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じんじょう
ふりがな文庫
“
尋常
(
じんじょう
)” の例文
謙譲の
褄
(
つま
)
はづれは、
倨傲
(
きょごう
)
の
襟
(
えり
)
より
品
(
ひん
)
を備へて、
尋常
(
じんじょう
)
な
姿容
(
すがたかたち
)
は
調
(
ととの
)
つて、
焼地
(
やけち
)
に
焦
(
い
)
りつく影も、水で描いたやうに涼しくも
清爽
(
さわやか
)
であつた。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
今
尋常
(
じんじょう
)
の場合を言わば球は
投者
(
ピッチャー
)
の手にありてただ
本基
(
ホームベース
)
に向って投ず。本基の側には必らず
打者
(
ストライカー
)
一人(攻者の一人)
棒
(
バット
)
を持ちて立つ。
ベースボール
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
元々、環と、養子先の娘とは、
尋常
(
じんじょう
)
な縁組ではなく、若い彼と彼女との、恋の始末を、強いてそこに
正式化
(
せいしきか
)
して落着けたものであった。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これらはとうてい
尋常
(
じんじょう
)
地方に割拠する大小の農場主たちの、企て及ぶところではなかった。この点がまずはっきりとちがっている。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ここにおいてわが
輩
(
はい
)
は日々の
心得
(
こころえ
)
、
尋常
(
じんじょう
)
平生
(
へいぜい
)
の
自戒
(
じかい
)
をつづりて、自己の
記憶
(
きおく
)
を新たにするとともに同志の人々の考えに
供
(
きょう
)
したい。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
▼ もっと見る
「待て! とびこむのは、あぶない。この穴の開け方は
尋常
(
じんじょう
)
でない。相手はたいへん強力な
利器
(
りき
)
をもっているぞ。とびこんではあぶない」
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「五年生っていうのは、
尋常
(
じんじょう
)
五年生だべ。」その声が、あんまり力なくあわれに聞えましたので、一郎はあわてて言いました。
どんぐりと山猫
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
つかれた足をひきずって二、三
間
(
げん
)
歩きだすとそこでひとりの女の子にあった。それは光一の妹の
文子
(
ふみこ
)
であった。かの
女
(
じょ
)
は
尋常
(
じんじょう
)
の五年であった。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
ともかく、彼の父は
尋常
(
じんじょう
)
の人ではなかった。やはり昔の武士で、維新の戦争にも出てひとかどの功をも立てたのである。
非凡なる凡人
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ふと見ると
平家
(
ひらや
)
造りの小学校がその右にあって、門に三田ヶ谷村弥勒高等
尋常
(
じんじょう
)
小学校と書いた古びた札がかかっている。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「僕は先生が信用してくれないから、勉強する気にならないんだよ。これでも
尋常
(
じんじょう
)
一年の時は
優等
(
ゆうとう
)
だったぜ。うそだと思うなら
免状
(
めんじょう
)
を見せてやる」
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
花桐の里方の母がみやこに上って来て、花桐を説き伏せ、
尋常
(
じんじょう
)
では改めさせる事ができないので、或る日形容できないような一人の奇怪な男を連れて来た。
花桐
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
余自身の歴史が
天然自然
(
てんねんしぜん
)
に何の苦もなく今日まで発展して来たと同様に、明治の歴史もまた
尋常
(
じんじょう
)
正当に四十何年を
重
(
かさ
)
ねて今日まで進んで来たとしか思われない。
マードック先生の『日本歴史』
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ロス氏も警察も、この
囮
(
おとり
)
手段には先刻気がついているんだが、そんな
尋常
(
じんじょう
)
な手段に乗る相手ではないのだ。
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
が、生家の暮らし向きが思わしくないので、
尋常
(
じんじょう
)
小学を
卒
(
お
)
えてから五条の町へ下女奉公に出たりしていた。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ジェンナーは先生が
尋常
(
じんじょう
)
の医学者でないことを知り、先生ならば、自分が年来いだいている考えに賛成してくださるにちがいないと思ったので、ある日、ジェンナーは
ジェンナー伝
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
豹一は早生れだから、七つで
尋常
(
じんじょう
)
一年生になった。学校での休憩時間には好んで女の子と遊んだ。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「どうかなすったんですか?」と、お婆さんは私の
尋常
(
じんじょう
)
でない様子を見て、心配そうに言った。
父の出郷
