しもべ)” の例文
「進歩なるものは神を信じてるはずです。善は不信のしもべを持つわけはありません。無神論者である人は、人類の悪い指導者です。」
されど汝らの中にてはしからず、かえって大ならんと思う者は、汝らの役者えきしゃとなり、頭たらんと思う者は、すべての者のしもべとなるべし。
しもべの僕によりてアルノよりバッキリオーネに遷され、惡の爲に竭せる身をかしこに殘せる者を見たりしなるべし 一一二—一一四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
(唯円、筆を水につけてくちびるをうるおす。弟子でしたちそれにならう)裁く心と誓う心は悪魔から出るのじゃ……人のしもべになれ。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
番甲 これにをりまする老僧らうそう、またころされましたるロミオのしもべにんいづれもはかあばきまするに屈竟くっきゃう道具だうぐをばたづさへてをりまする。
エホバよりまずサタンに向って、「なんじ心を用いてわがしもべヨブを見しや、彼の如くまったくかつ正しくて神を畏れ悪に遠ざかるひとあらざるなり」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
やがて「ノア酒さめて其若き子の已に為したる事を知れり。是に於て彼言ひけるはカナンのろはれよ、彼はしもべ等の僕となりて其兄弟につかへん」
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
その中には、大身たいしんから贈る祝い物であろう、これ見よがしにしもべになわせて、月輪殿つきのわどのを訪れるらしい幾荷いくか吊台つりだいも通って行った。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心の水はえ立ッた。それ朝餉あさがれいかまどを跡に見て跡を追いに出る庖廚くりや炊婢みずしめ。サア鋤を手に取ッたまま尋ねに飛び出す畑のしもべ。家の中は大騒動。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
神の如き此の女性を、汝は何が故にかくも虐待するのか、汝は此の女性の夫たる——否、否、しもべにすらなる資格はないのだ。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
「お気の毒にもご老僧は未お体が悪いと見える」——斯う云い乍ら門の方を暫く純八は見送ったが、軈てしもべの八蔵を呼んで其穢物を掃除させた。
高島異誌 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
自分はこの意味に於いてしもべと奴隷とを區別する。我等は常に道の僕とならなければならない。併し同時に如何なる者の奴隷となつてもならない。
三太郎の日記 第三 (旧字旧仮名) / 阿部次郎(著)
給仕するしもべの黒き上衣うわぎに、白の前掛したるが、何事をかつぶやきつつも、卓に倒しかけたる椅子を、引起してぬぐひゐたり。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
例えば物理学を見ても、十九世紀の物理学は、力学を完成し、電気を人類のしもべとするところまでしか、到達しなかった。
未来の足音 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
五更ごこう(午前三時—五時)に至って、張はまた起きた。しもべを呼んで燈火をつけさせ、髪をくしけずり、衣服をととのえて、改めて同宿の孟に挨拶した。
ブラジルのサンパウロを旅行中そのしもべ大木の幹に腰掛くると動き出したからよくると木でなくて大蛇だったと記した。
僕の前に事業が、そして後ろにあなたがあれば、僕は神の最も小さいしもべとして人類の祝福のために一生をささげます。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「おおわが神よ、何を下さるのか」神の老いたるしもべは歓びに満ちてささやいた「今、わたくしに、何を下さるのか」
海豹 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
そして、私の忠実なしもべの芸術家達は、巫女のような洞察で天と人類とのゆきさつを感じ、様々な形で生存の真髄を書きとめ刻みつけ彩って行くのです。
対話 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
または悪魔悪鬼にまれ、若しこの事をかなえてくれたら、永劫未来後の世はおぬししもべとなって暮そう、火の山、針の林へもよろこんではいるであろう——
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
しもべの手から、がんりきの手へ、がんりきの手からいま改めて主膳に返されてみると、主膳はそれを持扱いのていです。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今より後われ爾曹なんじらしもべいわず。そは僕は其の主のなすことを知らざれば也。我さきに爾曹を友と呼べり。我爾曹に我が父より聞きし所のことを尽くつげしにる。
イエスキリストの友誼 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
万寿寺に往って寺の中を見ていると、の女が出て来て奥の方へれて往ったので、荻原のしもべきもつぶして逃げ帰り、家の者に知らしたので皆で往ってみると
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
