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鮮明
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あざやか
ふりがな文庫
“
鮮明
(
あざやか
)” の例文
その
中
(
うち
)
も心の
急
(
せ
)
く、山はと見ると、
戸室
(
とむろ
)
が低くなって、この医王山が
鮮明
(
あざやか
)
な
深翠
(
ふかみどり
)
、肩の上から下に
瞰下
(
みおろ
)
されるような気がしました。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
振返つて見ると、その貧しい生活の中心には、いつもみだらな血で印を刻した女のだらけた笑ひ顏ばかりが色を
鮮明
(
あざやか
)
にしてゐた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
焚火はいよいよ燃え
上
(
あが
)
って、
其
(
そ
)
の紅い光は、お杉の
尖
(
とが
)
った顔と、重太郎の丸い顔と、お葉の蒼い顔とを
鮮明
(
あざやか
)
に
照
(
てら
)
した。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私は雨上りの晴れた日光に、凡ての物の色の驚くほど
鮮明
(
あざやか
)
に私の眼を射る事を知つて居る。其れにも係らず見えざる心の片隅に隱れてゐる
知
(
し
)
れざる悲しみ。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
けれどまず第一に人の眼に
注
(
と
)
まるのは夜目にも
鮮明
(
あざやか
)
に若やいで見える一人で、言わずと知れた
妙齢
(
としごろ
)
の
処女
(
おとめ
)
。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
▼ もっと見る
翌朝
(
よくあさ
)
、
銅鑼
(
どら
)
の
鳴
(
な
)
る
音
(
ね
)
に
驚
(
おどろ
)
き
目醒
(
めさ
)
めたのは八
時
(
じ
)
三十
分
(
ぷん
)
で、
海上
(
かいじやう
)
の
旭光
(
あさひ
)
は
舷窓
(
げんさう
)
を
透
(
たう
)
して
鮮明
(
あざやか
)
に
室内
(
しつない
)
を
照
(
てら
)
して
居
(
を
)
つた。
船中
(
せんちゆう
)
八
時
(
じ
)
三十
分
(
ぷん
)
の
銅鑼
(
どら
)
は
通常
(
つうじやう
)
朝食
(
サツパー
)
の
報知
(
しらせ
)
である。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
吉田と会見した
後
(
あと
)
の健三の胸には、ふとこうした幼時の記憶が続々
湧
(
わ
)
いて来る事があった。
凡
(
すべ
)
てそれらの記憶は、断片的な割に
鮮明
(
あざやか
)
に彼の心に映るものばかりであった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お俊は
鋏
(
はさみ
)
の尻でトントン
叩
(
たた
)
いた。お延の新しいハンケチの上には、荵の葉の形が
鮮明
(
あざやか
)
に
印
(
いん
)
された。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それで、この部屋にあって、
鮮明
(
あざやか
)
に見えているものといえば、例の、卯の花のように白い薪左衛門の
頭髪
(
かみ
)
と、化粧を施さないでも、天性雪のように白い、栞の顔ばかりであった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
三日目に父は妹のために楓の葉と短冊を彫つた燈籠を作りました。それは朝顔などの線の細い模様とちがつて、くつきりと浮き出したやうな
鮮明
(
あざやか
)
さは何にも比べやうもない美しいものでした。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
黒斑
(
くろふ
)
歪
(
ひず
)
みて
慘
(
いた
)
ましく
鮮明
(
あざやか
)
にこそ
捺
(
お
)
されたれ。
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
日が蔭って、草の青さの増すにつけ、汗ばんだ
単衣
(
ひとえ
)
の
縞
(
しま
)
の、くっきりと
鮮明
(
あざやか
)
になるのも心細い——山路に人の小ささよ。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
巡査の
翳
(
かざ
)
す松明は
傍
(
かたえ
)
の
石壁
(
せきへき
)
を
鮮明
(
あざやか
)
に
照
(
てら
)
した。壁は元来が比較的に
平
(
ひらた
)
い所を、更に人間の手に
因
(
よ
)
って
滑
(
なめら
)
かに磨かれたらしい。
其
(
そ
)
の
面
(
おもて
)
には何さま数十行の
文字
(
もんじ
)
らしいものが
彫付
(
ほりつ
)
けてあった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
中に一冊、忘れて消して無いのがあつた。『あ——ちよつと、筆を貸して呉れませんか。』斯う言つて、借りて、赤々と
鮮明
(
あざやか
)
に読まれる自分の認印の上へ、右からも左からも墨黒々と引いた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
紀念塔
(
きねんたふ
)
の
建立
(
けんりつ
)
は
終
(
をは
)
つて、
吾等
(
われら
)
は五六
歩
(
ぽ
)
退
(
しりぞ
)
いて
眺
(
なが
)
めると、
麗
(
うる
)
はしき
大理石
(
だいりせき
)
の
塔
(
たふ
)
の
表面
(
