僧侶そうりょ)” の例文
そういう時にいつでも結局いちばん得をするのは、こういう犠牲者の死屍ししにむちうつパリサイあたりの学者と僧侶そうりょたちかもしれない。
自画像 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
(5)Jonas Rarmus(一六四九—一七一八)——ノルウェーの僧侶そうりょ。ノルウェーの地理および歴史に関する著述がある。
後に新井白石あらいはくせきの如き名家を出したにかかわらず、なお容易にその継承し来った五山僧侶そうりょの文学の余習を脱却だっきゃくし得なかったのであるが
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
金の十字架じゅうじか、金で飾りたてた祭壇さいだん、金のころもを着た僧侶そうりょたち! 教会のまむかいには、ギザギザのある屋根を持った建物がありました。
若君わかぎみはもうお忘れでございましょうが、去年きょねん、お父上ちちうえ勝頼かつよりさまに僧侶そうりょをおしたいなされて菊亭家きくていけへおしあそばしたことを」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長安には太清宮のしも許多いくたの楼観がある。道教に観があるのは、仏教に寺があるのと同じ事で、寺には僧侶そうりょり、観には道士が居る。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
軍の嚮導者きょうどうしゃたることを志すものがあり、あるいは徳川幕府より僧侶そうりょに与えた宗門権の破棄と神葬復礼との方向に突き進むものがあって
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
したがって僧侶そうりょたる者が部屋の中にこれからさき、暮らせば暮らすほど、いっそう痛切にこのことを自覚しなければなりませんのじゃ。
農夫、小作人、村の職人、つぎには、僧侶そうりょ田舎いなかの公証人、などであって、しまいにその郡役所所在地に来て身を落ち着けたのであった。
その後年を経るにしたがって貴族僧侶そうりょの愛好飲料となったのはいうまでもなく、茶園もたくさんできたということである。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
最も大きな力となっているのはおそらく「かくし念仏」のぎょうであろう。この念仏宗は今は東本願寺の系統に属しているが、別に僧侶そうりょを設けない。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その米の叔父に一人の僧侶そうりょがあったが、それが廻国かいこくに出かけることになって、僧侶には路銀ろぎんは不要だと云うので、三百円の金を米に預けて往った。
寄席の没落 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あるいは御家人ごけにんないし大名旗本の陪臣、それから僧侶そうりょ、山伏し等の囚罪人がこれに投ぜられるのならわしでありました。
その人物は、昔西洋の僧侶そうりょが着ていたようなだぶだぶの服を着ていたが、すそは破れて、膝のすぐ下までしかなかった。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
相当眼に着くのは政治権力への顧慮からくる影響で、武士と武家出身の僧侶そうりょとあわせて十四人の人がえらばれている。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
白鳳の貴人達は深甚微妙の楽の音と数百の僧侶そうりょの読経と、この壮大な交響のうちに仏を拝する妙味を心ゆくまであじわった最初の人々であったに相違ない。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
あるいは僧侶そうりょ呪術師じゅじゅつしであったという説などいろいろあるが、それらの仮説がどうであれ、要するに国家の起源は、これを人間の共同生活そのものの
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
そしてすぐに野の片すみの田舎者は僧侶そうりょするに至る。田舎者の仕事着を少し広くすれば、そのまま道服である。
毛糸の手袋てぶくろめ、白足袋しろたび日和下駄ひよりげたで、一見、僧侶そうりょよりは世の中の宗匠そうしょうというものに、それよりもむしろ俗か。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もう一人もやはり僧侶そうりょで、広沢ひろさわ寛朝僧正かんちょうそうじょうという人である。大僧正になった人で、仏教の方でも有名であり、宇多天皇の皇子の式部卿しきぶきょうの宮の御子みこである。
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
或る僧侶そうりょが、只、鼻声だと云うために大司教となり、行商人が金貸しの女と結婚して、七八百万の金を産ませた。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
この僧侶そうりょ別当べっとうとなえ、神主の方はむしろ別当従属の地位にいて坊さんからやとわれていたような有様であった。
「お寺さん」という綽名あだなはそれと知らずにつけられたのだが、実は寺田の生家は代々堀川ほりかわの仏具屋で、寺田のよめ商売柄しょうばいがら僧侶そうりょむすめもらうつもりだったのだ。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
これは専念に当来とうらい浄土じょうど渇仰かつぎょうすべき僧侶そうりょの身で、鼻の心配をするのが悪いと思ったからばかりではない。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
僧侶そうりょが投機に凝りだしてからは、寺は雨戸をとざして空屋のように汚れて、墓場の道は草が生え木の葉の散るにまかせていた。兄弟は朽葉を踏んで墓地を下った。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
自分の師の慈慧が僧正に任ぜられたので、宮中に参って御礼を申上げるに際し、一山の僧侶そうりょ、翼従甚だ盛んに、それこそ威儀を厳荘にし、飾り立てて錬り行った。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それが非常に小柄な僧侶そうりょ、———その背の低さと肩の細さから判断して恐らくは尼僧、———と推定される人物の、桜の幹に寄り添うてたゝずんでいるのであること
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「それが役目ならば検分なさるがよい、但し手をつけることを堅くお断りする」「…………」「見らるるとおりわたしは仏に仕える者だ、僧侶そうりょには敵も味方もない、 ...
