“地位(ちゐ)” の例文
平生(へいぜい)は一本(ぽん)きり帶(さ)してゐないけれども、二本帶(ほんさ)して歩(ある)く資格(しかく)を有(も)つてゐて、與力(よりき)や京武士(みやこぶし)の後(あと)へ廻(まは)らなくてもいいだけの地位(ちゐ)になつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
假(か)りに俺(おれ)が其(そ)の地位(ちゐ)に立(た)つたとして考(かんが)へて見(み)ても、事柄(ことがら)の如何(いかん)に係(かゝ)はらず、毎日(まいにち)葉書(はがき)で何(なん)のかのと云(い)つて來(こ)られた日(ひ)にや、實際(じつさい)やり切(き)れまいと思(おも)ふよ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
學問(がくもん)は社會(しやくわい)へ出(で)るための方便(はうべん)と心得(こゝろえ)てゐたから、社會(しやくわい)を一歩(ぽ)退(しり)ぞかなくつては達(たつ)する事(こと)の出來(でき)ない、學者(がくしや)といふ地位(ちゐ)には、餘(あま)り多(おほ)くの興味(きようみ)を有(も)つてゐなかつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それでも大(おほ)きな建物(たてもの)を燒盡(せうじん)するには時間(じかん)を要(えう)した。其(そ)の間(あひだ)に村落(むら)の者(もの)は手當(てあた)り次第(しだい)に家財(かざい)を持(も)つて其(そ)れを安全(あんぜん)の地位(ちゐ)に移(うつ)した。其(そ)の點(てん)に於(おい)て白晝(はくちう)の動作(どうさ)は敏活(びんくわつ)で且(か)つ容易(ようい)であつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それですが彼(あ)の時分(じぶん)の私(わたし)の地位(ちゐ)に他(ほか)の人(ひと)を置(お)いて御覽(ごらう)じろ、それは何(ど)んな諦(あきら)めのよい悟(さと)つたお方(かた)にしたところが、是非(ぜひ)此世(このよ)の中(なか)は詰(つま)らない面白(おもしろ)くないもので、隨分(ずゐぶん)とも酷(ひど)い、つれない
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼等(かれら)は安井(やすゐ)を半途(はんと)で退學(たいがく)させ、郷里(きやうり)へ歸(かへ)らせ、病氣(びやうき)に罹(かゝ)らせ、もしくは滿洲(まんしう)へ驅(か)り遣(や)つた罪(つみ)に對(たい)して、如何(いか)に悔恨(くわいこん)の苦(くる)しみを重(かさ)ねても、何(ど)うする事(こと)も出來(でき)ない地位(ちゐ)に立(た)つてゐたからである。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
南(みなみ)の亭主(ていしゆ)も殊更(ことさら)に彼(かれ)に同情(どうじやう)して慰藉(ゐしや)の言辭(ことば)を惜(をし)まぬ程(ほど)其(その)心(こゝろ)が動(うご)かされなかつたのみでなく、彼(かれ)は寧(むし)ろ仲裁者(ちうさいしや)の地位(ちゐ)に立(た)たねば成(な)らぬことに幾分(いくぶん)の迷惑(めいわく)を感(かん)じた。勘次(かんじ)は決(けつ)して仲裁(ちうさい)を依頼(いらい)しなかつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
盡(つく)さして引入(ひきい)れし利(り)も少(すく)なからず世(よ)は塞翁(さいをう)がうまき事(こと)して幾歳(いくとせ)すぎし朝日(あさひ)のかげ昇(のぼ)るが如(ごと)き今(いま)の榮(さかゑ)は皆(みな)松澤(まつざは)が庇護(かげ)なるものから喉元(のどもと)すぐれば忘(わす)るゝ熱(あつ)さ斯(か)く對等(たいとう)の地位(ちゐ)に至(いた)れば目(め)の上(うへ)の瘤(こぶ)うるさくなりて獨(ひと)りつく/″\案(あん)ずるやう徑(けい)十町(じつちやう)を
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
元(もと)より當人(たうにん)は、資本主(しほんぬし)ではなかつたのだけれども、愈(いよ/\)といふ曉(あかつき)に、勘定(かんぢやう)して見(み)ると大(おほ)きな缺損(けつそん)と事(こと)が極(きま)つたので、無論(むろん)事業(じげふ)は繼續(けいぞく)する譯(わけ)に行(ゆ)かず、當人(たうにん)は必然(ひつぜん)の結果(けつくわ)、地位(ちゐ)を失(うしな)つたぎりになつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)