富士山ふじさん)” の例文
裾野すそのけむりながなびき、小松原こまつばらもやひろながれて、夕暮ゆふぐれまくさら富士山ふじさんひらとき白妙しろたへあふぐなる前髮まへがみきよ夫人ふじんあり。ひぢかるまどる。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
本州ほんしゆう木曾きそ甲州こうしゆう信州等しんしゆうなど高山こうざんのぼつたかたはよくごぞんじでせうが、日光につこう白根山しらねさん男體山なんたいざんやまた富士山ふじさんなどでは偃松はひまつません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
富士山ふじさん測量そくりょうはいまだ綿密めんみつに出来ていないごとく、大人物であればあるほど、その高さも大きさも容易ようい凡人ぼんじんの見分け得るものでない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わがくに陸上りくじよう火山かざん巡見じゆんけんするにあたつてどうしてもはぶくことの出來できないのは、富士山ふじさんたか三千七百七十八米さんぜんしちひやくしちじゆうはちめーとる)であらう。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そして、広々ひろびろとした海原うなばらと、あお松林まつばやしと、いつにかわらぬ富士山ふじさんがあるばかりでした。若者わかものは、そのながい一しょうただしく、たのしくおくることができました。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この筆法ひつぱふけば、富士山ふじさんを「日本にほんチンボラソ」とび、隅田川すみだがはを「日本にほんテムズ」とでもいはねばなるまい。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
その上、サア・オルコツクは、富士山ふじさんへ登つたり、熱海あたみの温泉へはひつたり、なり旅行も試みてゐる。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
富士山ふじさんのぼりますにも、みちはいろいろつけてございます。おしえのみち矢張やはりそうしたわけのものではなかろうかとぞんじられます。では一とずこれで……。(完結)
尤も建物たてものを見ても、庭園を見ても、いづれもかほ相応の所だが、——あなたは東京が始めてなら、まだ富士山ふじさんを見た事がないでせう。今に見えるから御覧なさい。あれが日本一の名物だ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
海濱かいひん其處此處そここゝには、毛布ケツトや、帆布ほぬのや、其他そのほか樣々さま/″\武器等ぶきとう應用おうようして出來できた、富士山ふじさん摸形もけいだの、二見ふたみうら夕景色ゆふげしきだの、加藤清正かとうきよまさ虎退治とらたいぢ人形にんぎようだのが、奇麗きれいすなうへにズラリとならんだ。
「また富士山ふじさんが、火をふきだしたのであろうか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ながめ居たりしがはるかむかうに山一ツ見えけるにぞ吉兵衞は水差みづさしに向ひあの高き山は何國いづくの山なりやかきし駿河の富士山ふじさんよくも似たりと問ふ水差みづさしこたへて那山あのやまこそ名高き四國の新富士しんふじなりと答ふるをりから抑何そもいかに此山の絶頂ぜつちやうより刷毛はけにて引し如き黒雲くろくもの出しに水差は仰天ぎやうてんしすはや程なく雨下あまおろしの來るぞや早く用心ようじんして帆を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もっとも、富士山ふじさん日本につぽんアルプス以下いか、すべての高山こうざんいたゞちかくには、さむさがつよくて樹木じゆもくそだちません。このことはのちにくはしくおはなしします。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
わが富士山ふじさんごと外輪山がいりんざんたない火山かざん單式たんしきであるが、ヴェスヴィオのごと外輪山がいりんざんゆうするものは複式ふくしきである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そうして、あちらのそらには、富士山ふじさんが、神々こうごうしく、くっきりとかびあがってえました。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
有史時代いうしじだいつてはじめて地震ぢしん傳説でんせつえるのは、孝靈天皇かうれいてんのうの五ねん近江國あふみのくにけて琵琶湖びはこ出來でき同時どうじ富士山ふじさん噴出ふんしゆつして駿すんかふさうがおびたゞしく震動しんどうしたといふのであるが
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
あゝ、おつかさん/\、貴女あなたわたくしてゝ何處どこへいらつしやるの——オ、オ、子ープルスのまち富士山ふじさんとのあひだに、ま、ま、奇麗きれいはしが——オヤ、おとつさんがわたくしんでいらつしやるよ。
つぎには、どなたにも名前なまへのしたしい富士山ふじさんへの登山とざんと、その森林帶しんりんたいとのおはなしをして、森林植物帶しんりんしよくぶつたいのおはなしを、なほよくわかるようにしておきませう。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
マウナ・ロアは四千百九十四米しせんひやくくじゆうしめーとるたかさをつてをり、わがくに富士山ふじさんよりも四百米以上しひやくめーとるいじようたかいから、讀者どくしやはその山容さんようとして富士形ふじがた圓錐形えんすいけい想像そう/″\せられるであらうが、じつにあらず
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
少年せうねんよ、まちつたる富士山ふじさんるのもとほことではないよ。』
富士山ふじさん紫色むらさきいろをおび、ゆったりとながくすそをいていました。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)