荒法師 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
(間)私は比叡山ひえいざん奈良なら僧侶そうりょたちが憎くなります。かほどの尊い聖人しょうにん様をなぜあしざまに讒訴ざんそしたのでございましょう。あのころの京での騒動のほども忍ばれます。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
一家が帰依きえしている学識のある僧侶そうりょに相談して、町の人がその問題に興味をもちはじめたのを防いだが、相続人だから千円のお金を附けたということを、町ではうわさした。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
もし彼の実の母が生きていたら、あるいは彼と実家との関係に、こうまでへだたりができずに済んだかも知れないと私は思うのです。彼の父はいうまでもなく僧侶そうりょでした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主人の僧侶そうりょは、どんな手ひどいことを伯母から云われても、表情を怒らしたことがなかった。
洋灯 (新字新仮名) / 横光利一(著)
それを見ると、僧侶そうりょと儒者と神道家とが三人寄り合ってしきりに世の澆季ぎょうきを嘆いている。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
かれに言わせると、自分は今までに九人の僧侶そうりょった罰で、それら九人の骸顱しゃれこうべが自分のくび周囲まわりについて離れないのだそうだが、他の妖怪ばけものらには誰にもそんな骸顱しゃれこうべは見えなかった。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
随分妙な事が沢山ある。夜が明けて僧侶そうりょが外へ出て来る時分には信者が布施ふせをするといって「ゲ」を出します。一タンガーずつ出すこともあれば半タンガーずつくれることもある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
だが、この寺内の淡島堂は神仏混交の遺物であって、仏具を飾って僧侶そうりょがお勤めをしていたから、椿岳もまた頭を剃円そりまろめて法体ほったいし、本然ほんねんと名を改めてしばらくは淡島様のお守をしていた。
たいていは旅の僧侶そうりょに化けて、その土地にしばらくとどまっていたというのである。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いかなるおしえしんじても産土うぶすなかみ司配しはいけることにかわりはないが、ただほとけすくいをしんってるものは、その迷夢まよいめるまで、しばらく仏教ぶっきょう僧侶そうりょなどに監督かんとくまかせることもある。
キリストが無遠慮に自分の思想の実行をつとめたから、時の官憲僧侶そうりょから邪魔視じゃましされ、耶蘇やそほどにはびこる、いやなものはないと思われたればこそ、十字架じかの上にその一生を終わったのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その人のいいますのに、これは旭玉山あさひぎょくざんという彫刻師の作で、この人は天保の頃浅草で生れ、初めは僧侶そうりょでしたが、象牙の彫刻を好んで種々の動物を造ったので、髑髏は最も得意なのだそうです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
祭壇の足もとに、ひとりの生きた人間の姿が、ひとりの若い僧侶そうりょが、すわっていました。この僧侶はいのっているようすでしたが、そのお祈りのさいちゅうに何か物思いにしずんでいるようでした。
それともバールの僧侶そうりょであるかを洞察し得るであろう。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
「おお、してその僧侶そうりょはどうしました。また、居士はなんで、かような姿をして、この鎖駕籠くさりかごのなかにはいっておいでになりましたか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中世紀の僧侶そうりょたちが彼らの犠牲者を壁に塗りこんだと伝えられているように——それを穴蔵の壁に塗りこむことに決めたのだ。
黒猫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
この像の仕上げのために喜捨を募るという張り札がしてある。回廊の引っ込んだ所には、僧侶そうりょ懺悔ざんげをきく所がいくつもある。
先生への通信 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
内陣ないじんには、祭壇さいだんや、金ピカの十字架じゅうじかが、立っていたことでしょう。そしてそこには、金のころもをまとった僧侶そうりょたちが、歩いていたことでしょう。
すくなくもそこに修業時代を送って、そういう進んだ地方の空気の中に僧侶そうりょとしてのたましいを鍛えて来た松雲が、半蔵にはうらやましかった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
俳優は皆奇異なるかつらと衣裳とのために身体の自由を失ひたるものの如く、台詞せりふの音声は晦渋かいじゅうにして変化に乏しきことさながら僧侶そうりょ読経どきょうを聞くのおもいありき。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ところで孝謙こうけん天皇即位の頃には、太上だじょう天皇(聖武帝)は七堂伽藍がらん東西両塔を建立こんりゅうされ、善美をつくした伽藍が現出し、つねに一千の僧侶そうりょを住せしめた。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
「君は僧侶そうりょになる柄の人ではないから、今のうちにし給え」と云って、寺を何がなしにい出してしまった。
心中 (新字新仮名) / 森鴎外(著)