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
久し振りの妾が帰郷を聞きて、
親戚
(
しんせき
)
ども打ち寄りしが、母上よりはかえって妾の顔色の常ならぬに驚きて、
何様
(
なにさま
)
尋常
(
じんじょう
)
にてはあらぬらし、医師を迎えよと口々に勧めくれぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
それも専門家的の苦心
惨憺
(
さんたん
)
というのでなくて、
尋常
(
じんじょう
)
の言葉で無理なくすらすらと云っていて、これだけ充実したものになるということは時代の
賜
(
たまもの
)
といわなければならない。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
さすがの幻燈気違いも、でも、
尋常
(
じんじょう
)
小学校を卒業する頃には、少し恥しくなったのか、もう押入れへ
這入
(
はい
)
ることをやめ、秘蔵の幻燈器械も、いつとはなしにこわしてしまいました。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
これも
小栗上野介
(
おぐりこうずけのすけ
)
等の
尽力
(
じんりょく
)
に出でたるものにて、例の
財政
(
ざいせい
)
困難
(
こんなん
)
の場合とて費用の
支出
(
ししゅつ
)
については当局者の
苦心
(
くしん
)
尋常
(
じんじょう
)
ならざりしにもかかわらず、陸軍の
隊長
(
たいちょう
)
等は仏国教師の言を
聞
(
き
)
き
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
もう一人の女大力は、
相撲人
(
すもうびと
)
、大井光遠の妹である。光遠は、横ぶとりの力強く足早き
角力
(
すもう
)
であった。妹は、形
有様
(
ありさま
)
尋常
(
じんじょう
)
で美しい女であった。光遠とは、少し離れた家に住んでいた。
大力物語
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
尋常
(
じんじょう
)
一年をビール箱の寺小屋で半月ぐらいと、とびとびに四回——だからせいぜい半年ぐらい、二年を五ヶ月、三年を四ヶ月足らずしか学校に行ってない私が九つになってもう四年だ。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
目鼻立
(
めはなだち
)
尋常
(
じんじょう
)
、
髭
(
ひげ
)
はなく、どちらかといえば
面長
(
おもなが
)
で、
眼尻
(
めじり
)
の
釣
(
つ
)
った、きりっとした
容貌
(
かおだち
)
の
人
(
ひと
)
でした。ナニ
歴史
(
れきし
)
に八十
人力
(
にんりき
)
の
荒武者
(
あらむしゃ
)
と
記
(
しる
)
してある……ホホホホ
良人
(
おっと
)
はそんな
怪物
(
ばけもの
)
ではございません。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
しかのみならず、たといかかる急変なくして
尋常
(
じんじょう
)
の業に従事するも、双方互に利害情感を別にし、工業には力をともにせず、商売には資本を
合
(
がっ
)
せず、
却
(
かえっ
)
て互に
相
(
あい
)
軋轢
(
あつれき
)
するの
憂
(
うれい
)
なきを期すべからず。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
僕が
尋常
(
じんじょう
)
小学に入った時分でした。その夜は堺屋で
恵比須講
(
えびすこう
)
か何かあって、徹夜の宴会ですから、母親は店へ泊って来る
筈
(
はず
)
です。ところが夜の明け方まえになって、
提灯
(
ちょうちん
)
をつけて帰って来ました。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼の亡くなった妻のキセ子というのは元来、彼の住んでいる村の村長の娘で、この
界隈
(
かいわい
)
には珍らしい女学校卒業の
才媛
(
さいえん
)
であったが、
容貌
(
ようぼう
)
は勿論のこと、気質までもが
尋常
(
じんじょう
)
一様の変り方ではなかった。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
恐らく、
尋常
(
じんじょう
)
な死に方はしないであろうと。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そのほか
賀知章
(
がちしょう
)
の画を見たことがあるが、それも
尋常
(
じんじょう
)
でないといふことで
不折
(
ふせつ
)
は
誉
(
ほ
)
めて居つた。けれども人物画は少し劣るかと思はれる。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「新田どのの軍勢は、白旗城のかこみを捨て、加古川の陣も
抛
(
なげう
)
って、ぞくぞく兵庫へひきあげ中のよし。何せい、諸所の
崩
(
くず
)
れ、
尋常
(
じんじょう
)
ではありません」
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
するとこれは、やっぱり
海霧
(
ガス
)
につつまれているとしか思えない。だが、そのガスも
尋常
(
じんじょう
)
いちようのガスではない——
海底大陸
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
これは
尋常
(
じんじょう
)
の人であるから、その批評もまた七、八年で一循環するのである。もし非常の人物であるならば、彼に対する
誤解
(
ごかい
)
も五年七年では
済
(
す
)
むまい。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
そうして白い指を
火鉢
