“野分:のわき” の例文
“野分:のわき”を含む作品の著者(上位)作品数
紫式部7
泉鏡花5
吉川英治5
正岡子規5
夏目漱石5
“野分:のわき”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 映画2.6%
文学 > 日本文学 > 記録 手記 ルポルタージュ2.2%
文学 > 日本文学 > 詩歌1.6%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
紫の女王の美は昔の野分のわきの夕べよりもさらに加わっているに違いないと思うと、ただその一事だけで胸がとどろきやまない。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
野にはもう北国の荒い野分のわきが吹きはじまって、きびの道つづきや、里芋の畑の間を人足どもの慌しい歩調がつづいた。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
吹き募る野分のわきともに烟を砕いて、丸く渦を巻いてほとばしる鼻を、元の如く窓へ圧し返そうとする。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「その声が遠く反響を起して満山の秋のこずえを、野分のわきと共に渡ったと思ったら、はっと我に帰った……」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
〽仮りの姿や友千鳥、野分のわき汐風いずれもに、かかる所の秋なりけり、あら心すごの夜すがらやな……
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
まだ野分のわきの朝などには鼠小僧ねずみこぞうの墓のあたりにも銀杏落葉いちょうおちばの山の出来る二昔前ふたむかしまえの回向院である。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ちなみに言ふ、追分おひわけには「吹き飛ばす石は浅間あさま野分のわきかな」の句碑あるよし。
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
野分のわき立った朝、尼はその女のもとに菓子などを持って来ながら、いつものように色のめた衣をかついだ女を前にして、何か慰めるように、
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
こは前日の野分のわきに倒れたるを母などが引き起して仮初かりそめの板を置きそれで支へるつもりなり。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
武蔵野の冬の夜更けて星斗闌干せいとらんかんたる時、星をも吹き落としそうな野分のわきがすさまじく林をわたる音を、自分はしばしば日記に書いた。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
夜は明けたのか日は高いのか、暮れかかるのか、雨か、あられか、野分のわきか、木枯か——知らぬ。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
野分のわき」「二百十日」こういう言葉も外国人にとっては空虚なただの言葉として響くだけであろう。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
野分のわきに伏した草むらや、白い流れや、眼をやる所に、おとといのいくさたおれた敵味方のかばねが、まだ一個も片づけられずにある。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遼東りょうとう大野たいやを吹きめぐって、黒い日を海に吹き落そうとする野分のわきの中に、松樹山しょうじゅざんの突撃は予定のごとく行われた。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
栗の林に野分のわきたちて、庫裡くりの奥庭に一葉ちるもさびしく、風の音にコホロギの声寒し。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
ただ薄尾花が一面の原野をなしているのだから、月に乗じて行く白衣の人の影は、そのまま銀のようにかがやいて、野分のわきに吹かれて漂うて行くばかりです。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そろそろと世も野分のわきの時分ともなれば、かの秋風が何処どこからともなく吹き初めて来る
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
勢いよく吹くのは野分のわきの横風……変則のにおぶくろ……血腥ちなまぐさい。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
あたりはやがてひんやりと野分のわきふく秋の末のように、不思議な索莫さに閉ざされてきた。
長崎の鐘 (新字新仮名) / 永井隆(著)
草がのび草が枯れ、いつも蒼々そうそうたる野分のわきのそよぎがあるほか、春秋一様な転変をくりかえしているに似た武蔵野の原にも時と人との推移があります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大笑すると、両頬のひげが野分のわきの草のようにゆらぐ、忠相は心配そうな眼つきをした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そういう支度で出かけたが、あまり野分のわきが吹きまくるので、途中で馬の荷を締め直す。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
野分のわき夜半よはこそたのしけれ。そはなつかしくさびしきゆふぐれの
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
息長おきなが野分のわき息吹いぶき遠空にきざせどもあかしこの牧はまだ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
清治はうけたまわって引っ返そうとすると、またひとしきり強い嵐が足をすくうように吹き寄せて来て、彼は野分のわきになぎ伏せられたすすきのように両膝を折って倒れた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
