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鵺
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ぬえ
ふりがな文庫
“
鵺
(
ぬえ
)” の例文
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けると、
多勢
(
おほぜい
)
の
通學生
(
つうがくせい
)
をつかまへて、
山田
(
やまだ
)
が
其
(
その
)
吹聽
(
ふいちやう
)
といつたらない。
鵺
(
ぬえ
)
が
來
(
き
)
て
池
(
いけ
)
で
行水
(
ぎやうずゐ
)
を
使
(
つか
)
つたほどに、
事
(
こと
)
大袈裟
(
おほげさ
)
に
立到
(
たちいた
)
る。
怪談女の輪
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
鵺
(
ぬえ
)
は単に未明の空を飛んで鳴くために、その声を聴いた者は呪言を唱え、鷺も
梟
(
ふくろう
)
も魔の鳥として、その異常な挙動を見た者は祭をした。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そこで道誉は、高氏の先を越して、伊吹の館で、彼を待つつもりらしいが、その行動も意図も依然、彼は
鵺
(
ぬえ
)
そのものといってよい。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
急転直下、内藤村島両夫人のお礼詣りとなり、その又お礼返しに橋口君が「
鵺
(
ぬえ
)
」を歌いに来た晩が千吉君の家の稽古日と定った。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
所謂
鵺
(
ぬえ
)
のやうな一種変妙な形式を作り出してゐる。この変妙な文体は今日の吾々に対しては著作の内容よりも一層多大の興味を覚えさせる。
虫干
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
そうして背中の斑が
虎
(
とら
)
のようだから「
鵺
(
ぬえ
)
」だというものもあった。この鵺だけが雌で、他の三匹はいずれも男性であった。
子猫
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
少青年期の大事な部分を実家で療養に暮すうち中学生上りともつかず田舎紳士ともつかない
鵺
(
ぬえ
)
の青年になったらしい弟は
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
アームメットは
鰐首
(
がくしゅ
)
獅胴
河馬尻
(
かばじり
)
の
鵺
(
ぬえ
)
的合成獣で、もし死人の心臓と直な羽の
重量
(
めかた
)
が合わば死人の魂は天に往き得るも
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
わたしが脚本というものに筆を染めた処女作は「
紫宸殿
(
ししんでん
)
」という一幕物で、
頼政
(
よりまさ
)
の
鵺
(
ぬえ
)
退治を主題にした史劇であった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
現に邑井貞吉翁は、「頼政
鵺
(
ぬえ
)
退治」に音吐朗々あの調子で「時鳥がホーホケキョウと啼いた」と演ってのけたことがあったが、客はほとんど気がつかなかった。
わが寄席青春録
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
鵺
(
ぬえ
)
が
退治
(
たいじ
)
られてしまいますと、
天子
(
てんし
)
さまのお
病
(
やまい
)
はそれなりふきとったように
治
(
なお
)
ってしまいました。
鵺
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
せめて
御賓頭顱
(
おびんずる
)
でも
撫
(
な
)
でて行こうかと思ったが、どこにあるか忘れてしまったので、本堂へ
上
(
あが
)
って、
魚河岸
(
うおがし
)
の
大提灯
(
おおぢょうちん
)
と
頼政
(
よりまさ
)
の
鵺
(
ぬえ
)
を
退治
(
たいじ
)
ている額だけ見てすぐ
雷門
(
かみなりもん
)
を出た。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
俺ら、山男というからにゃ、頭の髪が足まで垂れ、
身長
(
せい
)
の高さが八尺もあって、鳴く声
鵺
(
ぬえ
)
に似たりという、そういう奴だと思ってたんだが、
篦棒
(
べらぼう
)
な話さ、ただの人間だあ
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
源頼政の
鵺
(
ぬえ
)
退治の
件
(
くだり
)
であった。居士の顔は眼鏡をかけるとやさしくなる。また居士は太鼓腹で恰幅のいい人で、みかけは土方の親方のようであったが、声はやさしかった。
西隣塾記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
そこへ
勝峯晉風
(
かつみねしんぷう
)
氏をも知るやうになり、
七部集
(
しちぶしふ
)
なども
覗
(
のぞ
)
きたれば、
愈
(
いよいよ
)
鵺
(
ぬえ
)
の如しと言はざるべからず。
今日
(
こんにち
)
は唯
一游亭
(
いちいうてい
)
、
魚眠洞等
(
ぎよみんどうら
)
と
閑
(
ひま
)
