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匂
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にお
ふりがな文庫
“
匂
(
にお
)” の例文
「いい
香
(
かお
)
りがする。あれは、すずらんの
花
(
はな
)
の
匂
(
にお
)
いだよ。」と、お
父
(
とう
)
さんはほど
近
(
ちか
)
くに、
白
(
しろ
)
い
咲
(
さ
)
いている
花
(
はな
)
を
見
(
み
)
つけて
教
(
おし
)
えられました。
さまざまな生い立ち
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
よい香りは、村の後ろの高い山の方から
匂
(
にお
)
ってきました。爺さんは天狗鼻をうそうそさせながら、山の奥へ奥へと登って行きました。
天狗の鼻
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
それが秋の日にかすかに
匂
(
にお
)
った。私はそのかすかな日の匂いに、いつかの麦藁帽子の匂いを思い出した。私はひどく息をはずませた。
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
村は
麗
(
うら
)
らかな日に
霞
(
かす
)
んでいた。麦は色づき始め、菜の花が黄色く彩どっていた。
鶯
(
うぐいす
)
が山に鳴き家々の庭には
沈丁香
(
じんちょうげ
)
の花が
匂
(
にお
)
っていた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
妙法寺の
境内
(
けいだい
)
に居た時のように、落合の火葬場の煙突がすぐ背後に見えて、雨の日なんぞは、きな
臭
(
くさ
)
い人を焼く
匂
(
にお
)
いが流れて来た。
落合町山川記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
▼ もっと見る
蔬菜の浅黄いろを眼に
染
(
し
)
ませるように香辛入りの酢が
匂
(
にお
)
う。それは初冬ながら、もはや早春が訪れでもしたような
爽
(
さわや
)
かさであった。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
時としては青黒い
苔桃
(
こけもも
)
のような甘っぽい空疎な味であるが、しかし少なくとも大地の
匂
(
にお
)
いをもっている、まだ若々しい芸術である。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
しめやかな
薫香
(
くんこう
)
の
匂
(
にお
)
いに深く包まれておいでになることも、柔らかに大将の官能を
刺激
(
しげき
)
する、きわめて上品な
可憐
(
かれん
)
さのある方であった。
源氏物語:39 夕霧一
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
……だが、彼はそれを払いのけるように首を振って、まだ冷えた冬の外気の
匂
(
にお
)
いがする妻の身体を抱く両手に、力をこめていった。
待っている女
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
いや、争う場合に、切り落されるという例もままあるから、その指は、あまり
証
(
あかし
)
にはならぬ。もっと重要なことは、女の髪油の
匂
(
にお
)
いだ。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ヘリオトロープの
匂
(
にお
)
いがする。また大急ぎで
頭
(
ここ
)
へ書きこむ。甘ったるい
匂
(
にお
)
い、後家さんの色、こいつは夏の夕方の描写に使おう、とね。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
けれどもこの論法を用うるためには『より善い半ば』よりも『より悪い半ば』——即ち桜の花の
匂
(
にお
)
いを肯定しなければなりません。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その地車の後から近所の娘たちがぞろぞろとついて行くところは、まだ何んといっても、徳川期の
匂
(
にお
)
いを多量に含んでいたものだ。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
ことに国語のうるわしい
匂
(
にお
)
い・
艶
(
つや
)
・うるおいなどは、かつて我々の親たちの感じたものを、今もまだ彼らだけは感じているように思う。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
アメリカから買って帰った上等の香水をふりかけた
匂
(
にお
)
い
玉
(
だま
)
からかすかながらきわめて上品な
芳芬
(
ほうふん
)
を静かに部屋の中にまき散らしていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
若葉の
匂
(
にお
)
うような五月はじめのある朝、大石先生は校門をくぐるなり、一年生の西村勝子の待ちかまえていたらしい姿に出あった。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
見わたす限りこのような野生のひな罌粟の
紅
(
くれない
)
に染まり、真昼の車窓に映り合うどの顔も、ほの明るく
匂
(
にお
)
いさざめくように見えた。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