野分のわきだちかけりつぎ來る秋鳥のきそふ鋭聲とごゑ朝明あさけまされり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
野分のわきだちかけりつぎ来る秋鳥のきそふ鋭声とごゑ朝明あさけまされり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
野分のわきよさらば駆けゆけ。目とむればくさ紅葉もみぢすとひとは言へど、
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
今年の野分のわきの風は例年よりも強い勢いで空の色も変わるほどに吹き出した。
源氏物語:28 野分 (新字新仮名) / 紫式部(著)
夫人 時々、ふいと気まかせに、野分のわきのような出歩行であるきを、……
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
八月に野分のわきの風が強かった年以来廊などは倒れたままになり、下屋の板葺いたぶきの建物のほうはわずかに骨が残っているだけ、下男などのそこにとどまっている者はない。
源氏物語:15 蓬生 (新字新仮名) / 紫式部(著)
野分のわきの風がさっと吹き渡ると、薄尾花すすきおばなが揺れます。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
野分のわきふうに風が出て肌寒はださむの覚えられる日の夕方に、平生よりもいっそう故人がお思われになって、靫負ゆげい命婦みょうぶという人を使いとしてお出しになった。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その上に、冬のモンスーンは火事をあおり、春の不連続線は山火事をたきつけ、夏の山水美はまさしく雷雨の醸成に適し、秋の野分のわきは稲の花時刈り入れ時をねらって来るようである。
災難雑考 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
大馬の黒の背鞍に乗りがほのをひはれぬ野分のわきする家
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
例年なら今頃はとくに葉をふるって、から坊主になって、野分のわきのなかにうなっているのだが、今年ことしは全く破格な時候なので、高い枝がことごとく美しい葉をつけている。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
掏摸すりだ! 掏摸だアッ! とののしりさわいで、背後の人々が一団となって揺れあっている。腕が飛ぶ拳が振りあがる、なぐる蹴る。道ぜんたいが野分のわきのすすきのよう……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
同時に、一同のうしろの、先刻さっき喬之助の消えた障子がサラリとあいたから、野分のわきに吹かれた秋草のように、一同が、そっちをふり返ると、今度はこっちに立っている……喬之助が。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と、バタリと畳へ手をつくと、浴衣のつた野分のわきする。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その野分のわきに、衣紋えもんが崩れて、つまが乱れた。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夏をむねと作ればいお野分のわきかな 也有やゆう
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
何年かの前に野分のわきの夕べに見た面影が忘れがたかった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
野分のわきの朝にのぞいた顔の美しさの忘られないのを、その人は姉ではないかと恋しくなる心を責めていた中将であったが、そうしたさわりの除かれた今は恋人としてこの人を中将は考えていた。
源氏物語:30 藤袴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ほどてから二人は、曠野こうやの一角に立っていた、眼の及ぶかぎり野分のわきの後のかやである、灯も見えない、人家もない、こんな所を目ざして降りて来たわけでないはずだがと、
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此の間の野分のわきで卒塔婆が倒れ、土饅頭の土が洗われて
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
西行さいぎょう塚の平地へきて、ホッと一息入れながら、弦之丞の天蓋がクルリと後ろへ振り向いた途端に、その影は両端の草むらや岩の根に、サッと野分のわきに吹かれた草のようになびいてしまう。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にわとり空時そらどきつくる野分のわきかな
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
発心ほっしんもとどりを吹く野分のわきかな
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
そうしてモンスーンのないかの地にはほんとうの「春風」「秋風」がなく、またかの地には「野分のわき」がなく「五月雨さみだれ」がなく「しぐれ」がなく、「柿紅葉かきもみじ」がなく「霜柱」もない。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
おとといの野分のわきのなごりか空は曇って居る。
飯待つ間 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
脚早あはや野分のわきは、うしろざむに、
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
一陣、夜更けをすさぶ野分のわきの声があります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゐのししも共に吹かるゝ野分のわきかな 同
