二歳ふたつ)” の例文
狐のわざですよ。この木の下でときどき奇態なことをして見せます。一昨年おととしの秋もここに住んでおります人の子供の二歳ふたつになりますのを
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
跡にはその時二歳ふたつになる孤子みなしごの三郎が残っていたので民部もそれを見て不愍ふびんに思い、引き取って育てる内に二年の後忍藻が生まれた。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
当時いまの殿様の曾祖父様ひいおじいさまの時代のはなしで、その奥様が二歳ふたつになる若様を残して御死亡おなくなりになりました、ソコで間もなくから後妻にどぞいをお貰いになって
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
やっぱり、夢ににぎやかなところを見るようではござんすまいか。二歳ふたつ三歳みッつぐらいの時に、乳母うばの背中から見ました、祭礼おまつりの町のようにも思われます。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
左の手を出して……おふくろ二歳ふたつ三歳みッつの子供を愛するようにお菊の肩の処へ手をかけて、お菊の顔を視詰みつめて居りますから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
妻のお政はすやすやと寝入り、そのそば二歳ふたつになるたすくがその顔を小枕こまくらに押着けて愛らしい手を母のあごの下に遠慮なく突込んでいる。お政の顔色の悪さ。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
私も藤野さんも其年八歳であつたのに、豐吉といふ兒が同じ級にあつて、それが私等よりも二歳ふたつか年長であつた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
何故ならばその當時私はまだほんののみ兒で當歳か、やつと二歳ふたつかであつたのである。次で乳母のなかから見た海はにごつた黄いろいぞうの皮膚のやうなものだつた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
しばらくすると、二歳ふたつになる子が、片言交かたことまじりに何やら言う声がする。み割れるような、今の女中の笑い声が揺れて来る。その笑い声には、何の濁りもわだかまりもなかった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その女の子供は、おそらくこの世で見らるる最もきよい姿をしたものの一つであった。二歳ふたつ三歳みっつの女の児だった。服装みなりのきれいなことも前の二人の子供に劣らなかった。
彼女かれは浪子より二歳ふたつけて一年早く大名華族のうちにも才子の聞こえある洋行帰りの某伯爵にとつぎしが、舅姑しゅうとの気には入りて、良人にきらわれ、子供一人もうけながら
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「ばかなことを」と喜兵衛が云った、「殿は昨日、御逼塞になった、おかみといえるのは御幼君だけだ、まだお二歳ふたつの亀千代さまが、そんなことをお命じになるわけはない」
何でも二歳ふたつ三歳みっつの子供がありましたがその可愛盛りの愛児がこの間死んだので、私の妻はほとんど狂気のごとくに歎き私も漁に出掛けても少しも面白くないという愁歎しゅうたん話。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
旧家ではあり資産家かねもちではあり、立派な生活を営んでいた。おそめという一人娘があった。その時数え年ようや二歳ふたつで、まだ誕生にもならなかったが、ひどく可愛い児柄こがらであった。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この報知しらせを受取った三吉夫婦は、子供に着物を着更えさせて、停車場ステーションを指して急いだ。夫婦は、四歳よっつに成る総領のお房ばかりでなく、二歳ふたつに成るお菊という娘の親ででもあった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
女史には老たる両親ふたおやがおありでした。三人の女のお子と、その折に二歳ふたつになる男のお子とをお残しでした。今は、二人の女のお子は母君ははぎみのあとをしたって、次々に世をさられました。
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そしてこの牝牛ハダベコは恐らく私が二歳ふたつ年齡としから十六の年齡としになるまで心を惹きつけられた同じ土地のあらゆる處女しよぢよの眼遣ひをして、此の私といふ狹隘で、横着に人間生活を悟りすまし
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
四郎は二歳ふたつではありませんか、ひかると同じ顔をした同じやうな性質を持つて生れた四郎を、私はどうかするともう十三歳じうさんに迄してあると云ふやうな誤つた安心を持つて見て居なかつたでせうか。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
その朝麿が二歳ふたつ、十八公麿が四歳よっつとなった。乳人めのとにだかれている弟を
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ええ、僕がやっと二歳ふたつになった年に死んだそうです」
誰? (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
年も二歳ふたつばかり急にけたように見える。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
二歳ふたつまさりの姉君は
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
二歳ふたつで あんよが
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
何しろ子供の時の二歳ふたつ違ひは、頭脳の活動の精不精に大した懸隔があるもので、それの最も顕著に現はれるのは算術である。豊吉は算術が得意であつた。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
手足てあしをぴち/\とねる、二歳ふたつぐらゐのをとこを、筋鐵すぢがねはひつたひだりうでに、わきはさんで、やんはりといたところは、挺身ていしんさかさまふちさぐつてどぢやう生捉いけどつたていえる。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
