしくちつたが、てよ、いま塲合ばあひ此樣こんはなし——むしわたくし一個人いつこじん想像さうざうぎないこと輕々かろ/″\しくかたつて、このうるはしきひとの、やさしきこゝろいためるでもあるまい、と心付こゝろづいたので
宗助そうすけ主人しゆじんまへすわつて、この屏風びやうぶくわんする一切いつさいこと自白じはくしやうか、しまいかと思案しあんしたが、ふとけるのも一興いつきようだらうと心付こゝろづいて、とう/\じつ是々これ/\だと、今迄いままで顛末てんまつくはしくはなした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)