その民族の
匂
(
にお
)
いと誇りとを持っているものであります。我が日本の文芸もまた日本に生れるべき運命を持って生れて来た文芸であります。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
お杉は避けようとはせず、
掴
(
つか
)
まれたままじっとしていた。星の明るい夜で、かなり暖かく、薬園のほうから沈丁花が
匂
(
にお
)
って来た。
赤ひげ診療譚:01 狂女の話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ほのかなヘリオトロープの
匂
(
にお
)
い、そして、息を殺す明智の眼の前を、白い
靄
(
もや
)
のようなものがスーッと通りすぎたのだが、その時
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
紫
匂
(
にお
)
う藤沢の、
野面
(
のおも
)
に続く平塚も、もとのあわれは
大磯
(
おおいそ
)
か。
蛙
(
かわず
)
鳴くなる小田原は。……(
極悪
(
きまりわる
)
げに)……もうあとは忘れました。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小型ノ六十圓ノ事ダッタノデ木村ガ前ニ掛ケタ。ブランデーノ
匂
(
にお
)
イガ襦袢ヤ
衣裳
(
いしょう
)
ニ浸ミ通ッテイテ車ノ中ガ
噎
(
む
)
せ返ルヨウダッタ。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ありません。その代りお
直段
(
ねだん
)
は少し高うございますけれども京都の本場で、
昨日
(
きのう
)
採
(
と
)
れた品ですからこの通りまだ
匂
(
にお
)
いが抜けません
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
あなたにも覚えがあるでしょう、生れた所は空気の色が違います、土地の
匂
(
にお
)
いも格別です、父や母の記憶も
濃
(
こまや
)
かに
漂
(
ただよ
)
っています。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
顔を伏せるようにして、女は、
袂
(
たもと
)
の端を噛みながら
低声
(
こごえ
)
にいった。白粉の
匂
(
にお
)
いと温泉の匂いとが、静かに女の肌から発散した。
機関車
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「鉄砲の音のようでした。驚いて音のした方へ飛んで行くと、川の方へ向いた部屋は
煙硝
(
えんしょう
)
の
匂
(
にお
)
いで、お仏壇の前には、旦那がこんな具合に」
銭形平次捕物控:297 花見の留守
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
匂
(
にお
)
わしてもない。しかし、私としては、そんな心持ちが自分の内に動いて来たというだけでも、子供らによろこんでもらえるように思った。
分配
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「ああッ、ああッ、あーあ。はて、おれは、さっきまで、一体なにしていたのかなあ。おや、これは妙だ。へんな
匂
(
にお
)
いがする」
地底戦車の怪人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
言換えると『浮雲』の描写は直線的に極めて鋭どく、色彩や情趣に欠けている代りには露西亜の作風の新らしい
匂
(
にお
)
いがあった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そこで私はその花を摘んで、自分の鼻の先で
匂
(
にお
)
うて見る。何という花だか知らないがいい匂である。指で
摘
(
つま
)
んでくるくるとまわしながら歩く。
西班牙犬の家:(夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇)
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
仏教の盛んな土地だけに、町全体の雰囲気には近代の
匂
(
にお
)
いが全くなく、科学などというものには、
凡
(
およ
)
そ無縁の土地であった。
簪を挿した蛇
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
義姉だけはまだ
逗留
(
とうりゅう
)
していたが、家のうちは急に静かになった。床の間の骨壺のまわりには菊の花がひっそりと
匂
(
にお
)
っている。
死のなかの風景
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
橘の姫は、津と和泉の人ととが相果てたほとりに、未だ化粧の
香
(
か
)
を
匂
(
にお
)
わせたまま頭を土手の方に向けてあえなくなっていた。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
御小刀
(
おこがたな
)
の跡
匂
(
にお
)
う梅桜、
花弁
(
はなびら
)
一片
(
ひとひら
)
も
欠
(
かか
)
せじと大事にして、昼は
御恩賜
(
おんめぐみ
)
頭
(
かしら
)
に
挿
(
さ
)
しかざせば
我為
(
わがため
)
の玉の冠、かりそめの
立居
(
たちい
)
にも
意
(
き
)
を
注
(
つけ
)
て
落
(
おち
)
るを
厭
(
いと
)
い
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