門番の勘藏かんぞうがとって二歳ふたつになる新吉しんきち様と云う御次男を自分の懐へ入れて前町まえまちへ乳を貰いにきます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二歳ふたつ年齡としから十六歳じふろくになるまで何度見たか知れないこの海を、わたしは畢竟ウヂケデ空虚ボヤラと見て居たのだ。そこの表情には春、雪解けの野原で銀色の草の若芽モエを喰ふ牛のハダ柔和ヤヤシミがある。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
母は三十四で最早もはや子は出来ないものとあきらめて居ると、馬場が病で没し、其妻も間もなく夫の後をおそうこの世を去り、残ったのは二歳ふたつになる男の子、これさいわいと父が引取って自分のとし養ったので
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「ジョンよジョンよ、足が速いのう、二歳ふたつになった牝鹿のようだ」
四郎が二歳ふたつであることを思ふと私は死なれない、死にともない。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かぞえ年では、二歳ふたつになったのだ。夏もすぎ、秋にもなった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お定は打見には一歳ひとつ二歳ふたつも若く見える方で、背恰好の婷乎すらりとしたさまは、農家の娘に珍らしい位、丸顏に黒味勝の眼が大きく、鼻は高くないが笑窪えくぼが深い。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
おぶっていたのが、何を隠そう、ここに好容色で立っている、さて、久しぶりでお目にかかります。お前さんだ、お米坊——二歳ふたつ、いや、三つだったか。かぞえ年。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此娘これも世が世ならばお旗下のお嬢さまといわれる身の上だが、運の悪いというものは仕方がないもので、此のお賤が二歳ふたつの時、其のお屋敷がじきに改易に成ってしまい
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
誰しも見るそのとしで、どうしてそんなことをと思へるくらゐ、二歳ふたつから三つ四つ五つぐらゐの年齡としまでの、とぎれとぎれながら樣々の周圍の光景を、幻のやうに今なほあざやかに記憶してゐる。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
玉日は、生れてまだ二歳ふたつ房丸ふさまるを、胸に抱いていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二歳ふたつになる可愛かはいいアウギユストよ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
お定は、打見には一歳ひとつ二歳ふたつも若く見える方で、背恰好の婷乎すらりとしたさまは、農家の娘に珍らしい位、丸顔に黒味勝の眼が大きく、鼻は高くないが、笑窪が深い。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
やつと二歳ふたつ嬰兒あかんぼだが、だゞをねてことかないと、それ地震ぢしんるぞとおやたちがおどすと
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ういう理由なんでげす、あのお嬢さんが二歳ふたつの時に、わっし母親おふくろがお乳を上げたんで、まアほかに誰も相談相手が無いからって、訪ねておいでなすったから、母親もびっくりして、まアお嬢さん
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二歳ふたつになる可愛かはいいアウギユストよ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
源助は以前もと静岡在の生れであるが、新太郎が二歳ふたつの年に飄然ぶらりと家出して、東京から仙台盛岡、其盛岡に居た時、あたかも白井家の親類な酒造家の隣家の理髪店とこやにゐたものだから
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
二歳ふたつになった小児こどもは棄てる。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分と石本俊吉とは、逢會僅か二分間にして既に親友と成つた。自分は二十一歳、彼は、けても見え若くも見えるが、自分よりは一歳ひとつ二歳ふたつ兄であらう。何れも年が若いのだ。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
自分と石本俊吉とは、逢会僅か二分間にして既に親友と成つた。自分は二十一歳、彼は、老けても見え若くも見えるが、自分よりは一歳ひとつ二歳ふたつ兄であらう。何れも年が若いのだ。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
新山堂と呼ばるる稲荷神社のすぐ背後うしろの、母とは二歳ふたつ違ひの姉なる伯母の家に車のながえを下させて、出迎へた、五年前に比して別に老の見えぬ伯母に、『マア、かうさんの大きくなつた事!』
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
新太郎が二歳ふたつの年に飄然ぶらりと家出して、東京から仙臺盛岡、其盛岡に居た時、恰も白井家の親類な酒造家の隣家の理髮店とこやにゐたものだから、世話する人あつてお定らの村に行つてゐたので
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
唖のお政は私より二歳ふたつ年長としうへ、三番目一人を除いては皆女で、末ツ児はまだを飲んでゐた。乳飲児を抱へて、大きい乳房を二つともはだけて、叔母が居睡ゐねむりしてる態を、私はよく見たものである。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
新山堂しんざんどうと呼ばるる稻荷神社の直背後すぐうしろの、母とは二歳ふたつ違ひの姉なる伯母の家に車のながえを下させて、出迎へた五年前に比して別に老の見えぬ伯母に、『マア、浩さんの大きくなつた事!』と云はれて
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)