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
第二の灯が用意されました。野分のわきの後のような大混乱の店先に、ガラッ八の糞力に組み伏せられて、フウフウ言っているのは、誰あろう、石原利助の一の子分、伊三松の忿怒ふんぬに歪む顔だったのです。
いのししも共に吹かるゝ野分のわきかな 同
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
外屋敷や野分のわきに残る柿のへた 野童
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
夏山 夏野 夏木立なつこだち 青嵐 五月雨さみだれ 雲の峰 秋風 野分のわき 霧 稲妻 あまがわ 星月夜 刈田 こがらし 冬枯ふゆがれ 冬木立 枯野 雪 時雨しぐれ くじら
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
我が息を吹きとゞめたる野分のわきかな
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
衰へし野分のわきからす一羽飛び
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
だしぬけに吹きたる風も野分のわきめき
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
いたずらに、吹くは野分のわきの、
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
野分のわきというものなのかしら。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
野分のわきが吹いて瓦が泣く。
長崎の鐘 (新字新仮名) / 永井隆(著)
実に、私は、その日の事は、いまでもはっきり覚えておりますが、野分のわきのひどく吹き荒れている日でございまして、私たちはそのお綺麗な奥さんからお習字をならっていまして、奥さんが私の傍をとおった時に、どうしたはずみか
男女同権 (新字新仮名) / 太宰治(著)
前掲「灰汁桶あくおけ」の句ではしずくの点滴の音がきりぎりすの声にオーバーラップし、「芭蕉ばしょう野分のわきして」の句では戸外に荒るる騒音の中からたらいに落つる雨漏りの音をクローズアップに写し出したものである。
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
く、野分のわき
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
有名な「古池やかわず飛び込む水の音」はもちろんであるが「灰汁桶あくおけのしずくやみけりきりぎりす」「芭蕉ばしょう野分のわきしてたらいに雨を聞く夜かな」「鉄砲の遠音に曇る卯月うづきかな」等枚挙すれば限りはない。
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
きもをけした穴山あなやま一族の将卒しょうそつは、血眼ちまなこになって、草わけ、小川のへりをかけまわったが、もうどこにも一人の敵すら見あたらず、ただいちめんの秋草の波に、野分のわきの風がザアザアと渡るばかり。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老百姓は、お帰りの頃までに、草庵を建て直しておきます——といって送り出すし、野分のわきの後の水たまりは、まだ所々小さい湖水を作っているが、おとといのれは嘘のように、もずは低く飛び、空のあおさは、高く澄みきっている。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黄ろくからびた刈科かりかぶをわたッて烈しく吹きつける野分のわきに催されて、そりかえッた細かな落ち葉があわただしく起き上り、林に沿うた往来を横ぎって、自分の側を駈け通ッた、のらに向いて壁のようにたつ林の一面はすべてざわざわざわつき
あいびき (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
風が野分のわきふうに吹く夕方に、大将は昔のことを思い出して、ほのかにだけは見ることができた人だったのにと、過ぎ去った秋の夕べが恋しく思われるとともに、また麗人の終わりの姿を見て夢のようであったことも人知れず忍んでいると非常に悲しくなるのを
源氏物語:41 御法 (新字新仮名) / 紫式部(著)
今日までだいそれた恋の心をいだくというのではなかったが、どんな時にまたあの野分のわきの夕べに隙見すきみを遂げた程度にでも、また美しい継母が見られるのであろう、声すらも聞かれぬ運命で自分は終わるのであろうかというあこがれだけは念頭から去らなかったものであるが
源氏物語:41 御法 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一、その外かすみ陽炎かげろう東風こちの春における、薫風くんぷう雲峰くものみねの夏における、露、霧、天河あまのがわ、月、野分のわき星月夜ほしづくよの秋における、雪、あられ、氷の冬におけるが如きもまた皆一定する所なれば一定し置くを可とす。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「シャロットの女を殺すものはランスロット。ランスロットを殺すものはシャロットの女。わが末期まつごのろいを負うて北のかたへ走れ」と女は両手を高く天に挙げて、朽ちたる木の野分のわきを受けたる如く、五色の糸と氷をあざむく砕片の乱るる中にどうたおれる。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
山影やまかげながらさつ野分のわきして、芙蓉ふようむせなみ繁吹しぶきに、ちひさりんにじつ——あら、綺麗きれいだこと——それどころかい、馬鹿ばかへ——をとこむねたらひ引添ひきそひておよぐにこそ。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
蒸暑むしあつかつたり、すゞぎたり、不順ふじゆん陽氣やうきが、昨日きのふ今日けふもじと/\とりくらす霖雨ながあめに、時々とき/″\野分のわきがどつとつて、あらしのやうなよるなどつゞいたのが、きふほがらかにわたつたあさであつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)