だけ)” の例文
新字:
ふたりの下僕しもべと、ひとりの童子をつれ、四人づれで今、四明しめいだけの谷道から上って来たのであるが、ふと光秀のすがたを見かけると
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一杯にの大岩が押出している様子はい景色でどうも……だけれども五町田の橋銭はしぜにの七厘はふただけより高いじゃアありませんか
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其耳があてに成らないサ。君の父上おとつさんは西乃入にしのいりの牧場に居るんだらう。あの烏帽子ゑぼしだけ谷間たにあひに居るんだらう。それ、見給へ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「そのはずさ。今日は榛名はるなから相馬そうまたけに上って、それからふただけに上って、屏風岩びょうぶいわの下まで来ると迎えの者に会ったんだ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
前面ぜんめん大手おほて彼方かなたに、城址しろあと天守てんしゆが、くもれた蒼空あをぞら群山ぐんざんいて、すつくとつ……飛騨山ひださんさやはらつたやりだけ絶頂ぜつちやうと、十里じふり遠近をちこち相対あひたいして
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こまだけであろう頂上の禿げた大きな山の姿が頭の上にあった。その山のいただきの処には蒼白あおじろい雲が流れていた。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
九月に入ると、肥州ひしゅう温泉うんぜんだけが、数日にわたって鳴動した。頂上の噴火口に投げ込まれた切支丹宗徒きりしたんしゅうと怨念おんねんのなす業だという流言が、肥筑ひちくの人々をおそれしめた。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
如意にょいだけのけわしさに足をいためたり、あるいはきこりの切った椎の柴を身にかけて雨露をしのいだりして、苦労のすえに、ついにとらえられてこの島に流されたのであるが
ゆるだけという岩はそのまん中に立っていて、首ひきの綱に引っ掛かってゆるいだから揺嶽、山に二筋のくぼんだところがあって、そこだけ草木の生えないのを、綱ですられたあとだといい
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
紙帳のことは『浅間あさまだけ』という、くさ双紙ぞうしでおなじみになっている、星影土右衛門という月代さかゆきのたったすごい男が、六部の姿で、仕込みづえをぬきかけている姿をおもいだし、大きな木魚面の
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
三国みくにだけを背にした阿弥陀沢あみださわの自然湯——。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
たしかに其は父の声で——皺枯しやがれた中にも威厳のある父の声で、あの深い烏帽子ゑぼしだけ谷間たにあひから、遠くの飯山に居る丑松を呼ぶやうに聞えた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
四明しめいだけのうしろに、夕雲の燦爛さんらんをとどめて、陽は落ちかけていた。——湖上にも虹のような光芒こうぼうが大きく走って、水面は波騒なみさいを起こしていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……おとやりだけ中空なかぞら相聳あひそびえて、つき太陽むかふるとく……建物たてものはさすがに偉大おほきい。——おぼろなかばかりはびこつたうし姿すがたも、ゆかはしねずみのやうにえた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
只今では岩崎いわさきさんがお買入れになりまして彼処あすこが御別荘になりましたが、以前まえには伊香保から榛名山はるなさんへ参詣いたしまするに、ふただけへ出ます新道しんみちが開けません時でございますから
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
顔見世狂言にひどい不評を招いた中村七三郎は、年が改まると初春の狂言に、『傾城けいせい浅間あさまだけ』を出して、巴之丞とものじょうの役にふんした。七三郎の巴之丞の評判は、すさまじいばかりであった。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
まつかしはは奥ふかくしげりあひて、二一青雲あをぐも軽靡たなびく日すら小雨こさめそぼふるがごとし。二二ちごだけといふけはしきみねうしろそばだちて、千じん谷底たにそこより雲霧くもきりおひのぼれば、咫尺まのあたりをも鬱俋おぼつかなきここちせらる。
牛の性質をく暗記して居るといふ丈では、所詮しよせんあの烏帽子ゑぼしだけの深い谿谷たにあひに長く住むことは出来ない。気候には堪へられても、寂寥さびしさには堪へられない。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「はやく落ちてゆけ。搦手からめてを出て山づたいに、四明しめいだけを越えればなおのがれる先はあろう。とかくして、われら一族どもの足手まといになってくれるな。はやく、はやく」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つてべい。方角はうがく北東きたひがしやりだけ見当けんたうに、辰巳たつみあたつて、綿わたつゝんだ、あれ/\天守てんしゆもり枝下えださがりに、みねえる、みづえる、またみねえてみづまがる、またひとみね抽出ぬきでる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
只今では彼処あすこは変りまして湯本へきます道がつき、あれからふただけの方へ参る新道も出来ましたが、其の頃はそう云う処はありませんから、まず伊香保神社へくより外に道はございません。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は又、遠い烏帽子えぼしだけふもとにある牧場に身を置いて居るやうな気もする。牧夫が居る。牛の群が見える。私のそばには一緒に根津村ねづむらから出掛けて行つた画家のいづみ君が居る。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
坂本城の余燼よじんは消え、墨の如き湖や四明しめいだけの上を、夜もすがら青白い稲光いなびかりひらめきぬいた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半刻はんときの後には、彼はすでに馬上だった。星青き夜空の下、三千の人馬と、炬火たいまつの数が、うねうねと湖畔の城をで、松原をい、日吉坂を登って、四明しめいだけ山裾やますそへかくれてゆく。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、大廂おおびさしからすぐ仰げる四明しめいだけの白雲を仰ぎ合っているところであった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)