大凡おほよそ)” の例文
此大勢このたいせいもつ推算すゐさんすると、朝鮮てうせん臺灣等たいわんとう輸入超過ゆにふてうくわ合算がつさんしても、年末迄ねんまつまでには一おく六七千萬圓まんゑん大凡おほよそ豫想よさういたのであつた。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
斯うして酒の罎を提げて悄然しよんぼりとして居る少年の様子を眺めると、あの無職業な敬之進が奈何して日を送つて居るかも大凡おほよそ想像がつく。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ひつぎのみこも、みこの時期は、大凡おほよそ同じ為向けを受けて育たれたものらしいから、まづ皇子の生活を説くのが適当だらうと思ふ。
日本文学の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
「笛まで入るのは念入りだネ、何處の森でやつて居るとか、何處の木立でやつて居るとか、大凡おほよその見當位は付くだらう」
それから後も大凡おほよそどうゆう風に終るか、どうして二人を孔雀から私が救け出したか、孔雀は何故二人をさらはうとしたか、孔雀は以何に同情すべき身の上であるか
嘆きの孔雀 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
彼奴の友達の部屋で夜明かし飲んで、朝まで頑張ぐわんばつてみたが、到頭たうとう帰つて来ないんだ。その相手の男も大凡おほよそ見当がついてゐるんだ。此処へも二三度来た歯医者なんだ。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
をさめてそのあとが八十四五へう程も取入ます大凡おほよそ家邸いへやしき五百兩諸道具が三百兩餘りかゝへの遊女が十四五人是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
場処も小石川こいしかはの植物園にちかく物静なれば、少しの不便をきずにして他には申むねのなき貸家ありけり、かどの柱に札をはりしより大凡おほよそ三月ごしにも成けれど、いまだに住人すみてのさだまらで
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いまから大凡おほよそ十三四ねん以前いぜんまちの一ばん大通おほどほりに、自分じぶんいへ所有つてゐたグロモフとふ、容貌ようばう立派りつぱな、金滿かねもち官吏くわんりつて、いへにはセルゲイおよびイワンと二人ふたり息子むすこもある。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
父の日記は、大凡おほよそ農業日記であつて、そのなかに、ぽつりぽつり、僕に呉れた小遣銭こづかひせんの記入などがあるのである。明治廿二年のくだりに、宝泉寺え泥ぼうはひり、伝右衛門下男げなんもちて表よりゆく
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
けい、直徑大凡おほよそ七八町、岩石の奇なるものを屏風岩びやうぶいは硯岩すゞりいは烏帽子岩ゑぼしいは蓮華石れんげいし浦島釣舟岩うらしまつりふねいはと爲し、其水のきたるや、沈々として聲無く、其色の深碧にして急駛きうしせる、そゞろにわれの心を惹きぬ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
伊沢めぐむさんは現に此家の平面図を蔵してゐる。其間取は大凡おほよそしもの如くである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「そんでも大凡おほよそまあどのくれえしたもんでがせうね」勘次かんじまた反覆くりかへしてうながした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
停車場側ていしやぢやうわきに立つて車を待つ間、夫人はお鶴の前に近く居ながら、病院のあるといふ場処を大凡おほよその想像で見当あたりを附けて見た。二筋の細い道が左右にあつた。
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
達筆で書いてあるから、よくは讀めねえが、大凡おほよその見當は、二千兩といふ大金を、この春處刑しよけいになつた大泥棒の矢の根五郎吉が、このあつしに形見にやるといふ文句だ。
古代の舞踊に多かつた禽獣の物まねや、人間の醜態を誇張した身ぶり狂言は、大凡おほよそ精霊の呪言神に反抗して、屈服に到るまでの動作である。もどきの劇的舞踊なのである。
場處ばしよ小石川こいしかは植物園しよくぶつゑんにちかく物靜ものしづかなれば、すこしの不便ふべんきずにしてほかにはまをむねのなき貸家かしやありけり、かどはしらふだをはりしより大凡おほよそ三月みつきごしにもなりけれど、いまだに住人すみてのさだまらで
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すなはち一わりさがつてつた爲替かはせ大凡おほよそ回復くわいふくした程度ていどになつたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
大凡おほよそ改葬の名のもとに墓石を處分するは、今の寺院の常習である。そして警察はいてこれを問はない。明治以降所謂改葬を經て、踪迹そうせきの尋ぬべからざるに至つた墓碣ぼけつは、その幾何いくばくなるを知らない。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
わたしはなしは、短歌たんかのみならず、日本につぽんうた大凡おほよそわたつて、知識ちしきをおけしたいとおもふのですから、こんなことから、はじめたわけです。それで一口ひとくちだけ、旋頭歌せどうかについてまをしませう。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
團子屋だんごや頓馬とんまたゞおかぬとうしほのやうにわきかへるさわぎ、筆屋ふでやのき掛提燈かけぢようちんもなくたゝきおとされて、つりらんぷあぶなし店先みせさき喧嘩けんくわなりませぬと女房にようぼうわめきもきかばこそ、人數にんず大凡おほよそ十四五にん
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのお志保の姿を注意して見ると、亡くなつた母親といふ人も大凡おほよそ想像がつく。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
少しの不便をきずにして他には申むねのなき貸家ありけり、門の柱に札をはりしより大凡おほよそ三月ごしにも成けれど、いまだに住人すみてのさだまらで、主なき門の柳のいと、空しくなびくも淋しかりき
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大凡おほよそ立つてゐた事なので、たゞそれが、今日ほど甚しくはなくて、幾分互ひに譲歩しあふ事があつたといふばかりで、今の人の考へるやうに、口語その儘を筆録したのが、直に文語とならない事は
短歌の口語的発想 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
表向おもてむきにはなんとも月日つきひ大凡おほよそどのくらいおくつたもの御座ござんすか、いま千葉ちば樣子やうす御覽ごらんじても、れの子供こどもときならばと大底たいていにお合點がてんゆきましよ、病氣びやうきしてわづらつて、おてらものなりましたを
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
筆屋が軒の掛提燈は苦もなくたたき落されて、釣りらんぷ危なし店先の喧嘩なりませぬと女房がわめきも聞かばこそ、人数にんず大凡おほよそ十四五人、ねぢ鉢巻に大万燈ふりたてて、当るがままの乱暴狼藉らうぜき
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)