(
ひばち
)
の上に
翳
(
かざ
)
した。彼女はその姿から想像される通り
手爪先
(
てづまさき
)
の
尋常
(
じんじょう
)
な女であった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
転任については、
郁治
(
いくじ
)
も来て運動してくれた。町の高等も
尋常
(
じんじょう
)
も聞いてみたが、欠員がなかった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
藤原
慶次郎
(
けいじろう
)
がだしぬけに私に
云
(
い
)
いました。私たちがみんな教室に入って、机に
座
(
すわ
)
り、先生はまだ教員室に寄っている間でした。
尋常
(
じんじょう
)
四年の二学期のはじめ
頃
(
ごろ
)
だったと思います。
鳥をとるやなぎ
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
泣き
止
(
や
)
んで、はじめて両手をついて、「このたびは娘がいろいろと……」柳吉に挨拶し、「弟の
信一
(
しんいち
)
は
尋常
(
じんじょう
)
四年で学校へ上っとりますが、
今日
(
きょう
)
は、まだ
退
(
ひ
)
けて来とりまへんので」
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
そんなことから、自分は信田の森へ行けば母に会えるような気がして、たしか
尋常
(
じんじょう
)
二三年の頃、そっと、家には内証で、同級生の友達を誘ってあそこまで出かけたことがあった。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その結果、私は、
尋常
(
じんじょう
)
一年の課程をおさめたという証明書がもらえることになった。そこで私は、母の知合いの家の男の子の
絣
(
かすり
)
の
筒袖
(
つつそで
)
に
鬱金縮
(
うこんちぢ
)
みの
兵子帯
(
へこおび
)
を結んでもらって終業式に出た。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
藩にて要路に立つ役人は、多くはこの百石(名目のみ)以上の家に限るを例とす。藩にて正味二、三十石以上の米あれば、
尋常
(
じんじょう
)
の家族にて衣食に
差支
(
さしつかえ
)
あることなく、子弟にも相当の教育を
施
(
ほどこ
)
すべし。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
時勢
(
じせい
)
の
然
(
しか
)
らしむるところとは申しながら、そもそも勝氏が一身を以て東西の間に
奔走
(
ほんそう
)
周旋
(
しゅうせん
)
し、内外の
困難
(
こんなん
)
に
当
(
あた
)
り
円滑
(
えんかつ
)
に事を
纒
(
まと
)
めたるがためにして、その
苦心
(
くしん
)
の
尋常
(
じんじょう
)
ならざると、その
功徳
(
こうとく
)
の
大
(
だい
)
なるとは
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
余り
尋常
(
じんじょう
)
な、ものいひだつたが
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
尋常
(
じんじょう
)
のしまいだけで
止
(
や
)
めた」
酋長
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「ムム、そう
尋常
(
じんじょう
)
におっしゃるなら、わたくしもお
師匠
(
ししょう
)
さまから受けたお使いのしだいをすなおに話しましょう」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ところがこっちから返報をする時分に
尋常
(
じんじょう
)
の手段で行くと、向うから
逆捩
(
さかねじ
)
を食わして来る。貴様がわるいからだと云うと、初手から
逃
(
に
)
げ
路
(
みち
)
が作ってある事だから
滔々
(
とうとう
)
と弁じ立てる。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あのとおり同胞は
激昂
(
げきこう
)
しているんだ。
尋常
(
じんじょう
)
のことではおさまらないだろう。同胞たちは君の姿を見て、一層
刺戟
(
しげき
)
されたのだ。同胞たちは、日頃の忍耐を破って、ヤマ族の海底都市襲撃を
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私がはじめてそこへ行ったのはたしか
尋常
(
じんじょう
)
三年生か四年生のころです。
谷
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
大槻
(
おおつき
)
先生はその著『
言海
(
げんかい
)
』において、人並みという言葉を説明して、世の常の人の
列
(
つら
)
なること、
尋常
(
じんじょう
)
と説いている。これをもって見ても人並みまたは一人前ということが平均とは違うことがわかる。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
許され
尋常
(
じんじょう
)
芸人の
輩
(
やから
)
とは世間の
待遇
(
たいぐう
)
も違っていたのに
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
心臓
(
しんぞう
)
の
鼓動
(
こどう
)
の
尋常
(
じんじょう
)
でなかったことをも思い出した。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
尋
常用漢字
中学
部首:⼨
12画
常
常用漢字
小5
部首:⼱
11画
“尋常”で始まる語句
尋常事
尋常一様
尋常科
尋常人
尋常茶飯
尋常外
尋常漢
尋常茶飯事
尋常体
尋常時