ひやうめん
)
には、
鮮明
(
あざやか
)
に『
大日本帝國新領地朝日島
(
だいにつぽんていこくしんりようちあさひたう
)
』。あゝ
之
(
こ
)
れで
安心
(
あんしん
)
々々、
一同
(
いちどう
)
は
帽
(
ぼう
)
を
脱
(
だつ
)
して
大日本帝國
(
だいにつぽんていこく
)
の
萬歳
(
ばんざい
)
を
三呼
(
さんこ
)
した。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
電燈が
颯
(
さっ
)
と
点
(
つ
)
くのを合図に、中脊で
痩
(
やせ
)
ぎすな、
二十
(
はたち
)
ばかりの
細面
(
ほそおもて
)
、薄化粧して眉の
鮮明
(
あざやか
)
な、
口許
(
くちもと
)
の
引緊
(
ひきしま
)
った
芸妓
(
げいこ
)
島田が、わざとらしい堅気づくり。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ネープルス
港
(
かう
)
を
出
(
い
)
づる
時
(
とき
)
には
笑
(
え
)
めるが
如
(
ごと
)
き
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
は
鮮明
(
あざやか
)
に
此
(
この
)
甲板
(
かんぱん
)
を
照
(
てら
)
して
居
(
を
)
つたが、
今
(
いま
)
は
日數
(
ひかず
)
も
二週
(
ふためぐり
)
あまりを
※
(
す
)
ぎて
眞
(
しん
)
の
闇
(
やみ
)
——
勿論
(
もちろん
)
先刻
(
せんこく
)
までは
新月
(
しんげつ
)
の
微
(
かす
)
かな
光
(
ひかり
)
は
天
(
てん
)
の
奈邊
(
いづく
)
にか
認
(
みと
)
められたのであらうが
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
甲胄堂
(
かつちうだう
)
の
婦人像
(
ふじんざう
)
のあはれに
絵
(
ゑ
)
の
具
(
ぐ
)
のあせたるが、
遥
(
はる
)
けき
大空
(
おほぞら
)
の
雲
(
くも
)
に
映
(
うつ
)
りて、
虹
(
にじ
)
より
鮮明
(
あざやか
)
に、
優
(
やさ
)
しく
読
(
よ
)
むものゝ
目
(
め
)
に
映
(
うつ
)
りて、
其
(
そ
)
の
人
(
ひと
)
恰
(
あだか
)
も
活
(
い
)
けるが
如
(
ごと
)
し。
甲冑堂
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
甲冑堂の婦人像のあわれに絵の具のあせたるが、
遥
(
はる
)
けき大空の雲に映りて、
虹
(
にじ
)
より
鮮明
(
あざやか
)
に、優しく読むものの目に映りて、その人あたかも
活
(
い
)
けるがごとし。
一景話題
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
立って追おうとすると、岩に
牡丹
(
ぼたん
)
の
咲重
(
さきかさな
)
って、白き
象
(
ぞう
)
の
大
(
おおい
)
なる
頭
(
かしら
)
の如き
頂
(
いただき
)
へ、雲に
入
(
い
)
るよう
衝
(
つ
)
と立った時、一度その
鮮明
(
あざやか
)
な
眉
(
まゆ
)
が見えたが、月に風なき野となんぬ。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この行燈で、巣に
搦
(
から
)
んだいろいろの虫は、
空蝉
(
うつせみ
)
のその
羅
(
うすもの
)
の
柳条目
(
しまめ
)
に見えた。灯に
蛾
(
ひとりむし
)
よりも
鮮明
(
あざやか
)
である。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
中にも真紅に燃ゆる葉は、火よりも
鮮明
(
あざやか
)
に、ちらちらと、揺れつつ灰に描かるる。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかも九時半の処を指して、時計は死んでいるのであるが、
鮮明
(
あざやか
)
にその数字さえ
算
(
かぞ
)
えられたのは、一点、
蛍火
(
ほたるび
)
の薄く、そして
瞬
(
またたき
)
をせぬのがあって、胸のあたりから、
斜
(
ななめ
)
に影を宿したためで。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その内も手を休めず、ばっばっと赤い団扇、火が散るばかり、これは
鮮明
(
あざやか
)
。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
御待合歌枕
(
おんまちあいうたまくら
)
。
磨硝子
(
すりがらす
)
の
瓦斯燈
(
がすとう
)
で
朧
(
おぼろ
)
の半身、
背
(
せなか
)
に御神燈の
明
(
あかり
)
を受けて、
道行合羽
(
みちゆきがっぱ
)
の色くッきりと
鮮明
(
あざやか
)
に、格子戸の外へずッと出ると
突然
(
いきなり
)
柳の樹の下で、新しい紺蛇の目の傘を、肩を
窄
(
すぼ
)
めて両手で開く。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
妙齢
(
としごろ
)
になってから、火ぶくれの
痕
(
あと
)
は、今も
鮮明
(
あざやか
)
に残ってると、蝶吉は口惜しそうに、母親に甘えるごとく、肩を振って、浴衣に
搦
(
から
)
んで足を揃えて、
小
(
ちいさ
)
い
爪尖
(
つまさき
)
を見せながら、目に涙を
浮
(
うか
)
べたその目で
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鮮
常用漢字
中学
部首:⿂
17画
明
常用漢字
小2
部首:⽇
8画
“鮮明”で始まる語句
鮮明率直