に俳諧を愛するのみ。俳壇のことなどはとんと知らず。
わが俳諧修業
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
鵺
(
ぬえ
)
を
退治
(
たいじ
)
た伝説で有名な
源三位頼政
(
げんざんみよりまさ
)
、西行法師、
大原
(
おおはら
)
の三寂といわれた
寂超
(
じゃくちょう
)
・
寂然
(
じゃくぜん
)
・
寂念
(
じゃくねん
)
の三兄弟、『金葉集』を撰んだ源俊頼の子の歌林苑の
俊恵
(
しゅんえ
)
、少し若手では『方丈記』の
鴨長明
(
かものちょうめい
)
など
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
第
(
だい
)
五の
怪動物
(
くわいどうぶつ
)
は、
人間
(
にんげん
)
の
想像
(
さうざう
)
で
捏造
(
ねつざう
)
したもので、
日本
(
にほん
)
の
鵺
(
ぬえ
)
、
希臘
(
ぎりしや
)
のキミーラ
及
(
および
)
グリフイン
等
(
とう
)
之
(
これ
)
に
屬
(
ぞく
)
する。
龍
(
りう
)
麒麟等
(
きりんとう
)
も
此中
(
このなか
)
に
入
(
い
)
るものと
思
(
おも
)
ふ。
天狗
(
てんぐ
)
は
印度
(
いんど
)
では
鳥
(
とり
)
としてあるから、
矢張
(
やはり
)
此中
(
このうち
)
に
入
(
い
)
る。
妖怪研究
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
ごらんなさい、あそこの額のなかには、
一
(
ひと
)
つ
家
(
や
)
の鬼婆あや、天子様の御病気に
取憑
(
とりつ
)
いた
鵺
(
ぬえ
)
という
怪鳥
(
けちょう
)
まであがっているじゃありませんか、それだのに、切支丹の神様がなぜいけないんでしょう?
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「ほら昔のことだが、源三位頼政が退治をした
鵺
(
ぬえ
)
という動物が居たね」
獏鸚
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
の高らかな声に、人々は手に手に
炬火
(
かがりび
)
を持って駆けよってきた。恐るおそる眺めると、見たこともない異形の化物である。頭は猿、胴は狸、尾は蛇であり、四つ足は虎の如く、鳴く声は
鵺
(
ぬえ
)
に似ていた。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
「鳴く声、
鵺
(
ぬえ
)
に似たりけりって奴だ」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
寝殿を中央に、左右の対屋から北の
母屋
(
もや
)
、奥の
局
(
つぼね
)
までも、為に、夜空の雲に
鵺
(
ぬえ
)
でも現われたように——鳴りしずまって、しんとしてしまった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そんなら観音堂の
額
(
がく
)
を見たろう。あのなかに
源三位
(
げんざんみ
)
頼政の
鵺
(
ぬえ
)
退治がある。頼政が鵺を射て落すと、家来の
猪早太
(
いのはやた
)
が刀をぬいて刺し透すのだ。な、判ったか。
鷲
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「謡曲に『
鵺
(
ぬえ
)
』ってのがあるんだってね。猿虎蛇のお礼に、家へ来てその鵺を歌いたいと仰有るんだがね」
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
大きにさうかも知れない。然しこの間違つた、滑稽な、
鵺
(
ぬえ
)
のやうな、
故意
(
こい
)
になした奇妙の形式は、
寧
(
む
)
しろ
言現
(
いひあらは
)
された叙事よりも、内容の思想を
尚
(
なほ
)
能く窺ひ知らしめるのである。
虫干
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
猫の
面
(
つら
)
で、犬の胴、狐の
尻尾
(
しりっぽ
)
で、
大
(
おおき
)
さは
鼬
(
いたち
)
の如く、
啼声
(
なくこえ
)
鵺
(
ぬえ
)
に似たりとしてある。
追
(
おっ
)
て
可考
(
かんがうべし
)
。
一寸怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
満を持してしばらくもたせたが「
曳
(
えい
)
!」という矢声! さながら裂帛! 同時に鷲鳥の嘯くような、鏑の鳴音響き渡ったが、
源三位頼政
(
げんざんみよりまさ
)
鵺
(
ぬえ
)
を射つや、
鳴笛
(
めいてき
)
紫宸殿
(
ししんでん
)
に充つとある
弓道中祖伝
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
全くこの二席の空高く浮く昼月の美しさに比べ見て、なんと他のことごとくの闇汁のゴッタ煮の
鵺
(
ぬえ
)
料理の、ただいたずらに持って廻り、捏ねっ返して、下らなくでき過ぎていることよ。
我が円朝研究:「怪談牡丹灯籠」「江島屋騒動」「怪談乳房榎」「文七元結」「真景累ヶ淵」について
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
たいまつをとぼし、ろうそくをつけて
正体
(
しょうたい
)
をよく
見
(
み
)
ますと、
頭
(
あたま
)
はさる、
背中
(
せなか
)
はとら、
尾
(