さればこの時の風采ふうさいは、悪魔の手に捕えられた、一体の善女ぜんにょを救うべく、ここに天降あまくだった菩薩ぼさつに似ず、仙家のしもべの誤ってを破って、下界に追いおろされた哀れな趣。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
われは進みて此しもべの耳に附き、アヌンチヤタの宿はいづくぞと問ひしに、僕はかうべを𢌞して我顏を打目うちまもり、アヌンチヤタと宣給のたまふか、そはアウレリアの誤なるべし
しもべたる身を貴しと思い、御身を讃めたたえまつりて、その大いさを説き示し、み保護のもと歓び行いて、御宿りのいかばかり美しきかを人に教えまつらんことを希う。
旅愁 (新字新仮名) / 横光利一(著)
又慈悲深く、寛厚かんこうにして、常に救いの手をさしのべんとする、仁者の心をもって心とせよ。更に又為すべき事を為して、報酬を求めざる神のしもべの克己心をこれに加えよ。
酒肴しゅこうを携えてここに遊び、終日歓を尽くし、帰るに臨んでしもべに一包みを与え、借料の礼なりといい
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
そこで、神のしもべなる我がコペイキンは、その伝令兵と一緒に馬車へ乗せられてしまったのです。
それですから、英語では官吏のことをパブリック・サーヴァント即ちおおやけしもべというくらいです
心のアンテナ (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ただ神の正義を伝えんが為にここに来た。諸君、諸君は神を信ずる。何がゆえに神に従わないか。何故に神の恩恵おんけいこばむのであるか。すみやかにこれを悔悟かいごして従順なる神のしもべとなれ。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかし後半生においては忠実な神のしもべであった。ストリンドベルヒは自然主義の精神を最も明らかに体現した人である。しかし晩年には神と神の正義との熱心な信者であった。
『偶像再興』序言 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
車を二台持って来たのであって、例の東国の荒武者が、七、八人、多くのしもべを従えていた。
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
終に臨んで予は切に卿等が幸福と健在とを祈る。卿等に常に忠実なるしもべ、北畠義一郎拝。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
石磴せきとうを登らむとする時その麓なる井のほとりに老婆の石像あるを見、これは何かとしもべに問へば咳嗽せきのばばさまとて、せきを病むものがんを掛け病いゆれば甘酒を供ふるなりといへり。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
さう、其處に僕の光榮と喜悦きえつがあります。僕は全能のしゆしもべです。僕は人間の導きで——僕と同じ被造物の缺點だらけな法則と間違ひだらけな統御を受けて行くんぢやありません。
彼、キム・ヲ・チパスクマ(山の教義)の徒、チクニ・アコシラツキ・オルシユペ(樹の守護の教義)の徒、地上の者、聖シランパの子、黙想者、聖トボチのしもべ。彼はかく念ずらし。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
主より派手に着飾ろうとするしもべがあろうか。いつも身支度は簡素である。着過ごすなら働きにくい。生活は素朴の風を求める。よき器を見られよ、かつて華美に過ぎたものがあろうか。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
夜話の帰りにしもべの云ふには、南の路より御帰りなさるべし。それは道遠し。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しゅよ、汝のしもべにたいしてあまりに不満を感じたもうな。わがなせしところははなはだわずかであった。されどわれはそれ以上をなし得なかった……。われは戦い、苦しみ、さ迷い、創造した。
一茶の句に、『椋鳥と呼ばるゝ今日の寒さかな』といふのがあるが、その椋鳥の一人になつて、父親は江戸に出て、質屋だの、金貸だのゝしもべとなつて、そして若い時を勇ましく働いたのであつた。
田舎からの手紙 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
われこそ真は大神でいゆすがしもべ伊留満いるまんあんとにゆすでおぢやるぞ。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
セエラのうしろには、『最後の人形』の箱を持ったしもべが続きました。
やはり、芸術につかえる一人のしもべとして、私一個人の願いなのですが
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私は偽られた自分に鞭打って忠実のしもべであった筈だ
やるせなさ (新字新仮名) / 今野大力(著)
「主よ、ここにあなたの小さなしもべが居ります」
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
万人のためにしもべとならん意思である。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
信一郎は、従順なしもべのやうに答へた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
榮光いんよくの主とそのしもべにあれ。
初夏の祈祷 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
「私は神のしもべであると共に」
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)