近江あふみ)” の例文
いははなをば、まはつてくごとに、そこにひとつづゝひらけてる、近江あふみ湖水こすいのうちのたくさんの川口かはぐち。そこにつるおほてゝゐる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
くお天氣てんきには、とほ近江あふみくに伊吹山いぶきやままで、かすかにえることがあると、祖父おぢいさんがとうさんにはなしてれたこともありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
宮だけは「いかなれば近江あふみの海ぞかかるてふ人をみるめの絶えてなければ」という歌の気持ちを覚えておいでになって
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
美濃では、斎藤氏が、その主家の土岐氏を追ひ、近江あふみでは浅井氏が主家の京極氏を圧し、越前では朝倉氏がつて主家の斯波氏から国を奪つてゐる。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「磯の埼ぎたみゆけば近江あふみ八十やそみなとたづさはに鳴く」(巻三・二七三)、「吾が船は比良ひらの湊に榜ぎてむ沖へなさかりさふけにけり」(同・二七四)がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
この墓地はかちには、出雲のほかに、その女房子にようばうこと、親父おやぢ近江あふみ、兄弟など六十幾人かの墓が並んでゐる。
なかにも有名ゆうめいなのは、いまから百年ひやくねんばかりまへに、近江あふみ木内石亭きのうちせきていといふひとで、これらの人達ひとたちおほあつめてゐるあひだに、これは天狗てんぐ使つかつたものだとか神樣かみさまのものとかではなくて
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
良人をつと仏蘭西フランス語でドクトル近江あふみの住所は何処どこかと尋ねて居ると、その時偶然隣の扉をけて黄八丈の日本寝巻ねまきまゝ石鹸シヤボンの箱と手拭とをながら現れた人は近江さんであつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
近江あふみくに山越やまごしに、づるまでには、なか河内かはち芽峠めたうげが、もつとちかきはまへに、春日野峠かすがのたうげひかへたれば、いたゞきくもまゆおほうて、みちのほど五あまり、武生たけふ宿しゆくいたころ
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
友のSが七月下旬東京を出発して信濃飛騨しなのひだを旅し、美濃路を経て八月上旬京都に出て、二週間ばかり滞在しようといふ予定であつたので、是を機会にして、伊勢、尾張、近江あふみ
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
なしけるにいやさ其方そなた仕合しあはせ者よききやくが有るといふうはさとくより知て居る尾張屋の客はどうした此の頃は御出がないかして半四郎近江あふみから御出の人はと口から出任でまかせに引手茶屋の名前を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「実はな、敦賀つるがまで、お連れ申さうと思うたのぢや。」笑ひながら、利仁は鞭を挙げて遠くの空を指さした。その鞭の下には、的皪てきれきとして、午後の日を受けた近江あふみの湖が光つてゐる。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
河内かはち門真三番村の百姓高橋九右衛門たかはしくゑもん、河内弓削村ゆげむらの百姓西村利三郎にしむらりさぶらう、河内尊延寺村そんえんじむらの百姓深尾才次郎ふかをさいじらう播磨はりま西村の百姓堀井儀三郎ほりゐぎさぶらう近江あふみ小川村の医師志村力之助しむらりきのすけ、大井、安田等に取り巻かれて
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
大夏おほなつ近江あふみの国や三井寺みゐでらうみへはこぶと八月雲す
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
大文字だいもんじ近江あふみの空もたゞならね
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
近江あふみの国の……
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
中大兄皇子は、後に第三十八代天智てんぢ天皇とならせ給うたが、新政のために、新らしき都を選ばれる意味で、近江あふみ志賀しがに都し給うた。これが大津ノ宮である。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
志賀しが山越やまごえといふのは、むかしからうたにたび/\まれた、京都きようとから近江あふみえるところです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
立出て其夜大津おほつに泊り翌日は未明みめいより立て名にしおふ近江あふみ八景を眺めつゝ行程に其以前大津を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
このごろ近江あふみ矢橋やばせで遊女梅川の墓が発見めつけられた。物好きな人の調べによると、梅川は忠兵衛に別れてから、幾十年といふ長い月日をこゝで暮し、八十三でころりと亡くなつたさうだ。
もつとも、大饗に等しいと云つても昔の事だから、品数の多い割りに碌な物はない、餅、伏菟ふと蒸鮑むしあはび干鳥ほしどり、宇治の氷魚ひを近江あふみふな、鯛の楚割すはやり、鮭の内子こごもり焼蛸やきだこ大海老おほえび大柑子おほかうじ、小柑子、橘
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
城代土井は下総しもふさ古河こがの城主である。其下に居る定番ぢやうばん二人ににんのうち、まだ着任しない京橋口定番米倉よねくらは武蔵金沢の城主で、現に京橋口をも兼ね預かつてゐる玉造口定番遠藤は近江あふみ三上みかみの城主である。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しのゝめや露を近江あふみの麻畠
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
足利尊氏は途中近江あふみかゞみ宿しゆくにて、密勅を蒙るや、之を秘して、何気なく京都を通り、丹波に入つて、足利氏の所領たる篠村八幡宮祠前に於て、勤皇の旗を挙げ
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
させて呉れよと云ども某は承知せず近江あふみ泥坊どろばう伊勢いせ乞食こじきといふ事あれば江州の者に油斷ゆだんはならず連はきらひなりと申せしかどたつて供を致し度し申に付據處よんどころなく同道致せしわけ拙者も些少いさゝか油斷を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一、近江あふみよりあさたちれば、うねのにたづぞくなる。けぬ。この
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)