お
)
はきつね、
足
(
あし
)
はたぬきという
不思議
(
ふしぎ
)
なばけもので、
鵺
(
ぬえ
)
のような
鳴
(
な
)
き
声
(
ごえ
)
を
出
(
だ
)
して
鳴
(
な
)
いたことがわかりました。
鵺
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
それは獅の首山羊の胴蛇の尾で火を吐く
鵺
(
ぬえ
)
同然の怪物だ。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
鵺
(
ぬえ
)
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
いやいかに道義が
廃
(
すた
)
った今でも彼のごときは全く
稀
(
ま
)
れです。稀れな
鵺
(
ぬえ
)
です。箱根合戦の
後陣
(
ごじん
)
から裏切って、この義貞を死地におとしたのも彼の才覚。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
我国では、先ず
鵺
(
ぬえ
)
や
五位鷺
(
ごいさぎ
)
を怪鳥の部に編入し、支那では
鵂※
(
きゅうし
)
を怪鳥としている。鵂※は鷹に似てよく人語をなし、好んで小児の脳を
啖
(
くら
)
うなどと伝えられている。
妖怪漫談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と頼政の
鵺
(
ぬえ
)
退治を焼き直したような物語を始め、それが無間の鐘から夜泣石へと移って行った。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
種を
啣
(
くわ
)
えて来ましたのは、定めし
怪鳥
(
けちょう
)
、
鵺
(
ぬえ
)
じゃろうかに手前どもが存じまする。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
鵺
(
ぬえ
)
のような
鳴
(
な
)
き
声
(
ごえ
)
が
聞
(
き
)
こえました。
鵺
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
「
鵺
(
ぬえ
)
を舞う時に着けるんですの」
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
額堂の北の柱を見ると、釘の先で、「
鵺
(
ぬえ
)
を
射
(
い
)
る」と落書がしてある。——仰向いて、そこにある幾つもの絵馬を見ると、
源三位頼政
(
げんざんみよりまさ
)
の図を
描
(
か
)
いた一つの額がある。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
歴然
(
ありあり
)
と、ああ、あれが、
嬰児
(
あかんぼ
)
の時から桃太郎と一所にお
馴染
(
なじみ
)
の城か、と思って見ていると、城のその屋根の上へ、山も見えぬのに、
鵺
(
ぬえ
)
が乗って来そうな雲が、
真黒
(
まっくろ
)
な壁で上から
圧附
(
おしつ
)
けるばかり
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それだ。そのように、あなたのすること、いうことは、すべて矛盾だらけなのだ。尻尾と頭とが一つでない。道誉を
鵺
(
ぬえ
)
というが、兄者こそ
上手
(
うわて
)
をこす
大鵺
(
おおぬえ
)
だわ!」
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私
(
わたし
)
は
鵺
(
ぬえ
)
と
云
(
い
)
ふは
此
(
これ
)
かと
思
(
おも
)
つた。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
だが元々、
鵺
(
ぬえ
)
の道誉の本性は尊氏がよく見抜いてい、尊氏の矛盾だらけな気の弱さや大ざっぱな特質も道誉にすればむかしからつきあい好い男として来たものである。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
有名な
鵺退治
(
ぬえたいじ
)
の俗話があるが、ぼくの考えでは、頼政自身がその“
鵺
(
ぬえ
)
”だと思っている。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は、
鵺
(
ぬえ
)
だと思う。——志を朝廷によせ、若公卿のあいだに密々の交友をもつかと思えば、この鎌倉にあっては、執権お気に入り第一の御用人だ。まさに神変の鵺といっていい。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その道誉は、まま自身筆を執って、田楽狂言の
戯作
(
げさく
)
をこころみたり、世に
流行
(
はや
)
らせている自作の歌謡なども多いと聞くが、なるほど、それくらいな才はあろう。彼は才能の
鵺
(
ぬえ
)
でもある。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
鵺
(
ぬえ
)
だ」
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鵺
(
ぬえ
)
を射る
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“鵺”の解説
鵺、鵼、恠鳥、夜鳥、奴延鳥(ぬえ)は、日本で伝承される妖怪である。
(出典:Wikipedia)
鵺
漢検1級
部首:⿃
19画
“鵺”を含む語句
鵺退治
大鵺
鵺殿
鵺語
鵺鳥