あそこには、理想の高い
匂
(
にお
)
いが無いばかりか、生活の影さえ
稀薄
(
きはく
)
だ。演劇を生活している、とでもいうような根強さが無い。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
と金原は言って、さも軍の用務を帯びて来たかのようなことを
匂
(
にお
)
わせた。こんなところへ来る以上、ただ者でないことは察したらしい歩哨が
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
その日も暮れて、暗くて暑い、『死せるがごとき』セヴィリヤの夜が訪れた。空気は『月桂樹とレモンの香に
匂
(
にお
)
って』いる。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
笑っていいか、泣いていいかわからないもののように、白い
匂
(
にお
)
わしい美女の顔は
歪
(
ゆが
)
み、紅い唇は、熱烈な呼吸に乾いて来る。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
この
思慕
(
エロス
)
は彼の俳句に一貫しているテーマであって、独得の人なつかしい俳味の中で、
葱
(
ねぎ
)
の
匂
(
にお
)
いのように
融
(
と
)
け流れている。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
本棚の
蠧
(
しみ
)
を防ぐ
樟脳
(
しょうのう
)
の目にしむ如き
匂
(
にお
)
いは久しくこの座敷に来なかったわたしの怠慢を
詰責
(
きっせき
)
するもののように思われた。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お庄は一人で暗い外へ出ると、温かい湯の
匂
(
にお
)
いのする
溝際
(
どぶぎわ
)
について、ぐんぐん歩いて行ったが、どこへ行っても同じような家と町ばかりであった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「露の落つる音」とか「梅の月が
匂
(
にお
)
ふ」とかいうことをいうて
楽
(
たのし
)
む歌よみが多く候えども、これらも面白からぬ嘘に候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
ここではあらゆる
望
(
のぞ
)
みがみんな
浄
(
きよ
)
められている。
願
(
ねが
)
いの数はみな
寂
(
しず
)
められている。
重力
(
じゅうりょく
)
は
互
(
たがい
)
に
打
(
う
)
ち
消
(
け
)
され
冷
(
つめ
)
たいまるめろの
匂
(
にお
)
いが
浮動
(
ふどう
)
するばかりだ。
インドラの網
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
と子供らは歌いながらあっちこっちの横町や露路に遊び疲れた足を物の
匂
(
にお
)
いの漂う家路へと
夕餉
(
ゆうげ
)
のために散って行く。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
老婦はお宮の
絹手巾
(
きぬハンケチ
)
で包んだ
林檎
(
りんご
)
を包みのまま差し出した。手に取り上げて見るとお宮と一緒にいるような
薫
(
かお
)
りの高い香水の
匂
(
にお
)
いが立ち迷うている。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
その友人というのは、咲き
匂
(
にお
)
うような妻子をもっていて、みんなが強い愛情でむすばれていた。彼は熱心に言った。
妻
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
うなぎは
匂
(
にお
)
いを
嗅
(
か
)
いだだけでも
飯
(
めし
)
が食えると
下人
(
げにん
)
はいうくらいだから、なるほど、特に美味いものにはちがいない。
鰻の話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
三吉があわてて電灯の灯の方へ顔をむけると、気のいい人の
要慎
(
ようじん
)
なさで、
白粉
(
おしろい
)
の
匂
(
にお
)
いと一緒に顔をくっつけながら
白い道
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
氷と雲とにおおわれた
裸
(
はだか
)
の岩山が谷をとりまいていました。ヤナギとコケモモが
咲
(
さ
)
きそろい、よい
香
(
かお
)
りのするセンオウは
甘
(
あま
)
い
匂
(
にお
)
いをひろげていました。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
靴も脱がずに外から
覗
(
のぞ
)
き込むのでしたが、あたりの森閑とした静けさといい、古びた昔の
匂
(
にお
)
いといいいかにも昔祖母の語った怪奇な話が思い出されて
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
“匂(におい)”の解説
においとは
空気中を漂ってきて嗅覚を刺激するもの(注. 『広辞苑』では嗅覚系の説明は2番目以降である)。
赤などのあざやかな色彩が美しく映えること。視覚で捉えられる美しい色彩のこと。「匂い」。
(出典:Wikipedia)
匂
常用漢字
中学
部首:⼓
4画
“匂”を含む語句
酒匂川
酒匂
萌黄匂
匂宮
匂袋
紫匂
香匂新左衛門
匂坂
荒匂
櫨匂
弥匂
山吹匂
墨匂
咲匂
匂香
匂頻
匂零
匂阿羅世伊止宇
匂足
匂滴
...